Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》 作:アグニ会幹部
劇場版で超絶神作画だった部分なので、負けじと頑張った――つもりです。アインツベルン城の敷地を惜しみなく使った大決戦、お楽しみあれ。
ちなみに、作業時のBGMは前回同様、劇場版第二章の奴でした。
「come on, make your move」
「He comes back again and again」
「what else, we can do?」
「despair and hope」
の順番で。特に二番目。
森の中を、縦横無尽に駆け巡るアサシン…三日月・オーガス。
それに対し、アーチャー…ラスタル・エリオンはダインスレイヴによってあらゆる木を薙ぎ倒しながら、遠距離制圧攻撃を仕掛ける。
「チ――ジュリエッタ!」
ラスタルは腹心の部下であるジュリエッタ・ジュリスの操る「レギンレイズ・ジュリア」を召喚し、三日月に差し向ける。
ダインスレイヴによる射撃を継続しつつ、ラスタル自身も大剣を持って距離を詰める。
「ラスタル様の為に! はあっ!」
「お前、邪魔だな…!」
苛立ちを隠しもせず、三日月は突き出されたレギンレイズ・ジュリアの剣をメイスで防ぐ。続いて後ろへ跳んでダインスレイヴをかわした三日月だったが、そこへジュリアが追撃をかける。
「今一度、私が討ち取る!」
「やれるモノか…!」
その時――影の触手が、ラスタルを襲った。
「ッ、ぐ…!」
ジャンプしてかわそうとしたラスタルだったが、サーヴァントである以上、黒い「影」には抗えない。
横腹に、影の触手が掠った。
「ラスタル様! …がッ!!」
ジュリアが注意をラスタルに向けた隙を突いて、三日月が放ったテイルブレードが、ジュリアを彼方へと弾き飛ばした。
霊基を汚されて膝を付くラスタルに、三日月は無情に言い放つ。
「俺達の邪魔をする奴は、全員潰す」
「ッ…!」
サーヴァントは、影の呪層界に逆らえない。聖杯の呪いに侵された今のラスタルは、既に森に満ちる怨霊と大差が無くなっている。
「気配遮断」によって影の影響を受けにくくなっている三日月を、ラスタルは睨み付けた。
◇
ランサー…ガエリオ・ボードウィン。
バーサーカー…マクギリス・ファリド。
そして、セイバーオルタ…アグニカ・カイエル。
更地となり果てた森の中で、三騎のサーヴァントが一同に会した。
「…どういうつもりだ、ガエリオ」
「マスターの命令だ。キャスター、アサシンの陣営と戦えと」
今回の聖杯戦争で、ガエリオとマクギリスが出会うのは、初めてではない。「全てのサーヴァントと戦い、相手を倒さず生還しろ」との令呪をかけられたガエリオは、ラスタルやアグニカが召喚される前に、マクギリスと交戦している。
――こうして並び立つのは、生前を含めてもかなり久々となるが。
「今はあのセイバーが先決だ。手早く片付け、決着を付けるぞ」
「――勝てると思うのか?」
ドリルランスを構えるガエリオに対し、ようやく立ち上がったマクギリスはそう聞いた。
戦力差は歴然だ。
例えガエリオとマクギリスが二人がかりで立ち向かったとしても、倒しうる敵ではない。アグニカ・カイエルの力は、それほどまでに絶対的なのである。
それは、ガエリオも理解している。
だがそれ故に――ガエリオは、笑った。
「勝てるさ。お前とならな」
ガエリオの答えには、何の根拠も無い。
しかし――マクギリスは、その答えだけで全て納得した。
「――そうだな」
ガエリオ・ボードウィンは、こういう男だ。
物事を楽観視する、ツメの甘いお坊ちゃん。けれど、それこそがガエリオの良さだと、マクギリスは知っている。
「行くぞ、ガエリオ」
