WTクランによる帝国を勝利に導く物語~核抑止とは?~(本編完結)   作:紅茶

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空母打撃群

 1925年4月

 

 ついに我が帝国海軍に新型艦が配備された。

 母港は帝国海軍の主力港であるキィエール軍港。

 

 その新型艦の名は…

 

グラーフ・ツェッペリン級航空母艦1番艦『グラーフ・ツェペリン』

 

 である。

 

 基準排水量4万3150トン、満載排水量5万トン越えの大型空母で、艦首には訳の分からんほどくねくね曲がってるキール軍港を通過するためのバウスラスターを装備している。

 

 将来的にはジェット艦載機が導入されることを考え装甲甲板とされており、艦には3本の蒸気カタパルトが既に装備されていた。

 

 

 この時代にはそぐわぬ代物を配備した帝国海軍であったが、試験航海や訓練、ドックに入っていることしかしていなかった。

 

 なぜなら未だに空母は一隻であるからである。

 せめて運用するのならば3隻、少なくとも2隻が欲しいところ。

 

 未だに2隻もそろっていないのだ。

 

 

 ただし、基準排水量で4万トン近くのデカブツを配備されたら勿論知れ渡る。

 

 自国民はいざ知らず、敵国に知られるのは時間の問題であった。

 

 

 

 

 

 

 1925年4月某日 

 連合王国首都ロンディニウム ダウジ・ング街10番地 連合王国首相官邸

 

「これは何だね?」

 

「前に我々が入手した写真と一致したことから推測するに、帝国の新型空母であると推測されます。」

 

「ふむ。それでこれに我がロイヤルネイビーやRAFは対抗できるのかね?」

 

「正確な搭載機は把握できておりませんので。60機~150機と大きく幅が開いて予想されておりますので…」

 

 MI6所属のハーバーグラム少将はそう言う

 

「ふむ。」

 

「ですが、搭載機が60機程であってもロイヤルネイビーの脅威であることは間違いありません。

 

 現在制空権を取られている現状では、本土にある海軍基地を好きな時間に攻撃できるという事になりますので。」

 

「対策として何かないかね?」

 

「…潜水艦であるならあるいは…ですが潜水艦で艦を沈めるのは難しいでしょう。足が遅い輸送船ならいざ知らず、相手は早い戦闘艦であります。

 

 可能性は無くはありませんが…」

 

「難しいか。」

 

「はい。帝国軍が航空機を使用して我が国の潜水艦を狩っているという情報も入ってきております。

 現在、我が国の潜水艦が活

活動できるのは…」

 

「大西洋の我が国が制海権を優勢に入れているところだけか…」

 

 帝国海軍は対潜、対空に特化した護衛駆逐艦や海防艦ともいうべき量産できる駆逐艦をなんか訳の分からん数を作っていた。

 

 それらが帝国植民地からの輸送の護衛をしているのだ。

 

 かつて(と言っても1年前くらい)、軽巡洋艦や重巡洋艦を繰り出させて遮断を試みた。

 

 

 

 

 

 

 

 帝国では既に防空巡洋艦が配備され且つての軽巡洋艦であるケーニヒスベルク級は2線級の軽巡へと落ちてしまった。

 そこで帝国海軍がケーニヒスベルク級に与えた任務は…

 

 海上護衛である。

 

 ただし、輸送艦に直接付くわけではない。

 

 

 海上輸送網を破壊しに来た軽巡洋艦,重巡洋艦を迎撃、撃退及び撃沈の任務である。

 

 そのため、ヒンデンブルク用に開発された203㎜3連装砲SKC21/203を連装砲に改め, 油圧の新設計の駐退機による反動の軽減や軽量化が図られた主砲搭が搭載される。

 それは203㎜連装砲SKC23/203だった。

 それを換装したものの、船体には増大した主砲反動で転覆しないよう安定させるための燃料タンクを兼ねたバルジを追加。

 

 機関を新型缶とディーゼルの複合とし最大速力33ノットを維持しながらも航続距離延長に成功した艦である。

 

 ようは、魔改造されたケーニヒスベルク級が立ちはだかったというわけである。

 

 当時の戦艦を射程でアウトレンジすることができる主砲や、FCS付き射撃管制レーダーの存在、それなりにあった搭乗員の練度もあり極めて正確に打ち込んできた。

 

