ダーウィンズゲームめっちゃ面白いですね。(関係ない
これ完走まで何年かかるかな笑笑
哀しき戦いの一幕が降り、また幕が上がる。
雨が降り頻る中、MCが告げる。
「続いてのAブロック第十一試合
対戦カードの紹介です。先ずはこの男。
パワーで押して!、押して!、押し捲る!。
Aブロック第四試合では、強敵、桜凛月を破り、勝ち上がってきた!
にじさんじゲーマーズ出身、葛葉!」
登場したのは、黒装束を身に纏い、燃え盛る様な闘志を目に宿したヴァンパイア。
「あ〜、まじで雨降っててよかったわぁ。太陽出てたらキッツイからな。」
強者故の余裕か、呑気な事を口走っている。
そんな葛葉を無視し、MCは紹介を続ける。
「そんな強敵と当たるのはこの男。
剣の道を行き、剣に自らの想いを乗せる男。
自らの運命すらも切り開くその刃は葛葉の首を捕らえられるのか?!
にじさんじ二期出身、剣持力也!」
告げられた瞬間にざわざわとする観客。
笑い転げる葛葉。
そして…
「違う!力也じゃない!刀也なんだよ!」
怒りを露わにしながら現れた剣持。
「し…失礼しました…
にじさんじ二期出身、剣持刀也!」
「剣持さん…くくっ…名前間違えられてますけどいいんっすか?w
プライド的な意味で…クククッ」
尚も笑いを抑えることができない葛葉。
余程ツボだったのだろう。
笑い声に吹き飛ばされそうな声でMCが割り込む。
「で、では!改めて、Aブロック第十一試合を開始します!」
その合図と共に、生じる砂埃と衝撃。
その中心には、拳と木刀を交えた葛葉と剣持。
ギリッ…ギリッ…
「いやぁ、もちさん。木刀とか舐めプっすか?」
木刀を見つめ、更に拳に力を込める。
「いや、俺まだ高校生だし、真剣とか使えないよッ!」
言葉を発すると共に葛葉を払う剣持。
離れた2人
だが…
(もちさん、そこまだ俺の間合いなんで…殺しちゃうよ〜ん。)
葛葉が全身に力を込め、再度攻撃を仕掛けようとしたその時だった。
唐突な衝撃と共に、葛葉は膝から崩れ落ちる。
「は…?」
葛葉が振り向いた視線の先には、先程まで自分の真正面にいた筈の漢。
剣持刀也がいた。
「あれ…?剣持さん、早くないっすか?なに?今の!」
困惑と好奇心が混ざった様な声色で葛葉が尋ねる。
「縮地だよ。部活繋がりで試した事あるんだ。」
喋りながら尚、剣先を下げ、再度葛葉へと向ける。
(剣持さんの攻撃で膝割れてるんだけど…再生まだあと1秒ってとこかなぁ。)
裂けた肉は元通りに、流れた血は即座に蒸発し、割れた膝の皿は肉体内に骨の破片一つ残す事なく再生した。
これが、吸血鬼特有の超回復。
怪物たる所以である。
超回復が終わったと同タイミングで再び剣持が縮地で距離を詰める。
(思った以上に再生速度が速いな、なら今度は確実に頭を…!)
全身に力を込め、木刀の刃は葛葉の頭を捉えた。
(貰った!)
剣持は勝ちを確信した。
自分の縮地に葛葉は反応できず、驚異的再生能力を持ってしても頭を割られれば再生は難しいだろうと。
だが、彼は知らなかった…
葛葉という男の魂を…
彼の培ってきた戦闘センスを侮った。
木刀の先にあるのは葛葉の割れた頭…
ではなく葛葉の右腕だった。
「なにっ?!」
心底驚く剣持だが、その渾身の一撃は受け止めた葛葉の右腕は、骨をバキバキに折られ、皮膚は裂け、骨、肉が露出していた。
「剣持さん…その動きは…さっき見た。」
痛みに顔を歪めながらも、その眼には闘志が燃え、右腕は木刀を離さず、見る見るうちに再生してゆく。
その力は、剣道部として鍛練を重ねてきた剣持ですら歯が立たず、木刀が葛葉の手を離れる事はない。
葛葉が放つ目にも留まらぬアッパーカットは剣持の顎を捉え、吹き飛ばした。
宙を舞い、堕ちる剣持。
立ち上る土埃が晴れた先には、自身が持っていた木刀を掴む青年が一人。
「剣持さん、ほれっ。」
葛葉は、さも当然の様に敵である剣持に対して木刀を放り投げた。
「いいのかな?葛葉…敵に塩送る様なことして。」
片手でキャッチした木刀を構え直し、対峙した状態で語りかける。
「何言ってんすか、剣持さん。
ここからが、本番でしょ。
つまりぃ、ここからが…
第二ラウンドって事で。」
その言葉と共に剣持に襲いかかる神速の右ストレート。
(はやいっ!?)
