友達の弟が可愛すぎるから、あの手この手で誘惑してみたっ! 作:雨宮照
メグちゃんが、あたしを家の中に招き入れる。
そして、開口一番こんなことを言ってきた。
「ケイちゃん! ヨータなら奥にいるよ!」
「なんでバレてるの!」
メグちゃん、恐ろしい子。
あたしがヨータのこと好きだって知ってて、それで最近よく家に誘ってきたのね……!
驚いてるあたしに、メグちゃんが続ける。
「だってケイちゃんいつもヨータと遊ぶとき、見たことないくらいほっぺたが弛んでるんだもん! はたから見てたら誰だって気付くって〜」
……あたし、そんなに分かりやすく顔に出る性格だっけか。
まあ、それもメグちゃんだから気が付いたような小さい変化だと思いたい。
だってメグちゃんは、あたしの……。
玄関で靴を脱いで、家に上がらせてもらう。
外観と同じように真っ白な玄関は、あたしの家とは違って床がぎしぎし音を立てたりはしなかった。
玄関なのに、白って……。
白い玄関って、白い黒ギャルって言ってるようなもんでしょ?
それってなんだか、あたしのことみたい。
そんな他愛もないことを考えながら、二階へ。
二階には子供部屋があって、未だに白川家の姉弟二人は共同生活。
ひとりっ子のあたしには、正直羨ましい。
「ささ、入って〜」
メグちゃんが、誘導してくれる。
ピンクに塗られたハート型の木の板が吊るしてあるオシャレな扉を開けると、そこには。
ゲームを片手にムスッとした表情の、小学生がいた。
「ヨータぁ〜、ケイお姉ちゃんだよぉ」
あたしは、そのちっこいかわいさが堪らず、ヨータを抱えて頭をくしゃくしゃと撫でる。
メグちゃんと同じシャンプーの、いい匂いがした。
「やめろよ……っ、ケイ姉……っ」
ヨータが、一丁前に抵抗してくる。
でも、そこはもやしっ子のヨータ。
ゲーセンで鍛えてるこのあたしに、敵うはずがない。
「ふへへぇ、かわいいのうヨータぁ。そんなんじゃあたしは痛くも痒くも……ぇっ!?」
い、今のは……なに……?
身体が、痺れるような感覚がした。
驚いて自分の身体をよく見ると、ヨータの足があたしの太ももの付け根に当たっている。
……ま、まずい。
「ど、どーしたケイ姉! 痛くも痒くもないんじゃないのかよ……っ!」
「ひゃっ……ちょ、ヨータ……んっ……!」
ヨータはその後も、あたしの異変になんか全く気づかずに抵抗を続ける。
ヨータを攻め落とすのが目標だったはずが、あたしが激しく攻められてしまっていた。
それからしばらくして、一旦白川家のリビング。
「ケイちゃん、災難だったねぇ」
メグちゃんが、とっても愉快そうに笑いながらぺしぺし肩を叩いてくる。
ちょっとだけ、おばちゃんみたいだ。
「あ〜、今ケイちゃん私のこと、おばちゃんみたいって思ったでしょ。ひどいな〜」
さっきよりも、あははっと大きく笑うメグちゃん。
あたしみたいに単純なやつの心なんて、手に取るように分かってしまうらしい。
むしろ、手なんて使わなくてもじゅうぶんかもしれない。
そんなことを考えていたせいか、あたしがうまく笑えずにいると。
「でもさ、あれでヨータ、ケイちゃんが来る前ずっとソワソワしてたんだよ〜? ケイ姉いつ来るかな、いつ来るかなって」
そんな、聞いてもいない情報をぶっ込んでくる。
……そんなの、反則じゃん。
なにが反則かって、そんなの……。
なにがどうしたって、笑顔になっちゃうじゃんか……。
そうして、あたしは若干気持ち悪い笑顔を取り戻す。
あいつの大っ嫌いな、あいつのことが大好きな笑顔を浮かべて。
あたしは、今日もヨータのことを誘惑する。
続く。