騒めく会場、コロシアムの中には二人のバーチャルライバー。
その中でMCらしき男の声が響く。
「お待たせしました、これよりにじさんじ妄想トーナメント、Aブロック第一試合。叶VS御伽原江良の試合を行います!!」
この宣言と同時に、コロシアムの重き門が開かれる。
二つの闇の中から歩き出す、二人の男女。
彼らは戦う、己が未来のために。
「ギバラ〜!お前に賭けてるんだ!頑張れよ〜。」
「叶〜、サクッと決めろ〜」
コロシアムにこだまする無責任な観客たちの声。
「ごめんね、出来るだけ痛く無い様にするから。」
叶は笑顔を崩さずそう答える。
対して御伽原江良も、笑顔を崩さない。
「汚い声出したら、即終了だから笑笑」
無理である、どうせ直ぐに汚い声出すし。
「それでは、試合開始〜!!!」
叶は無駄のない素早い動作で、肩からスリングで下げたAK-47を構え、発砲する。7.62ミリの強烈な発砲音とマズルフラッシュが会場を響き渡る。
御伽腹は素手。そして、自らに向かって発砲された銃弾を面で捉え、口を開く。
「ギーバラ♪ギバラは銀盾だ♡」
そう唱えた瞬間、御伽原の前に白銀の盾が現れ、彼女を守る。
この銀盾は彼女のバーチャルライバーとしての誇り。
その誇りは、7.62ミリの弾丸程度で貫くことは不可能。
叶がワンマガジン撃ち切り、リロードを挟んだ瞬間。
御伽原は盾から飛び出した。日々の家事で鍛えられた彼女の足腰は、ほかのライバーとは違い、圧倒的スピードを生み出す。
御伽原は、叶まで一気に距離を詰め、彼の腹に向かって拳を突き出す。
「はやっ。」
叶の腹に拳が入る。叶は殴られながらも、AKー47のストック部分で御伽原の頭を殴りつける。
叶は口から血を吐き、御伽原は頭から流血している。
この一瞬の攻防に、観客たちは沸き更なる流血を求める。
「殴ったな?我にじさんじぞ?!」
御伽原が拳をもう一度叩き込む姿勢を作った時、叶はリロードを済まし、再び発砲する。
「銀たっ…!!」
そう御伽原が言いかけた瞬間、御伽原の右足の太腿を44マグナム弾が貫く。
「ぅえええぇぇ」
御伽原から汚い悲鳴が上がる。
叶は右手でAKを発砲し、左手で44マグナムを撃っていた。常人ならば制御する事のできない反動、だかしかし叶もまたにじさんじである。
厳しいバーチャルライバーの世界で生き抜いてきた一人である。
叶は尚も笑顔を崩さない。御伽原の拳は確実に叶を捉えていたが、それでも余裕のある表情を見せる。
再び7.62ミリの弾丸が御伽原を捉えるが、咄嗟に彼女も口を開く。
「銀盾だ!」
間一髪、頭への弾丸は防いだ。だが誰から見ても叶の有利は一目瞭然。
御伽原は太腿に弾丸を受け、自慢のスピードを潰されている。
また、御伽原も俯いたままだった。誰もが勝負は決したと思った。
「ごめんね、痛そうだ。直ぐに楽にしてあげるから。」
そう言って、44マグナムを持って叶は距離を詰める。ゆっくりと着実に一歩一歩。御伽原が銀盾を出したとしても間に合わない距離まで。
その時、御伽原が顔を上げた。さっきまでの可愛げのある表情は既になく、残ったのは闘争本能を剥き出しにした少女の顔だった。
「ゴミカスゥ!◯ねぇ!」
彼女は先ほどの御伽原江良ではない、可愛らしさのステータスを捨て、戦闘と切り抜きの際にネタにされる事だけにステータスを全振りした、全く別の存在。ギバラである。
荒々しい声でそう叫んだ彼女に対し、叶は先ほどと変わらぬ表情で発砲する。
閃光と共に飛び出した44マグナム弾に対して、ギバラは先程と同じように拳を突き出す。ギバラの拳の先は確実に叶を指してはいたが、叶との間には弾丸がある。がギバラは腕に弾丸が当たったにも関わらず拳を止めることはない。
「ゴミカスゥゥ!!!!!!」
人間の腕には骨が2本備わっており、手の甲を貫通した弾丸がもし、骨に当たった場合、勢いは大幅に殺される。
そして、拳は叶を捉え、5m後ろに吹き飛ばした。
「うぅ、イタタ。足に弾丸を喰らってるのに凄いな。」
ギバラはよろよろと立ち上がり、銀盾を張りながら、叶へと向かう。
「私はなぁ、ライバーになって救われた…毎日泣いてたわたしにも夢が出来た…私はまだ、止まるわけにはいかないんだよ…」
全身から血を流し、満身創痍の少女から発せられたその言葉の重みは彼女のリスナーなら誰しもが分かる。
コロシアムはより一層沸き、ギバラコールが強まる。
「ギバラ!ギバラ!ギバラ!」
叶は立ち上がり、AKを再度構える。その顔から笑顔が消えることはない。
「そっか。でも無理はしないでね。可愛い顔が台無しだよ。」
再び発砲するが、ギバラは銀盾を構え進み続ける。
弾丸に貫かれた右足を引きずりながら、確実に。
「アアアアァァァァァ。祝え!おま江良!」
ギバラが汚い声を上げる。
叶に拳が届く距離にたどり着く前に、ギバラは力尽きた。
弾丸で受けたダメージに加え、出血多量である。
叶は二発の打撃を受けたが、両方が腹。骨を捉えていなかった所もあって、特に大きなダメージを受けていない。
「あらら、弾使いすぎたな。チーの姉御に怒られそう。」
微笑みながら、叶は元来た闇の中は戻っていった。
「勝者!叶!」
至らぬ所もあると思いますが、よろしくお願い致します