がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結)   作:島国住み

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「どうしてこうなった」感は正直、あります。(先手謝罪)


統計開始以来最高の有効求人倍率

「……て。…きて。お兄ちゃん、朝だよ。起きて!」

 

う~~ん。あさぁ?まだ眠い。自分のペースで起こさせてくれぇ~

 

「……1限遅刻するよ。」

 

ガバッ!

 

「…おはよう。もう10時過ぎてるよ。」

 

……初めて誰かに起こされた気がする。今までは飛真君が勝手に起きるのに任せてたんでこれはこれで新鮮ですね。

それにしても10時過ぎですか。相当疲弊してたんですね。体力のほうは満タンだけど正気度はさすがにまだ心配な水準ですね……とは言っても昨日よりはだいぶマシです。

1限遅刻という単語に思わず反応してしまったのは屈辱だなぁ。こりゃもう反射ですね。妹なんかニヤニヤしてるし。くそぉ、してやられた……

 

気を取り直して起きますか。今日はショッピングモールに行こうと思ってるのでグズグズしてもいられない。

 

あ、朝ごはんが用意されてる。クッキー☆と……コーヒーもある。しかし何で組み合わせがもずくスープなんだ?

絶対コーヒーと合わないだろ……

 

「お兄ちゃんもずくスープ好きでしょ?」

 

あ、そうだったの?(他人事)。好物を作ってくれたってことですね。優しさがしみるぅ……

ホントだ。正気度が多く回復した。率先して正気度を回復する行動をとってくれるからすごくありがたい。

クッキー☆をコーヒーで浸して食べるとおいしくなるなら……もずくスープはどうだ?

……意外といけるっぽいです。飛真君的にはこれはこれでアリなのか…(困惑)

妹もえぇ……って顔で見てきてるのでおとなしくスープ単体で飲みます。

 

腹ごなしも済んだのでショッピングモール出征に向けて準備しますか。

キャラクター的には物資の調達が目的でしょうが本命はみーくんの救出です。

正直妹と二人で何とかなりそうな気はするんですけど……やはりランダムイベントが怖い。何かあったとき二人だと共倒れになりかねないから、できればもう一人欲しい。そうなると……みーくんしかいないんですよね。

圭ちゃんはラジオ放送でフラグが立たないと救出に行けませんし。それなしで探そうとなるとみーくんから捜索を依頼される形でしか彼女の存在を知る術はありません。

駅なんてメタ知識がなきゃ行こうと思わないからね。しょうがないね。

問題はいつ行くか。探索()()なら昼。たしかにかれらは多いけど行き帰りは自転車(しらせ号)に乗ってればまず切り抜けられる。上に行けば行くほどかれらは少なくなるから速攻で上がればなんとかなる。真っ暗じゃない分探索もしやすい。

でも救出となるとかれらが多すぎて昼は危険。救出最優先で行動すれば視界が悪くなることを差っ引いても夜のほうが安全ではある。ただ夜だと帰り路が危ない。暗いからスピードが出せず折角の機動力を生かせない。

 

……思った以上に厳しくないか?あきらめて物資調達に徹したほうが良いかも。

雨の日による襲撃イベントはないものと信じておとなしく探索に徹しますか……

となると何を持って帰るかですね。せっかくショッピングモールに行くんですからそこにしかないものを持って帰りたい。

妹にも聞いてみますか。

 

「今欲しいもの?うーん……食べ物とか生きていくのに最低限必要なのはまだあるからパッとは出てこないけど……」

 

欲がない。それじゃショッピングモールに行く意義もなくなってくるな……

 

「え?向こうに行くの?それなら……下…あ、えっと、ふ、服とか?あ、あと……漫画とか…?」

 

急に俗っぽくなった。たしかに娯楽は必要だよなぁ。何で顔が赤くなってるんだろ?娯楽が欲しいっていうのは恥ずかしいことじゃないと思うけど……

 

