Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》   作:アグニ会幹部

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【重要】第三章公開まで一週間


今回は最終決戦その一、アグニカ・カイエルVSギルガメッシュ。
(設定的には)鉄血世界最強の英雄と、Apocrypha以外の全てのシリーズに登場している(実はアルトリアより登場作品は多い)、Fateの裏の顔たる人類最古の英雄王のガチバトルです。


#29 Mighty Wind

 黄金の光が、空洞の中を照らし出している。

 「英雄王」ギルガメッシュが展開する宝具「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」の輝き――無数の宝具を世に顕し、彼の行く手を阻むモノの悉くを穿ち捨てる、圧倒的な蹂躙。この飽和攻撃の前では、並みの英雄などは疾く滅び去る他に無い。

 しかし、この絶死たる黄金の火線の中を飛翔する者が、ただ一騎ここにいる。

 

「―――!」

 

 漆黒の剣士は、一切の間髪も入れずに放たれる宝具の雨の中、その全てを回避し続ける。王の宝具は敵対者を打ち据えるコト無く、ただ大空洞の地を打ち砕いて終わるのみだ。

 

「ええい、小賢しい――!」

 

 王は舌打ちし、門を追加で展開する。

 始めは二十程度だった黄金の門は、既に五十にまで追加されており、攻撃も時を追う毎に増して行っている。

 

 一斉に撃ち出される、五十を超える宝具。

 一発一発が絶殺の破壊力を持つそれを、黒化せしセイバー――アグニカ・カイエルは、凌ぎ続けている。

 

「ッ…!」

 

 回避するだけのスペースが無くなり、いよいよアグニカは紅蓮の剣で立て続けに飛来する宝具を叩いて逸らす。

 これまで回避行動のみで凌いでいたが、そろそろ限界だ。そもそも物理的に、回避に足るだけの空間が確保されなくなったのだから。身体が水のように変幻自在である訳でもないアグニカには、最早回避する為の空間を、ギルガメッシュの攻撃の中に見いだせない。

 

 だから、剣で宝具を打ち落とし、道を作る。

 

 本来、剣で攻撃を防ぐのは、アグニカ・カイエルの戦闘スタイルとはいささか異なる。アグニカは「ガンダム・バエル」が持つ圧倒的な機動力を以て、敵の攻撃を全てかわし、接近して斬り捨てる戦法を基本とする。

 相手からすれば全く攻撃が当たらないばかりか、一瞬で距離を詰められて斬り殺されるという無理ゲー極まるモノであるハズだが――ことここに於いて、その戦法は通用しない。

 

 敵は「英雄王」ギルガメッシュ。

 人類最古にして、最強の一角とされる男。

 

 彼が織り成す射撃は、無数の宝具の原典を貯蔵するバビロンの宝物庫からの、敵を押し潰す飽和攻撃。その一撃一撃が必殺であるクセに、放たれる数はそれこそ無限大。

 それどころか、いざとなれば黒き聖杯すら一時的に跳ね返せる対界宝具すら繰り出される。

 

 まさしく、最強のサーヴァント。

 行動の全てが切り札でありながら、その奥には何者も決して比肩し得ぬ「究極の一」をすら備えている。

 彼の大きな隙へと繋がる慢心も、黒き聖杯に一度殺されかかったコトで消滅した。今のギルガメッシュは、相対した者と油断無く戦い、慢心を一切するコト無く、敵を打ち倒す。

 

「どうした? 随分と苦しくなって来ているようだな、半端者!」

 

 対してアグニカは、無窮の武練にまで達するほどの「技」――「究極の一」を、黒化するコトで失ってしまった。

 今のアグニカが取れる戦法はただ一つ。

 聖杯と直結するが故の魔力による、絶対的な火力差でのごり押しである。

 

「抜かせ――!」

 

 アグニカの両手に握られた紅蓮の剣が、黒い魔力を纏って赤く輝く。右に次いで左。時間差を以て繰り出された魔力による斬撃が、ギルガメッシュに迫る。

 だが――ギルガメッシュは、鼻で笑った。

 

「間抜け。そんな小手先でこの(オレ)を倒そうとは、思い上がるでないわ」

 