 参考程度に、ここで当時の連合王国の最新鋭巡洋艦の主砲射程距離を見てみよう。

 

ダナイー級(D級)約19600m(仰角40度)

ホーキンス級 約19300メートル(仰角30度)

 

 そして、改造されて若干トップヘビーになったところをバルジで何とかしたケーニヒスベルク級の主砲最大射程を見てみるとしよう。

 

第2次近代化改修型

SKC23/203搭載ケーニヒスベルク級

203mm連装砲3基6門(仰角40度)

 

 主砲最大射程29850m

 

 巡洋艦級の主砲でありながら長射程を実現できたのは、長砲身と仰角を上げたという二つの点で長射程を得た。

 

 なお、理論上の最大射程を実現するには仰角45°が一般的である。

 ちなみに計算するのはいたって簡単である。

  

 投げ上げの運動方程式

 y=V₀t-1/2gt^2

 である。

 そして、三角関数を駆使して微分方程式みたいなものを解くと、

 

 x=V₀t×cosθ

 となる。

 

 V₀は要は砲身の初速、tは着弾までの時間、θは斜めに発射された砲弾と水平との角度である。※θは単位がラジアン角度とするのが一般的。

 

 そうして求められた最大射程の角度だが、この方程式には穴が存在する。

 空気抵抗の存在である。

 

 空気抵抗がなぜ存在しているか皆さんは知っているだろうか?

 空気が粘々しているからである。

 ただ、空気が粘々しているなんてありえないだろうという人へ!

 

 事実、空気は粘々…専門用語では“粘性がある”と言います。

 読んで字のごとく粘々している性質の事であります。

 

 空気であれ、何であれ、物に粘性が存在しなければ摩擦で失われるエネルギーはほとんど存在しなくなります。

 何だ、粘性がなければ良いことがあるじゃないかと思うでしょうが、そんな事は現実ではほとんどあり得ません。

 

 ただし、物事を考えるうえで粘性やら、空気抵抗やらを勘案するのには非常に骨が折れるほどの労力を必要とします。

  ※空気の粘性やらをすべて考慮された微分方程式も存在しますが、ものすごく複雑でコンピューターで近似値を求めるしかその方程式を求める方法は存在しません。

 

 まぁそれでも色々と空気の摩擦抵抗を加味しても最大射程となる角度は45度付近であることは確かであります。

 

 

 閑話休題

 

 

 巡洋艦にしては破格の長射程を前に連合王国の巡洋艦は苦戦を強いられる。

 

 もちろん最大射程ギリギリで撃てば当たるという物でもないが、有効射程はその分のビルという事である。

 

 そのために連合王国の巡洋艦乗り達はこう言ったそうな。

 

『なんだ、あの巡洋艦は!?

 

 新型巡洋艦を帝国が導入したのか!?』

 

 という感じである。

 

 

 

 

 

 さらに言えば、当時の戦艦主砲の射程はこんな感じである。

 

 連合王国

[オライオン級] 約21800m(仰角20度)

[キング・ジョージⅤ級] 約21700m(仰角20度)

[アイアン・デューク級] 同上

[クイーン・エリザベス級] 約22800m(仰角20度)

 

 帝国海軍

[シャルンホルスト級] 29850m(仰角25度)

[ビスマルク級] 38,720 m(仰角45度)

 

 

 なぜ連合王国の戦艦は軒並み射程が短いのか。それはある思想に基づいた結果だからである。

 

 連合王国海軍は戦艦が高速であれば良いとされ、そのためであるならば若干装甲が薄くても問題はないとしていた。

 

 第2世代MBTに多く見られた機動性に特化しまさに『当たらなければどうという事はない!』と言うような思想を体現したかのような戦術を取っていた。

 

 事実、その思想をもとに我々の世界の英国が少々装甲は薄いが速力はあるといった巡洋戦艦を数多く保有していたロイヤルネイビーはユトランド沖ドイツ海軍相手に多数損害を出すなどして痛い目に合っている。(海戦には一応勝っている)

 

 ただ、幼女戦記には第1次世界大戦が起きていないので、そんな巡洋戦艦の弱点が浮き彫りになるはずもなく…

 

 

