がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結)   作:島国住み

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とてもつらい


二等分の口先

あ、画面が一瞬明るくなった。 日が出てきたのかな。

飛真君を起こしますか。オラッ起きろ!(ボタンガチャガチャ)

 

問題なく起きました。昨日の夜いろいろあったとはいえ、寝た時刻はそこまで遅くないので体力は全快してます。

早く家に帰らなきゃ……

 

とは言っても隠密系の技能を持ってないですし、「探さないでください」の置手紙を残して去る……なんてことは無理です。

昨日言質は取られたけど、まぁ何とかなります。多分。

 

みんなは……もう起きてる。早起きだな……

 

「あ、飛真くんおはよ~」

 

ゆきちゃんだ。なんか持ってるな……それは、ポラロイドカメラ?

 

「そう! 昨日寝る前にトイレに行こうと思って()に出たら見つけたんだー。 バッチリ取れてるでしょ?」

 

ホントだ。でも自分の寝顔の写真見せられても反応に困る……

 

「ベストショットはこれ! くるみちゃんの寝顔! ほら見て! よだれ!」

 

「あっ、ゆき! いつのまに!」

 

「丈 槍 さ ん ? 悪用するようなら没収しますよ? 部活の活動を記録するために使うって約束しましたよね?」

 

「はーい。 もうしませーん。」

 

ゆきちゃん絶対反省してないゾ。

……何はともあれ帰る支度しますか。 すぐに帰れるようにしないと

 

「ご飯できました。 といっても長期保存用のパンとコーンスープだけですけど……」

 

それくらいならすぐに食べれそう。

 

「あ、ちょっと待ってください。 食べる前に……活動記録のために写真撮っておきましょう。」

 

その集合写真にもちろん自分も含まれるよな……

気乗りはしないけど、拒否するのも変だから参加するしかないな。

 

「みんな笑顔でー。 はい、チーズ!」

 

なぜ自分が真ん中に据えられているのか分からない。

そしてフレーム内に収まるためとはいえ、距離が近い。

 

「どれどれ……上手に撮れてます!」

 

魂が取られた(迷信)。

写真撮影も終わったんで、チャチャっと食べてしまいましょう。

 

朝食RTAは飛真君の大勝利です。 スープにパンを浸すことにより2分ほどタイムを短縮できました。

サァ荷造りだ荷造りだ

 

「そんなに急がなくても……出発までもう少しありますよ?」

 

気づかれました。ここからが正念場です。

隠れて帰れないなら全員に()()()()()()()()を認めてもらうまでです。

 

先に家に帰ってようと思って……

 

みんな日曜の朝みたいな穏やかな顔だったのに、自分が家に帰ろうとしていると知るや否や目の色が変わった……

 

「そ、それは本当ですか!」

 

めぐねぇの顔に ゆ る し ま せ ん って書いてある。

待って。話せばわかるから!

 

恐らく学園生活部は飛真君を車に乗せて家に行って妹に入部(飛び級)を勧める……と

という流れを考えていると思います。

まずこのプランで合っているか聞いてみます。

 

「そうですね。そうしようと思ってます。 わかっててどうして一人で行こうとしてるんです?」

 

よかった。合ってた。

でもこのプランには少々問題があるんです。

住宅街の道路状況が車にとって厳しすぎる。そもそも道幅が狭いのに所々ブロック塀が壊れてますし、そこかしこに事故の生々しい跡があります。

自転車ならまだしも車じゃ時間だけがかかって危険なだけです。

車は頑丈そうに見えますけど窓ガラスとか弱い部分が多くて、機動力を発揮できないんじゃただの鉄の棺桶です。

ここを責めます。

自分が単独で家に帰って妹を説得するから、学園生活部の面々は先に学校に帰って夕方あたりに校庭で落ち合おう と代案をだすんです。

 

でもここで「やっぱ同行する」と言われたらもう詰みなんですけど……

幸い昨日かなり好感度を稼ぎましたので信用されているハズ。自分は入部したい旨を()()()()()()()以上疑われる理由はない!

学園生活部からしたら飛真君はすでに部員に等しいですからね!

どうだ……お願い。 受け入れてくれ…………

 

 

「確かにその通りですね……じゃあ夕方、会いましょう。絶対ですよ?」

 

おお!みんな納得してる!

勝ったな。家帰ってくる。

 

こうなりゃもうこっちのもんです。向こうは飛真君の家の正確な位置を現時点では知らないんですから。

こっそり尾行しようとしても自転車スキルの差と土地勘を利用して簡単に巻けます。

 

夕方落ち合うとさっき言いましたが、もちろん行きません。

待ち合わせの時間を過ぎて訝しがるでしょう。しかしもうその頃にはもう夜です。

様子を見に行くのは明日にしようと思うはず。

明日はアウトブレイク発生から七日目です。

…………ということは、そうです! 雨の日イベントがあります!

