Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》 作:アグニ会幹部
飼育箱の夢を見ている。
悪い夢だ。最近ずっと、毎晩のように見ている、わるいゆめ。
ひたひたと散歩する。
でも、怖いワケじゃない。
何回も見たから、もう慣れた。
ゆらゆらの頭は空っぽで、きちきちした目的なんてうわのそら。
多くのモノを引きずって、彼女は歩く。
彼女の通った跡は、真っ赤に染まっている。
ぶるぶると震えてゴーゴー。
彼女の食事は、他と少し違っている。
けれど、彼女は何も変わらない。やり方が違うだけだ。それだけしか違わない。
くすくすと笑ってゴーゴー。
楽しそうに、彼女は歩く。
わたしも楽しくなってくる。
からからの手足は紙風船みたいに、ころころ地面を転がっていく。
あの子についていく。
くるくる回って、輪になって。
ふわふわ飛ぶのは、きちんと大人になってから。
川を渡ろう。街へと行こう。
あそこにはいっぱい、楽しいものがある。
ごうごう。
ごうごう。
ごうごう。
「オ―――よ。あの――、かわ――くね?」
「――ジ? ホ――だ、―――裸足だ――」
「何――てる――? おっ、――いじゃん」
きいきい誰かが寄ってくる。
ぞろぞろ人が寄ってくる。
「どこ行―――。遊――ぜ?」
「待――よ。―――と休憩して――ね――?」
からからからと、笑い声。
蠱惑した覚えはありません。
「 」
「 」
「 」
きんきんうるさく響くので、
飼育箱の夢を見る。
そうして、虫をつぶした。
くうくうお腹がなりました。
最初は散らかしてしまっていた。
けど、これも慣れた。ゆっくりと、時間をかけて噛み砕く。呑み込んで、唇を舐める。
タリナイ。タリナイ。タリナイ。
でも、彼女はまだ満足してない。
わたしもまだ、この夢から覚めたくない。
この夢はたのしい。
足りなくて、楽しいから。
もうちょっと、ゆめを見ていても―――
「精が出るな。今夜に限って、いつもの倍か」
―――怖いものに、出会った。
怖い。殺される。逃げなくちゃ。
知っている。あのひとは、わたしに死ねと言ってきた、黄金のサーヴァントだ。
「だからあの時、死んでおけと言ったのだ」
きらきら、綺麗で――腕が無くなった。
「――え?」
音がする。後ろからだ。何かが刺さる音。
ピカッとひかって、あの子の腕を切断した。いっぱい血が出て、とっても痛い。
何でだろう。
何で、わたしの腕も無くなってるんだろう?
「猶予は終わりだ。――せめてもの慈悲と知れ」
たくさん光る。全身がいたくなる。
痛い。痛い。いたい。いたい。イタイ――
夢が覚めない。
あの子と一緒に倒れる。感覚が無くなって、息が詰まって、動けない。ずっと鉄の味だ。
「あ、れ―――?」
おかしいな。
先輩、わたしおかしいです。
こんなに痛くて苦しいのに。
わたし、夢から出られないんです―――
◇
とある路地裏で、少女が倒れる。
彼女の左腕は千切れ飛び、その全身は宝具によって貫かれていた。
「あ、れ―――?」
終わりだ。今しがた、採決は下された。
背後に展開した「
「いや、だ…死にたく、ない」
少女が身じろぎする。動くハズのない身体を動かそうとしているが、動けるハズもない。
「――何?」
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
「まだ息が有るのか――生き汚いな、娘」
ただその一心で、彼女は動こうとする。
そんな彼女に、裁定者たる王は、ゆっくりと歩み寄って行く。
「今、死んだら…先輩は、姉さんに――」
嫌だ。彼女は、それだけが嫌だった。
自分より相応しい人がいると思って、諦めかけていた想いは、彼によって繋がれた。
彼女に元々、生への執着など無かった。
けれど、今は違う。彼女は死にたくない。
彼はもう、わたしのものになったのだから。
