WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結)   作:紅茶

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申し訳ありません、此方の事情で期末試験が終わった後に執筆した影響で、1ヶ月近く遅くなりました。





西方、異常あり/重戦車の出現

 心地よくなる鉄道の走行音に包まれて、一等車の寝台に身をうずめ長ら窓の外の景色を見ていた。

 

「長い鉄道の移動は何も娯楽がないこの時代だと窓から景色をみるしかする事が無いからな・・・それにしても暇だ。ん?あれは―――」

 

 Ta152だ。この近くに飛行場があるのか、比較的低高度を飛んでいるように見える。Ta152とひとくくりにいっても大きく分けて2つ有る。

 前世は軍オタであったたために趣味がこうじ,この国の軍備は一通り国内向けに発表されているものであるが、一通り調べて見たのだ。

 

 まずは高高度戦闘機型である。史実のTa152H-1に近い形状をしていて、恐らく高高度でも問題なく飛べるよう翼面積を大きくするために翼幅が大きく、一つ見ですぐわかるほど特徴がある。主に迎撃戦闘機として使用されているとのことだ。

 形式名はTa152H-1である。

 

 二種類目は制空戦闘機、戦闘攻撃機型である。低高度で使用し、対艦攻撃や近接攻撃支援、そして制空任務を主な任務とする。

 そのため、一番被弾しやすい機体である。よって多くの被弾対策を施しているとのことだ。

 

 先に説明したのとは高高度性能は其処まで必要はない。

 

 レナ女吏に教えて貰ったが、低高度性能が必要であるために低高度で最も性能が出るようにただの重りとなる排気タービンを除いてあるらしい。

 

被弾対策として燃料タンクを防弾ゴムで被覆する他に二酸化炭素自動消化装置、パイロット周りやエンジン周りを覆う鋼板装甲、操縦索の一本が切れても問題ない用にバックアップを用意するなど多彩な被弾対策を施している。

 当然機体重量は重くなる。排気タービンを抜いて有るにしても更に艦載機運用も考えてあるために更に重量が嵩む事になる。それを無理やり大馬力の水冷エンジンで引っ張っている機体である。

 

 形式名はTa152G型である。G型にも色々有るらしく、対地のための武装強化型のG-2(モーターカノン75口径30mm機関砲を付与し、翼内を60口径30mm機関砲2挺に換装)

 敵戦闘機に有利に戦えるよう、12.7mm機関砲8挺からモーターカノン20mm機関砲と翼内20mm機関砲2挺に換装し、武装の軽量化を計りながら瞬間火力を強化したG-6。

 

 

 それで今飛んでいるのはTa152G型だろう。H型と違い、2段フラップを装備し、前縁スラットももちろん装備している。翼形もTa152H-1とは明らかに違う物だ。

 

 

 さて、特別目を引いたTa152は飛び去り、外は恐ろしく寒そうな雪景色である。針葉樹林には雪が少し積もり、欧州の景色を彩っている用に思える。

 次々と移ろっていく景色を眺めながら次の任地はどの様な場所なのか思案していると、ガクンと揺れがして列車が段々減速していった。そろそろ着くのだろうか。

 

 

 遂に目的地であるブリュッセルの仮設駅に付いたのだ。

 

―――――――――――――――

1923年12月13日

ブリュッセル郊外 第七強襲戦闘団駐屯地

 

 西方方面軍司令部直轄機動打撃群

第七強襲戦闘団、第二〇五魔導中隊。それが私の新しい配属先だ。

 

 第七戦闘団は本来北方に配置されていた部隊だが、共和国の動員令に伴い再配置となり、ここ西方に配置転換されたと聞いている。

 そして、私が北方で戦った時の所属は西方方面軍司令部直轄機動打撃群 第七強襲戦闘団の一員として戦ったのだ。

 

「久しぶりだな、ターニャ少尉。ようこそ我が中隊へ」

 

「大尉殿、お久しぶりであります。」

 

 見覚えがある中隊長であるイーレン・シュワルコフ大尉の面を久しぶりに見た気がする。

 

「さて、見覚えがあるものが多いと思うが、あの(・・)ターニャ少尉だ。

 さて、我々は4個小隊で構成されているのは存じているとおもうが、1個小隊、つまりはターニャ少尉が前にいた小隊がこの前別の中隊に引き抜かれてな、新たに新兵が補充される事になった。

 それでターニャ少尉に新兵を率いて小隊長をやって貰う。」

 

