WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結) 作:紅茶
この小説でも読んで、外出を控えていただければ幸いです。
今、最も苦しいのはあなただけではありません。
今、この一秒にもこの世界の、この地球の住人のほとんどが苦しい思いをしています。
あなただけではありません。
この国難、世界難を乗り越えなければならないのです。
そして何より、最も大切なのはご自身の命です。
この辛い状況を笑い飛ばせる時が来ますように。
by英国の珍兵器
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統一歴1924年2月14日
近衛第2師団長室
「………へぇ。」
近衛第2師団師団長、カリン・フォン・フート。
帝国陸軍大学第6期生*1である。
階級こそ近衛と付くが、本来の在籍は帝国陸軍所属である。
なぜ、在籍が陸軍なのか。
まぁ、簡単に言うと近衛をやめたらただ帝国陸軍に戻る、ただそれだけの話である。
簡単に言えば、階級の前に付く、『海軍』、『陸軍』、『空軍』の文字を『近衛』という字が覆い隠していて、その近衛という字が前話で説明した通りに効力を発揮する。
まぁ事情はそんなに簡単なことでは無いが。
ちなみに上司であり、夫のエルンスト・フォン・フート近衛大将は元々帝国海軍大学出身であったが、進路を決める際の最終的な選考で近衛に振り分けられた人物である。
彼の現在の在籍は海軍であり、階級も一応は海軍大将となっている。
カリン・フォン・フート近衛中将も同じ口である。
ちなみに、彼女も書類上は陸軍中将である。
話が大幅にズレてしまったので戻そう。
その紙は帝国統合作戦本部からの辞令が主な内容であった。
紙の入っていた封筒には赤文字で『極秘』と書かれており、これは2月14日午前にカリン本人が開封せよという命令であった。
そしてその命令は『3月に行われる反抗作戦において、近衛が参加する際近衛の指揮を取れ』と、ざっくりいうとそんな感じの命令であった。
カリンは眼を細めてゆっくりと命令書を読み込み、そして顔を上げる。
「なるほど、そう言う事ですか。ま、やってやりましょうか。派手にやってやりますよ。
史実よりもね?」
とりあえず読み終わった。
その後の機密処理は適切な処理を経て処理される。
処理をした後は自身の仕事のすべてを終わらせるだけ。
カリカリカリと金属のペン先が奏でる音が響き、自身に来ていた書類を認可し、または非認可をしたり…という書類作業をこなし早数時間。
「うん…」
そろそろ目が疲れてきて目筋をもんでさりげなく窓の外を見ると暗くなっていた。
さすがに時間が心配であるので懐にあった懐中時計を見るとすでに17時になっていた。
終業時間であるので荷物をまとめて、我が家に帰る準備をする。
「あ、お疲れ様です。」
基地駐屯地の警備兵が私に敬礼をして見送る。
暗い道を街灯が照らし、少々寒い風が吹く。
私は公用車のドアを開けて中に入り、閉める。
そして、公用車は暗くなってきた道をひた走り続けて駅に着いた。ここまではおよそ30分程度。
そして汽車を待つ。
とりあえず定期で一等は取ってあるので、そちらに乗りこみ、列車に揺られる事一時間ほど。
帝国の主要の中央駅に着く。
そこからは徒歩で歩けるほどである。
まぁそれでも歩いて20分ほどであるから1㎞以上はありますが。
家へ歩いている途中で市場があるので、そこに寄って、買い物をしなければならないのだが。
市場はいかんせん軍人が多く住んでいる住宅街等があるため、終業時間以降になると昼間は一般人を多く見かけるが、この時間帯だけは軍服を着た者も多少は見かけられます。
ただ、いかんせん近衛将官の制服のままであるので結構目立つ。
優先して買うのは野菜や肉等の生鮮食品です。
いかんせんこの時代は冷蔵庫というのは貴重で、買おうと思っても買えない物だし、前世の物とは性能が全く違うものです。
この世界ではせいぜい冷暗所で保管するのがせいぜい。
この国には保存食には定評があり、とりあえずザワークラフトとヴルストさえ食べてれば死にはしませんが。
結婚している以上、夫には必要最低限度以上の食べ物を提供しなくてはなりません。
というわけで。
肉屋で注文した品を包装され会計をし、野菜を手に取って会計を済ませた。
