Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》 作:アグニ会幹部
これは異世界オルガを書いてみたくなった結果、ノリで書き始めたモノです。
SN×鉄血は無かった…ハズ。多分。
ルートは色々鑑みた結果、Heaven's Feelになりました。
更新は一週間以上開けないくらいを目指します。
#01 鉄と血と召喚
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
祖には我が大師、シュバインオーグ」
西暦2004年、冬木市。
日本の地方都市の一つであるこの街で、今一つの闘争が幕を開けようとしていた。
聖杯戦争。
七人の
「降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
英霊とは、過去現在未来の英雄が死後に祭り上げられた存在だ。彼らは聖杯戦争において七つのクラスに当てはめられ、現界する。
剣士の英霊、セイバー。
槍兵の英霊、ランサー。
弓兵の英霊、アーチャー。
騎乗兵の英霊、ライダー。
魔術師の英霊、キャスター。
暗殺者の英霊、アサシン。
狂戦士の英霊、バーサーカー。
現在、セイバーとアーチャー以外のサーヴァントは召喚済みである。
そして今、一人の魔術師が英霊召喚の儀式を行っている。
「
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。
彼女の名は、遠坂凛。
普段は穂群原学園の高校生だが、その実、代々冬木の地を管理する遠坂家の五代目当主である。
「――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
遠坂邸の地下室、その床に描かれた魔法陣の上で、彼女は詠唱を行っている。彼女が聖杯戦争に参加するコトは定められた運命であり、彼女もまたそれを当然としていた。
「誓いを此処に。
我は常世全ての善と成る者、我は常世全ての悪を敷く者」
魔法陣が、強い輝きを放ち始める。
狭い地下室の中に魔力が吹き荒れる。
残された二枠の内、彼女が狙うはセイバー。
これまで行われた四度の聖杯戦争において、いずれも最終局面に残っている「最優」とされるサーヴァントだ。
特定の英霊を喚び寄せる「触媒」を用意するコトは叶わなかったが――自分の実力でなら、触媒無しでも最優のサーヴァントを引き当てられると彼女は自負していた。実際、召喚を行っているのは彼女の魔力が最も高まる午前二時。まさしく万全の状態と言える。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ―――天秤の守り手よ!」
魔法陣の輝きが最高に達し、彼女の視界を光が覆い尽くす―――
―――しかし、運命は一つの悪戯をした。
本来有るハズの「縁」は断ち切られ、聖杯は全く別の縁を繋いだ。
そしてそれこそが、この聖杯戦争の運命を大きく変え、歪ませるコトとなる。
大仰な軍服が、凛の前ではためいた。
凛の前に現れたのは、剣どころか武器一つ持っていない、軍服に身を固めた大男だった。
「―――ほう」
灰色の髪、太い眉、立派な髭。
紺色の礼服の上に、緑を基調として金の装飾を施された軍服を羽織っている。
男はどこからどう見ても、過去の英雄とは思えない出で立ちをしていた。それどころか、現代に近しい雰囲気を感じさせている。
「……貴方、何者?