「真面目な話だとアウトドア用品と技術書かな。簡易浄水器とかソーラーパネルがあればこれから生活するうえできっと役立つし、木のバリケードだとまだ不安だから金属も加工できるようになりたいし……藁よりは木、木よりはレンガじゃない?」

 

……たしかに。自分は二週間生き残ることしか考えてなかったけどその後も生きるつもりなら持続可能な設備が必要になってくるよな。

……学園生活部はすでにもっと優れた設備を有しているんですけどね(遠い目)。

そもそもゾンビがうじゃうじゃいるのに家にとどまろうとする時点であまりいい対処法じゃないですからね。称号の為とはいえ、悲しくなってくる……

 

持って帰るものは決まったので後は行くだけですね。できれば夕方になる前に帰ってきたいな。夕方は外にいるかれらが多くて危ない。

大抵のものは向こうでそろうから軽装で大丈夫でしょ。

ま、ちゃちゃっと行ってさっさと帰ってきますか。

 

「行ってらっしゃい。……服とかは忘れていいからね。」

 

ああ。目的の物を取ってくるのはいいが───

別に、ソレを持ってきてしまっても構わんのだろう?

というわけで、イクゾー!(効果音)

 

道中は特に難もなく着きましたね。さすがに日中なのでかれらの数は多いのですが「隠密移動」のおかげで気づかれることなく進めます。まぁスタミナ消費が激しいんでやりすぎはダメですけど。

こうも路面状況が悪いと車より断然自転車ですね。車なら優に半日はかかりそうな距離もチャリならすぐです。

 

いざ入店。一階の窓ガラスはどこも割れてるのでどこからでも入れます。

ということはつまり……

 

アァァァァァァァァァァァ……

 

かれらがうじゃうじゃいるってことです。

さっさと上に行きましょう。

お目当ての物がほとんど上の階にあるのは不幸中の幸いです。

 

昼でも店内は薄暗いから懐中電灯が必要です。

でも上に行く前にケミカルライトを回収しましょう。

音だと誘導するつもりがなかったかれらまで寄ってくるので光による誘導は意外と重宝します。

アウトブレイク発生当時、イベントが開催されていたらしく分かりやすい場所に置いてあります。適当に鷲掴みしたらさっさとずらかります。

 

3階には防犯ブザーと服があります。……とは言ってもどんな服がいいのか分かりませんね。

高い服を持ってけばいいか。高いってことはイケてる商品ってことでしょ?(名声価格)

防犯ブザーもいくつか持っていきましょう。切羽詰まったときはこの爆音が危機を助けてくれるでしょう。

……なんか「不審者に屈しない!棒で叩かれても壊れない大音量ブザー『タフネス・ヒデ』新発売!」ってやけに目立つPOPがあるな。その割には売れ残ってるけど。

耐久性は大切ですからね。ちょっと不安ですけどこれも持っていきますか。

 

4階は紳士服売り場です。

返り血とかで服はすぐダメになっちゃうのでここで補充しちゃいたいですね。下着とかも洗うより使い捨て感覚で使ったほうが衛生的。

服に一度しか袖を通さないとか貴族かな?水はできるだけ節約したいから許して。

 

5階……バリケードがあります。

そうです。この先の一室にみーくんがいます。そして元生存者(かれら)たちもこのフロアにいます。

数は多少前後しますが10体以上はいます。

5階はほかのフロアと比べて少し小さいので割と危険です。暗いから背後にも気をつけなきゃいけないし。

正直行きたくはないのですが欲しい物の大半はそこにあるんですよね。

有用な物資が多いからこそ生存者たちはここを拠点にしてたのでしょうね。

どうせ5階に用があるならみーくんもついでに助けたいですけどね。一人だとちょっと怖いなぁ…

もたもたしてもいられませんし、バリケードよじ登りますか。

 

 

 

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

!?

 

上?いや下から聞こえた!

一旦開けた場所に戻ろう!

ここからだと詳しくはわかりませんが……あれは、学園生活部?