 赤い魔力は、二撃ともがギルガメッシュに触れた瞬間、霧散し後方へと逸れていった。砲撃は止まず、アグニカは縦横無尽に飛び回り、攻撃を避け続ける。

 

「チ――」

 

 理解出来る。これは「対魔力」だ。

 宝物庫の宝具により、自らの対魔力スキルを限りなく上昇させたギルガメッシュに、魔力の塊でしかない斬撃が通ずるハズも無い。

 

「全く、所詮はその程度か。

 最新の英雄とやらがどんなモノか、少しは期待していたが――結局は雑種、取るに足らぬ半端者よ。やはり人類は、時代と共に劣化して行くモノらしいな」

「…何?」

 

 ギルガメッシュの言葉に、宝具に追われるアグニカは眉を(ひそ)める。それに気付いてか気付かずか、ギルガメッシュは続ける。

 

「そうであろう? 人類は時を経て劣化する。この時代の酷薄さは、貴様も知る所だろう。

 あまりにも無駄な命が多すぎる。この(オレ)が王位に君臨していた頃の、全くの無駄の無い洗練された文明は、とうの昔に失われて久しい。存在する必要の無いモノなど、この世に在ってはならん。

 この時代は愉しいが、それ故に退屈だ」

 

 だったらどうする、とアグニカは言う。

 ギルガメッシュは歯を見せて不敵に笑い、当然のようにこう口にする。

 

「無駄なモノは一掃する。この(オレ)(オレ)自らの手で、サッパリさせてやろうと言うのだ。聖杯の業火に焼かれてなお残るモノは、運命がそう選んだモノだ。そうなってからの世界こそ、(オレ)が治めるに相応しい。

 生きるのはそれらだけで良い。――今の人間は、この世を生きるにはあまりに弱すぎる」

 

 アグニカは否定しない。

 これが黒化する以前のアグニカであったなら反論の一つもしたやも知れないが、生憎今、アグニカ・カイエルという英雄はその在り方を歪められている。人類の滅亡、世界の破壊を目的とする今のアグニカは、その言葉を聞いた所で何の感傷も抱かない。

 ただ。

 

「下らねぇな」

 

 一言で、ギルガメッシュの言葉を切り捨てるだけ。

 

「無駄なモノを一掃してぇなら、人類の全部をブチ殺しちまえば良い。何もかもブッ壊しちまえば、それだけ世界はヘイワになるってモンだろ。たかだか人類を支配しただけの王サマが、ナニ気取ってやがる?」

「――ほう。そうか貴様、そんなに死にたいか」

 

 青筋を額に浮かべて、ギルガメッシュは怒りを露わにする。一方、その宣告をアグニカは意にも介していない。

 

「ああ死にたいね。こちとら自分(テメェ)のコトが大嫌いなんでな。生きてるだけで吐き気がするよ」

 

 そう、嫌いだ。大嫌いだ。

 全く不甲斐ない自分が嫌いだ。

 何も守れなかった自分が嫌いだ。

 のうのうと存在している自分が嫌いだ。

 

「何が英雄だ。何が最強だ。()()()()()()()()()

 一人の女すら守れねぇような奴が、厄祭戦の救世主だと? 最新の英雄だと? ――寝言もいい加減にしてもらいたいモンだったよ」

 

 アグニカは、人類という種の存続、未来以外の何も守れなかった。

 大切な人は死んだ。仲間には殺された。

 彼の人生は全てが戦いであり、戦いだけが己の存在意義だった。戦いを最も毛嫌いしていたのは、他でもない彼自身だった。本当は戦いなんてしたくなくて、それでも戦った。戦わなければならなかった。

 

 幾多の仲間達の死を、愛していた人の死を意味の無いモノにしない為に。

 価値あるモノとして、未来に残す為に。

 

 自らの幸福を投げ捨て、人類の未来だけを願った。それがアグニカ・カイエルという最新の英雄――本当に守りたかったモノだけは守れなかった男の、哀れな生き様だ。

 

「戯け。貴様を生かす為に死んでいった者は、貴様を英雄だと――人類を救うコトが出来る者と信じて、貴様に道を託したのであろうが。

 その生き方を貴様自身が否定すれば、貴様は貴様の為に死んだ者すら否定するコトになる。貴様が英雄であるコトを、貴様自身が誇りとせずして何とするか」

 