セイバー、って感じじゃなさそうだけど」
凛は困惑しながらも、男に問う。
何であれ、召喚の儀式を経て現れた以上、男はサーヴァントだ。マスターである凛との
その問いに対し、男は自らのクラスと真名を名乗った。
「私はアーチャー。
――ラスタル・エリオンだ」
◇
ラスタル・エリオン。
凛には聞き覚えの無い名前だったが、それは至極当然のコトであった。
彼は、未来より召喚された英霊だったのだ。
「正確には、この世界と違う並行世界、と呼ぶべき世界からだが――何にせよ、私がこの時代から見て未来を生きた者であるコトは確かだ」
英霊の座に時間の概念は無い。
縁さえあれば、未来に誕生する英霊が召喚されるコト自体はあり得る話だ。
「まあ、戦って勝てるなら支障は無いか」
と、凛は判断した。
本当はセイバーが良かったが、今更言っても仕方が無い。どんなサーヴァントだろうと、聖杯戦争に勝てればそれで良いのである。
「勿論、君の勝利の為なら全力を尽くそう。ひとまず、後ろから刺される心配は無さそうで何よりだよ」
「しないわよそんなコト。マスターとサーヴァントでいがみ合ったって、不利益以外の何にもならないもの。
とにかく、私と貴方はこの戦いではパートナーよ。私は貴方を信用するわ。よろしく」
「――賢明なマスターで、こちらとしてもやりやすい。短い間かも知れんが、よろしく頼む。
全てを真っ向から迎え撃ち、叩き潰してやろう」
凛が差し出した手を、ラスタルは力強く握り返した。
◇
翌日、夜。
凛は穂群原学園の校舎の屋上に立っていた。
『どうだ? マスター』
霊体化しているラスタルが、凛に問う。
「間違いなく、結界が張られているわ」
その基点の一つたる魔法陣を叩いて、凛はそう断言した。二、三日前から学校に張られていた結界に凛は気付いていたが、サーヴァントを召喚するまでは静観していたのである。
人間とサーヴァントでは戦闘力に天地以上の差が有るので、マトモに戦ったら基本的に勝ち目は無い。サーヴァントに対抗出来るのはサーヴァントだけだ。
「魂喰いの結界みたいね。大方、魔力の少ないマスターがサーヴァントを維持、強化する為に張ったんじゃないかしら」
完成はしていないらしいが、発動すれば校内にいる人間全てから魔力を吸い上げられる。
『確かに、我々サーヴァントは人間の魂によっても魔力を回復出来る。マスターの負担も軽減される、非常に合理的な策ではあるが』
「――嫌な言い方ね、二度としないで」
露骨に嫌悪感を見せる凛に対し、ラスタルは即座に否定の意見を述べる。
『無論、私に魂食いをする気は無い。魔力は充分足りているし、犠牲を一般人に出す事態など有ってはならない』
「そ。…じゃあ消しましょうか。一ヶ所消したくらいじゃ根本的な解決にはならないだろうけど、完成までの時間稼ぎくらいには―――」
「おっと、そうはさせられないな」
突如として降ってきた声に、凛は身体を強ばらせた。ラスタルの声ではない――もっと若い、男の声。
凛が周囲を見回すと、その主は容易く発見された。
給水塔の上。
紫と黒、白の三色を基調とする装甲を身体に纏わせた、一人の男が立っている。
紫の髪と瞳を持ち、顔の整った美丈夫だが――その顔には、大きな傷が刻まれていた。
「――
凛の問い掛けに、サーヴァントと思しき男は頭を横に振った。
「俺にそんなコトは出来ない。だが、昔馴染みが張った奴だからな。目の前で壊されるのは、流石に目覚めが悪い」
「ほう、昔馴染みとは」
凛の隣で、ラスタルが実体化し――紫髪の男を見上げると、こう言い放った。
「君まで喚ばれているとは思わなかったよ、ガエリオ・ボードウィン。
いや―――
ガエリオは薄い笑みを浮かべ、右手にドリルランスを実体化させた。かつては乗機であったガンダム・キマリスヴィダールの装甲を鎧のように纏う姿は、まさしく騎士である。
「マスター、指示を」
「――手助けはしないわ、アーチャー。
貴方の力、此処で見せて!」
対するラスタルは、右手を上げる。
すると、その背後からは次々と―――モビルスーツ部隊が現れた。
それもただのMS部隊ではない。
禁忌の兵器「ダインスレイヴ」を装備した、ラスタル・エリオンがアーチャーとして喚ばれた要因とも言える部隊だ。MSのスケールは一メートル程度にまで小さくなっているが、その脅威は変わらない。
「承知した。
――ダインスレイヴ隊、放て!」
特殊弾頭が一斉に放たれ、ガエリオを襲う。
ランサーが飛び退き、攻撃を受けた給水塔は粉砕。校庭へと降りていくガエリオを狙い、第二波第三波とダインスレイヴが絶え間なく放たれる。
「く…!」
それを全て回避しながら、ガエリオは距離を詰める算段を立てるべく思考を巡らせる。
ラスタル本体の戦闘能力は、恐らくそれほど高くない。槍の射程に詰めてしまえば、一突きで殺すコトも不可能ではないハズだ。しかし、無数に飛んでくるダインスレイヴを潜り抜けるのは至難の技だと言わざるを得ない。
「逃がさんよ」
ラスタルは飛び回るガエリオを追って凛と共に校庭は降り、ダインスレイヴ隊による制圧射撃を続ける。
かつては共にマクギリス・ファリドに立ち向かった仲だが、この聖杯戦争においては敵同士だ。同胞だった男が相手でも、容赦はしない。
「ッ、そこだ!」
ガエリオがダインスレイヴを構え、撃ち返した。ダインスレイヴ同士が空中で接触し、弾き合った弾頭の内の一本が、ラスタルの側に突き刺さる。
「…ッ!」
「はあっ!」
ガエリオが全速力で距離を詰め、ドリルランスを突き出す。一瞬の隙を突いてダインスレイヴ隊の射撃をかいくぐり、ガエリオはようやくラスタルを槍の射程圏内に捉えた。
(取った…!)