彼女たちもモールに来てたんですね。ただ……ヤバいですね。一階のかれらが続々集まってきてる。

めぐねぇが抱いてるのは太郎丸かな?太郎丸を見かけて救出しようとしたら失敗した……といったところですかね?

ピアノの上にみんな何とか逃げてますがこのままじゃ……数分も持ちませんね。

 

助けなきゃ!!(使命感)

 

ここからじゃ遠すぎるので階を降りつつ近づきます。エスカレーターの手すりに乗って滑ります。オラオラオラァ!どけぇ!

 

2階で、かつ彼女たちが良く見える位置に来ました。そこでなんだかんだ使ってなかった(忘れてた)スキルポイントを使って「投擲Lv.1」を取ります。

まだLv.1ですが別にかれらに物を当てるわけではないのでこれで大丈夫です。要はあのピアノの近くに投げられればいいのです。

 

おおおおおおーーーーーーーいっっ!!!

 

あ、ゆきちゃんが気づきました。さすがに直感が高い。

みんな飛真君の存在を認識しました。これなら。

 

今から助けに行く!耳をふさいで!逃げる準備をして!!

 

さっき手に入れた防犯ブザーを贅沢に数個使います。

一個だけでも爆音なら!数個一気に至近距離で使えば……

 

アアアアアアアァァァァァイッタイイッタアアアアィィィィ!!!

 

凄い音。にしてもこのメロディーじゃ不気味すぎて絶対売れないだろ。不審者もあまりのおぞましさに逃げそうではあるけど……

 

かれらはその場であまりのうるささにうずくまってます。この隙に!

 

学園生活部の面々も爆音に顔をしかめながらもその場を離れようと走ってます。

外にはめぐねぇ’s car がありそうだけど、外のかれらを引き付けちゃってるから危険だな…

やっぱ上しかない!階段に先導してできるだけ上に登ってもらいます。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 

なんとか4階まで駆け上がりました。絶体絶命の危機は回避しました。

みんなぜぇぜぇ言ってます。飛真君もスタミナが切れそうでした。先頭に立って先導とつゆ払いしたり、最後尾に回って遅れている人(りーさん、めぐねぇ)の手助けをしたりと八面六臂の活躍をしてましたからね。

疲れたぁ。守りながら移動するのってこんなに大変なのか……

いつの間にかブザーの音は止まってますね。音が大きい分電池の消費が激しいのでしょうね。

 

「はぁ……はぁ…。あの、ありがとう、ございます。なんとお礼を言ったらいいか……」

 

さすがはめぐねぇ。まだ呼吸は整ってないけど真っ先にお礼を言ってくれました。

 

「わりぃ、助かった。えーーっと、おま……君はこの前校庭で自転車漕いでた人だよな?」

 

いかにも。我こそは……

 

              ~自己紹介タイーム~

 

「……へぇ。妹さんと二人で今まで過ごしてたんですね。」

 

「インフラはどうなってますか?もう水道とかも断水しちゃってると思うのですけど……」

 

「ねーねー! 学園生活部に入部しない?」

 

「わんっ!」

 

「やっぱりスコップっていいよな!強いし扱いやすいし!」

 

いっぺんに話されると困る。それに……

 

ガサッ

 

!!

 

ここも安全というわけじゃないですからね。

 

「……話は後だな」

 

「……そうね。」

 

ここまで生き残ってきただけあって切り替えが早い。

そしてくるみちゃんがめちゃ強い。今一振りで2キルしてたよな?

