Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》   作:アグニ会幹部

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遂に三月、第三章公開まで一ヶ月を切りましたね。
てか一週目の来場者特典ン! 絵は素晴らしい美しい好きの極みだけど、二種繋げて完全体なのにランダムなのやめてェ!
一日目に最低二回は見なきゃならなくなったじゃないか!(歓喜)

今回は非常に珍しい(にわか)英語タイトル。
訳は「彼女を死なせるな」になる…ハズ。多分(オイ)


#24 Don't let her die

 轟音が響く。

 手筈通り、ギルガメッシュが正面から殴り込んだコトで、戦闘が始まったようだ。

 

 作戦は至ってシンプルだ。ギルガメッシュが正面で敵の注意を引きつけている間に、士郎と言峰は裏手から侵入し、イリヤを奪還して速やかに逃走する。たったそれだけである。

 

『ほう、この(オレ)を囮にしようとはな。これはまた大きく出たではないか、言峰』

『お前ほどの男が殴り込んで来たなら、間違い無く奴らの意識はお前に向く。それだけで、私達は格段に動きやすくなるのだ。

 それに――陽動の過程で一騎や二騎殺してしまったとしても、事故と言うモノだろう?』

 

 などと、劣勢であるハズの二人が笑いながら言っているのを見て、士郎は「コイツらと共闘出来てて本当に良かった」と心から思った。

 

「さて」

 

 作戦を提案した張本人たる言峰は、城の壁に近付き、取り付いた。てっきり裏口でもあるモノだと期待していた士郎は、それを見て固まってしまう。

 

「どうした衛宮士郎。さっさとしろ」

「え、いや――裏口とかは」

「そんなモノを悠長に探し、行儀良く入るなど自殺行為だ。ここはアインツベルンの城だぞ? どんな罠が仕掛けられているか知れたモノではない。少しでも手は尽くさねばな」

 

 フリークライミングを開始した言峰は、早くはないものの安定感抜群だ。壁の僅かな取っ掛かりに足を掛け手を添え、確実に登って行く。

 

「急げ、衛宮士郎。足場が分からないのなら、見て真似ろ。それと、武器は置いていけ。背負ったままでは安定を欠く。帰る時に回収すれば良い」

「クソ、本気か…!」

 

 悪態を吐きつつ、士郎は言峰の動きを完璧に模倣(トレース)して、後に続く。言峰は三階まで登った所で、窓に手を添える。

 そして――一発殴り、窓をブチ破った。

 

「行くぞ」

 

 言峰は窓から飛び込み、士郎もそれに習って三階へと転がり込む。入った所は部屋の中だ。すると、その時。

 

「シロウ――?」

 

 銀の少女の声が、士郎の耳朶を打った。

 士郎は眼前に見えたイリヤの手を、迷わずに取る。そうして、さっき入って来たばかりの窓に向かって歩き出す。

 

「帰ろう、イリヤ」

「――どうして」

「俺がそうしたいからだ。言っとくけど、無理にでも連れて帰るからな」

 

 手を引かれるイリヤは、唖然としてされるがままだ。傍らの言峰は薄ら笑いを浮かべ――黒鍵の一本を左手で引き抜き、部屋の奥へと投げた。抜剣から投擲まで半秒ほどの、まさしく早業だった。

 投げられた黒鍵は、壁に掛けられた絵の上に突き刺さり――一匹の蟲を、貫き殺していた。

 

「アレは…!」

「やはりそうか。出て来たらどうだ、臓硯」

阿々々々々(カカカカカ)

 

 忌々しい哄笑が響く。閉ざされた部屋の扉の隙間から、無数の蟲が這い出てくる。やがてそれは一ヶ所に纏まり、老人の身体と為す。

 

「久しいな、教会の狗。こうして会うのは十年振りか――ん? 自らの本性を充分に肥え太らせておると思うたが、そうでもないようだな」

「――衛宮士郎。外へ跳べ」

「跳べ、ってお前…!?」

「逃げるぞ」

 