しかし、そう簡単には行かない。
「ふっ!」
「何…!?」
ラスタルが振った大剣に、ドリルランスは弾かれた。それによって僅かにガエリオが体勢を崩した所で、ダインスレイヴが雨の如く降り注ぐ。
ガエリオは全速後退し、辛くもこれを回避。ドリルランスを構え直して、その穂先をラスタルに突きつける。
「剣が出るとは聞いてないぞ」
「剣が出ないと言った覚えはないが」
笑みを浮かべたまま、ラスタルは減らず口を返す。なお、剣は既に霊体化されてラスタルの手には無い。
負けじと追撃を開始すべく、ガエリオが腰を低くした時。
「―――誰だ!」
校舎の方に、生徒の姿が見えた。
「生徒…!? まだ学校に残ってたの!?」
「そうらしいな」
凛とラスタルがそう言い合う間に、ガエリオは逃げた生徒を追うべく校舎へと向かった。
「ランサーは!?」
「先程の人影を追った。――あの男の本意ではないだろうが、目撃者を消しに行ったようだ」
「――ッ、追うわよアーチャー!」
そうして、ランサーを追って校舎に入った二人が、追われていた生徒を発見した時には。
生徒は心臓を潰され、廊下の血溜まりに横たわっていた。
「――アーチャー、ランサーを追って。マスターの顔くらい見なきゃ、割が合わない」
「…了解した」
ラスタルは霊体化し、既に霊体化して立ち去ったであろうガエリオの追跡を開始した。
残された凛は、死に行く生徒に歩み寄る。
「ゴメンね…看取るくらいはしてあげるから」
そう零した後、凛は生徒の顔を確認し――
「―――ウソ、何でアンタが」
目を見開き、声を震わせてそう呟いた。
何故。巻き込まれた不幸で哀れな被害者が、よりにもよってコイツなのか。
コイツがここで死んだら、
「…まだ、手は有る――」
凛はスカートのポケットから、一つのペンダントを取り出した。
赤い宝石が特徴の、死んだ父親の形見と言えるペンダント。膨大な魔力が蓄積された、いざと言う時の為に取っておくべき切り札。
けれど――目の前に倒れている奴を助けるには、もうこれを使うしかない。
「…しょうがないか」
凛は迷いを断ち切り、宝石に込められた魔力を使って、自身が使える最高の治癒魔術を発動させた―――
―interlude―
暗い夜。
帰路の途中で、その人は私の前に現れた。
長い坂の上に立つ人は、金髪のショートヘアに、蛇みたいな赤い瞳をしている。モデルみたいにスタイルが良くて、凄くカッコいい。俗に言えば、イケメンな外国人さんだ。
すると、その人は――歯を見せて、笑った。
それだけで、一気にその人が怖く見えるようになった。俯いた私に、金髪の青年はゆっくりと歩み寄って来る。足を止める気配は無い。
私の横を通り抜ける時――その人の声が、私の耳朶を震わせた。
「今のうちに死んでおけよ、娘。
馴染んでしまえば―――
怖くて悍ましいのに、嫌でも耳に入り、脳に残る声と言葉だった。
思わず振り返ったけれど、そこにその人の姿はどこにも見当たらない。住宅街の無人の坂道は、無機質な街灯で照らされるだけ。
私はまた、歩き出す。
あの家に帰る為に。蟲の音が鳴り響く、あの家に向かって。
―interlude out―
次回「崩れる日常」
明日更新予定。