誰にも渡さない。渡したくない。
渡させるわけにはいかない。
彼はわたしのものだ。わたしだけの――
「中身だけでなく、身体まで変わりかけていたとはな」
断頭。
少女の背丈を遥かに超える
「ここまでだ。
痙攣も収まり、彼女は動かなくなった。
当然だ。首を跳ねられて、即死しない者などいない。それを行ったのが不死殺しの宝具であれば、尚更である。
ギルガメッシュは少女が事切れたコトを確認し、去ろうとした――が。
「――ん?」
身体のバランスが、唐突に崩れた。
真っ直ぐ立っていられず、ギルガメッシュは前方へと倒れる。
「―――!」
しかし、地に手を付けるコトは無かった。
英雄王たる彼の矜持は、彼を地に蹲らせるコトを赦さなかった。地に手が付く直前に、ギルガメッシュはバランスを取り戻す。
倒れた身体をゆっくりと戻し――ギルガメッシュは、自らの足下に目を向けた。
王の左足が、膝下から無くなっていた。
傷口から血が滴り、地を赤く染める。
続いて後ろに視線を向けると、そこには千切れた左足が有り――地面に落ちた黒い影に、呑み込まれていた。
「――
少女に視線を戻し、ギルガメッシュは叫ぶ。
足を奪われた雪辱など些細なコトだ。
雑種如きが、
自ら進んで平伏し、天に仰ぎ見るべき「英雄王」ギルガメッシュを、跪かせようとした。
何よりも断罪すべき不敬だ。
「―――あ、あ…」
英雄王の怒りを知るコト無く。
その足を奪ったソレが、黒い影に覆われる。
そして――断たれた少女の左腕が飛び出し、地を叩いた。
ノイズが走り、引っ張られるように少女が立ち上がる。血に染まった少女は、虚ろな瞳でギルガメッシュを見る。
対するギルガメッシュは驚嘆すると共に、本当に少し、ほんの僅かに――恐怖を抱いた。
「――、おのれッ!!」
激昂し、ギルガメッシュは門を展開する。
王の背後が黄金に波打ち、二十にも達するほどの輝きが生まれ――その全てから、一斉に宝具が撃ち放たれる。
放たれたのは揃いも揃って、蔵の中でも最上級の武具。たった一人、しかも生身の少女に対するには明らかに行き過ぎの火力。サーヴァント相手でも、彼がこれほどの数の門を開くコトは珍しい。
だが――撃たれた宝具の全ては、少女の前に伸びた黒い影に呑み込まれた。
黄金の宝具は黒い魔力に冒され、少女の背後で荒れ狂い、壁や地面を飛び跳ねて、火花が散らされる。
漆黒に汚された宝剣が街灯の柱に直撃し、街灯が地面に叩き付けられた。ライトのガラスが割れ、血に濡れた少女を足下から照らし出す。
「ッ――ほう…」
少女の背後の壁に、その「影」が映される。
それを見上げながら、バビロニアの英雄王は――感嘆の声を漏らした。
「貴様…よもや、そこまで―――」
全能であるが故に、王は全てを悟ったのだ。
彼女の成長は、ギルガメッシュの予測を遥かに上回っていた。如何に「英雄王」ギルガメッシュと言えども、所詮は聖杯によって喚ばれた
聖杯に喚ばれたモノである以上、聖杯に敵う道理は無い。
サーヴァントでしかない自分では、サーヴァントを喚び出した聖杯――正確には、それと繋がり誕生を控えたもう一つの聖杯――を、どうにか出来るハズなど無かったのだ。最早、ギルガメッシュに収拾出来るモノではない。
この
ギルガメッシュに向けて、影が伸びる。
そして、それがギルガメッシュの身体を貫く―――直前。
ギルガメッシュの身体が、突き飛ばされた。
「何だと――!?」
玉体は、少女から離れて行く。ギルガメッシュが影から逃れたコトを認識すると共に、王のサファイアが如く赤い瞳は、一つの光景を視界に入れていた。
キャスターが、影に貫かれる光景を。
―interlude―
夜の帳に包まれた街を見下ろしながら、キャスター――オルガ・イツカは思案していた。その隣にはアサシン――三日月・オーガスと、マスターの間桐臓硯がいる。
(…このままで良いのか?)
