WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結)   作:紅茶

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さて、墜落したターニャのその後の話と、最近大人しく?していた諜報局の話


諜報局の暗躍

1923年6月某日

スコーネ駐屯地臨時軍病院病室にて

 

 ターニャ・デグレチャフが目を覚ましたとき、見えたのは天井だった。

所謂見知らぬ天井というやつである。

 そして本当にお決まり文句をターニャは言うのである。

 

「知らない天井だ・・・」

 

 中隊に一人で相手どる事になってから先は其処まで覚えていないターニャ。魔術ドーピングをして、敵魔導師をある程度撃墜した事は覚えている。魔術ドーピングをしすぎたことは覚えているが、それの影響とも思えない。

 物を言ったその時に激しい頭痛に襲われる。

 

「痛っ・・・」

 

 更に立て続けで襲ってくる足と腕からの痛みから状況をようやく理解した。

 

「少なくとも死んではない…」

 

 そして病室であることも分かった。恐らく野戦病棟なのだろうが、妙に人の気配が少ない気がする。

 気のせいだろうか・・・いや戦争が始まっていると怪我人も大量に出てくるのが普通なのだが・・・

 

 少し考えて、ふっと目を窓に向けると花瓶に花が飾ってあった。

 その花瓶には白い花が飾られていた。ターニャの前世は会社員で花なぞに触れる事はなかったがその花は白のアネモネ*1だったりする。

 

 少し気になってその花を見ていると4回ドアノックがあり、その直後にドアをあける音が聞こえた。ドアのほうに目線を向けると白い白衣の女性が見えた。恐らく従軍看護婦なのだろう。

 

「あ、デグレチャフ准尉。起きたんですか?」

 

「先程起きましたが・・・」

 

「そうですか。では、軍医お呼びしますね。

 

あ、オットー軍医!デグレチャフ准尉が目を覚ましました。」

 

 看護婦が偶然廊下を歩いていた軍医らしき人物を呼び止め、話を少々した。

 

 その後は少し診察のような物をして(作者は医療ではなく工学専攻なので診察シーンはカットさせていただきました。)話を聴いた。軍医によると私は丸1日は寝ていたらしい。

 

「デグレチャフ准尉、と言うわけで2週間は様子見で入院ですね。傷が塞がってもまたその傷が開かないとも限らないので。戦場に復帰出来るのは1ヶ月から2ヶ月程でしょうかね?」

 

 私は戦場になぞ行きたく無いのだが。ここは話の話題を変えるとしよう。

 

「そう言えばこの野戦病院人が余り居ないように感じるのですが・・・」

 

「それは現在入院しているのがあなただけですからね。何しろ昨日はこの病院に来たのは排出したばかりの薬莢に誤って触って火傷した人が数名と風邪引いて寝込んでた人が一人位ですからね。デグレチャフ准尉が一番重傷でしたよ。」

 

は?開戦初日に大怪我を負ったのは私だけと言うことか?運がないにも程があるだろう!ふざけるな存在X!

 

「そう言えばデグレチャフ准尉。あなたに銀翼突撃章の授与が決まったようですよ。」

 

「…銀翼突撃章?」

 

「そうですね、准尉にはそれが授与されることになったそうです。」

 

銀翼突撃章とは、帝国の勲章の中でも特殊なものの一つで、窮地に陥った味方部隊を救った者のうち、戦史に記録するべき人物のみに与えられる。

 

また、通常の勲章と異なり上官が推薦するのではなく、救われた側の部隊の指揮官が推薦するというかなり特殊な勲章である。

 

 個人の、それもただの下士官もしくは尉官で後世に名前を残す戦史に記録されるような人物は少ない。

 

 居たとしても、殆どが勲章を授けられる前に死亡している。

 

 即ち・・・それを生きている状態で授与されるのは前例がなく、そんな勲章獲得してしまうと最前線に送られる可能性が極めて高い!