「ああ、マクギリス」
今再び、二人はその爪先を揃えた。
敵は堕ちた厄祭戦の英雄。人類滅亡を望む、絶対的な終焉。
――上等だ。相手に取って不足は無い。
対する漆黒の剣士は、右手にのみ握る紅蓮の剣を持ち上げ、二人に突きつける。それを合図に、ガエリオとマクギリスは動いた。
ガエリオはドリルランス、マクギリスはバエル・ソードを構え、正面からアグニカに突撃を開始した。
「ぬあっ!」
まず突き出されたのは、ガエリオの槍。アグニカは剣で槍を叩き落とし、続くマクギリスの剣も防ぐ。二人をまとめて蹴り飛ばし、剣に魔力を纏わせて追撃をかける。
「ッ…!」
ガエリオが二枚の盾を前方へ構え、アグニカの魔力を伴う斬撃を受け止める。盾は二枚ともが木っ端微塵に粉砕し、拡散した魔力が周囲の悉くを焼き尽くす。
しかし、その瞬間――ガエリオは、己が宝具を起動させた。
「アイン!!」
左膝のドリルニーが回転しながらせり出し、アグニカの胸部を下から攻める。すぐには貫通出来なかったが、胸部装甲から火花が散る。
流石にまずいと思ったか、アグニカは後ろに少し跳んで距離を取り、剣を振り上げてガエリオを両断しようとする――が、そのアグニカの後ろにはマクギリスが回り込んでいた。
黄金の剣による下からの連撃で、アグニカは空へと打ち上げられた。
「ほう――」
宙を舞いながらも、アグニカはガエリオとマクギリスを観察する。すると、ガエリオの左目が赤く輝いているコトに気が付いた。
ガエリオが跳び上がり、アグニカに槍を振り下ろして来る。アグニカは剣に魔力を纏わせ、その槍を迎撃。ガエリオが魔力にまかれ、彼方へと吹き飛ばされる。
「うああッ!!」
「ふっ!」
間髪入れず、マクギリスが追撃する。
空中で全身のバーニアを吹かせ、回転したコトでマクギリスの剣を避けたアグニカは、その背中を足で蹴り飛ばし、マクギリスを地面に叩き落とす。
「がはッ…!」
アグニカは剣から赤い魔力を迸らせながら、そのマクギリスに向けて落下し、剣を振り下ろす。マクギリスはすんでのところで横に跳んでそれをかわすが、魔力はアインツベルン城の壁を打ち壊し、粉砕させる。
煙と共に石材が吹き荒れる中、マクギリスは剣を横薙ぎに振って、塔の方へとアグニカを弾き飛ばす。アグニカはスラスターを吹かせ、塔の上部に向かって飛び上がるが、そこにはガエリオが待ち構えていた。
「るああああッ!!」
槍を突き出し、ガエリオは飛んできたアグニカを打ち落とす。そのまま自身も飛び降り、アグニカを塔に打ち付けるように槍を突く。押さえつけられたアグニカは背を塔に埋もれさせ、塔が半ばから崩壊していく。
やがて地面に達した時、ガエリオは右膝のドリルニーでアグニカの頭部を狙い、一気に勝負を決めようとしたが――アグニカの剣が魔力によって伸び、塔もろともガエリオを飲み込んだ。
「そこだ…!」
魔力を放出した直後、一瞬の隙を突くようにして、マクギリスは剣をアグニカに突き出す。しかしアグニカは――剣を手放した。
「何…!?」
マクギリスに背中を向けて体勢を低くしたアグニカは、突っ込んできたマクギリスが突き出した右腕と胸ぐらを掴み、ブン投げた。まさかの背負い投げに意表を突かれ、マクギリスは背中から地面へと叩き付けられる。
「じゃあな」
一旦放した紅蓮の剣を持ち直し、魔力を纏わせてマクギリスに振り下ろす。マクギリスは急いで身体を回転させ、本当にギリギリで直撃を回避。アグニカの魔力を帯びた剣撃は、地面を割るだけに終わる。
起き上がったマクギリスは、二本の剣を交差させ、「×」の軌道を描くような斬撃を放つ。それをアグニカが剣で受け止めた時、マクギリスはスラスターを全開にし、アグニカを押し出し始める。
「うおおおおおおおお!!」