 言峰はそう言って臓硯に黒鍵を投げつけると同時に反転し、イリヤスフィールを抱え、窓から躊躇無く跳び出した。士郎は頭を抱えつつ、咄嗟の思い付きで脚に強化魔術を施し、同じように外へと跳んだ。

 そうして三人は、全力で逃走を開始した。

 

「ホホ、逃げるか若造ども。しかし、無駄無駄――逃れられはせんよ」

 

 臓硯が杖で床を突くと、城の敷地内に禍々しい機械の駆動音が鳴り響いた。

 黒化したセイバー――アグニカ・カイエルが自身の記憶を元に聖杯の魔力で実体化させたモビルアーマー「ハシュマル」が、逃走者を追うべく出撃したのである。

 

「この音は…!?」

「恐らく、ギルガメッシュが戦いたがっていた『天使』だな。全く――あんな機械如きが、天使の名を名乗ろうとは」

 

 百メートルを七秒台、しかもイリヤを抱えながら走る言峰は、そう吐き捨てる。神父の身としては、MAの存在が気に食わないようだ。

 三人を捕捉したハシュマルは、頭部ビーム砲を展開して撃ち放つ。ビームは森を焼き払いながら、三人の左横を掠めた。

 

「うわっ!?」

「チ――」

 

 続いて、漆黒の子機「プルーマ」が多数出撃し、三人に向けて襲いかかる。体長は八十センチほどと小さいが、その数は最早、数えるコトすらバカバカしい。

 このままでは逃げ切れない、と言峰が判断を下した瞬間、プルーマは一気に言峰へと飛びかかって来た。

 

「言峰!」

「舌を噛むなよ…!」

「えっ――きゃああっ!!」

 

 直後、言峰はイリヤを前方へと放り投げる。そして踵を返し、片方に三本ずつ、両手で六本の黒鍵を構え――五体のプルーマを、ものの一瞬で打ち落として見せた。

 

「イリヤ!」

「きゃっ…!」

 

 なお、放り投げられたイリヤは士郎が回収した。ギリギリの所で抱き留めて、ゴロゴロと落ち葉で覆われた地面を転がる。

 

「言峰、お前――!」

「そのままイリヤスフィールと共に行け。臓硯は私が引き受けよう」

 

 士郎とイリヤに背を向けたまま、言峰はそう言い放つ。言峰に掛ける言葉を、士郎は持たない。

 言峰に背を向け、イリヤを抱えて再び士郎が走り出した、その瞬間――

 

 

「衛宮士郎。助けた者が女ならば殺すな。

 ――目の前で死なれるのは、なかなかに堪えるぞ」

 

 

 言峰綺礼は、自嘲めいた言葉を口にした。

 後ろ髪を引かれる気持ちになったが、士郎は振り向かない。ただひたすら、追っ手からの逃走を続けるのみだ。

 

「―――奴は、向こうへ行ったか」

 

 ハシュマルは、走って逃げる士郎と、士郎に抱えられたイリヤを捕捉し追跡する。

 当然だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人を殺す天使だろうと、元々死んでいる言峰には関係の無い話だ。

 

『…ほほう。足を止めるとはらしくもないな、綺礼。お主ならば、衛宮の小倅を撒き餌にしてでも逃げ切るものと思うたが。自ら囮になるとは全く以てらしからぬ善行――まさか、情に絆されたとでも言うつもりか?』

 

 言峰の眼前に、蟲の大群が現れる。

 そこから響く悪辣な声に、言峰は嫌悪を僅かに滲ませつつも、淡々と返す。

 

「衛宮士郎を助けたつもりは無い。単に、お前に用が有っただけだ。どの道、私も衛宮士郎も森からは出られんだろうからな。

 ならば――死ぬ前に、己が目的の為に手を打つのは当然だろう?」

『む…? では、イリヤスフィールはどうでも良いと言うのか?』

「衛宮士郎があの娘を助けようと助けまいと、最早私には関係の無いコトだ」

 