学校にやってくるかれらの対処で精いっぱいでその日はこちらに行く暇はないです。

 

なので一度帰ってしまえば学園生活部の面々とはどんなに短くても明後日までは会わずに済みます。

この猶予は、妹に学校に行きたくないと言ってくれるように根回しする時間としては十分すぎるほどです。

予想としては雨の日イベントを耐えきった学校の再補強と、そろそろ始まる圭ちゃんのラジオSOSイベントでてんてこ舞いでやってくるのはもっと遅くなると思います。

ガバ乱数が重なって校内放送に気づけなかったら全滅もあり得るのでやってこない可能性だってあります。

 

来たら来たで適当な理由をこじつけて立ち退きを拒否すればいいだけです。

制限時間付きの籠城ですからこっちに分があります。今の好感度なら多少は待ってくれるはずです。

そんなことをしてる間に14日たって晴れて称号を獲得……っていう寸法です。

 

心変わりされると嫌なので40秒で支度します。

のんびりしてると通勤ラッシュにぶち当たるからかれらが少ないうちに行きたいのもある。

 

……もう帰る支度はできました。あとは戦利品がパンパンに入ったリュックを背負うだけ……

 

「……その荷物、いらないんじゃないですか? ()()()()()()()()()()()()()()()最低限の物だけでいいと思いますよ?」

 

りーさん痛い所をついてくる……

も、もしもの時のために……この先何が起きても対応できるように……

 

「……そうですか。」

 

大丈夫……かな? 一応は納得したっぽいのでセーフ!

帰ろう帰ろう。

 

「あ、飛真君。 行く前に少し、お時間いいですか?」

 

? まぁ少しなら。

 

 

「これ、妹さんに。 ……昨日の缶詰です。」

 

これを手土産に説得してくれということか……さすが顧問! ラッピングもしてある。 女子力の波動を感じる……

よし、忘れ物なし! 

 

()()()()!」

 

またねー(さよなら)

ふー。なんとか一人で帰るのを許されましたね。

 

昨日停めた位置に……ちゃんとしらせ号はありますね。

壊れてもない……はい、行けます!

スタコラサッサー

 

早朝だけあってかれらの数はまばらですね。

……一応尾行されてないか確認するか。

 

大丈夫そうですね。これで安心して家に帰れる。

 

家が見えました!

実に一日ぶりの我が家ですが、見た感じ特に変化はないですね。

 

心配なのは妹の正気度です。 こんな生きるか死ぬかの世界で何の連絡もなく同居人が一晩帰ってこなかったら……

相当精神がすり減ります。

もちろん無事を確認すれば正気度は多少回復しますけど、今回の一件(出張の無断延長)で減った分はペイできません。

帰らなかったことについては自分が全面的に悪いので責任を持って正気度回復にまい進する所存です。

 

荷物が重いからはしごがギシギシ言って怖い……

 

やっと登り切ったぁ

無事ベランダに到着できたので帰宅は成功です!

 

とりあえず自分の部屋に入りますか…………あ。

妹だ。 しかしなんで飛真君のベッドの上にいるんだ?

 

「お、お兄ちゃんっ!!」

 

抱きつかれた。 ……勢いが強すぎて今ちょっとダメージ入った。

 

「ぐすっ……私、ずっとずっと待ってた……なのに、なのにいつまでも帰ってきて、くれないから……もう、お兄ちゃんには会えないんだって思って……」

 

目が腫れてて真っ赤に充血してる……顔も青白いし……

本当に申し訳ないことをしてしまった。

 

「おかえり、なさい…… 無事で、無事で本当によかった……」

 

ただいま。

とりあえず荷物を置きたい……

 

「すごい荷物……あっ。 私が欲しいって言ったものが中々見つからなかったから遅くなっちゃったの……?ごめんなさい。わがまま言って……そのせいでお兄ちゃんが危険な目に……」

 

ま、まぁ……そういうわけでもないけど……

正直に言うしかないよな……

 

「そういうわけでもない……? いったい何があったの?」

 

学園生活部を助けたこと、ショッピングモールに残っていた生存者を彼女たちと協力して助けたこと。予想外のことに時間を取られて夜になってしまったため泊まる流れになったことを伝えます。

 

「いろんなことがあったんだね……あれ? 学園生活部って前言ってた高校にいた生存者たちのことだよね? どうしてショッピングモールに……?」

 

ああ、それはね……

 

「それよりも!」

 

ハイ。

 

「泊まるって……まさかその学園なんちゃらっていう人たちと一緒に、じゃないよね?」

 