 だからこそ、ギルガメッシュはアグニカ・カイエルを「半端者」と断じた。

 

 仲間が望むような英雄であるのなら、それを誇りとすれば良い。

 自らが英雄でないとするなら、仲間の死は全て無駄だったと諦めてしまえば良い。

 

 そのどちらにも付かない――付けないような甘っちょろい愚鈍なりし者を、半端者と呼ばずして何と呼ぼうか。

 

「生きる限り、人間は前へ進む。進まざるを得ない生き物であろう。過去に囚われ、一切の進歩を止めた貴様なぞ、英雄どころか生物ですらない。単に惨めなだけの、視界に入れるも不愉快な愚物に過ぎぬわ」

 

 確かに、大切なモノを失う痛みは耐え難い。

 ギルガメッシュとて朋友(とも)を失い、自らの国を放り出して六十年もの時を放浪した身だ。失う痛みは、それこそ苦しいほど理解出来る。

 だが、そこで歩みを止めた訳ではない。

 友がいなくなろうとも、そこで自らの生までも途絶える訳ではない。己が命を失わぬ限り、人生は死ぬまで続いて行くモノだ。

 

「自らを犠牲にする行為など、所詮は偽りだ」

 

 アグニカは、死ぬまでそう悟れなかった。

 理想を棄てる前の衛宮士郎(フェイカー)にすら劣る、筋金入りの偽善者である。

 

 

「―――()?」

 

 

 しかし――アグニカは、こう吐き捨てた。

 自らの生き方、存在を否定されたも等しいと言うのに。それが何だと、言ってのけた。

 

「俺の人生は偽りだった。全く無駄だった。

 ()()()()()()()()()()()()()? 俺がテメェを斬って、人類を殺し尽くして、世界をブッ壊すコトに何ら変わりは無ぇだろうが。グダグダ下らねぇコト言ってんじゃねぇぞ、化石人風情が。

 俺の生き方は俺のモンだ。テメェにああだこうだと口出しされる義理は無いし、口出しさせる気も無い。同情も助言も要らねぇんだよ」

 

 アグニカは揺るがない。

 ――本来であれば揺らいでいたかも知れないが、歪みきって開き直った今のアグニカは、ある意味では本来のアグニカよりも強い。

 

「雑種如きが、よくぞほざいた。

 良かろう。その啖呵を以て、不敬への免罪とする――疾く消え失せよ、半端者め」

 

 ギルガメッシュの背後に展開されていた門が閉じ、その手に「王律鍵バヴ=イル」が握られる。

 宝物庫のマスターキーとも呼べるそれからは、赤い水晶のような回路が無数に空へと繋がって放射状に広がって行き――やがて、一条の黄金の光を走らせ、赤き探索線はギルガメッシュの手元へと集積して行く。

 

 そして――王が、乖離剣エアを握った。

 

 三段に分かたれた、黒と赤い線の織り成す円筒のような形状をした歪な剣。否――「剣」という概念が生まれる前の時に生まれたそれは、正確には剣ですらない。

 世界を相手取る対界宝具。バビロニアの「英雄王」ギルガメッシュが持つ、最高最強最大の一撃にして、誇りとする「究極の一」。

 

「本来は貴様のような半端者如きに使うモノではないが――光栄に思えよ、雑種」

 

 円筒が回転し、赤い暴風を編み出す。

 世界を斬り裂く風。かつて混沌の世界を天と地に分け隔てた剣が、まさにその地獄を再現しようとしている。

 

「――来い」

 

 対するアグニカも、宝具でこれに応える。

 両手に握られた紅蓮の剣が、漆黒の魔力をそれぞれ身に纏う。極限にまで圧縮された魔力が空間を揺るがし、剣は歪んでいるようにすら見える。まさしく今、その発動準備が整った。

 そして――それは、ギルガメッシュも同じだ。

 

 

「死して拝せよ―――『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!」

 

 

 赤い暴風が乖離剣の先端に集束し、ギルガメッシュが剣を振り下ろすと共に、その全てが解放される。

 大地が丸ごとめくれ上がるかのように割れ、絶対的にして究極の破壊が訪れる。世界そのものを切断する対界宝具、その奔流がアグニカを襲う。一度呑まれたが最後、塵すらも残さず粉々に消え去るだろう。

