友達の弟が可愛すぎるから、あの手この手で誘惑してみたっ! 作:雨宮照
今日は、休日。
あたしはメグちゃんに誘われて、洋服を見に行くことに。
それで昨日の夜メールがあって、一旦メグちゃんの家に向かって、それから街に出かけることに決まった……んだけど。
「……えーっと、メグちゃんは……」
「……メグ姉ならさっき出かけたよ」
メグちゃんは留守だった。
あたしはすぐに携帯を確認。
報告連絡相談、その重要さを訴えるべきだ。
と、画面を開いて数秒。
あたしはしてやられたと、頭を抱えることとなる。
だって、そこには一件の新着メッセージ。
『あとはお若いお二人で♡』
……って、メグちゃんも同い歳でしょ……。
それから、いつものように子ども部屋に通してもらって。
友達の弟と二人、時間が過ぎる。
……沈黙が、恥ずかしい。
そんなときは、ヨータをからかうに尽きる。
素直にお話が出来ない自分に軽く呪いをかけつつ、あたしはヨータに訊いてみた。
「ヨータって、好きな女の子とかいるの?」
初めは、ただただからかってやろうと思って言ったひとことだった。
でも、内心ちょっとだけドキドキしていたのは事実。
あたしは、ヨータに好きな人なんていないって本当は確信してて、安心するために訊いたのかもしれない。
あたしって、悪い女だ。
そんな質問をしてから、少し。
すぐに否定が来ても、恥ずかしそうにしながらゆっくり否定が来てもいいはずなのに、なんだかヨータの様子がおかしい。
俯いて、しばらく黙っている。
これってもしかして、本当に好きな人がいる……みたいな……?
「……ええっと、ケイ姉」
あたしがからかいの笑みをだんだんと引き攣らせていると、ヨータが決意に充ちたような目でこっちを見る。
や、やめてよ。
そんな目で、見ないで……っ。
軽い気持ちであんなことを質問した数秒前の自分を呪うあたし。
こんなことになるなら、からかったりなんてしなきゃよかったかな……。
時間よ戻れと心の中で手を合わせて、ヨータの言葉を待つ。
すると、ひとこと目からやっと口を開いたヨータは。
「……い、いるよ……」
なんて、据わった目で呟いた。
「ど、どこに!?」
咄嗟に聞いてしまうあたし。
小学生の出会いの場なんて、学校か習い事に決まっている。
それなのに「どこに」なんて、訊いても意味ないのにね。
と、あたしの考えのない発言にまた後悔する。
ああ、そしたらもう、ヨータを誘惑しにこの家に遊びに来るのも、迷惑なのかな……。
どんどん不安に苛まれていく。
すると、再びヨータが口を開く。
あたしの身体がこわばっているのがわかる。
トンカチで叩いたら崩れてしまいそうだ。
しかし、次にヨータが放った言葉はそんな緊張なんて一気に吹き飛ばしてしまうような強烈なパワーを持っていて……。
「えーっと……ここに、いるよ」
「はぁっ!?」
ヨータの好きな人が、ここにいるなんて言い放ちやがったのだ。
いや待って、ここって……ええっ!
「それって……」
「う、うん……」
戸惑うあたしと、照れたような笑いを浮かべるヨータ。
でも、ヨータの目は真剣そのものだ。
そんなヨータに向かって、あたしは言う。
「ヨータ……あたし、探すっ!」
「……へ?」
「クローゼットとかカーテンの裏とかにいるんでしょ! ヨータの好きな人、ここにいるなら探してあげるんだからっ!」
「……ええっ!」
そりゃ、そうだ。
この白川家の子供部屋にヨータが女を連れ込んでるなんて、その好きな女の子ごとからかってあげないとダメじゃない!
あたしにとっては……その、恋敵だし?
お姑さんみたいな気持ちで、いびってやる!
あたしはそう意気込んで、部屋を捜索する。
続く。