にじさんじ妄想トーナメント   作:薬師神 ひなた

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遅くなって申し訳ありません。今回の話のバトルを考えるのしんどかった…キャラ崩壊が激しいかもしれません。
私の力不足です、申し訳ない。
感想、アドバイスなど頂けると励みになります。
では、お楽しみください。



Aブロック第四試合「吸血鬼VS桜の姫君」

試合開始前

葛葉テンションは最底辺であった。

時は昨晩、にじさんじ妄想トーナメント前日に遡る。

葛葉と剣持刀也は葛葉の自室に集まり、雑談に花を咲かせていた。

楽しい時間も終わりを告げ、剣持が部屋から出ようとした時だった。

「葛葉君…」

剣持の雰囲気は先程とは変わらないが、瞳の奥にはどこか真剣さが垣間見える。

「何?剣持さん。」

葛葉はいつもと変わらずヘラヘラとした態度で返答する。

「決勝で会おう、それまで負けんなよ。」

剣持にとっては、葛葉は戦いたい相手であると同時に死んで欲しくない仲間である。もちろんにじさんじメンバー全員がそうであるが葛葉には他のメンバーに対するより強い思いがあった。

「ダイジョーブっすよ、剣持さん。だって俺吸血鬼だし、ステータスAVっすから。」

ニカッと笑った葛葉の顔を見て、剣持は去っていった。

……

………当日

     MCが組み合わせを告げる。

 「第4試合!対戦カードは!

  引篭吸血鬼 葛葉! VS桜の妖精 樹齢19歳 桜凛月!」

葛葉その事に対しては全く驚かない、むしろ強者との戦いは望み通りである。しかし、問題は自分の次の相手…そう剣持である。

決勝で会おうと約束した剣持だった。

出落ち!圧倒的出落ち!だが!それでいい!