 ――新兵の世話か。生存率が落ちるな・・・

 

「新兵の引率は楽では無いと思うが、宜しく頼むよ、ターニャ少尉。」

 

――――――――――――

翌日12月30日早朝

 

 この世界は我々を休ませてくれる気は一切ないらしい。

 

早朝、共和国軍が越境したとの一報が入り武装状態での待機を指示された。

 

 

 

主力の動員が完了しないうちに完全充足の精鋭師団で奇襲とは。

 

フランスの割には上出来。

 

 

「さて、中隊諸君。共和国軍は戦車を先頭に自動車、騎兵を多数用いて、リール、ダンケルク方面から多数越境行為をしている模様だ。

 航空魔導師の援護を受けており、行軍速度が非常に速い。

 今日中にブリュッセル、アントウェルペン正面の防衛線に到達する見込みだ」

 

 シュリーフェンプランだな。ただし攻守が逆だ。シュリーフェンプランは西暦世界では色々あって失敗したも同然だったが、戦車を含む半自動車化騎兵で実行された場合は恐らく成功する。

 

 ブリュッセルを突破されたら帝国はライン川まで後退することになるだろう。

 

「我々の任務は、ブリュッセルに接近している軍団の防衛線突破を阻止することだ。

 なお、この防衛には陸軍の機甲師団、機械化歩兵師団、自走砲部隊、更に空軍の魔導兵部隊や航空部隊も参加する。

 敵を各個撃破、機動防御に徹する。反撃はするが、今は防衛に徹する。では、宜しく頼む。

 

 第七戦闘団からは二〇二、二〇四と我々二〇五中隊が制空戦闘を実施する。

 但し第四小隊は不参加だ。」

 

「何故ですか中隊長!」

 

 うちの小隊の伍長が余計なことを言い出した。新兵が口を出す状況じゃない。

 

「やめろハラルド伍長」

 

「ですが少尉! 自分は戦うためにここに来たのです! 新兵だからと「やめろと言ってるんだ!」

 

 死にに来たのかこの愚か者は。あの熾烈を極める帝国の魔導兵訓練を経験してもその性格は直らなかったと見える。

 

「今の貴様らが行っても無駄死にか足手まといになるだけだ! これ以上無駄口叩くようなら抗命で処分するぞ!」

 

そう言うとハラルド伍長は悔しそうに拳を握りしめながらも黙った。

 

「・・・申し訳ありませんでした。」

 

「良いかな?では我らが白きエースに言葉を貰うこととしよう。」

 

 それはあなたが言うことでは無いのでしょうかね、シュワルコフ大尉。仕方ないから言うのだが。

 

「新兵達には申し訳無いが、訓練終了したばかりの者をいきなり制空任務に駆り出すことは危険である。帝国の訓練を通せばある程度練度がつくとはいえ、新兵は新兵だ。

 

 出撃する諸君は義務を全うせよ。ヴァルハラに転属することは許可しない」

 

―――――――――

 この世界には転生者がいる。帝国のトップ、エリザベート殿下。

 

 その妹であるカタリナ殿下。

 

 空軍の設計局で主任設計技師を勤めているレナ空軍大佐。

 

 近衛第二師団長を勤め、電撃戦という戦術をこの帝国軍に提案した人物であるカリン近衛少将。

 

 そしてこの私。

 

 で、帝国にもこんなにも居るのだから、敵にいないとも限らないのだ。

 

 恐らくフランソワに一人。ド・ゴールでド・ルーゴ・・・その可能性は大いにある。何せあのフランソワがシュリーフェンプラン擬きを出してきたのだ。可能性はある。

 

 まぁ良いか。出撃準備をするとしよう。

 

―――――――――

 

『此方管制塔、地上より支援攻撃の要請を受けた。目標はα12に存在、素早く敵を撃滅せよ。

 なお、味方空軍の到着は5分後であり、近くの航空兵力は貴小隊しか存在しない。α12付近には航空魔導師の反応は無い。貴小隊の任務は近接航空支援である。速やかに敵を撃滅せよ。』

 

 

 

「アドラー1了解。さて小隊諸君。ブリーフィングでも言ったとおり、今回の出撃は対地戦だ。言われた通り近接航空支援任務である。迅速に敵を殲滅せよ。」

 

 

 指定されたポイントである、「座標α12」に向け飛行する。新兵を率いている為、100km/h程度とあまり速度を出すことは出来ないが、それでもフランソワの新兵よりかは練度が高いのは事実である。