壁へ突っ込んだ。アグニカの背中が壁に打ち付けられるが、マクギリスは勢いを緩めない。やがて壁が粉砕し、その向こうへと進む。
その時、アグニカの剣が魔力を刀身に宿す。アグニカは回転するコトで地面とマクギリスの間に入り込み、剣を振り切って魔力を解放。マクギリスは魔力に呑まれながら、天高く舞い上がる。
「アイン、後一撃だけ頼む…!!」
所々ヘコんだ槍を構え、炎に身を焼かれながら、ガエリオはアグニカに向かって吶喊をかける。アグニカはマクギリスを追撃する為に飛び上がったので、その軌道を読んでガエリオも飛び上がり、槍を突き出す。
空中でアグニカは槍を難なくかわし、剣で槍を弾く。ガエリオの手から槍が零れ落ち、彼方へとすっ飛んで行く。アグニカの左手がガエリオの顔を掴み、アインツベルン城の屋上に有る中庭へ向けて、ブン投げた。
「が、ぐあッ!」
「ぐうっ…!」
中庭に叩き付けられ、ガエリオは床を転がった挙げ句、中庭を囲む壁に衝突した。同じ頃、空高く打ち上げられていたマクギリスが、ガエリオの側へと落下して来た。
そんな二人から十メートル程度離れた所へ、未だに傷一つ付いていないアグニカが、逆噴射まで吹かせながら美しく着地する。
「――終わりか?」
無傷のアグニカに対して、ガエリオとマクギリスはもうボロボロだ。二人はとっくの昔に、限界を超えている。
ガエリオは「TYPE-E」をもう使えず、上半身の装甲が剥がれ落ちた。残された武装は左足のドリルニーと、左腰に差した太刀。
マクギリスは全身の装甲を失い、バエル・ソードも片方がへし折れた。使える武装は、バエル・ソードが一本だけだ。
「――立てるか、ガエリオ」
「がはッ…! クソ――」
フラつきながら、二人は立ち上がる。どちらも血を吐き、身体のあちこちが燃え、焼け焦げている。
――これほどまでとは思わなかった。
まさか、ここまでの差が有るとは。
「マクギリス――何か、逆転の一手は…」
「――有るには有る。俺の宝具だ」
発動条件は厳しいが、今ならば撃てる――と、マクギリスは告げた。
それを聞きながら、ガエリオは腰の太刀を抜いて構え、マクギリスに問い返す。
「よし…俺は、どうすれば良い?」
「この宝具は一発限りだ、二発目は無い。どの道、そんな時間はくれないだろうからな。
剣で防がれてはならない。確実に、霊核を狙って撃ち込まなければ、アグニカ・カイエルを撃破するには至らない」
心臓部に位置する、サーヴァントの霊核。一部の例外を除けば、此処を砕かれたサーヴァントは間違いなく消滅する。
如何にアグニカ・カイエルと言えども、霊核を破壊されれば消えるしか無い。アグニカに、蘇生したと言った類の逸話は無いのだから。
「撃つには時間がかかる。時間を稼ぎ、出来れば隙を作ってくれ」
「…ああ。任せろ」
太刀を構えて、ガエリオはアグニカに最後の戦いを仕掛ける。
一方、マクギリスは黄金の剣を掲げた。黄金の剣に魔力が集まり、剣が黄金の光を放ち、輝き出す。
――マクギリス・ファリドの宝具。
それは、絶対に一人では発動出来ない。
「うああああああ!!」
ガエリオの太刀と、アグニカの紅蓮の剣が交錯する。激しい斬り合いが始まり、幾度と無く激突する二人の剣が、火花を散らす。その間にも、マクギリスが持つ黄金の剣は、魔力を集束させていく。
やがて――ガエリオの太刀が、半ばからへし折れた。
「まだ…!!」
左足のドリルニーが、アグニカの右腕に接触する。高速回転するドリルは、魔力により頑強さを増している装甲を破り、その奥まで間違い無く突き刺さった。
「これは――」
「マクギリスッ!!!」
ガエリオの奮戦の果てにアグニカが見せた隙を、マクギリスは見逃さない。
掲げていた黄金の剣を、マクギリスは真名解放と共に振り下ろす――!