最底辺のテンションを持ち直し、コロシアムの中心へと向かう。

葛葉にとって太陽は天敵、よって夜に試合は行われる。

コロシアムの中心で葛葉と対峙するのは紫色の髪の色をした女の子。

桜の妖精なのになぜ紫色なのか…

桜凛月はのんきなテンションで葛葉に語りかける。

「葛葉さん、前お勧めされたローヤルゼリー良かったっちゃね〜。

喉に凄い聞いてる感じがする んぼ。」

明らかに殺し合いを始める前の会話ではない…

コロシアムの観客、MC、対戦相手である葛葉でさえも、黙り込んでいた。

「あ、あぁ、良かった。今から戦うんだけどわかってる?」

「今日天気いいよね〜。」

「話聞いてた?」

いつまでも少しおとぼけた様子の凛月に空気が崩れる。

「いや〜、りつきん戦いとかやる気ないからさ〜」

のほほんと、凛月は答える。

「そっか…」

その言葉を発した次の瞬間葛葉の口角が釣り上がる。

「まぁ、やる気があろうとなかろうと俺は戦うけどね!手加減なしで。」

その一言を発した直後、葛葉は地面を蹴り即座に距離を詰める。

引きこもっていたとはいえ吸血鬼、常軌を逸したその圧倒的パワーを拳に込め、凛月の腹に叩き込んだ。

…はずだった…

葛葉の拳の先にはあるのはか細い少女の体などではなく、太く硬い木の根だった。

地中から伸び、葛葉の拳を止めるように伸びている。

次の瞬間、横から別の木の根が葛葉を襲う。

「なにっ?!」

葛葉は、木の根の殴打をとっさに腕をクロスさせる事で防いだ。

「りつきはやる気ないけど、葛葉さんがやりたいって言うなら仕方ないよね。」

葛葉より高い位置からの声。

葛葉が見上げる先には先程までは存在しなかったはずの桜の木、そしてその上には自分と対峙していた桜月がいた。

凛月は葛葉の動きに反応し、桜の妖精ならではの桜の木を生やすと言う行為で自分は退避しつつ、なおも根の攻撃でKOを狙っていたのだ。

殺風景だったコロシアムは一瞬にして美しき舞台へと変貌した。

「おもしれぇじゃん。」

葛葉の紅の眼の中に炎が灯る。

次の瞬間、葛葉に対して桜の木が猛威をふるう。

360度いたる方向からも桜の枝が葛葉に襲いかかる。

枝は葛葉がいた場所に向かって行き、その位置で大きな土埃を上げた。

桜の枝は葛葉の体を突き刺し、命の灯火を吹き消す…はずだった。

枝は葛葉が先程居た場所に交差する様な形で存在する、だが交差する枝の中心に葛葉は居ない。葛葉が居たのは枝の交差した部分の上だった。

葛葉は枝が自分に触れようとする瞬間、上に跳ね枝の攻撃を回避していたのだ。

「あぶな、下手したら終わってたわ。」

その言葉は葛葉の本心から出た言葉であり、称賛の言葉であった。

一本でも枝に触れられていたら即座に位置を補足され、やられていた。

「ダメだったか〜、残念っちゃね〜。」

凛月は心から残念そうに声をあげる。

「反撃開始だ。」

葛葉はその一言とともに再び枝を足場にして跳躍する。

目標は勿論、木の幹の一番上に立っている凛月。

ヴァンパイアとしての身体能力を遺憾なく発揮した跳躍。

そして、力を込めた拳を振り上げる。

その拳は確実に凛月を捕らえた。

がしかし。

「甘いよ、葛葉さん!」

凛月の前で太く硬い木の根が4本防御に入る。

その一本一本が凛月の急所を守っている。

攻撃用の枝は細く、スピードがある上に枝分かれしている事為破壊力が根と比較しても高い。対して根自体は太く、硬い。葛葉の攻撃一発では自らが使役する桜の木の枝を粉砕する事はできない、根で行った初撃で凛月はそれを確認している。

だから、自らの体に対峙している吸血鬼の拳は届かない…はずだった。

凛月は目撃した。自らの腹を守っていた根が突っ込んできた葛葉のパンチによって粉砕される瞬間を…

「グハッァ…」

凛月は幸い、桜の幹によって落下を防いだ。が、木の根で防いだはずの葛葉の拳は自らの腹に届き、その上ぶつかった衝撃で肋骨を数本折られてしまった。少女が普通に生きていれば感じることはない痛みと自らの防御が破られた事による動揺で凛月は頭が真っ白になる。

「りつきんTV、なんで私の防御が破られたのか…って顔してんね。

まぁ、俺がそっちの立場ならわかりみ深し53歳なんだけど。

説明してあげるよ。」

拳を血塗れにした葛葉が言う。

「確かに一発じゃ凛月の根の防御は破れないよ。でもさ、二発なら破れる。」

紅いルビーのような瞳で凛月をじっと見つめる。

「二発も打ち込めるタイミングはなかったはず…」

凛月の言う通り、防御が完成したタイミングで葛葉には同じ箇所に全力で二発拳を叩き込むほどの余裕はなかった。

少しでも時間をかけてしまうと、どの方向からでも攻撃を仕掛けられる凛月に攻防の流れを再度掌握されてしまうからだ。

「あったよ、俺が根に対して一発目を入れるタイミングが。」

葛葉は拳を突き出す。根を力一杯殴り血塗れになっていた拳の傷がミルミル塞がってゆく。

「そうか…一番最初に私が根を使って防御した時…」

凛月の脳裏に初撃を入れたシーンが浮かぶ。

葛葉の最初の攻撃を受け止めた根、それは先程自らの腹を守る為に使ったものと同じ根だった。

「俺、ゲーマーズなんでね。同じ箇所に二発当てるくらい訳ないってわけよ。」

葛葉は得意そうな笑顔を浮かべるが、一切の油断はない。

よろよろと立ち上がる凛月…肋骨は折れ、頭からは血を流し、今まで味わった事のない痛みが身体中を襲う…

「…ッ!まだ…負けてないから…」

凛月は体に鞭を打ち、肉弾戦の構えをとる。

「いいね…滾る…」

葛葉が地面を蹴る。凛月は動きを目で追う事なら可能だった。

がしかし桜の妖精と言えど体の反応速度には限界がある。

人間の最速レスポンスは0.3秒と言われている。

0.3秒…一瞬のようだが葛葉を始めとして他のスピードに自信のあるライバー達にとっては十分な時間である。

凛月は葛葉のスピードにはついていけない。

葛葉の拳は凛月の防御を崩すように一発一発違う角度、違う位置から放たれていた。

凛月に出来ることはただひたすらに防御姿勢をとる事だけ…逆転の一手まで。

(あと…5秒…)