そのまさかです……

 

「………へー。 私が心が張り裂けそうな思いで帰ってくるのを待ってた時に、お兄ちゃんは同じ学校の女子たちと一緒に泊まって鼻の下を伸ばしてたんだー。 ヨカッタネー」

 

冷や汗が止まらん。

客観的に見ればそうなるのか…こうやって言われると非常時だったとは言えトンデモないことをしてたんだなぁ……

そんなことない!と言いたいところだけど状況がすべてを物語ってるからな……首を垂れるしかない。

 

「…………………なんてね。 顔が真っ青になってわかりやすいなぁ……どうせ助けてもらった恩返しがしたいとか何とか言われて引き留められたんでしょ? 

これについて妹として何も思わないわけじゃないけど……でも、お兄ちゃんはちゃんと帰ってきてくれた。……私は、お兄ちゃんを()()()()()()。」

 

正直2、3発殴られても仕方ないと思ってたけど……寛容だった。

 

「でも! 今度からはちゃんと時間通り帰ってきてね! 待ってる間、生きた心地がしなかった……私、もう嫌だよ……一人ぼっちの夜なんて……」

 

それはもう。絶対に残業しません!

 

落ち着いてきたので肝心の入部の話に入るか。

ここで妹が賛成派になってしまうとそれ則ち詰みだからできるだけネガティブに伝えなくては……

 

「え!? お兄ちゃん高校で暮らさないかって誘われたの? ……それで?

場の雰囲気に流されて一旦は入部するって言ったけど、これまで通り家で過ごすことにしたんだ……ふーん。」

 

『悪い人たちじゃないんだけどー』とか『学校は設備は充実してるけどかれらが多くてちょっとねー』とか奥様方の井戸端会議みたいなことを言いまくってネガティブキャンペーンを開催します。 これなら妹も行く気がなくなるハズ……

僕は入部をやめようと思ってるんだけど、咲良はどうする?

 

「私は……お兄ちゃんが行かないなら行かない……話を聞く限りそんなにいい所じゃなさそうだしね。」

 

よかったぁーー!

これで安泰だ! 一時は本気で再走を考えたけど……もう大丈夫ですね。(にっこり)

 

「荷物の中身見ていい? 何を持ってきたのか気になる。」

 

どうぞどうぞ。

時間がかかった分戦利品の質には自信がある。

 

妹が検品してる間自分は服を着替えたりしますか。

自分の部屋には今妹がいるから一階にいこう。

 

 

 

 

ふー。さっぱりしたぁ!

家はやっぱり落ち着く。帰ってきてよかった!

そろそろ妹は確認が終わったかな? 二階に戻るか。

 

ん? 部屋の雰囲気が冷え切ってる。 ……なんで?

 

「お兄ちゃん。 ……お兄ちゃんは入部するつもりはないんだよね?」

 

うん。そうだよ。

 

「学園生活部の人たちとは何にもなかったんだよね?」

 

うん。……さっきからどうしたんだ? 

 

「じゃあ……じゃあ、これは、何?」

 

それはめぐねぇがくれた女子力高い粗品……ん? 朝食の時に撮った写真? なんでそんなところに入ってるんだ!?

 

「お兄ちゃん楽しそうだね笑ってる。こんなぎゅうぎゅうにくっついて仲がいいんだねでもいくらフレームが狭いからってこんなにくっつく必要ないんじゃない?まだ出会って少ししかたってないのにこんなに近いのはダメだと思うよくないうんよくないよお兄ちゃん真ん中にいてすっかり人気者だねみんなにちやほやされてたんだねよかったね羨ましいなー それに、」

 

ペラッ

 

写真の裏?

 

  ────〇月×日 初めて撮った()()()()での記念撮影。

           ちゃんと撮れるか不安だったけどきれいに撮れた。

           みんなの笑顔が眩しい。 

           これからも誰一人欠けることなく思い出を撮っていきたい。

 

 

 

……その笑顔、ひきつってないですか?

 

()()()()って……あと、こんな大事な写真を部員でも何でもない人(お兄ちゃん)が持ってるのはおかしい。

お兄ちゃん。どうして? どうして嘘、ついたの?

…………私、()()()()()()

 

自分が一人で帰ることを許されたのは()()を持たされてたからなのか!

保険のつもりだったのかな……信用されてると思ったのに……

 

そんなことより……口先じゃもう誤魔化しきれない所まで来てしまった。

あらゆる手を尽くして信用を取り戻すしか、ない。

 




計画性のなさが露見してしまった……見切り発車はよくない(箴言)

家には帰ってこれましたが……

次回は妹視点オンリーでいこうと思ってます。


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