WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結)   作:紅茶

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待たせたなぁ!(某MGS並み感)


開戦

"ターニャ・デグレチャフ一号生は特別選抜候補生として北方管区研修とする"

 

 それは士官学校で優秀な成績を残した・・・いや、残してしまったターニャへの処遇であった。

 

 士官学校でとある男の2号生を銃殺刑に処そうとしたことは有ったが、それを抜きにしてもターニャは優秀な人材で有った事は確かである。

 

 簡単に言うと・・・緊張状態にある(開戦したときは)最前線に(なる場所に)放り込まれた訳である。

 

 あまつさえ、よりにもよってこのタイミングで戦端が開かれるなど、誰が予想できようか?

 

少なくとも、この時点では・・・平成のサラリーマン感覚が色濃く残っていたデグレチャフ候補生には無理だった。

 

 それこそ前世が職業軍人では無いがPMCで紛争の最前線で戦い、予測不可能な核戦争に巻き込まれた転生者で情報を握っている転生者が居ないと予想出来なかったであろう。

 

 

――――――

 

1923年2月某日 北方ノルデン マルメ港

 

 私を含めて准尉候補生の全員が6ヶ月の北方管区研修でスカンジナビア半島の南端、スコーネまで行くこととなった。

 

 さて・・・ここで帝国領土を確認するとしようか。

 

 オーストリア=ハンガリー二重帝国から異民族以外の場所をきれいさっぱり併合。ネーデルランドと、分割したポーランドと大ドイツを足したような状態にある。

 

 

 更にユトランド半島とスカンジナビア半島の間にある島々に加えスコーネ地域をも足したちょび髭伍長もビックリするであろう領土の広さである。

 

 本土からは船と鉄道で移動するか、航空機でひとっ飛びするかのどちらかである。

 

 私は鉄道で移動し、連絡船でフェーマルン海峡を渡り、その後また連絡船でエーレスンド海峡を渡る。

 因みにストーストレム海峡には連絡船が存在したが今は補給の為の鉄道橋が建設されており、手間や時間のロスが減ったのは明らかな事実である。

 

 そしていま私は北方方面軍のスコーネ駐屯地に向かっている所である。

 

 2月であってもさすがは元の世界では雪深い事で有名(偏見)なスウェーデン、未だに雪が残っている。

 

 どうせまだ着かないので針葉樹林が後方に流れていくのを車窓で見ながら時間を潰す事にした。

 

 しばらく車窓を見ていると飛行場らしき物が遠めで見えた。航空魔導師は目が良く無いとやってられないので視力は高ければ高いほど良い。ダストでぼんやりとしか見えないが巨大な飛行場である。

 

 事前に調べたのだが、あれはスコーネ空軍基地という物で、最大で戦略輸送機A400M*1(帝国正式名称EKC-2)擬きが発着出来るらしい。ここで重要性が高い物や緊急製の高い物質は輸送機で空輸される。

 

 勿論此処は制空権を取る上でも重要な基地である。何故なら此処に2個航空戦闘団が配属されているからである。はたまた防空能力は有るのだろうかと考えたが空軍の強さが頭吹っ飛んでいる帝国の事だ。相当な防空網が構築されているのだろう(実際にされてます。)

 

 さて、空軍基地が見えなくなってきた。さて、改めて車内を見ると全員そろそろ着きそうな雰囲気であったので降りる準備をする。

 

 

――――――――――――

 北方方面軍スコーネ駐屯地仮設乗降車場

 

 さて、目的地に到着した。私は着いたらすぐに北方司令部に出頭せよと命令を受けているので、踏み固められ固くなった雪に気をつけながら歩く。吐いた息は未だに白く濁り、ただ歩く。やはりなかなか育たず小さいままなこの使いにくい身体を煩わしく思いながらも北方司令部に出頭した。

 

 

 出頭し、本部の廊下を歩いている途中で声がかかる。

「君がターニャ・デグレチャフ候補生だね?」

師団本部に移動している途中に現れた男は少佐の階級章を着けていた。

 

「はっ、小官がターニャ・デグレチャフであります」

 

反射的に敬礼をする。慣れたものだ。

 

「君宛てに武器課から荷物が来ている。付いてきたまえ。」

 

 

 

 

 物資集積所で渡されたのは小銃だった。

 

 これは・・・私らが使っていたG3より短く折り畳み銃床になっている。G3のバレルを切り詰め、折り畳み銃床化した物か。カービンだろうか?

 とすると・・・G3KA4辺りか?