オルガと三日月は今、間桐臓硯のサーヴァントとして戦っている。
間桐臓硯は、悪辣な怪物だ。五百年を生きる妄執の化身にして、ノブリス・ゴルドン以上の外道と言える。オルガは臓硯にしてやられ、自分を救ってくれた恩人である葛木宗一郎を人質に取られた。彼を解放してもらう為に、オルガは臓硯に従っているのだ。
現状、良いように使われているだけ。
それは、あの頃から全く変わっていないのではないか?
マルバ・アーケイら、CGSの大人達に従っていた、あの頃と。
CGS時代、クズな大人の支配から脱却し、オルガ・イツカ――鉄華団は、自由の為に戦って来た。いつか辿り着く「本当の居場所」を目指して進み続けて、死ぬ時すらも進み続けた。
ただ進み続けるだけで。止まらない限り道は続くと思って、死んだ後も様々な世界を渡り歩き、進み続けてきた。鉄のような絆を信じ、その生き方こそが決して散らない華だと信じて。
だが――今はどうだ?
振り出しに戻った。良いように使われ、利用されている。
マルバ・アーケイに。
マクマード・バリストンに。
ノブリス・ゴルドンに。
蒔苗東護ノ介に。
ガラン・モッサに。
マクギリス・ファリドに。
ラスタル・エリオンに。
鉄華団は振り回され、最後には瓦解した。
無論、振り回されて良かったと思ったコトも有る。クーデリア・藍那・バーンスタインには振り回されて良かったが――大半は、良くない方向にしか働かなかった。
(――分かってる。このままじゃダメだ)
臓硯をのさばらせてはならない。あんな怪物が「万能の願望機」とかいうモノを手に入れた所で、ロクなコトは起きないだろう。
反撃の一手を打たねばならない。
筋を通すべき相手は葛木宗一郎であって、間桐臓硯ではないのだ。勝利後、臓硯が大人しく葛木宗一郎を解放するのかも分からない。
その時――オルガの目に、一人の男が映った。
黄金の髪に、紅蓮の瞳。
その威圧感、重圧は黒化したセイバー――アグニカ・カイエルすら上回っている。
「…アイツは、誰だ?」
オルガが思わず呟いた言葉に、知識を持つ臓硯は返答した。
「前回の聖杯戦争で召喚され、受肉して現世に留まっておったサーヴァントじゃな。真名は――ギルガメッシュと言ったか。マスターは教会の神父だ」
真名を聞いた所で、ギルガメッシュと言う英雄はオルガの知る所ではない。
だが、その男がただ者でないコトは分かる。オルガの側で、三日月も目を見開いていた。
「人類最古の英雄王――この世全ての財を手中に納め、あらゆる宝具の原典を有する者。傲岸不遜にして、慢心の塊のような男じゃが、実力は本物よ」
その言葉通り、ギルガメッシュは圧倒的な力を見せた。一見して「勝てない」と感じさせられ、オルガと三日月は思わず身震いする。
(コイツなら――)
勝てる。ギルガメッシュの前では、臓硯など羽虫でしかない。蚊を潰すかの如く、ギルガメッシュは臓硯を潰せるだろう。
しかし――ギルガメッシュは、影に片足を呑まれた。
「やはりか。奴とてサーヴァント、アレには敵うまいて」
臓硯がそう言う中、オルガは心中で焦りを感じていた。まずい、と。
(――このジジイをどうしようも出来なくなっちまう…!)