 

・・・と言うわけである。

 

 

 そんな事を考えていると同時に鋭敏な頭脳を持つターニャはこうも考えた。

 

 『べ、別に勲章貰ったら選果を稼ぎやすくなって中央に行きやすくなるかもしれないし・・・(震え声)』

 

 

 

(いや、君には馬車馬のごとく働かせて貰うよbyエリザベート)

 

何か嫌な感じがしたが気のせいだろう。多分。(フラグ)

 

 

 

 

 

 

 2週間後、傷がある程度塞がり普通に過ごせそうな感じだったが、ドクターストップにより病院で病院着のまま銀翼突撃章を授与されることになった。

 

 

「ターニャ・デグレチャフ准尉。

 貴官らは協商連合軍との戦闘において、1人で1個中隊と交戦。

 満身創痍になりながらも、増援到着までに11騎を撃破し敵1個中隊を撃滅。

 味方の制空権確保までの敵魔導部隊の対砲兵攻撃を阻止した。その行動と勇気を讃え、銀翼突撃章をここに授与する。」

 

 これで私もエースの仲間入りしてしまったのだ。

これの何がよろしくないか。

 最前線での活躍を命じられる可能性が高いということだ。

 

 あの魔王ルーデル*2のように戦死が味方の動揺を誘うとして後方に頑張って下げられたと言うような例も無きにしもあらずなのだが。

 帝国は確かに強大であるがさすがに大根畑から兵士がとれるようなルーシー連邦よりかは人的資源が少ないと言わざるを得ない。ただしその人的資源を補っているのが周辺国家を軽く上回る装備を持つ空軍だった。空軍の編成をみるとどこの国にも負ける気がしないのだが・・・何しろ空軍の作戦機は700機弱。そしてそのうちの143機は輸送機なのでそれ以外の機はTa152を主力とする(と言うかTa152しか居ない)制空邀撃戦闘機で構成されている。頭おかしいと言わざるを得ない。

 

 

 とは言え、周辺各国との関係は良好とは言えないため、全方位が敵になる可能性がある。

 例外が2カ国ほど存在するが、一つは永世中立を宣言しており、更に国家自体が究極の要塞のようなものであるため、"障害物"や"通行不可能地形"という評価が正しい。

 もう一カ国は帝国との国境紛争を抱えながらも比較的友好的だが、場合によっては十分敵になりうる。

 

 ただ、新大陸の化け物国家、合州国は比較的関係が良好だったりする。何しろ帝国は医療分野で他国を上回っているため、その国の医療では救えない命を帝国の医療で救えたと言う話はいくらでもある。合州国は民衆の意見が政治に強く働く国であるため、合州国も表面上は帝国と良好な関係を構築しているのだ。

 連合王国は民衆こそ帝国感情は良いが、首脳が帝国を危険視している為、帝国は准適性国家として見ている。

 

 ただ・・・やはり全方位が敵になっても帝国が負けるビジョンが出てこないのはやはり空軍のせいだろうか?

 

 

 

 

 

―――――――――

1923年7月某日

 結局戦場に戻る羽目になった。やはり私は運が無いらしい。

 

 命令に従い、ある魔導中隊に行くことになった。

 

「少佐殿。補充として参りました、デグレチャフ准尉です。」

 

「あ、君が噂の。銀翼突撃章を2週間前に受賞したそうじゃないか。期待しているよ。

 

君には本当に助かるよ。何しろ3人が生焼けの肉を食って食中毒で病院送りにされて困ってたんだ。」

 

 は?3人が食中毒で離脱?一体何やってるんだ、給養課は。しかし命令である以上従わなければならない。ままならぬものだな。

 

 

「中隊傾注!今回の任務は制空権確保の継続だ。要は敵魔導師狩りと言うことだ。だが今回何時もより更に楽になるだろう。何故なら銀翼突撃章をつい最近受賞した者が居るからだ!」

 

「「「なる程~。」」」

 

おい待て、納得するな!

 

「では中隊諸君、出撃準備だ!長くなるぞ、一応レーションも持って行け!」

 

「えー・・・あのクソマズイ奴ですか・・・」

 

「腹に何も入れないよりマシだ。さぁ行け!