 帝国の(一応)中古巡洋艦相手にボッコボッコにされた英国の巡洋艦群を見て、懲りずに戦艦群を投入した結果…

 

 有効射程でもアウトレンジされ、しかもクラスター弾頭やらナパーム弾頭やら燃料気化弾頭やらを大量に撃ち込まれ乗組員がこんがりと焼かれた挙句に『鹵獲』されたりと散々な目に合った。

 

 ※その時鹵獲したのは海軍艦艇に偶然乗り合わせていた海軍魔導士部隊で、海軍の臨検隊やらが出張ってきて、その後戦艦グナイゼナウが出張ってきて曳航した。

 その時鹵獲されたのはレナウン級戦艦『レパルス』であった。

 

 旧型のケーニヒスベルク級だと判明したのは連合王国の軽巡洋艦群がボッコボッコにされて重巡洋艦群が来た時にようやっと判明した。

 

 ちなみにその時、連合王国の海軍技術部及び海軍首脳は発狂したそうな。

 

 

 なぜならば、航空機や陸戦設備に定評があり、特に航空技術が飛びぬけて高かった帝国ではあるが、海軍系の技術は連合王国には劣っていると信じて疑わなかった。

 

 戦艦相手ならまだしも、よりにもよって「海軍後進国(とみなしていたはずの)帝国に」「旧式なはずの巡洋艦」に射程距離で負けたのだ。

 

 主砲開発部門に雷が落ち、さらには発破がかけられたのは言うまでもなく、急遽『既存戦艦大改装計画』にも「主砲仰角の増大による射程延伸」が追加されたのは当然のことだった。

 

 なお、それも帝国空軍の制空権奪取のより水の泡と消え、戦艦の改造や修復はシンガポールや南アフリカの海軍基地で細々と行われたそうである。

 

 

 

 鹵獲されたレパルスは帝国海軍に編入され、主砲を帝国製の38㎝連装砲に換装され、帝国製の対空捜索レーダーや対水上レーダー、射撃管制装置付きFCSを搭載され、さらには試験的にレーダー情報がまとめられて管理し、射撃管制装置に入力されるいわゆる初期の『CIC室』を試しに導入してみたりもしてみた。

 帝国海軍側の名称は『プリンツ・アイテル・フリードリッヒ・デア・グローセ』。

 帝国語…いわゆるドイツ語では「Prinz Eitel Friedrich der Große」である。

 

 …長くね?

 

 

 

 

 

 1925年5月23日

 

 帝国海軍において3空母。

 

 すなわち、帝国海軍第1空母艦隊旗艦『グラーフツェペリン』,第2空母艦隊旗艦『エリザベート・クロイツフェルン』,第3空母艦隊旗艦『カタリナ・クロイツフェルン』が配備された。

 

 その日より帝国海軍の行動は活発化し始める。

 

 

 ドーバー海峡を堂々と渡ったり、北海を航行してみたり、それとなーく地中海に向かうふりをしてみたりなどをしていた。、

 

 

 そのことについて、連合王国首脳部は実に憂慮しており、空母には航空戦力…は無理であるから、空母には空母という事で空母をまとめて運用し、帝国海軍の空母撃退せしめんと考え、艦隊を出撃させた。

 

 

 その艦隊は帝国海軍の空母艦隊が出撃したとの報告を受けジブラルタル基地より出撃した。

 

 主力としては、

・アークロイヤル

・カレイジャス

・ハーミーズ

 の空母3隻であった。

 

 連合王国にしては少ない空母数だったが、ジブラルタルに配備されていた空母がこの3隻だからであった。

 

 

 

 1925年6月18日

 ジブラルタル沖数100海里にて

 

 その日世界最初の空母同士による戦闘が発生した。

 

 最初に先手を打ったのは帝国海軍だった。

 帝国海軍は事前にジブラルタルに連合王国空母が配備されていたことは知っていた事で、空母が来ることは十分分かり切っていた事だった。

 

 同日6時30分 Ta152R-1偵察機が発艦し3方向同時索敵を開始。

 同日6時35分 EKC-1Eがカタパルトで射出され、範囲200km以上の空域警戒を開始。

 

 同日7時頃、偵察機が帰投補給しパイロットを交代して再出撃。

 