 

 双眼鏡で索敵しながら飛んでいると敵戦車らしき物が目に入った。ついでに、味方の悲鳴の無線も。

 

 

『味方歩兵戦闘車被弾!敵戦車砲塔此方に指向中、よけろ!』

 

『無理言うんじゃありません!』

 

 

 

『パンツァーファーストでもいい、誰か対戦車兵器を持って来い!』

 

『パンツァーファーストはもうありません!』

 

『クソッタレ!空軍はまだか!』

 

『後3分かかると言ってます!』

 

『畜生!』

 

『・・・敵戦車砲塔こちらに指向、待避、待避!』

 

『ばか、勝手に逃げるな!ぐぁぁ!・・・・・・』

 

 

 

 

「チッ・・・」

 下の様子は軒並み地獄らしい。

 

 

 

 

 

 帝国軍らしくはない一面である。確かにこのような風景はめったに見られない風景だった。

 

 基本的に機動防御戦は帝国が優勢であり、豊富な対戦車能力や機甲戦力を生かして敵を叩き潰していた。

 

 ただ、ライン戦線は敵が大量に来るために物資の供給が1日でわずか10分ほどであるが欠乏する時間があった。

 其処を偶然つかれてこのようなことになったのだ。

 近くには対戦車自走砲部隊や機甲師団の車両が全くいなかった。機動歩兵に基本的に随伴する機動砲部隊も居なかったのだ。

 

 正に偶然に偶然を塗り重ねた、敵にとっては奇跡に等しい事だった。ただ、その奇跡の時間も後僅かである。

 

「あれはフランスのB1重戦車といったところか。」

 

 ターニャが対地戦だからと言って3倍スコープを載せたG3KA4を構える。レティクルは敵戦車に合わせて、右手でセミオートマチックを選択していたセレクターをフルオートにする。

 

 ゆっくりと引き金を引き、銃弾が発射される少し前で引くのを止め、息を止める。1秒以内に照準をぴったり合わせて、ほんの少し引き金を引く。

 

 するとどうなるだろうか?

 

 正解はG3の7.62×51mm弾が700m/sで発射され、20発弾倉の全てをちょうど2秒で撃ちきられる。

 

 魔導師の小銃弾は威力で言うと105mm榴弾砲に匹敵する威力をもつ。即ち、2秒に105mm榴弾が20発着弾するのと同異義である。

 105mm榴弾に匹敵する火力を20発もたたき込まれたB1ter重戦車はどうなるか明らかである。

 

 即ち、搭乗員は着弾の衝撃による装甲の裏側部分の剥離により瀕死状態もしくは死んだ状態になってしまう。(装甲が厚くても必ずしも中の搭乗員が無事とは限らない典型的な例)

 そして爆炎により排気口から異物が混入しエンジンが停止し、ついでに燃料に引火しエンジン火災を起こす。その火災の熱により30秒後には搭載している弾薬の引火を引き起こす。

 弾薬の引火は爆発的な衝撃を起こすのだ。そして弾薬の引火により、重い重戦車の砲塔が吹っ飛ぶのだった。

 

「敵戦車を撃破。」

 何の感慨も無く任務を遂行したことを確認した。目下には敵の姿は一切見られず、敵に撃破された歩兵戦闘車の残骸と、せわしなく動く味方歩兵、そして砲塔が吹っ飛んでもなお燃え続ける敵重戦車だけであった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

1924年1月フランソワ陸軍司令部

 

「何故、進めんのだ!」

 

 ド・ルーゴはフランソワ陸軍司令部で叫ぶ。彼の怒りはもっともであり、司令部における誰も彼もが不思議で仕方がなかった。

 

開戦初日から1ヶ月以上経っているにも関わらず侵攻できたのは僅か2~3km、しかも越えたといのも帝国軍が敷設してあった地雷原と鉄条網、対戦車壕を超えたという程度に過ぎない。

 

 その3kmより先には全く進めていなかった。

 

 前線からは悲鳴のような報告が大量に届いているが、それらは到底信じられるものではなく、すぐに信頼できる参謀を派遣し、詳細な調査を命じていた。

 

 100m進むために大隊が消し飛ぶと言うことは日常である。

 運良く1km進めたと思ったら、帝国の機甲部隊が待ち受けていてフランソワ陸軍1個師団規模が全滅。

 砲兵との撃ち合いで帝国砲兵に押し負けた。

 物量が帝国の方が上回っているそうで、銃弾が嵐のように飛んでくる、砲弾が雨のように降ってくる、ついでに帝国空軍から500kg爆弾が雨のように降ってくるなど。

 前線からは悲鳴のような報告しかあがらなかった。

 