 

 ああそうだデグレチャフ准尉、出撃準備中に司令部より届いた武器を支給する。ついて来たまえ。」

 

「はっ。」

 

中隊のテントを出て弾薬集積所(といっても小銃弾や拳銃弾くらいしか無いが。)に着く。

 

「これらが君の被撃墜地点で回収された小火器類だ。ちゃんと武器課が整備したらしい。で、ガンケースは君の部屋においてある。この小銃と短機関銃は君専用となるため、管理はしっかり行うように。」

 

「はっ!」

 

「宜しい。では出撃準備するように。」

 

 

 

 

 

 

 

 3時間後、私は戦場の空を飛んでいた。中隊が出撃した後、私は臨時の小隊に組み込まれ、6人1小隊で行動していた。

 

 戦場といっても・・・敵にとっては地獄な戦場だが。

 

 あちらから一方的に仕掛けてきた戦争。基本的に攻めるしか出来ない協商連合は取りあえず帝国領地に進行して来る連中は、帝国空軍や帝国の魔導師によって殲滅され、はたまた砲兵部隊に部隊をちりじりにされ・・・制空権を取ろうと魔導師を投入するが、帝国魔導師にすぐさま撃墜される。それが協商連合との戦争・・・いやこれは戦争と言うには余りにも一方的すぎる。

 

 帝国の基本ドクトリンは機動防御*3での防衛だが、軍である以上攻めることもしなければならない(と作者は思っている)。

 帝国の侵攻ドクトリンは基本は機甲師団主体での帝国空軍制空権確保が前提となる電撃戦である。機甲師団で敵の守りが薄い場所を予め空軍が偵察、制空権確保前提とし、Ta152などの近接支援の元で機甲師団による突破、そして帝国空軍の優秀な兵站輸送能力及び輸送トラックで止まることなく進撃する、かのナチス・ドイツの戦術を使用していた。

 

 

 ただ協商連合との戦いはただの殺戮とでしか思えない。 

 

 

 

『おっと、久し振りな敵のお出ましだ。中隊規模の敵さんか。そんな事しても焼け石に水だろうに・・・ロトリーダーより小隊へ。敵魔導中隊隊を撃滅せよ!』

 

 

 敵魔導中隊と相対し、敵が射撃を開始する。

 

『散開!』

 

 小隊は敵の射線をかわす様に散開。敵は我々に当てることが出来るような小銃を所持していない。せいぜいセミオートマチック銃だろう。ただし此方はフルオート可能なG3である。敵に回避機動をとられても十分当てることができる代物であるため、撃墜は比較的容易であった。今回は一人ではなく小隊であったからだとも思われるが。

 

「墜ちろ」

 

 そうつぶやき長らG3KA4を三連射し、敵魔導師を撃墜。

 

『准尉、チェックインシックス!』

 

 咄嗟に後ろをみると比較的近距離で此方をねらっている敵がいた。素早くMP5KA6-PDWをホルスターから抜き、片手保持で弾倉が切れるまで連射する。すると・・・敵は死ぬ。

 

『准尉、ナイスキル!』

 

 

 

「嫌だ・・・嫌だ!死にたくない、死にたくない!」

 

弾倉が切れたMP5ホルスターにしまい、次の敵に襲いかかる。次の敵は味方が次々とやられ撤退しようとしていて偶然私の目の前を通った新兵らしき魔導師だ。

 

「さぁ私の戦果となれ!」

 

 そいつはG3のアイアンサイトで良く狙って撃ったら一発で吹き飛んだ。たわいもない奴だ。

 

 しばらく戦闘をすると敵中隊は消滅していた。今回の選果は4騎撃墜2騎共同撃破であった。

 

 その後は単調な対地攻撃や砲兵隊の観測だったためにカットする事にしよう。

 

 

 

 ターニャは今回の戦闘で4撃墜2共同撃破、8火砲の破壊、3車両の破壊をした。

 

 

 ターニャは知らない。協商連合との戦争が後1ヶ月で終わることなど・・・知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 協商連合軍は狼狽していた。陸軍3個師団をはじめ、多数の魔導師部隊、200機に及ぶ共和国からコツコツと購入して整えた航空戦力、そういったものが帝国軍によって半分以上が『溶けた』。

 

 何より、軍は元々やる気が無かったのだ。何故なら帝国軍と自軍の差をよく分かっていたが故に。

 

 しかし、今回は政府に押し通されてしまい、大規模な軍事演習という名目を掲げて越境し、大損害を被った形だ。

 当然、軍が現政府に対して良い感情を抱くわけがない。しかし、戦争は政治の延長戦と言える代物。軍は当然政治家に逆らえない物だ。

 