生鮮食品類を買った後は明日の朝に食べるパンを買うことにしますか。
「あ、お久しぶりです中将殿。」
彼女に声をかけたのは、航空魔導士徽章をつけ、さらには航空魔導士レンジャー徽章をも胸に身に着けている女性。
それでありながらもメガネを掛けている人物。
そして、帝国の民間人からは完全に雲の上の人物。
「…カタリナ殿下。あまりおちょくらないでもらえませんでしょうか?」
「無理。」
「あ、そうですか。」
隣を見るとカタリナの夫もいつの間にか立っていた。
「おや…夫婦で護衛もなしになぜここに?」
「一番の護衛がここにいるじゃないですか。」
「……まさか私と言うわけじゃないですよね?」
「何言ってるんですかね?私カタリナがルドルフの護衛です。」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
護衛される人物が護衛してどうすんだ。
カリンは常識があるが、相変わらずカタリナは世間離れしてるというか常識がないと言おうかなんというか…
前世からそんな奴だと思ってたけど、今世はもっとひどくなってた。
カタリナ殿下は無自覚で男を誘惑しますからね。
一番の被害者が夫のルドルフだったりする。
「それで今日は何しに?」
そう聞くと意味深な笑顔でこういうのだった。
「決まっているじゃないか、買い物だよ。」
と。
「…………そうですか。では夫婦でごゆっくり。」
「うん、それじゃ。」
そういって離れていくカタリナ夫妻であった。
意味深な笑顔で言っても、耳はすごく朱くなっていたが。
なんだかんだ言っても、結婚して添い遂げた相手の事を好きなんだなぁと思ったカリンだった。
家に帰れば明かりが付いていて、暖かいご飯が食べられる。
前世で傭兵をしていた時、そのありがたみは享受できはしなかった。
ただ、私は享受させる側なのだ。
夫に寂しい思いはさせたくない。
娘3人は全員戦地へ赴いたりしている。
心配じゃないとは言えない。
そんなことは死んでも言えない。
「そりゃあ、心配ですよ。だけどね、近衛で師団長を務める人間がそんな弱音を吐けますか。」
電気がついていない暗い家のドアの鍵を開け、すぐに手を洗いうがいをして夕食の準備にかかる。
将官制服をハンガーにかけて衣装棚にしまうとエプロンをかけてもう一回軽く手を洗い、夕食の準備をする。
買ってきた豚ロース300gを一口大に切って小鍋にオリーブをひき、少々焦げ目がつくくらいまで焼く。
その間に、野菜類を切る。
玉ねぎをみじん切りにしてジャガイモを一口大に切り、ニンジンは前世が日本出身らしくいちょう切りに切り、肉がいい感じに焼けてきたので野菜をとりあえず放り込む。
いい感じ(小並感)になってきたら火の通りが一番早いトマトをぶち込み、ドロドロになったら塩等の香味料香辛料を小さじ1/4ほど、ハーブは一つまみ入れ、炒める。
その後水を入れ、そしていい感じ(小並感)になったら赤ワインを鍋に入れ蓋をする。
そして40分ほど煮込む。
その間はのんびり待つだけ。
壁にかかっている時計を見ると針は8時を回っていた。
「はぁっ……」
リビングにある食卓のイスに座り、のんびり時計を見ながら夫を待つ。
「むう…」
食卓に置いてある写真立てには一枚の写真が或る。
10年前に取った、私の娘3人と私、そして夫の家族写真である。
白黒の写真であるが、10年という歳月は早いのか遅いのか。
娘は無事に戦地で敵をコロコロしているか。
それだけが気がかりであった。
娘たちは無事に帰ってくる。
何しろ私や夫に憧れ、軍に入るといってきかなかった娘たちに事前に空戦理論を教えた。
絶対帰ってくる。
Ta152の設計者、レナ空軍少佐(当時)に頼み込んで航空理論について教えさせて空戦技術を理論で考えさせたりもした。
『前世は同僚だったからね、断れなかったよ。子を思うのは私も彼女も同じなんだ。仕方ないね。』byレナ
思いを馳せながらも時計を素早く見ると20時半であった。
そろそろ帰ってくる時間である。
お風呂は帝国において一般の家ではないが、この家は将官クラスが2人もいるのであるので風呂はあるし、毎日沸かしてはいる。
とりあえず風呂を沸かしに行こう、そうしよう。
十数分後。
『オフロガワケマシター!!!!』
よし、お風呂を沸かし終えたぞ!