 

 

 

 

「知っての通り、現在我が国では魔道師戦力の拡充のために『拡大志願』を実施している」

 

 要するに魔導師としての素質を持つ人間の兵役のことだ。名目上志願になってるがあれでは徴兵と大して変わらん。

 

 

「今まで女性魔導師は後方任務に回される場合が多く、特段問題は起きなかったが、今回は『志願』が多く男性同様の前線配置を予定している」

 

「しかしながら、女性の体格はどうしても男性に劣ってしまい小銃の取り回しに問題があるという話が陸軍武器課で上がった。偶然にもこのG3を設計した空軍設計局がG3派生型を作成していた。それはG3を短銃身化し、銃床を折り畳み出来るようにした物でる。」

 

「これはG3と同じ様に扱っても?」

 

「見て分かると思うが、G3の銃身を切り詰め、折り畳み銃床にして調整したもので、名をG3KA4カービンという。これは通常のG3を改造しても出来るらしく、空軍は改造キットを必要な部隊に送っているそうだ。」

 

「現在女性魔導師は少数であるため、正式採用は検討中であるが今回は特別に空軍設計局より増加試作型を融通して貰った。その内の一丁だ。」

 

 確かに扱いやすい物に仕上がっている。というか前世のM4A1とほぼ変わらない全長であった。M4A1と変わるのは重さ位だろうか?

 

「そして、これが君の拳銃になる。魔導兵は特殊な兵科であるために魔導兵全員に支給される。因みにこの拳銃の名はワルサーPPだ。扱いは士官学校やっているから問題は無いな?」

 

「はい。」

 

「うむ。では・・・あぁそうだ。もう一つあった。空軍設計局より直接君に来た物だ。」

 

 そして少佐が出してきたのは小型のガンケースであった。

 

「開けて、中身を手にとっても良い。その銃は恐らくは帝国陸軍の中で直接手にした者は君が最初だ。上から直接君に開けないで渡すようにと言われたが・・・武器課の私には理由は分からん。」

 

 これはMP5じゃないか!しかも1990年代に概念が完成したPDW型のMP5K-PDWじゃないか?ストックは折り畳みのフォールディングストックか・・・なんかマウントレール付いてないか・・・?そしてこのホルスターはこの銃に対応するホルスターか・・・

 

 

「それはG3の派生で、簡単に言うとG3の軽機関銃版らしい。MP5というからしいんだが、陸軍は正式採用してはおらず、空軍が採用しているというか話だけ聞いた。」

 

「そしてそれはそのMP5の個人携帯火器型*2らしいが・・・よくわからん。空軍はそれをMP5KA6-PDWという名で正式採用しているらしい。聞いた話によるとパイロットの護身用とか何とか・・・まぁ陸軍だと今は君だけしか持っていない事になるな。」

 

 

 

 

 

 少し信じられないが、MP5-PDWという物も思い掛けなく入手してしまった。

ただ、支給されたのは使うのが普通で、研修生の一部は哨戒任務を任されており、その時にG3KA4とワルサーPPと共に携帯し、哨戒任務をこなしていた。

 

 

 

 

――――――――――――

1923年6月某日

 

北方ノルデン地域第八警戒区

 

 

ここ数日、どうもきな臭い。

 

夜には友軍の訓練もないのに遠くから砲撃音はするわ、哨戒飛行のときに当たる北風から明らかに硝煙の匂いが混じっている。

 

 

現在は、帝国と協商連合がそれぞれ陸軍部隊を部分動員充足状態で国境線上に貼り付け、帝国空軍は何時でもスクランブルがかけられる状態だった。

 

最早いつ開戦しても不思議ではない状態と言っても過言ではない。

 

『こちら北方方面ノルデン地区航空指揮管制(ノルデンコントロール)。フェアリー08定時連絡。』

 

『こちらフェアリー08、感度良好。異常なし』

 

『ノルデンコントロール了解。所定経路での哨戒任務を継続せよ』

 

『フェアリー08了解』

 

 来た当初よりかは寒さが和らぎ、雪も溶けたが土は泥濘であり、まるで第1次世界大戦の戦場のような光景であった。

 

しばらく哨戒をしていると無線が入った。

 

『ノルデンコントロールより全空域に通達。哨戒班が協商連合軍陸上部隊の越境を確認。哨戒任務中の各班は交戦規定を防空哨戒戦に移行する。別命あるまで待機せよ。』

 

 これで戦争が始まったか。しかし奴らは馬鹿なのか?帝国の軍備は世界最精鋭といっても過言ではないそれに突っ込もうなんて、協商連合の首脳が本当の馬鹿か、大国・・・連合王国か共和国からかレンドリースか義勇軍の派兵の約束でも取り付けることができたの2つ位しか無いだろう。

 

 

そしてコントロールより無線が入る。

『ノルデンコントロールよりフェアリー08、観測任務に切り替える。事前射点群Gへ向かえ。以後はゴリアテ07に引き継ぐ。周波数そのまま』

 

『フェアリー08、観測任務、地点G、周波数維持』

 

 

 

 

 

『こちらゴリアテ07、フェアリー08応答せよ』

 

しばらくして砲兵部隊から無線が入る。周波数そのままだと通信相手ごとに切り替えなくて済むから楽だ。

 

「こちらフェアリー08、感度良好。まもなく観測地点に到達する」

 

『確認。砲撃は事前試射に基づき転移射で行う。但し目標が射点群より1km以上離れる場合は通常の観測射撃に移行する』

 

「フェアリー08了解」

 

 転移射とは事前の観測射点を基点に目標位置、気象条件等を考慮し補正し、観測射無しで効力射を実施する方法である。

 

 帝国では砲兵は基本は自走榴弾砲*3と牽引・自走両用の榴弾砲の両方が配備されている。

 

 

 

 

「フェアリー08からゴリアテ07、観測地点に到達」

 

 眼下に広がる北方国境の森の中には幾つかの道があり、その中の一つに整列して移動する歩兵集団を見つけた。

 

 なんだあれは。他国の領土に武装して侵入しておいてパレードでもしているつもりなのか?