猛攻によって意識が飛びそうになる中で凛月は何かを待っていた。

だが葛葉の猛攻が止まることはない。

「どうした、りつきんTV。防御してるだけじゃ勝てないけど!」

(あと3秒…)

左側からの攻撃によって凛月の体勢が崩され、よろめく。

「…ッ!オラァッ!」

そこから最速での蹴り。

凛月は吹き飛ばされ宙を舞い、地に這う。

「さぁ、フィニッシュだ。」

葛葉が跳躍しとどめを刺そうとした瞬間、葛葉は違和感を覚えた。

風…先程までは吹いていなかった、闇が深くなるにつれ天候が不安定になる。

「0秒!」

凛月は顔を上げた。その表情は勝利に飢えた顔。

目を剥き、闘争心を剥き出しにしたライバーとして見せなかった顔である。

その表情に流石の葛葉も一瞬だがたじろいだ。

次の瞬間…

桜の花弁が風に乗り、花吹雪となって、凛月を隠し、葛葉の視界を消した。

月夜に舞う鮮やかな桃色の花弁は月明かりに照らされ幻想的な風景を生み出す。

「クソッ…」

葛葉は毒づいた。本来、葛葉が踏み込んで拳を放てば風が吹くまでに決着はついていた。

だが、ゲーマー故に今まで接近戦を嫌い根や枝を使った遠距離戦に固執してきた凛月が格闘戦の構えをとった事に対して深読みせざるえなかった。

枝を使った奇襲などを警戒する上で踏み込むわけには行かず、とどめを刺さなかったのだ。

そんな後悔をしていた中だった。

桜吹雪の中を[ヒュ!]と言う音が通り過ぎるのを聞いたのは。

葛葉はその音に即座に反応する。

顔を音のした方向に向けた瞬間葛葉が目視したのは。

そう、凛月が操る桜の木の枝だった。

「それが狙いかよ。」

だが気づいても回避できる距離ではなく、枝は葛葉の右肩を貫通した。

花吹雪の外で凛月はほくそ笑んだ。

「いくら葛葉さんがゲーマーズで戦闘センスがあると言っても、行動範囲を花吹雪で制限された上で私の枝による攻撃を回避することなんてできない。」

事実、葛葉は音自体には反応できても攻撃を避けること自体は不可能であった。

右肩を最初に貫いた後、5本の枝が追撃を行なっており、そのうち3本が左腿、右足脹脛と次々に攻撃を仕掛けた。

「グッッッ…!で…も…こっちも考えはある…」

想像を絶する痛みを味わいながらも葛葉の眼から灯火が消えることはない。

次の瞬間、まだ動かせる左腕で右肩に刺さっている枝を折った。

[バキッ]という音と共に枝が折れる。

もちろんこれは枝を制御する凛月にも伝わっている。

次々と刺さっていた枝を折り、それらを体から葛葉は引き抜いていった。

「ウソでしょ?!枝が肉体に刺さってる以上、引き抜く時は枝分かれしてる部分が肉に引っかかって傷口が広がるのに。」

この行動は明らかに常軌を逸しており、凛月も予測していなかった。

(でも、枝を折る音のお陰で葛葉さんが今どこにいるか正確に分かった。次で仕留める…」

そう、凛月からも葛葉のことは見えておらず。花吹雪が始まる直前にいた位置から推察して攻撃を当てていた。つまり、狭い範囲にいる葛葉が発する音をキャッチした今、凛月はもう攻撃を外さない。

「さぁ、フィニッ」

そう言おうとした次のことだった。

桜吹雪の中から無数の何かが飛んできた。

凛月は即座に桜の根でガードする。

「なにこれ…」

パラパラと地面に落ちたのは桜の枝の破片。

それは凛月が葛葉を攻撃したものだった。

2秒後、葛葉は桜吹雪の中から凛月のいる同じ方向に破片の弾幕を張った。

「なんでバレてる?!」

根でガードしながら凛月は頭をフル回転させた。

[パシパシパシパシ]

この音は破片を根で防御した時の音…

「そうか…」

葛葉はこの音で凛月の位置を把握していたのだ。

……

……… 2人の考えが交差する。

(吸血鬼とは言え、再生にはある程度時間がかかる。だったら根も攻撃に回して確実に仕留める。でも根を攻撃に回しても葛葉さんを仕留め切れるの…?)