 

5階普通に制圧できそう(こなみ)

みーくんが立てこもってる部屋に行けば一応安全ですしこの人数なら5階にいるかれらの殲滅も可能かもしれないです。

ちょっと聞いてみよう。

 

「バリケード……もしかしたら生存者が!」

 

「え!?生存者?なら早く上行こうよ!」

 

行く方向で決まったみたいですね。

 

まず自分とくるみちゃんがバリケードをよじ登り安全を確認する。

周囲の安全を確保したらみんなを移動させて、各々が探索と状況の確認、敵を排除する役割を分担し確実に進んでいく……

 

もうみーくんの部屋の前についてしまった。なんという連係プレー……やっぱ人が多いっていいな。

 

「ん? ここ開かないな……ここにいるのか?」

 

ドンドンドン

 

「おーいっ! 助けにきたよー!」

 

ドサドサドサッ、ガチャ

 

「…………! 人だ! え、えっと私直樹美紀って言います。ほかの人たちとこの階に逃げてきたんですけど」

 

……かなり慌ただしく説明してますね。救出されて興奮しているのでしょうか?みんなちょっと面食らってます。

かいつまんで話すと友人とショッピングモールに来ていた時にアウトブレイクが発生して、恐慌状態になりながらもなんとかこの5階に他の生存者と逃げることができた。でも数日前に生存者の一人が感染し共同体は崩壊。友人の圭とここにこもっていたのだが、その圭は昨日、待つだけの日々に早々に見切りをつけここを去ったのだそうだ。

あああ昨日ショッピングモールに行っていればW救助できたのにぃ!!

 

ごほん。とにかく救出できてよかったです。わりと早い段階で助けに行ったので正気度もまだ高いですね。

……まぁ助けたところでどうせみーくんは学園生活部に入部しちゃうんでしょうけど。

最低限の保証すら危うい零細企業と福利厚生がしっかりして同僚が全員美人の優良企業、どっちがいいか?と聞かれたら絶対後者ですよね。

合同就職説明会を開いた時点で負けなんですよね。内定辞退の旨(機会があれば改めて)を急に言われるよりはマシか……

 

この幸せムードを壊さないように帰りましょう。

 

「皆さんの拠点は高校なんですよね…?」

 

「そーだよー!」

 

「しかしもう暗いな……今日帰れるのか?」

 

え、もう夜だったの?

ヤバい……みんなを助けることに必死になりすぎて帰る時間のことすっかり忘れてたぁ!

 

「そうですねぇ……道路がああも荒れている中夜道を走るのは危険だから難しいですね……」

 

「あ、じゃあ 今日はここに泊っていきますか? 皆さんを一日泊める分の物資ならまだここにありますよ?」

 

「え!? お泊り会? やったーー! すごい楽しそう! やろうやろう!」

 

「もう!丈槍さん! はしゃいじゃいけません! ……それならお言葉に甘えてもよろしいですか?」

 

「甘えるも何もそもそもここは私の部屋じゃありませんから。遠慮なんていりませんよ?」

 

やべ。これ泊まる流れだ。そおっとそおっと……

 

「飛真君はどうしますか?」

 

ビクッ さすがに聞かれるよな……

おうちに帰ります(鋼の意思)

 

「えーっ! 帰っちゃうのー? 一緒にお泊り会しようよー!」

 

「たしかに妹さんのことは心配でしょうけど、この時間に一人で帰るのは危険すぎると思います!」

 

帰ります(鉄の意志)

 

「あの、ホントに遠慮しなくていいんですよ?お互いに情報を交換することも大切だと思いますし……」

 

「今日は動き回って相当疲れたと思うから無理しないでここで休んでいった方がいいと思うぜ?」

 

帰ります(銅の意思)

 

「助けていただいたのにまだ何も私は返せていません。……何か貴方にお返しをしてからでは、ご迷惑ですか?」

 

「わんっ! わんっ!」

 

泊まります(KETUIMELTDOWN)

 

言っちゃったよ。民主主義に則った文明的な決断!

ドキドキ☆お泊り会!……じゃないよどうすんだよコレ。

あなたは余っ程意思のない方ですね(嘲笑)

最初は社交辞令だと思ったのですが……どうやら本当に引き留めようとしてると感じて…断るのが申し訳なくなって…その、ナオキです。(言い訳)

夜が危ないのと疲労がたまってるのは事実だから多少はね?