そして、コトコト煮込んでいるシチューの相手をして、パンを焼き始める。
すると、車が停車する音が聞こえた。
素早く火を消して、夫の出迎えに行く。
ドアが開き、風が吹き込んでくる。
「お帰りなさい、あなた。」
「ああ。ただいま。」
「ご飯にします?お風呂にします?それとも…」
「ご飯で。」
「(´・ω・`)」
「…ご飯で。さすがに平日は…な?」
「ソウデスネー。」
「…」
「…ご飯ですね。分かりました。」
コートをもってハンガーに掛け、その後は渾身(意味深)なシチューを皿によそい、パンとジャガイモを棒状に切って焼いたモノを添えて出し、自身の分も添える。
毎日、夕食は夫婦2人で食べる。
20余年、それは毎日何があってもしている。
「うん…美味い。」
「そうですか、良かった。」
夕食を取った後は夫婦の少々どうでもいいけど会話を取ったあとは二人でお風呂へ。
娘がいなくなったので、普通に夫婦で一緒に入り、普通に夫婦で上がる。
すぐ歯を磨いて明日の仕事の準備をする。
そして同じベッドで夫の手を抱きながら眠りにつく。
前世は核で終えた人生だったけど、今はなんだかんだ言って幸せだと思えます。
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1924年3月11日 アルデンヌ
塹壕が張り巡らされている戦場にいくつもの履帯跡が残っている。
帝国主力戦車4号戦車の最終型4号H型が陣形を組んで塹壕を突破しようとしていた。
その後ろには歩兵を載せた歩兵戦闘車をも控えている。
「帝国の戦車です!」
「対戦車砲を持ってこい!」
「すでに爆撃で破壊されています!そんなのありません!」
「じゃあ対戦車ライフルだ!」
「持ってきました!」
「よし!撃て!」
塹壕にこもっていた歩兵は塹壕の手前にいる戦車に向かって対戦車ライフルを撃つ。
が、抜けない。
対戦車ライフルでは4号戦車の弱点である操縦手の覗き窓等をつかないと貫徹は難しい。
「敵戦車砲塔…こちらに向いています!」
「…退避!退避!」
間に合わず4号の主砲が火を吹き、兵を吹き飛ばす。
アルデンヌは突破された。
フランソワ共和国にとって、全方面にそれなりに分厚い防衛線を築いていた。
ただ、均等というわけにもいかず、攻防が激しいライン戦線にある程度戦力を集中させる必要があった。
アルデンヌはただ、その反動で少し防衛戦力が薄かった。
と、言えどもそれなりには厚かったのが現状だった。
それを突破できたのは、陸軍砲兵や空軍攻撃機による入念な事前の砲爆撃や、近接航空支援、戦車の集中的運用による敵防御陣地の突破、そして歩兵を機械化し、敵戦力を上回る機動力を持って敵部隊の包囲撃滅。
そのアルデンヌをぶち抜いた後の目標は機械化歩兵で前線司令部を破壊もしくは占領し、補給線を破壊、最終的に敵戦線を崩壊させることが目標である。
そして、アルデンヌを突破するため戦車を集中運用し、直接的に指揮した人物こそ
カリン・フォン・フートであった