せっかく見つけた可能性だった。
今残されたサーヴァントは、オルガと三日月にアグニカ・カイエル、そしてあのギルガメッシュ。間桐の陣営と対立するサーヴァントは、ギルガメッシュだけだ。
助けなければならない。
ギルガメッシュがこのまま「影」に食われたなら、本当に間桐臓硯が勝者となってしまう。
臓硯を殺した場合、宗一郎の命が危うくなるだろう。しかし、ギルガメッシュのマスターが教会の神父だと言うなら、治療の見込みが有るかも知れない。
ただの楽観的推測だ。これで本当に筋を通せるかは分からない。
だが――このまま従っていても、いずれ自分達は聖杯にくべられる。宗一郎の安否は、それこそ不老不死になった臓硯に託されてしまう。
「ッ――!」
オルガは走り出した。
この役目は、三日月には託せない。いくら「気配遮断」のスキルが有っても、影に近寄り過ぎれば呑まれる。
(それはダメだ。俺よりも、ミカが残った方が良い)
それに、オルガには蘇生宝具が有る。
もしかしたら、影にやられても生き残れるかも知れない。
「オルガ!?」
三日月が走り出すと、臓硯は手をかざす。
「止まれ」
一言で、臓硯が絶対命令を下す。三日月はそれで動けなくなったが、オルガは違った。
「止まるんじゃねぇぞ…!」
そう言いながら、オルガは自らのこめかみに銃を突き付け、引き金を躊躇い無く引く。
「ほう――?」
一瞬死ぬコトで、命令はその対象を失った。オルガのみ、令呪の軛から逃れたのである。
「オルガ!!」
三日月の声を後目に、オルガは路地裏に飛び降りて行った。
―interlude out―
「があッ…!」
少女とギルガメッシュの間に割って入り、ギルガメッシュを突き飛ばしたのは、キャスターのサーヴァント――オルガ・イツカだった。
影に貫かれ、オルガは派手に吐血。横の壁に叩き付けられて、崩れ落ちた。
「貴様、
「ぐ、ッ…行け!」
オルガはモビルワーカーを一機召喚し、ギルガメッシュを路地裏から押し出す。片足を失って機動力が鈍ったギルガメッシュは、向かって来るMWから逃れられず、されるがままだ。
それからオルガは、影によって貫かれた傷を押さえて、再び血を吐いた。
「クソ、何でだ…
影に貫かれたのは、左胸と腹。間違い無く致命傷であり、本来ならば宝具が発動し、希望の華が咲いて治癒され、蘇生するハズなのだ。
なのに、宝具が働かない。
いや、働いていても効果を発揮していないのか。やはり、あの「影」にはサーヴァントの何もかもが通用しない。
「…足りない」
眼前の少女が、虚ろに呟いた。
オルガはそれを聞いて怖気立ち、現在召喚可能な鉄華団の戦力、全てを召喚する。
「やっちまえ…!」
『うおおああああッ!!』
何十機ものMW、モビルスーツが少女へと銃撃する。ガンダム・グシオンリベイクフルシティを始めとしたMS隊は近接武装を構え、少女に向かって一斉に振り下ろす。団員達の声は、最早悲鳴に近いモノだ。
しかし――少女には、弾の一発すら届いていない。
「あーむっ」
少女は口をガバッと開け、閉じる。
もぐもぐと噛み、いつもより多くの魂を咀嚼し、消化していく。そう大して、時間は掛からなかった。
それで、全てが終わった。
キャスターのサーヴァントは、この世から消え去った。彼が死に際に召喚した鉄華団も、その全てが影に取り込まれた。
タリナイ。
「――こんなんじゃ、足りない」
英雄王の足とサーヴァント一騎を取り込み、なおも満ち足りない。空腹は、飢餓は満たされない。まだ、いっぱい食べなくちゃ。
もっと、もっと欲しい。
暗闇に立つ少女――間桐桜の足下から、影が広がって行く。街が黒く染まり、あらゆる命を吸収して行く。
人も動物も魚も。
何もかもが吸われ、黒い影が世界を覆う―――
―interlude―
夜の街に、サイレンが鳴り響く。
暗黒に染まった暴食を眺めて、間桐臓硯は杖で一度、地面を突いた。
「ふむ――加減を知らぬのも困りモノだな。良かれと思って放逐してきたが、これはそろそろ刈り取らねばならぬかのう」
そして、その横には――絶対的な命令により四肢を縛られ、動こうにも動けなくなっている一騎のサーヴァント。
「オル、ガ…!」
「しかし、これは一体どういうコトだ? 独断にしては些か、度が過ぎておるようだが?」