「『
黄金の光が、アグニカ・カイエルに襲いかかり――その身体を、呑み込んで行く。
其は、友情によって放たれる一撃。
生前に否定し続けた友情を認め、友との共闘を果たした時にのみ発動可能となる、何者をも討ち果たす黄金の輝きである。
A+ランクの対城宝具であり、本来なら個人に向けて放つような代物ではないが――相手は堕ちた英雄、災厄を齎す化け物だ。
まさしく、友情と絆を以て討ち倒すに相応しい厄祭と言えよう―――
「『
――その時。
黄金の友情は、漆黒の絶望に塗り潰された。
「そんな――」
ガエリオ・ボードウィンと、
「――馬鹿な」
マクギリス・ファリド。
「「有り得ない」」
彼らは、終焉の時を迎えた―――
◇
漆黒の光が、世界を引き裂いた。
それはやがて地面へと達し、溶解させ――凄絶な暗黒の爆発を、引き起こす。
莫大な魔力が光の柱となり、天を貫く。
衝撃波と爆風が吹き荒れ、森を揺るがした。
やがて、それらが収まった時。
ランサー…ガエリオ・ボードウィンと、バーサーカー…マクギリス・ファリドは、この世から消滅していた。
勝者は一人。
最後の戦場となったアインツベルン城の中庭には、漆黒の剣士が立っている。
「――最後の一撃は、なかなかだった」
セイバーオルタ…アグニカ・カイエルは、既に消え去った二人に対し、そう評した。あらゆる人間を否定する彼にしては、破格の評価と言えるだろう。
アグニカは飛び上がり、最初に現れた場所へと着地する。
彼は今回、バーサーカーの撃破以外の役目を請け負っていない。何だかんだでランサーも一緒に撃破したが、これ以上の仕事は彼の役目ではない。
「士郎――お前は、俺を止めに来ないのか」
やがて、その足下から「影」の触手が現れ――アグニカを、完全に覆い隠した。
◇
城の方角で、巨大な爆発が起きた。
爆心地から離れるように逃げていた士郎と凛、イリヤの下にも、その爆音が届いた。
「――バーサーカー」
マスターであるイリヤは、自身のサーヴァントが消滅したコトを感じ取った。そして、そんなイリヤの様子から、士郎と凛も察する。
「…あの、黒いセイバーね」
凛の言葉に、士郎も頷く。先程の爆発は、間違い無くセイバーによるモノだろう。
恐らくは、宝具攻撃。その直撃を受けて、バーサーカーは消えたのだ。…何故か見かけたランサーも、多分一緒に。
「行こう。――バーサーカーが、命懸けで時間を稼いでくれたんだ」
イリヤの手を引き、士郎は走り出す。
犠牲を無駄には出来ない。何としても逃げなければ――
「――衛宮くん!」
――瞬間。
士郎の真後ろに、アサシン…三日月・オーガスが現れた。
「お前、邪魔」
テイルブレードが、士郎に迫る。
三日月が受けた命令は「アインツベルンの娘を捕らえる」コトだ。それ以外は邪魔者でしかない。
「はあっ!」
何者かが、テイルブレードを弾く。
三日月は舌打ちし、自身に迫る剣――レギンレイズ・ジュリアが突き出す剣を、メイスで防いだ。
「チ、しつこいな…」
「よくも、ラスタル様を!」
「知らないよ」
大質量でジュリアを跳ね飛ばし、三日月はなおも士郎を追おうとする。だがそこへ、ダインスレイヴによる攻撃が降り注いだ。
「――ッ」
回避行動に出た三日月だったが、胴体に一撃を食らい、吹き飛ばされる。
「せいッ!」
「うおああッ!」
大きく後退した三日月の下に、ライダー…カルタ・イシューによって押し返されたキャスター…オルガ・イツカが転がって来た。そんなオルガを受け止めつつ、三日月は周囲を改めて見回す。
「――オルガ」
「ああ…こりゃ、キツいな」
アーチャー…ラスタル・エリオンは霊基を汚染されて弱体化しているが、カルタはまだまだ元気である。
加えて――何やら、ヤバい雰囲気だ。
結論として、三日月とオルガは霊体化し、姿をくらませた。ラスタルはジュリアを戻して、カルタは構えていた剣を下ろす。
「…お疲れ様、アーチャー」
「いや、これからだ凛」
横腹を押さえながら、ラスタルがそう言った直後――森の奥で、無数の「影」の触手が暴れ始めた。
「アレは――!」
「
影は、士郎達の下へと迫って来ている。
二騎ものサーヴァントを取り込み、随分とご機嫌なようだ。
「行くわよ、急いでここから―――」
そう言って、凛が走り出そうとした時。
「ッ…凛ッ!」
「遠さ――」
凛の真横に、影が現れた。
「…!?」
影が触手を伸ばし、凛は吹き飛ばされる。