 言峰は人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指の間に一本ずつ黒鍵を挟んで持っている。扇状に展開して持ったそれの内、右手を言峰は持ち上げて、臓硯たる蟲の群れに突きつけた。

 

「私のすべきコトは、イリヤスフィールをお前に渡さぬコトか――ここで、お前を殺しておくコトのどちらかだ」

 

 

 

 

   ―interlude―

 

 

 俺は、何の為に戦ったのか。

 答えは決まっている。オルガの為だ。

 一緒に「本当の居場所」に辿り着くコトを夢見て、俺は戦った。

 

 だけど――最期の最後で気付いた。

 

 俺たちは辿り着いていた。

 「鉄華団」という、本当の居場所に。

 

 でも、俺たちの戦いは終わらなかった。

 止まらない限り、道は続く。オルガと、何故かチョコレートの人とも一緒に進み続けた。

 色んな世界を巡って、色んな奴と戦った。多くの新しい仲間、信頼出来る友と出会えた。本当に楽しい旅だった。

 

 なのに、今は違う。

 

 オルガは死んだ。

 オルガは殺されても死ななくなって、それを当たり前だと思ってた。時々銃撃が当たったのは悪いと思ってるけど、それでもオルガは何度でも立ち上がって、一緒に戦ってくれてたのに――いつまで経っても、オルガは蘇らない。

 いつの間にか、オルガの命を軽く見るようになっていたのかも知れない。オルガを死なせないように戦っていたのに、いつしかそれを忘れてしまっていた。

 

 オルガはもう戻らない。

 助けてくれた人に、恩も返せない。

 そのまま、恩人を陥れたジジイに良いように使われて、何故かオルガが命を張って助けた男と戦っている。

 

 ねえオルガ、教えてくれ。

 

 どうすれば良い?

 俺はどうすれば、恩を返せる?

 どうすれば、筋を通すコトが出来る?

 

 どうして、オルガはあんなコトをしたの?

 教えてくれ、オルガ。オルガ・イツカ―――

 

 

   ―interlude out―

 

 

 

 

 アインツベルン城で、暴力が舞う。

 「ガンダム・バルバトスルプスレクス」の装備を身に着けたアサシン――三日月・オーガスが、ギルガメッシュと苛烈な戦闘を繰り広げているのである。

 

「…どうした、悪魔とやら。その程度か?」

 

 いや、戦闘ではない。制圧だ。

 「英雄王」ギルガメッシュによる一方的な制圧、蹂躙行動に過ぎない。

 

 「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」――人類全ての財の原典が納められた宝物庫の門を展開し、宝具を射出するギルガメッシュに対し、三日月は手も足も出せていない。雨霰が如く降り注ぐ宝剣宝槍の数々を、ガンダム・フレーム特有の機動力でかわすコトしか出来ず、反撃の糸口を掴めていなかった。

 最初は鎧を纏っていたギルガメッシュだったが、今となっては武装を解き、城の屋根の上に座って適当に宝具を射出しているだけである。やがて欠伸でもして、そのまま寝始めそうな勢いだ。それほどまでに、三日月とギルガメッシュには圧倒的な力の差が有る。

 

(何とか、攻め込まないと…!)

 

 ガンダム・フレームの機動力なら、上手くやれば一足飛びに距離を詰めるコトが出来る。慢心のあまり鎧を着ていない今なら、巨大メイスによる一撃で潰すコトすら可能だろう。

 だが、間髪入れず射出される宝具の雨を、如何にしてかいくぐるかが問題である。

 

「…あの天使めは言峰達の方へ行ったか。せっかくこの(オレ)が直々に相手をしてやっても良いと思ったと言うのに、全く気の利かぬ機械よな。所詮は人殺ししか能の無いガラクタと言う訳か」

 

 遂にギルガメッシュは、三日月の方を見てすらいない。自らの意志で動いていない三日月に対して、軽蔑しか抱いていないが故だろう。

 

「犬との戯れも些か飽きた。そろそろ切り上げるとするか」

 