 但し、政治家が逆らえない事もある。経済界である。政治家と経済界は密接な関係があり、経済界に支援を打ち切られると次の選挙で当選できなくなる可能性が相当大きくなるからだ。

 

 

 

 帝国とは良い関係にある経済界からの突き上げも強くなり、もはや、政府が戦闘継続を叫んだところで議会は殆どが戦争反対に回ったためどうにもならなかった。

 

1ヶ月後、協商連合軍による越境は無くなり、それから程なくして協商連合政府は外交筋を通して交渉の席につくことにした。

 

 協商連合との戦争終結である。

 

 ターニャは戦争終結までに合計36騎単独撃墜、24騎共同撃破、装甲車両37両撃破、火砲18門破壊と言うまさにエースであった。

 

 それは自身が所属している中隊の中でも一番選果を得ているらしい。そのせいかどうかは知らないが少尉へと階級が上がった。上官からは誉められ、同僚からは胴上げされる始末である。

 

 

 それゆえ何故か上官や同僚からは雪景色に映える銀髪なので、白銀だの、可愛い悪魔だの、戦闘妖精HAKUGINだのと、それはもう訳の分からん呼び名で言われまくった。

 

 

「・・・しかし、これで良かったのか?」

 

現状は悪くない、悪くはないはずだ。

 

 ターニャはそう思っている。

 

 エースとなれば後方に下げられ、後進育成の為に教官となれる可能性は高い。

 

 隊内でも浮いているということはなく、むしろ積極的にコミュニケーションを取っている。

 

 問題はないはずだ。 

 

 協商連合との戦闘は終わり、あとは外務省の仕事になっている。

 

 もしも辞令が出るとしたら、もう間もなくだとターニャは確信していた。

 

 頼む!

 

 今回の件で、教導隊とかそういうところへ回してくれ――!

 

 

(教導隊?何言ってんの?兼任させるから覚悟しといてbyエリザベート)

 

 

 

 とまぁ斯くして2か月と少しで協商連合との紛争は終わったのである。

 

 

 

 

1923年8月某日

 

スコーネ駐屯地 師団本部軍令部室

 

 

 

何たることだ。

 

仮に存在X以外に神がいるのだとすれば、そいつに関してはある程度信頼してやってもよいのかもしれない。

但し今後どうなるか分からないのだから、あと50年ほどは評価を保留させてもらうが。

因みに存在Xに関しては神とするには余りにも酷いので信じる気は1ミリもない。

 

あれだけ願った後方勤務だ。

私、ターニャ・デグレチャフ少尉の配属の内示は"後方勤務"であることを示していた。

 

「本国戦技教導隊付きの内示と、同時に総監部付き技術検証要員の出向依頼…テストパイロットでしょうか」

 

「そうだな。できれば君にはそのまま受け取ってもらえると助かるのだが…」

 

「分かりました。配属命令を受領いたします」

 

 

 

 

 

 

そのころ…帝国首都ライヒでは無事戦争らしき紛争が終わりどこか首都全体がホッとしている気配がしているが…諜報局では大忙しであった。

 

 

「それで憎きヨシフ野郎が『赤軍の至宝』をとらえたと…」

 

「はい。すでに一刻の余地もない状況です。」

 

 諜報局局長室は副官から殴り書きにされている書類を持ちながら報告を受けていた

 

 

 

 

「我が特殊部隊はどうなっている?」

 

「今すぐ出撃できるようになっています。」

 

「輸送機は?」

 

「空軍からは今すぐにでも出せると。」

 

「分かった、今すぐ出せ。我々の悲願を達成するこれとないチャンスだ。」

 

 諜報局は設立当時北の巨大な国家、ルーシー帝国に諜報員を置き、相当な金を投入してルーシー帝国の中枢に巨大なパイプをつなぎ、帝国に有利になるよう工作をしていた。そんな中起きた赤化革命である。

 

 共産主義になるにあたり諜報員の退避が間に合わずに拘束され、中枢につながったパイプも同時に粛清されてしまった。これにはさすがの温厚なカタリナも激おこぷんぷん丸だった。当然帝国諜報局は共産党撃滅の旗を掲げ、帝国内の重要な地位についていた共産主義者を徹底的に調べ上げ、『不幸な事故』で暗殺。