なんとか木刀で受け止める剣持だが、猛攻は止まらない。
360度、あらゆる方向から放たれる人間を超越したスピードの攻撃。
降り頻る雨の一滴すらも逃さない様な密度の攻撃。
一発…
また一発と攻撃を受け、よろめき、体制が崩れる剣持。
「感謝感激狂気乱舞ゥ!!」
葛葉は超スピードのラッシュを続けながら雄叫びを上げる。
剣持は見えてないにも関わらず、木刀でなぎ払う。
だが、苦し紛れの一刀が当たるはずもなく。
葛葉が飛び退き、ラッシュが止んだ事で剣持は耐性を立て直すが、服はボロボロ、顔や腕、至る所からの流血、木刀にはヒビが入っていた…
「剣持さぁん、らしくないじゃないですか。
苦し紛れの一手なんて。」
少し失望した様に、残念そうに葛葉が言う。
辛うじて意識を保っている、立てている様な状態で剣持は再度構える。
「僕は…僕ですよ…なぜ…ならば、僕以上に…人生を謳歌している人間など居ないからだ…これまでも…そしてこれからも!だから僕は…
絶対に負けない!」
消えかけていた闘志が再度燃え上がる、その意思の強さは観客にまで伝わるほど。降り頻る雨すら、蒸発させそうなほど。
「そして…葛葉。お前…まだ本気出してないだろ…
本気でこいよ!」
その真っ直ぐな眼は、刃は、葛葉の闘争心を更にヒートアップさせる。
満面の笑みで、まるでこれから親友と遊ぶ子供の様に笑顔で口を開く。
「剣持さん…
…
…いいんすっかぁ?!俺が剣持さん殺しちゃって!」
「…来い!」
三度、葛葉と剣持。
拳と刃がぶつかり合う。
拳は先程までよりも更に重く、早く、鋭い。
(縮地で移動しても、尚早い。
木刀で受け切れないな…
でも…おもしれぇ)
剣持が笑った…
それに対し、葛葉も笑った。
命を掛けた戦いにも関わらず、それさえも、二人にとっては…
((楽しい!ワクワクする!))
攻撃を受ける度に木刀のヒビが広がってゆく。
それでも尚、引かない。
前へ…
前へ…
勝利する為に、前へ。
拳がぶつかる度に高揚を感じた。
今までモニター越しにしか体験出来なかった殺し合いを、自分が一番強いと思える人間とやりあえる。
そんな事に今、葛葉最高の喜びを感じた。
(やっぱりあんた最高だ。剣持さん!)
お互いの渾身の一撃を木刀と拳で受け合った二人は、反動で後ろに下がる。
剣持も、同様に高揚を感じると共に、計算する。
(この一撃で…)
(次の一撃で…)
両雄が三度対峙する。
((決める!))
剣持は居合の構え、葛葉は拳を構える。
お互いを認め合うからこそ、真剣勝負。
負けられない。
「行くぞ!葛葉ァ!」
二人が同時に飛び出す。
繰り出すは必殺の一撃。
…
……
………
「グハァ…」
葛葉が吐血する。
その左脇腹はえぐれ、多量の出血。
露出した肋骨から血が血が滴り、臓物が露出する。
「剣…持…さん…」
振り向いた葛葉の視線の先にいる男。
ぼろっ…ボロッ…
崩れ落ちる木刀の剣先…
地に伏せる剣持。
その背中には中心に大きな風穴ができていた。
その眼には、燃え盛る様な闘志も、夢も、希望も映らない。
ただ、虚な目。
そんな剣持の目にただ映るのは…走馬灯だった…
(これは、僕が…初めてこの世界に来たときの…Vtuberになった時の…)
目の前に広がるのは一本。
たった一本のみの道。
その先にいるのは、雑草を咥え、ただひたすらに前へ進む変な人の姿。
(あぁ…結局…あの人の隣に並ぶどころか、追いつくことさえ出来なかったな…)
降り頻る雨の冷たさを感じながら…
薄れる意識の中で、思い出したのは…それだけだった。
傷が再生し、雨の中、地に伏せる剣持を見て、ポツリと呟く。
「剣持さん…あんたやっぱり…最強の人間だったよ…
サヨナラ…」
自らと対峙し、共に高揚し、凌ぎを削って来た青年の体が硬く、冷たくなってゆくのを見て、葛葉は去ってゆく。
ずぶ濡れの髪をかき揚げ、次の対戦相手を見上げながら…
「英雄…な…」
剣持だった肉塊だけが横たわるコロシアムでMCが告げる。
「Aブロック第十一試合、勝者!葛葉!」
一人の青年の、儚き夢も、希望の未来も、この雨に流されて、散った。