WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結) 作:紅茶
ターレルは良いぞ
「さて、久し振りですね。といっても3日前位ですが。」
1903年からおよそ20年経ち、16歳だった未だ少女の雰囲気を醸し出していたエリザベートも36歳。既に3人の娘を産んでいる。そして3年前、ビスマルク皇帝が病死し、皇帝の座を引き継いだのだった。
現在、この皇帝は元帥(名誉職)の立場と皇帝の立場を利用し帝国3軍統合参謀本部の議長をしていた。
もちろんその場には諜報局の副官と自称偽装結婚したが2人の娘を産んでいる時点で周りからは普通に結婚していると思われている、我らが帝国諜報局局長カタリナ・フォン・クロイツフェルン陸軍准将も出席していた。
「では始めよう。」
議長たる皇帝の言葉で話が始まる。
「ではまずは諜報局から。
現在、ルーシー連邦で引き続き工作を行っております。実が結ぶのは戦争が始まる頃にはなるでしょう。ですが連邦はこの戦争に参加出来なくさせるメドがつきました。
そして、現在秘密裏に行っている赤狩りと敵国スパイ狩りですが、敵国スパイはすぐ見つかり処理出来るのですが、赤は尻尾を掴めない状況です。引き続き情報収集に当たります。
フランソワ共和国の動向ですが・・・少し興味深い動向が見られました。航空魔導師1個連隊を国境線にはりつけた様です。
また・・・フランソワ共和国軍の中で連合王国と通じている将軍が居るとの情報も入りました。」
「なる程、分かった。さて、この会議に参加している全員に聴いておこう・・・
戦争での勝利はなんだと思う?」
「戦争での勝利ですか・・・」
ゼートゥーアの声が響く。
「勝利と言う単純なものでは無さそうですが・・・」
「諜報局からの情報を鑑みるに、恐らく連合王国は我が帝国がフランソワ共和国との戦争で共倒れする事を狙っている。
そこでだ。我が帝国ではフランソワ共和国程度に共倒れする事は無いにしてもあのこの世界の揉め事の7割が連合王国が原因な国だ。
奴らがそう簡単にあきらめると思うか?君なら分かるだろう、レルゲン少佐。」
「は・・・」
「よし、レルゲン少佐は連合王国の駐在武官だったからな。あの自称紳士どもの3枚舌には手を焼く・・・さて、奴らがフランソワで我らを倒せなかったら協商連合、ダキア公国、ルーシー連邦、そして・・・いや今この国の名を出すのは不味いな。
そして恐らくは合州国でさえこの欧州の地に引っ張ってくる可能性がある。
そうしたらこの帝国でさえ危ないものとなる・・・好きなように料理されるだけだ。」
「そのような・・・そのような事があると「あると私が思っているからこの場で言っているのだよルーデルドルフ准将。」・・・え?」
「ただし、諜報局のお陰で合州国は恐らく途中で手を引くだろうし、連邦と直接戦う事は無くなりそうだ。」
「さて諸君。我等は最悪を常に想定して動かなくてはならない。もし帝国の痛みが最小限に済んで戦争が終わったとしても、それは戦争と戦争の間の短い平和という物にすぎない。諸君ら参謀には、良く考えて貰わねばなるまい。
そうだ、諸君」
「何でしょうか陛下。」
ルーデルドルフがエリザベートに聞く。
「そんな事より前線行って良いか?」
「ダメです!!」
すぐにカタリナがNGを出す。いや当たり前でしょうが・・・
「何で行っちゃいけないんだ!おかしいだろ!」
「陛下、ご自身の事を考えて下さい!」
そして唐突に始まる姉妹喧嘩に一同困惑するしかなかった。
「やだ、私前線行って敵兵皆殺しにするもん!!」
「するもんじゃないですよお姉さま!レナ中佐とカリン准将呼びますよ!」
「申し訳ありません・・・あの二人は勘弁して下さい・・・」
「宜しい。」
レナ中佐とカリン准将の名を出され一気に静まるエリザベート(女帝)。
「だってあの二人説教ネチっこいし、レナ中佐は日頃の怨み晴らそうと清々しい顔で怒ってくるんだもん」
とはエリザベート談。