横須賀に咲く花束   作:ヨコヨコ

9 / 9
第8話 大和 襲来

穏やかな日差しと夏らしい暑さが漂う横須賀。男子海洋学校は夏休みといえど活気がなくなることはない。

それは基本寮生活だからということもあるが、何よりも実家に帰るやつらが少ないことも一つの理由だろう。研究もあるし、男子校ということもあり年末年始にのみ帰るやつらがほとんどだ。

だからかな・・・

 

「吊るせ!!!!」

 

「やめろ!!俺は何もして・・・!!」

 

一か月に一回以上行われる奇祭。彼女持ち並びに街中で女性とかかわった人間に対するモテない男たちの打ち上げ。今日も行われるその場面を見ながら僕は朝食をとっていた。

 

というか、もえかと付き合って尚且つ明乃という義理の妹、さらには大和の十海たちとバレたら間違いなく潜水艦に乗せられる恐怖、正直勘弁してもらいたいぐらいだ。というか普通に考えて国家公務員である僕らがこんなことしてていいのかな。

 

「おー海斗。旨そうなもん食ってんじゃん。」

 

「おっす幸喜。限定シーフードカレーだと。これ普通にうまい。」

 

ちなみにここの学食は3か所。第一食堂と運動部がよく使う第二食堂。カフェテリアも兼ねている第三食堂と生徒が自由に選べるようになっている。どうもこれも一つの入学理由らしい。確かに胃袋をつかめとはよく言ったもんだけど。

 

「で、あいつ何したの?」食堂の先で吊るされている同級生に一目視線を送るとカレーに再び視線を向ける。

 

「ああ、一昨日から呉の大和が寄港してるだろ?ほら、女子と合同演習とかで。それを聞きつけた数人がナンパしに行ったのがバレたらしい。…進愛から連絡きてたの知らんの?」

 

「昨日は一日部屋に籠って論文やってたから携帯見てない。…ふぅ、ごちそうさまでした。」

 

あーあ、あいつらとうとう海出ちゃったよ。こりゃ明日関連者全員反省文提出かなぁ…って、携帯に連絡だっけ。

 

『明日、1200時いつもの店。古庄君も一緒に』

 

…今日逃げられないけどいいのか?

 

----------

中央にあるステーキハウス。十海が横須賀に来るたびに通っているお気に入りの場所だ。

 

「の、のむさん。私はそう、わざと食べてないの。肉は重要なエネルギー源よ?そう、野菜よりも!」

 

「ほんなこと言ったって野菜は食べなきゃいけへんでしょ!もー、普段あんなに頼りになる艦長がほんな野菜をまるっきし食べないなんて艦のみんなに見せられんだがねんが!」

 

「・・・やってるな。」

 

「幸喜、帰るか。」

 

一路店を背に別の店に行こうとする。その時だった。

 

「あれ、海斗君。どこに行くの?」

 

すっっごく久しぶりに聞く透明な声。そう、もえかだ。

 

「宮里さんたち待ってるよ?せっかく海斗君とご飯食べれるの楽しみにしてたのに。ね?」

 

あっ・・・もえかいい匂い・・・じゃない。やめろ幸喜そんな目でこっちを見つつ携帯で何か撮ってるな!?

 

「あっ、海斗久しぶり!このわがまんま艦長に野菜食べるように言ってくれん?」

 

「海斗君。進愛に言ってほしいのよ。私は野菜が嫌いなわけじゃないって。」

 

なんでこう、彼女はわかり切ってることをドヤ顔で言ってくるのか。そうしなきゃ普通にかっこいいのに。

 

「えーっと、とりあえずサラダ全員分・・・あ、彼女には大盛でお願いします。」

 

「なんてこと・・・!?」

 

進愛がここまで言うってことはのらりくらりとかわしてきたのだろう。前回隠ぺいに付き合ったんだし今回は勘弁してもらおうか。

 

「で、もえかまで誘って今回はどうしたのさ。」先に来たサラダを食べながら問いかけてみる。大方話題になってた合同演習の件なんだろうけど。

 

「別に今回は大きな意味はないわよ。せっかく海斗の恋人さんとゆっくり話す機会があったのと、古庄君とも最近会ってなかったからちょうどいいかなって。」

 

なるほど。前回は幸喜がいなかったし、もえかとも先日の一件でそんな余裕もなかったか。お互い一学年しか変わらない以上合同演習なりある以上今後のことを考えてって感じかな。

 

「ほれに、海斗がデレデレだっていう彼女とゆっくり話してみたかったのあるけどねー。ほら、知名もえかって言えば今期の主席だし、どうやって落としたのか気になるって。」

 

「デレデレだなんてそんな・・・養護施設で一緒に育って、お兄さん見たいな感じだったから・・・ね。」

 

もえかさん。笑顔見せながら殺気出さないでもらえませんか?あの、前回のこと隠していたの謝るので・・・だから幸喜お前は何を録画している。

 

十海が目の前に出されたサラダに苦戦している間、進愛と会話が弾む。

 

 

「そういえば、この間の競闘遊戯会の結果見たよ。やっぱり先輩方強いよなぁ。」

 

「かと言って、横須賀だって予想以上だったからびっくりしちゃったにー。ほら、晴風・・・岬さんなんて将来楽しみだし。」

 

「ミケちゃんも同じこと言ってました。また先輩方とお話したいって。」

 

「本当?うれしいわー。」

 

「そういえば、この間うちの整備課に差し入れしてくれたんだってな。みんな喜んでたよ。」

 

実のところ、進愛と幸喜は仲がいい。同じ副艦長という立場からかもしれないけど、空気が合うのかな。というかもえか食べる量すくな。

 

「もえかおなかすいてないの?体調でも悪いなら後で薬でも・・・」

 

「ううん。先輩たちが楽しそうに話してるから。ふふっ、心配してくれてる?」

 

「もえかなら何かしら無理しそうだからね。」

 

そんな時間を過ごしながら、昼食を摂った僕らはそのままお開きになった。

 

あ、十海は半べそこいてた。写真撮ったし後で送ってやろ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。