 

 またルーシー社会主義共和国連邦にルーシー帝国以上の金をかけ工作を開始する。その一つにミハイル・トゥハーチェフの亡命も入っていた。ヨシフおじさんの猜疑心による粛清が始まったのを諜報局は敏感に嗅ぎ取り、素早く計画を立案。その計画は…

 

『オペレーション・ハイドバルバロッサ』

 

である。

 

 

 ルーシー連邦のざるな防空網を特殊部隊を載せた戦術輸送機で高度3万ftまで上昇して回避し、HALO降下*4してNKVDを音もなく速やかに射殺し、ミハイル・トゥハーチェフの亡命を家族とともにさせるというものである。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。夜闇に紛れて高高度3万ftを巡行している一機の輸送機があった。それはもちろん…特殊部隊を載せた帝国の戦術輸送機である。そこには諜報局特殊作戦部隊2個小隊が乗っていた。それは待機していた特殊部隊全員である。(ちなみに残り3個小隊は不測の事態に備えお留守番)

 

 戦術輸送機は連邦のざるな警戒網をくぐり抜け、空挺ポイントに到達。部隊員全員でHALO降下を実施する。空軍戦術輸送機はいったん帰還した後に代替の輸送機が合流ポイントへ到達し、空軍作戦コマンド1個分隊を空挺しランディングゾーンを確保。特殊作戦部隊+ミハイル・トゥハーチェフ家族が到着次第すぐさま離陸し、帝国へ向かうというものである。

 

 

 

 

 

――――――――

1923年8月某日

モスコー某所

 

 

『隊長、NKVDが居ます。』

 

『排除しろ。音もなくな。』

 

 パスっ…と着弾音がして玄関に立っていたNKVDの1隊員が死ぬ。

 特殊作戦部隊が使用している銃はMP5である。ただし改修済みであるが。サプレッサーを内蔵し銃声を消音する。ただしMP5に使用されている9㎜パラベラムは超音速拳銃弾であるため、60~70dbと電話機のベル並みの音量がある。.45ACPのような亜音速弾を使用した場合、発射音が大幅に軽減されるためこのMP5は.45口径拳銃弾を使用する特殊作戦仕様だった。

 

『中に入るぞ。』

 

 ドアは普通に鍵がかかっているので鍵を普通にピッキングして開けると思われたがすぐそばにあった梯子を使って窓から侵入。その階を音もなく制圧した彼らは目標がいないことが分かると二手に分かれた。その階より上の階を制圧する班とそれより下の階を制圧する班である。

 

 

 そして上の階をすでに制圧し終わった一つの班は下の班へ合流。残りは地下である。

 

『廊下に見張り』

 

『排除する。』

 

 見張りが音もなく倒れる。

 

「おいどうした。居眠りか?」

 

『排除しろ。』

 

 倒れた仲間を居眠りだと勘違いして偶然通りかかった者も排除される。そして…部隊はある部屋の前にいた。

 

『隊長、鍵がかかってます。』

 

『ドアに聴診器を当てて何も聞こえないようならこじ開けろ。それ以外のものは周辺警戒だ。』

 

 

 

 数分経っても何も音が聞こえなかったためピッキングをしてドアを開けると…ひどく血まみれの男がいた。それは取り調べの机にある紙にまで飛び散っていたことからひどく何か(おそらく拷問)されていたのだろう。

 

 そして取り調べの机にはNKVDが座っていた。

 

「ん?どうし…」

 

 それは静かな銃声で途切れた。

 

『これはひどい。医療班に見せてもらおう。だがその前に脱出だ。』

 

「誰だ…君たちは…?」

 

 ひどく弱きった声で男がロシア語で言う。

 

「私たちはあなたを助けに来ました。ミハイル・トゥハーチェフ元帥ですか?」

 

「あ、ああ…」

 

 血まみれの人物は目的のハイル・トゥハーチェフ元帥であることが分かった。

 

「では…早ければ早いほどいい。ここを脱出しましょう。」

 

「分かった…」

 

トゥハーチェフはメディックに担がれてその家どころかモスコー郊外まででてある無人の家に入り手当を受ける。

 