 

「フェアリー08よりゴリアテ07、目標地点はG-3-11からG-3-9の間を南方へ行軍中、旅団規模、速度1」

 

『ゴリアテ07了解』

 

 

 

『ゴリアテ07よりフェアリー08、転移射を開始。観測求む』

 

「フェアリー08了解」

 暫くすると射撃音がして榴弾が着弾し、歩兵隊の中心で砲弾が炸裂し人が吹き飛んだ。

 遠くから複数の乾いた炸裂音が聞こえる頃には歩兵がまるで水を注がれた蟻のように混乱し逃げ惑っていた。

 

「敵は散布界内にあり、射撃を継続されたし。」

 

するとゴリアテからの無線がECMでジャミングされていた。

 

 

 

 

 すると敵魔導師中隊を発見した。

「フェアリー08からノルデンコントロール。点群Gより方位340、距離9000、高度4200。敵一個魔導中隊が接近中。一時後退する」

 

 

『こちらノルデンコントロール。後退は許可できない。遅滞戦闘に努めよ』

 

 

―――は?

 

 

『ノルデンコントロールからフェアリー08、後退は許可できない。繰り返す。後退は許可できない。遅滞戦闘に努めよ。増援は300以内に到着する』

 

 つまりだ・・・5分カップラーメンが作れる時間まで一人で1個中隊に立ち向かえと?

 

 

 

『……フェアリー08了解。せいぜいあがいてみせましょう』

 

『幸運を祈る。神は我らと共に』

 

 

 

 

クソッタレクソッタレクソッタレ! 態々意図的にこんな状況に放り込むクソッタレな神など碌でもないゴミに決まっている!そんなのが一緒に居たら心地悪いうえにいつ死ぬか分かったものじゃない!何が神は我らと共にだ!?

 

 

 ターニャはG3KA4カービンを射撃、ワンマガジンで8騎を撃墜、MP5KA6-PDWで近接戦闘に入り5騎を撃墜した。が・・・そこですべてのマガジンが空となり、銃剣による更なる接近戦をしたが魔力ドーピングの限界となり、ターニャは狂気の笑みを浮かべ宝珠の自爆をし、中隊長一騎を残して全滅させたのだった。

 ターニャは自爆の煙からボフッと出て来て重力に従い落下していった・・・

 

 増援が来て制空権を確保後、空軍のパラメディックがターニャを救助し、すぐさまターニャは野戦病棟にぶち込まれたのだった。

 

因みにパラメディックはパラシュート降下を行う衛生隊員(軍医、衛生兵)のことを意味する。ターニャを救助したパラメディックは自衛隊で言うレンジャーや空挺レンジャーなどを取っている女性魔導師だったりする。

 

 

 

 

 

 

 協商連合軍は陸は帝国の計算された綿密な火網、そして榴弾砲の雨。要請されたらものの数分以下、下手したら数十秒で飛んでくる近接航空支援機に襲われ、空は協商連合軍の越境と共に5分で航空優勢の確保をし、十分後には制空権を完全に取った。

 

 協商連合軍は多大な損害を払うが帝国軍は戦傷者こそいるものの、戦死者はゼロであった。戦傷者にはターニャ・デグレチャフも含まれていたが。

 

 協商連合軍の越境は2ヶ月以上続いた。が、制空権を完全に取った帝国軍にとって、協商連合軍は完全に動く的だった。

 

 帝国のドクトリンは基本が防衛主体だからだ。政府や軍首脳による命令み有った為、北方司令部は越境して攻めいる事はしなかった。

 

*1
エアバスが開発した4発8挺プロペラの戦術輸送機であり、西側最大出力のターボプロップエンジンを搭載している。

*2
PDW(ピーディーダブリュー、Personal Defense Weapon、パーソナルディフェンスウェポン)は、1990年代に登場した銃器の形態の一つ。短機関銃と類似性が高く、近年登場した銃器カテゴリーであるため、短機関銃の一種として評価されることもある。

*3
何らかな動力を有し、大砲を自走可能な車体に射撃可能な状態で搭載したものである。

 よく混同されることがあるが、レール上を移動する列車砲は牽引に機関車との連結が必要で、砲単体では移動手段を持たないので自走砲ではない。

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