 同日8時10分 高度3万ftを巡航していたEKC-1Eの内ジブラルタル方面を警戒していた1機がレーダー波を探知。

 おおよその位置を特定した。

 

 Ta152R-1が3度目の再出撃。

 EKC-1Eによるおおよその位置特定のため集中的に索敵をしたところに発見した。

 

 帝国海軍の艦隊より600海里離れた場所を連合王国海軍艦隊が航行していた。

 

 第1空母艦隊は空母の上空護衛をのぞき全機発艦した。

 

 攻撃隊は総勢70と数機だった。

 攻撃隊は偵察機の先導で連合王国艦隊へとたどり着いた後に上空を護衛していた護衛のシーハリケーンをあっさりと叩き落とし対艦攻撃を加えた。

 

 特に攻撃隊が集中的に狙ったのは大型艦だった。

 空母ハーミーズ、カレイジャスに攻撃は集中、スーパーキャビテーション航空魚雷は面白い程に当たったのだ。

 

 カレイジャスは多数のロケット攻撃で対空放火が脆弱になった間に6本の魚雷と対艦1t爆弾2発が短時間に命中し轟沈。

 ハーミーズにも魚雷3発と対艦用1t爆弾3発、対艦用ロケット多数が命中し防御が貧弱であったハーミーズは無事に吹き飛んだ。

 

 ただ、この攻撃で無事であったアークロイヤルは攻撃隊を発艦。

 引き上げていく帝国海軍艦載機の後ろをついて行く形で追尾し彼らの母艦を把握しようとした。

 

 

 11時35分 上空警戒のEKC-1EがIFFに反応しない航空機群が攻撃隊の後ろに飛んでいることを探知。

 

 素早く空母の上空護衛をしていたTa152迎撃に向かう。

 攻撃隊のシーハリケーン20機はあっと言う間に叩き落とされ、攻撃隊へと迎撃をしようとした。

 

 そのアークロイヤルが発艦させた攻撃隊は圧倒的旧世代複葉機『ソードフィッシュ』であったためにTa152パイロットは少々舐めてかかっていた。

 

『複葉機?旧世代じゃないか!』

 みたいな感じで。

 

 ただ、『ソードフィッシュ』は足こそ遅い物の優れた点があった。

 

 布張りな機体であるため機銃弾が貫通するのだった。

 

 なかなか落ちないソードフィッシュに業を煮やしながらも弾を打ち込みようやっと撃墜した・・・

 

 そうしたら次の獲物を探して2機目を落とし、3機目を落とそうと思ったら、弾切れ

 

 そんな事が多かった。

 

 

 迎撃をすり抜けたソードフィッシュは持ち前の異常な遅さで空母艦隊の対空要因を困惑させる。

 そして布張りな機体であるため普通に破片が貫通し有効弾が与えられない。

 

 

 ソードフィッシュで落ちた機体は、機体を貫通した破片がパイロットに直接アタックされて落とされた機体が多かった。

 

 それでもソードフィッシュは対空放火を文字通りすり抜け、ロケット攻撃と魚雷を投下した。

 

 ロケットは装甲を貫通するような物ではないものの、数発を被弾。対空要員に少なからぬ損害を与えた。

 

 魚雷が投下されたのは内6本であったが、同時に投下され回避行動により1発を被弾した。

 

 魚雷の被弾により浸水が発生、艦が3度傾斜したものの普通に注排水装置で復元されてしまった。

 

 第1空母艦隊は敵残存艦艇を相当すべく、魚雷1発を被弾しても余裕綽々としているグラーフツェペリンより第2波攻撃隊が発艦しアークロイヤルを浸水、火災により発艦不能状態にせしめた後空母の護衛を執拗に攻撃。

 

 最終的に第6次攻撃隊が編成されて連合王国艦隊は波間の間に消えた。

 

 帝国海軍艦載機喪失機13機。

 

 パイロット救出は事前に来ていた潜水艦や艦隊より分離された駆逐艦Z52やZ53,Z54により大方が救助された。

 

 阻む物はなくなった第1空母艦隊はジブラルタルを攻撃した後に修理と補給のために意気揚々と帰って行った。

 

 

 その後のロイヤルネイビーの首脳部は阿鼻叫喚だったそうな。

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