「だが、空軍は互角なはずだ!あの最新型戦闘機ならなんとか・・・」

 

 するとドアノックがされて参謀が入ってきた。

 

「少将、残念なお知らせです。」

 

「・・・聞きたくはないが、聴かねばないらない。なんだ?」

 

「前線に展開している空軍部隊を調査してきましたが、壊滅しています。未帰還機の数は分かっているだけで既に1000機近いらしく・・・」

 

「・・・続けろ。」

 

「更にパイロットの損失も並大抵ではないそうです。

 

 数少ない帰還できたパイロットの報告によりますと、敵戦闘機は直線において最低でも時速600km台後半は出ているそうです。更に、敵に銃撃を加えたところ、銃弾が有効打を得られないらしく、破壊力がある20mm機関砲が明らかに操縦席やエンジン部に当たっていたそうですが敵戦闘機が落ちなかったと言う報告まであります。」

 

 

「ならば機甲軍団と予備の歩兵戦力を一箇所に集中させ、敵戦線の突破を図ることは可能か?」

 

「制空権が覚束ない現在では集結すれば叩かれる可能性が高いかと……」

 

「はぁ・・・攻勢を中止し、立て直しを図るしかないか。」

 

「今の所はそれしかないかと。」

 

 

 

―――――――――――――――

1923年1月12日 帝国軍統合作戦本部(通称参謀本部)

 

「それで、損害を最小限にしながらも敵を押しとどめる事に成功しているのですか?」

 

 帝国のトップ、エリザベートが帝国3軍の参謀に対して質問を行う。本日は現在の味方の被害状況と、それに対する今後の作戦の検討が主な議題である。

 

 

 しょっちゅう開かれるこの会議は議長である皇帝エリザベートを筆頭とし、空軍の作戦参謀長、海軍の司令長官級の人物やそれに準ずるもの、陸軍の作戦局の長官や戦務参謀長クラスが主に参加する。

 殆どは少将や准将などの将官クラスに、重要なポストについている大佐から少佐までの佐官クラスのおおよそ10人前後で開かれる。

 

 

 陸軍より、戦務参謀ゼートゥーアが質問に対し返答をする。

 

「はい、殆どの戦線で死傷者を出さずに敵を撃退、もしくは撃破する事に成功しています。ですが・・・ラインラント戦線は極めて難しい戦線であります。

 何しろ敵が殆ど無為無策で突っ込んで来るのですが、些か敵が多く・・・機甲師団だけでなく、対戦車自走砲部隊にも動いている状態です。」

 

「補給はどうなんですか?」

 

「1日に10分ほど切れる時があると。」

 

「なる程・・・空軍作戦参謀!」

 

「はっ。」

 

「ライン戦線に補給物資の投下を行うことは可能ですか?」

 

「可能です。ですが補給物資が敵の手に渡る可能性がありますが。」

 

 実は補給物資が鹵獲される事は意外とあるのである。それは前世、傭兵となって戦地を飛び回っていたエリザベートには勿論知っていることだった。

 

「それはもちろんわかっています。対策は考えれば思いつきますが、敵に鹵獲されることは心配しなくても良くなるでしょう。」

 

「・・・それはなぜでしょうか?」

 

「・・・陸軍戦務参謀。此方の被害と敵の考えられる敵の戦死者数の統計を。」

 

「分かりました。」

 

 統計が書かれた紙を全員に配られる。

 

「おおよそ帝国の死傷者は今のところ2500人。そのうち死者は1000人、そのほかの1500人は負傷者で、一年以内に復帰可です。対して協商連合の想定被害はすでに5万人以上であると考えられます。」

 

「という事ですね。戦争開始一週間で5万人以上被害を出したら考えることは3つあります。部隊を撤収させて再編し我が帝国の補給が追い付かなくなるほどの攻勢をかけるか、立て直しを図りこの戦線を膠着させるか、もしくは迂回か。その3つです」

 

「そして、フランソワはおそらく要塞線に引きこもるでしょう。帝国の防衛線を抜けないと感じたのならば、長期戦に持ち込むはずです。そこを叩きましょう。さて、カリン少将の出番はまだ少しかかりそうですね。とりあえず補給物資の投下は許可します。」

 

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