 

称号的には()()()()()です。拠点である家から1日以内であれば外にいてもセーフなので、朝一で帰れば「自宅警備員」の称号へのフラグはまだ立ったままです。

 

自宅警備員が外泊していいのか甚だ疑問ですがこれも働き方改革の一環ですかね。縛りにはいまのところ抵触してないのでいいんじゃないですかね?(適当)

 

家で待ってる妹には本っ当に申し訳ないですが今日は家には帰りません。……こういう時通信手段がないと不便ですね。

償いとしてできるだけ有用なものを持って帰りたいです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────

 

 

「ゆきっ! こっちだ! 手を出せ!」

 

「うっ、うん!」

 

周りには大量のかれら。退路は塞がれ、徐々にかれらの手が私たちに近づく。

グランドピアノ(安全地帯)に私たち学園生活部はなんとか移動できたが、かれらの包囲を破る手立てはなく孤立し、飲み込まれようとしていた。

 

あぁ……私が、私が()()を許可していなければこんなことにはならなかったのに……

 

 

 

 

事の発端は丈槍さんの発言だった。

 

「どうしたんだ?ゆき。 なんか変なカオしてんぞ?」

 

「ふっふっふー。くるみちゃん。私、いいこと思いちゃった!」

 

「?」

 

()()!いこっ!」

 

始めこの()()に対してみんなの反応はあまり芳しくなかった。……私もどちらかといえば反対だった。

私たちは3階こそ制圧したがまだ2階は制圧できていない。まだまだ学校の守りを固めることで精いっぱいなのが現状だ。

しかも物資の備蓄はまだあった。2階を制圧すれば購買部を安全に利用できるようになるのでわざわざ遠くに行く必要はないというのが全体の意見だった。

 

でも私は最終的には賛成に回った。

その提案は現実的ではないと諭そうとしたところ

 

「えー? でもショッピングモールにはまだ私たちみたいにまだ生きてる人たちがいるかもしれないじゃん! 助けに行けば正義のヒーローになれるよ!」

 

生存者。丈槍さんは私たちなら助けられるといった。この言葉に私は勇気づけられた。数日前、校庭を自転車で駆けていたあの男子生徒をみかけたように生き残っているのは私たちだけではない。みんなが力を合わせればもしかしたら……

 

それに……緊急避難マニュアルのこともある。今はまだ誰にも明かしていないが時期がきたらみんなに知らせなければならない。地下にあるという医薬品。安全に取りに行くためにはもっと人手が必要かもしれない。そこから治療法の糸口も見つかるかも……

 

私の車を使い、ショッピングモールに()()をすることになった。

思った以上に道が荒れ果て時間がかかってしまったがそれでも無事にショッピングモールにたどり着いた。

 

車を停めて割れたガラスが散乱するエントランスから室内に入った。みんなきちんと準備して万全の状態のはずだった。

 

丈槍さんが犬を見つけそちらに駆けていこうとしたのを私は止めることができず、それから……それから……

 

 

 

 

 

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

若狭さんの悲鳴で我に返る

見るとかれらが若狭さんの足首をつかんでる。

 

なんとか振り払うことができたが私たちはもう限界だ。数分も持たないだろう。

 

私たちは助けに来たのに……助けて……助けて……

 

誰かっ…………!

 

 

「おおおおおおーーーーーーーいっっ!!!」

 

!!

 

「あ、あれ!」

 

丈槍さんが指さした方向には声の主、こないだ見た男子生徒がいた。

 

「今から助けに行く!耳をふさいで!逃げる準備をして!!」

 

言うや否や何かを私たちの近くに投げた。

すると

 

アアアアアアアァァァァァイッタイイッタアアアアィィィィ!!!

