男子海洋学校は横須賀・呉・東舞鶴の三校で成り立っており、ブルーマーメイドでは対応できない特殊な事態や研究職等に就くための専門学科がそれぞれ設置されています。
三校とも毎年新入生を募集する中で、潜水艦乗りは舞鶴、研究は横須賀、総合の呉と抜きんでているものが違うため、効率のいい教育が行われています。
但し、どこの学校にも潜水艦は在籍していますし研究も行われているため、各校の交流はかなり盛んです。
ちなみに海斗は航海科ですが、研究職希望のため将来的には本局勤務になる進路予定になります。
ちなみに制服は白を基調としたブレザー型で、学年ごとに外に青のラインが1本ずつ入ります。ブレザーいいよね。
二回目の夏休み。先日の焼肉会も無事に終わり平穏…
「ああぁぁぁっ!!」があるわけはなく。寮の自室で絶叫。この季節はいたるところから絶叫が聞こえるため驚くのは新入生だけだ。
この時期、僕らには宿題の他にレポート提出が義務付けられている。いわゆる論文作成だ。毎年一回、一年かけて論文を作成するのだが夏休みを境に一度提出しなければならない。なぜだ。学生の休みとは何かと昨年は悟りを開く奴もいたし気が狂った結果海に飛び込んだやつも何人かいた。それぐらいこの論文は地獄なのだ。
ふと時計を見るともう午後の2時を回っていた。学食はカフェタイムだし、外にでも出るかな。せっかくボーナスと給料も出たし、新しいゲームでも帰りに買ってこよう。そうだ。長浦フロートに新しいカレーの店ができたらしいし行ってみるか。
「海斗ーでかけんのかー?」学生ロビーに降りるとクラスは違うが仲のいい同期が何人かぐだってた。まるで干上がった魚みたいだ。
「気分転換ついでに長浦のカレー食ってくるわー。」
「んじゃ帰りにアイス買ってきてくんね?金後で渡すし、俺ら今日はここにずっといるからさー。」
外に出れば夏のじわじわとした暑さが体を駆け抜ける。今日の最高気温は29度前後とほぼ真夏日だ。風が吹いているとは言え、やはり陸の上はきついな。
自分のスキッパーのエンジンをつけて、横須賀湾を進む。海風はいい。陸と違って遮るものがないから涼しさをよく感じることができる。まぁ、潮風のべとべと感はひどいけど、海で仕事するうえで正直今更観はあったり。
「そういや、明乃たちはまだ授業中か。」横須賀女子の横を通りかかるとふと幼馴染の顔を思い浮かべる。あいつ、勉強大丈夫かな。
ふと子供の頃を思い出す。この間手伝った時もだけど、明乃は論文や報告書が大の苦手だから。
『おにいちゃぁぁん!!読書感想文手伝ってぇえ!!』
『作文おわんないよぉおっ!!』
・・・うん。苦手だな。というか、こっち出てきた後もたぶんそのままにしてたやつ。
そんなことを考えながらスキッパーをフロートの船着き場に止めてそのまま目当てのカレーを食べに行く。カレーはいい。食欲なくても食べられるし、朝昼晩すべての時間で食べられるから。
そんなことを考えながら歩いて行ったその店先は・・・しまっていた。
「定休日…だと…!?」こんなところまできて…そんな・・・・
うなだれた首筋が焼けるほど痛い。うわ、へこむわ・・・
周囲に人が誰もいなかったのが救いだ。日中店の前にへたり込んでる若い男なんて不審者以外の何物でもないし。というか腹減った・・・昼飯どうしよう。というか、中央まで戻るの面倒・・・じゃねぇや、どのみち行かないといけないし。戻るかぁ…
「お?あいつは・・・おい、海斗ー!」
呼ばれた声に振り向くと、他のブルーマーメイドとは違う黒の制服がとっさに目についた。
「ま、真冬の姐さん!!」
そう、宗谷真冬。ブルーマーメイドの一人で二等保安監察官。べんてんの艦長その人だ。
昨年とある事件で協力をしたとき、その行動力と器量の良さから姐さんって呼ばせてもらってる。
「何やってんだ?真昼間から辛気臭い顔しやがって。根性いれるぞ?」
「姐さん。それセクハラです、男にもあるんですよ?というか明乃にやろうとしたらしいですね?」
この人に根性の入れ方教えたのどこのどいつだ。目の前に出てくれば魚雷一発で済ませてやる。
「というか、論文が終わらないから気分転換にここにカレー食べに来たら定休日だったんですよ。というかほんと、どこで飯食おうかな・・・」
手元のスマホを使ってこの付近の食事処を検索する。流石に何か食わないと倒れそうだ。調子乗って朝食ぬいたのが間違いだった。くそ・・・
「ふーん。なら家来るか?今日姉ちゃんが帰ってきてて、昼一緒に食べるって話になってんだ。海斗なら姉ちゃんも喜ぶだろうし、お前の近況も聞きたいしな。」
その言葉に思わず胸が高鳴る。
宗谷真霜さんといえば、現ブルーマーメイドの体制で指揮権のトップに君臨する才女だ。憧れであり、前から会ってみたいと話はしてたんだけど、まさかこんなところでチャンスが巡ってくるなんて!神様ありがとう!!
「あー・・・ただ、な?がっかりするなよ?」
「がっかり?」
その数分後、俺はその言葉の意味を知り、帰り道をとぼとぼ歩くことになるのだった。
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数時間後、寮の自室。夕飯まではまだ時間がある中で論文の続きを書いていた。
卒業後、それぞれ分かれる進路において重要な資料であるうえ、自分のこれまでの体験を生かして執筆するこの論文は誰にも特別なものだ。
そして、この論文を手に、俺は目標にしているあの場所にたどり着くのだ。
「海斗ー!飯行こうぜー!」
「おう、今行くー」
パソコンをつけたまま食堂へ向かう。そのパソコンの画面には論文の題がカーソルに照らされ一際強く目立っていた。
『RATs騒動におけるホワイトドルフィン側の対応の問題点と改善策』