 そんなコトを呟きながら、気怠げに立ち上がろうとしたギルガメッシュに対し――三日月は、全速で飛びかかって突撃をかけた。

 

「ほう」

 

 ここでようやく三日月に意識を戻したギルガメッシュは、突撃して来る三日月を狙って、十本近い宝具を撃ち放った。

 蔵の中で最上級という訳ではないが、それでも「英雄王」ギルガメッシュの宝物庫に納められる宝具だ。並みの宝具とは一線を画す神秘を宿している。

 

「行け…!」

 

 一斉に襲い来る十本の宝具を前に、三日月は背中のテイルブレードを駆動させ――その全てを弾き、進むべき道を拓いた。

 

「何…?」

 

 己が攻撃を雑種如きに防がれ、ギルガメッシュは眉を顰めた。

 障害を排除した三日月はそのまま上昇し、巨大メイスを右手に構えてギルガメッシュの頭上へと舞い上がり、大質量を勢いのままに振り下ろそうとする――が。

 

(オレ)を見下ろすとは――不敬な!」

 

 怒りを見せたギルガメッシュは、振り下ろされたメイスが自身に届くより早く、三日月の直上に宝物庫の門を展開した。その数は六門にもなっている。

 

「ッ、が…!」

 

 今度は、テイルブレードによる防御が間に合わない。門から立て続けに放たれた六本の宝剣が、三日月の背に突き刺さる。そのまま三日月は撃ち落とされ、地面へと叩きつけられた。

 しかし――テイルブレード自体は、射出されて自由に動いている。テイルブレードが蠢き、三日月自身が地面に落ちるのとほぼ同時に、ギルガメッシュへ背後から襲いかかる。

 

「小賢しい」

 

 だが、それすらもギルガメッシュは見抜いている。

 全く動じるコト無く、自身の背後に展開した門からせり出させた剣で、テイルブレードを弾き返させた。

 

「まだ、まだ――!」

 

 なおも、三日月は止まらない。

 六本もの宝剣をマトモに受け、それでもなお三日月は立ち上がる。ガンダム・フレーム特有のタフさ、戦闘継続能力と言えるその光景を前にして、流石のギルガメッシュも目を細めた。

 そして、三日月は地面を蹴り、再び屋根上のギルガメッシュに向かって吶喊する――!

 

「成る程、耐久には目を見張るモノが有るか。その生き汚さは賞賛に値するが――」

 

 ギルガメッシュは立ち上がり、自身の周囲に展開していた門の全てを消滅させた。三日月はそれを妙だと思いつつも、好機と捉えて加速する。

 

「この一撃には、果たして耐えられるか?」

 

 後一秒もせずに自身を攻撃範囲内に捉えるだろう三日月を見下ろしながら、ギルガメッシュは足下に一つだけ門を展開し――

 

 

 異形の「剣」を、喚び出した。

 

 

 それは、回転しながら現世に現れた。

 赤い光を放つ円筒が三つ連なる刀身に、黄金の柄が乗っている。それぞれの円筒は「天界」「地上」「冥府」を表し、その全てを以て「宇宙」を体現せしめる、原初の神造兵装。あらゆる武器の原典にして、その頂点たる対界宝具。

 

「起きよ、エア。本来ならお前の手を煩わせはせんが、此度は特別に『原初の世界』を見せてやるコトとしよう」

 

 

 

 乖離剣エア。

 

 

 あまりに旧いが故に名を持たぬそれを、ギルガメッシュはそう呼んでいる。確かに「真実(すべて)を識るもの」たるかの剣には、メソポタミアの智神の名こそ相応しいだろう。

 

「―――!」

 

 その剣を視界に入れた瞬間、三日月はこれから起こるコトを悟った。悟ってしまった。

 思考によるモノではない。本能が――いや、それすら飛び越えている。遺伝子が、無意識の内に察してしまっていたのだ。

 

(死ぬ。アレには、勝てない――)

 

 

 直後。

 世界を斬り裂く赤い暴風が、吹き荒れた―――




次回「Over Road」
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