 

ある程度痛みが引き、トゥハーチェフは質問する。

 

「私を助けるといったが…誰なんだね?」

 

「…私たちは帝国の者です。」

 

「帝国…」

 

「失礼ですが閣下。嘘の自決はもうなされました?」

 

「もう、してしまった…家族を人質にとられ、しかも拷問までされて自白させられた…家族は…家族はどうなるんだ?」

 

『隊長、家族らを無事確保しました。』

 

「全員無事だそうですよ、閣下。」

 

「そうか。それならよかった…」

 

 

静寂が訪れる。数分後に沈黙を破ったのはトゥハーチェフだった。

 

 

「それで私たちをどうするつもりなのかね?」

 

「閣下とそのご家族様が選べる選択肢は二つあります。帝国に亡命するか、この連邦という国に残るかです。ただし、帝国に亡命する方が閣下にとってもこちらにとってもよろしいかと。自白してしまった以上、この連邦という国に残ると閣下は銃殺刑に処され、ご家族様も強制収容所に送られてしまします。できれば…」

 

「私の家族はなんといっている?」 

 

 通信員が連絡を取り始め、数分後した後で

 

「ご家族様は亡命を希望していますが、閣下に合わせるとのことです。」

 

「そうか………わかった。亡命しよう。」

 

「閣下、ご決断ありがとうございます。」

 

『空軍より連絡。集合地点確保したとのことです。』

 

『分かった。』

 

「閣下。行きましょう。」

 

「分かった。」

 

 また特殊作戦部隊+ミハイル・トゥハーチェフが現地で調達した車に乗り込み集合地点へ着く。そこにはすでに空軍輸送機のプロペラは回っており、実は家族らはすでに乗り込んでいて後は特殊作戦部隊+ミハイル・トゥハーチェフキーが乗り込むのを待つのみであった。

 

「さぁ閣下。足元にご注意ください。」

 

ミハイル・トゥハーチェフキーが乗り込むと先にはトゥハーチェフの家族15人が待っていた。

 

「あなた…!」

 

「ニーナ…」

 

 これは感動の家族の再会という奴だろうか?おそらくそうに違いないのだろう。戦術輸送機の後部ハッチが締まり、だれも残さずに戦術輸送機は優秀なSTOVL能力と悪路耐性をフルに使用して離陸する。

 

 無骨な軍用機の中で家族の会話をしているトゥハーチェフ家族。何せルーシー社会主義共和国連邦内では現在粛清の嵐が吹き、家族とろくに会話もできないからである。ただしこの輸送機は帝国の物。すなわち帝国への直行便であり、あの連邦などとは違った技術の進んでいる新天地(帝国)への航空便だった。

 

 

 帝国の早朝、戦術輸送機は帝国首都近くの空軍飛行場に降り立つ。そしてトゥハーチェフ家族の前に現れたのは…

 

 

 

 

続く―――――――

*1
花言葉は希望、期待。つまりこの花を飾った者は君に期待していると言う意味を込めている

*2
第2次世界大戦のナチスドイツ空軍攻撃機パイロット。曰わくアンサイクロペディアに嘘を書かせなかった男。と言うか存在自体が嘘のような人物。この小説にも出てくる。

*3
機動防御とは、我が勢力圏内に侵攻する敵を機動打撃部隊即ち戦車や歩兵(騎兵)戦闘車などの装甲・機甲師団等で撃退することにより、敵の攻撃を阻止するものである。陣地防御には広すぎる正面(少なすぎる勢力)でも機動防御でなら敵を効果的に阻止できる。

*4
パラシュートによる潜入作戦に用いられるために開発された降下方法。視認外である高高度(10,000m程度)を飛ぶ航空機から降下し、自由落下して低高度(300m以下)でパラシュートを開き敵地に降下・潜入する方法である。航空機が高高度を飛行するため、敵のレーダー網による警戒を比較的回避しやすく、エアボーンの実行を察知されにくい利点がある。一方で、高度1万メートルでは気圧が地上の1/4、大気温は氷点下50度(地表約15度)を下回ることがあるので、航空機には減圧システム、ダイバーは酸素マスクと防寒着衣が不可欠である。

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