地面に突き飛ばされた後、起き上がった凛は――
――影に貫かれた、カルタを見た。
「ぐっ…!!」
「な、何で――ライダーッ!?」
カルタは投げ出され、地面を転がる。影の触手に貫かれた箇所から、全身に呪いが広がって行く。
「…ライダー、どうして私を――」
倒れたカルタに対して、凛が問いかける。
カルタに課せられた命令は「士郎が危なくなったら連れ帰る」コトであり、凛を助ける理由は無い。にも関わらず、カルタは凛を庇い、現界を続けられなくなる程の深手を負った。
その行動に至った理由が、凛には分からなかった。
「――貴女は、桜の姉だ。貴女が死ねば、桜が哀しむ。私は、桜の笑顔を守ると決めている」
「…私は、桜を殺そうとしたのよ?」
「だとしても――貴女は桜の、唯一血が繋がった家族だ」
凛とカルタが話している間にも、影はゆっくりと凛の方へと近付いて行く。
「貴様――がっ!?」
ラスタルが叫んだ直後、影が伸ばした触手に胴体を穿たれた。先程受けた霊基汚染も有り、その場でラスタルは倒れ込んでしまった。
「アーチャー!!」
「――逃げろ。コイツが、私を消化している内にな…!」
影はラスタルの身体を引き寄せ、呑み込む。ラスタルの身体はたちまち分解され、影に取り込まれて行く。
――アーチャーのサーヴァント。
ラスタル・エリオンもまた、影によってその役割を終えた。
「アーチャーッ!!!」
凛が絶叫する。
ラスタルを消し、なおも佇む影は――
「ライダー…!」
「私のコトは良い――行きなさい!」
影が膨らみ、魔力が集束して行く。
遠からず放出され、周囲を一掃するだろう。
「魔力が集まってる、このままじゃ――!」
「ッ―――」
「走れ、遠坂!!」
士郎の叫び声を聞いて、凛は影に背を向け、走り始めた。
カルタは最後の抵抗と言わんばかりに、フラつきながら立ち上がって、影が伸ばして来た触手を剣で弾くが――間髪入れずに飛来した触手に、身体を貫かれる。
「がぁあッ…!」
霊核を砕かれ、カルタは吐血する。影に触れられた時点で消滅は確定していたが、ここまでやられては最早一刻の猶予も無い。
だが―――まだ、消える訳には行かない。
眼前で膨張を続ける影が魔力を放出すれば、士郎達はそれに呑み込まれる。それはダメだ。それでは、桜との約束を果たせない。
身体を二本もの影に貫かれた状態で、カルタは両足で地面を踏みしめ、剣を地面へ突き立てる。
「――我、ら…」
言葉を一つ話す度に、血が喉から口に逆流して、息が詰まる。身体は薄くなり、今にもカルタは消滅しようとしている。
それでも、カルタは言葉を発する。
「地球、外縁…軌道――」
影に集まっていた魔力は最高潮に達し、溢れ出すのも時間の問題となっている。それはまるで、空気を限界まで注入された風船のようだ。
だが、それと同時に、カルタの魔力も最高に達しようとしていた。
「――統制、統合艦隊ッ!」
影が、破裂した。
限界まで膨らんだ風船に針を刺したかのように、影は魔力を放った。木々をなぎ倒し、影の魔力がカルタと、その背後で逃亡する士郎達に迫る。
その時――親衛隊が、カルタの隣に並んだ。
『面壁九年、堅牢堅固!!!』
今度こそ完璧に、八人の声が揃う。
最高の防御結界が、カルタと親衛隊の前方へと展開される。
地球外縁軌道統制統合艦隊。
カルタが生前率いた、最後に地球を守るギャラルホルン屈指の艦隊が、影が放出した魔力を迎え撃つ。
「――おのれ…!」
結界が、影の魔力に侵される。
どんなに防御力を誇ろうと、所詮サーヴァントの力では、影に対抗出来ない。結界が黒く染まり、どんどん押されて行く。
「がああッ!!」
やがて、カルタと親衛隊は完全に押し返された挙げ句、魔力の奔流に呑み込まれる。
手足を吹き飛ばされ、影に引き寄せられる間――カルタは、無傷で逃げていく士郎達の姿を見た。
(――これで良い)
笑みを浮かべながら、カルタ・イシュー…ライダーのサーヴァントは、影の中に取り込まれた――
第二章最大の見せ場、終了。
サーヴァント七騎(ギル除く)の内、四騎が一気に消滅する異常事態。原作と違って全然取り込めてなかった影さんの殺意が高すぎる…。
ガエリオ&マクギリスVS黒化アグニカは劇場版さながらに移動しまくってて、文だと伝わりきらないと思ったので、図解を付けておきます。
【挿絵表示】
また、宝具開帳につき、黒化アグニカのステータスを追加しました。
次回「クラック」