 

形容しがたい冒涜的な電子音が爆音となって耳に突き刺さる。

 

かれらは音の大きさに耐えられずうずくまっている。

チャンスだ。

 

お互いに目配せをして急いでピアノから離れる。

それと同時に男子生徒がこっちにやってきて上の階へと先導してくれた。

 

 

 

 

四階まで登ってやっとひと段落着いた。男子生徒は遅れがちな私をサポートしたりしてくれた。

呼吸はまだ整っていなかったがお礼を言った。

感謝してもし足りないぐらいだ。ピンチを救ってくれた。いわばヒーローだ。しかしどこから来たのだろうか?このショッピングモールで暮らしているのだろうか?

 

みんなが落ち着いてきたところで彼は自己紹介をした。

 

名前は青木飛真、巡ヶ丘学院高等学校の二年生だと名乗った。あの惨事(アウトブレイク)を学校で迎え、急いで帰宅した後妹と協力して今まで暮らしていたそうだ。今回はショッピングモールに物資調達に来ていたところだったと言う。

私は2年生の担当ではなかったから彼のことは知らなかったが、彼は私のことを知っていたらしい。

 

私たちも自己紹介をした。ただやはり彼のことは気になる。みんなも彼のことが気になるらしく質問攻めにされていた。

 

かれらが現れたことによって質問タイムは中断された。

周囲の安全が確認された時、彼は上の階にバリケードがはってあったと切り出した。

 

バリケード……その内側にまだ人間がいるかもしれない!

 

「え!?生存者?なら早く上行こうよ!」

 

丈槍さんの一声で今後の方針が決まった。

 

そこからは早かった。

恵飛須沢さんと飛真君のスコップコンビが先にバリケードを超え、安全を確認したのちに次々に他のメンバーを下ろしていった。

人数が増えたおかげで進むスピードが上がりあっという間に生存者、直樹美紀さんを助けることができた。

 

生存者を助けることができて私たちは喜んでいたが一つミスを犯していた。

もう日が暮れてしまっていたのだ。

 

そもそも着いた時間が遅かったうえ、思いがけないアクシデントが起こったせいで帰る予定の時間を過ぎてしまったのだ。

 

でも直樹さんの提案でここに一泊することになった。学園生活部みんなはこの提案に賛成した。丈槍さんなんかは「お泊り会だー!」なんて大はしゃぎしてる。

 

飛真君は……

 

え?帰っちゃうの?

まだまだ聞きたいこと話したいことがいっぱいあるし外は危険だ。

できれば今日は一緒に泊まって欲しい。

 

ここにいる全員が彼を引き留めようとした。みんな同じ気持ちなのだろう。

彼も初めは「帰ります」の一点張りだったけど、だんだん声に勢いがなくなってきた。

 

「助けていただいたのにまだ何も私は返せていません。……何か貴方にお返しをしてからでは、ご迷惑ですか?」

 

ついに彼は折れた。不承不承といった様子で泊まりますと答えた。

 

押しに弱いタイプの子なのかしら。ふふっ、それなら……

彼の動きは今まで生き残ってきただけにとても頼りがいがあった。恵飛須沢さんだけに戦闘を任せておくわけにもいかない。男の人の力は今の学園生活部にとって非常に魅力的だ。

学園生活部顧問としてこの逸材を見逃すわけにはいかない。飛真君と()()()()彼の妹を確保(スカウト)しなければ!

 

家より私たちの高校のほうが設備的に優れているでしょう。そして分散しているよりみんなでまとまって生活したほうが生存率は上がる。彼にとっても悪い話じゃないハズです!

うふふっ。でもまずは説得しないといけませんね。焦らなくてもまだ恩返し(入部勧告)をする時間はあります。

 

待ってて下さいね、飛真君(私のヒーロー)

 




登場人物が増えると……大変ですね。

「がっこうぐらし!」のタグがついている以上学園生活部のことも書かねば!と思い彼女たちを出したら……こうなりました。

風呂敷を広げすぎた感はありますが……まぁ、頑張ります(白目)

自宅警備員でも外泊しますよね?ライブの地方公演とかで……

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