(傷が治るまであと3秒、位置は把握してる…あとはりつきんTVにどう届かせるか…捨身で行くしかないかぁ…)

 

 

風が少し止み、桜吹雪が薄まった瞬間であった。

葛葉の姿を目視した凛月はより正確な位置を把握した。

葛葉の周り360度、まるで鳥籠のように枝と根の攻撃が張り巡らされる。

葛葉は凛月の方向から来た枝を膝で折り、窮地を脱出。地面を蹴って凛月を仕留めにかかる。

「これで終わりダァ!桜凛月ィィ!」

その叫びはコロシアム内をこだまし、震わせる。

凛月の背後から現れる2本の枝。

(残して正解だった…2本!)

「私は生き残るッッ!!まだ死ねない!」

そう言った凛月は自らに向かってくる男に枝を放つ。

(葛葉さんとの距離は3m…あの人なら避けられるだろうけど、その場合でも私はさっき使った枝と根を戻して勝ち!)

凛月の勝ち筋は至ってシンプルだった。

葛葉は正面から迫る2本の枝を回避できる距離にいる。

吸血鬼とはいえ、心臓に刺されば生き絶える。

今放った枝が当たるならダメージ的に負けはない、鳩尾に刺さる位置に配置しているのだから当然だと。

回避されても、枝と根がリカバリーして結局凛月に負けはない…

葛葉は迫りくる枝に対して一切の回避行動を取らずそのまま向かってくる。

[グチュッッ…バキバキバキバキ…]

肉が裂け、骨が折れる音が凛月の耳に確かに届く。

「グウッッ…カハッっ…!」

目を見開き口からは血を吹き出す葛葉の姿が視界に映る。

自らが放った枝は目の前の男の右胸と左脇腹を貫いた。

彼女は自身の勝ちを疑わなかった。

自らは勝利者であると…

 

 

…コロシアムの観客席で誰かが言った…

…回避行動を取らなかったのは失敗だ…と。

……ミステイクだ。と。

………焼きがまわったのだ。と。

彼の勝ちを観客席で信じる者などいなかった…

誰も気づかなかった…彼の魂はまだ…消えてないと言うことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

…次の瞬間。

葛葉は腕を振り上げた。

「うぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁあ!!!」

響き渡る雄叫びと共に…

振り下ろした勢いを利用し、両手の肘で枝をへし折ったのだ。

「なにっっ!?!」

動揺した凛月はその場から動くことはできない。

根や枝を操作してももう遅い。

枝を体に刺したままの葛葉はそこから最速の動きで蹴りを繰り出す。

「ヒッッ!」

凛月の美しい顔が恐怖で歪む。

その蹴りは桜の姫君の体を宙に舞わせ、肺を破裂させた。

[パンっ!」

破裂音が体の中に響き渡り、遠のいていく意識。

薄れていく視界に映る葛葉…

「りつきんTV…いや、桜凛月。あんたと俺じゃ…覚悟がチゲェよ…」

体に刺さる枝を引き抜き、血液を垂らしながら呟く。

葛葉は最後までリスクを負ってでも勝つことを優先した。

最後の選択、回避して振り出しに戻すことより、自分が負ける可能性がある事を理解しながら怯む事なく勝つための最善手を取ったのだ。

凛月に足りなかったのは、桜の木と共に闘うのではなく、桜の木に戦わせた事、リスクを負うのを嫌い、勝てる場面を逃した事だった。

命を賭ける覚悟が…姫君には足りなかった…

(ごめんね、桜の木も痛かったよね…ごめんね…私…負けちゃった…)

「でも…ナイスファイト…あんたの分まで俺が…頑張るから…」

激闘が終わった事を知らせる終了のゴングが響く。

「Aブロック第4試合!勝者!葛葉!」

コロシアムに残ったのは冷たくなっていく少女の体と、佇む桜の木だった…

その様子はどこか儚げで、なお美しかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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