令呪により縛られているのはアサシン――三日月・オーガスだ。五百年を生きる怪物は、淡々と己がサーヴァントを糾弾する。
三日月とオルガは、生前からの親友だ。その絆は兄弟のように堅い。キャスターの独断専行を、アサシンが知らぬハズは無い――と言うのが、臓硯の見解だった。
「――分から、ない…!」
だが三日月は、先ほどから「分からない」としか言わない。この問いも一度目ではないが、三日月の答えは全く変わらない。
「儂に逆らうと言うコトは、あの男の命を投げ出すと言うコトに等しい。それは貴様も分かっておるであろう。
己が筋を通したいのであれば、真実を述べるが良い。令呪で無理矢理喋らせても構わぬのだぞ?」
「――分からない…」
脅しをかけても、三日月の答えは変わらなかった。それを受けて、臓硯は自らの推測を改めた。
知っているのに述べない、のではなく。
アサシンは、キャスターが行動するコトを本当に知らなかったのではないか、と。
事実として、この推測は当たっていた。
オルガは三日月に、己が考えを述べてはいなかった。
何故か。
述べたとしたら、三日月は間違い無く自分がやろうとするからだ。
三日月の優先事項において、オルガの命は自身の命よりも重い。三日月はオルガの命令であれば、何の躊躇いも無く己が命を投げ出す。
それはダメだ。
(オルガ…どうして)
オルガはあの「影」の恐ろしさを重々承知していたし、蘇生宝具が通用するとの確信は持っていなかった。それでも、自分の方がまだ命を無駄にしない可能性は有ると考えたのだ。
だから、オルガは三日月に伝えないまま、作戦を実行した。そしてそれは成功し、ギルガメッシュは現状「影」から逃れた。
「まあ良い。戦力は減ったが、今更あの小僧どもにどうにか出来るコトではない。――あの魔力タンクも要らぬモノとなったな」
臓硯は俯く三日月から視線を外し、暗闇に呑まれた街を一望しながら。
「――そうさな。桜の幕引きはあやつにこそ相応しかろう。予想外の成長ではあったが、アレをあそこまで保たせてくれたのだ。
なれば、息の音を止める喜びくらいは譲ってやらねばなるまいて」
悪辣に、そう一人ごちた。
嗜虐と愉悦を込めて放たれたそれは、少年と少女を大いに弄ばんとするモノだ。
「人の世に疎まれ、憎まれ、呪われ続けた哀れな肉にとっての安息。唯一の味方に否定された時、健気にも世界を恨まずにいた肉がどうするか―――全く、見物と言うべきよな」
―interlude out―
襖が乱暴に開けられた音で、俺は目を覚ました。飛び起きると、襖を開けた人間――遠坂が目に入った。
「士郎、すぐ居間に来て!」
そう言って、遠坂は居間へと走って行った。
桜が隣にいないコトに気が付き、俺は服を速やかに着て居間へと向かう。
居間には遠坂とイリヤがいて、テレビでは衝撃的なニュースが流れていた。
新都で、百人近い人が行方不明となった。
現場は血が残っている箇所も有り、全く不明瞭な事件。警察にも「知人がいなくなった」などと言った声が多数寄せられており、不明者数はこれから増える可能性が高いと。
「遠坂、これは――」
「ええ――間違い無いわね」
教会の事後処理、隠蔽が追いついていない。
そして、あまりにも被害が出過ぎている。――「影」の暴食だろう、と遠坂は言った。
その時、玄関でガタン、と言う音がした。
居間を出て玄関に向かい、ドアを開けると、そこには―――
――桜が、血まみれで倒れていた。
「ッ、桜!?」
「――待ってて、治療の道具を持って来る!」
遠坂が家の中へと走って行き、俺は血に染まった桜に近寄り、その身体を抱きかかえる。
「…!?」
その時、得体の知れない悪寒を感じた。
全身が総毛立ち、冷や汗が頬を伝う。しかし目は、桜の向こう側――桜の影へと向かっていた。
気付くな。やめろ。
本能が叫ぶ。しかし、俺は目を背けるコトが出来ない。そして、確かに見てしまった。
似ているだなんて、考えるな―――
桜の影はノイズがかかって、歪んでいた。
【朗報】ギルガメッシュ、生き残る
正直言うと、最後の最後までギルを残すか残さないかで迷いました。
ただ、色々鑑みた結果、ギルがいないと今後の展開がガン詰みするのでこういう感じに。
オルガが命懸けで作ったのは、突破口です。
次回「ミザリー」