 

 

「『絶対の終焉(ベルゼビュート・カラミティ)』―――!!」

 

 

 アグニカが、己が宝具(きりふだ)の名を叫ぶ。

 両手の剣を同時に突き出し、漆黒の魔力が惜しみなく撃ち出される。全てを斬り裂き、あらゆるモノを灰燼と帰す終焉の一撃。

 

 

 赤き暴風と黒き斬撃が、激突した。

 

 

「――ッ!」

「フ」

 

 拮抗はわずか一瞬。

 アグニカの放った魔力はギルガメッシュの宝具によって破られ、見る見るうちに圧されて行く。アグニカが踏みしめる土が割れ、その頬には冷や汗が滲む。

 

 届かない。

 アグニカでは、ギルガメッシュに勝てない。

 

 分かっていた。最初に相対した瞬間から、そんなコトは理解していた。理解出来ていた。

 黒化していようがいなかろうが同じだ。

 小手先の技、魔力のゴリ押し程度では「英雄王」は揺るがない。正面から戦えば、間違い無く殺されるだけと確信していた。

 

 

 だが――大人しく殺されてやるつもりは無い。

 

 

 アグニカ・カイエルが、逆境に於ける英雄。彼の敵は常に格上であり、彼は常に自らの死を確信しながら戦っていた。

 

 だからこそ――この場この逆境こそが、アグニカ・カイエルが最も得意とする戦場だ。

 

 

「リミッター解除」

 

 アグニカの気配が変わる。

 全身に満ちる力の純度が増す。その威力が、それまでよりも上がった。

 

「何?」

 

 ギルガメッシュが怪訝な表情を浮かべる。

 宝具「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」による攻撃は続いている。後二秒も保たずにアグニカの斬撃は破られ、アグニカは世界と共に斬り裂かれ、粉々とされるハズだ。

 

(死を前に錯乱でもしたか?)

 

 ()()が、アグニカの切り札だとギルガメッシュは悟っている。しかし――今このタイミングで発動させた意味を、ギルガメッシュは理解出来ていない。

 そんなモノが有るなら、ギルガメッシュがエアを出すより前にやっておけば良かった。それなら「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」の射撃をかいくぐり、ギルガメッシュに剣を届かせるコトも可能だっただろう。自らの宝具が破られ、眼前に終わりが近付いているこの状況で、どうして。

 

(いや――よもや)

 

 ギルガメッシュは僅かに身構える。

 ここから攻撃をかわし、ギルガメッシュへの反撃を狙うつもりかも知れない。いや、恐らくはそうだ。そうするしか、アグニカに勝ち手は無い。そしてそれを、射撃により撃ち落とす。

 油断も慢心も不要。ただ、眼前の愚者を撃滅する――!

 

「良かろう――やってみせよ、最新の英雄! せいぜい(オレ)を興じさせ、その穢れた剣を(オレ)の身に届かせてみせるが良い!!」

 

 ガンダム・フレームの覚醒。

 秘められし悪魔の力を、己が身を贄とするコトで引き出す――人類が天使が勝つ為に必要とされた、禁忌の力。

 その極地へと達した英雄が、今駆ける――!

 

 

「行くぞ―――バエル!!」

 

 

 スラスターウィングを全開とし、アグニカが地を蹴る。目にも写らない速度まで、一瞬の内に加速せしめる。

 そして、ただ全速で――()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴様、正気か!?」

 

 そう言ったのはギルガメッシュだ。

 有り得ない。ただの自殺行為だ。彼の最高の一撃、世界を斬り裂いた剣に挑むなど。

 

「自棄にでもなり、自ら死にに来るとは――所詮は半端者、偽りの信条に過ぎぬか」

 

 暴風に呑まれるアグニカ。

 その様を見て、ギルガメッシュは心底つまらなさそうに、そう漏らした瞬間――

 

 

 王の瞳は、暴風を突破して来た悪魔の姿を捉えた。

 

 

 

「――ッ、バカな…!!」

 

 アグニカは、もうほぼ武装していない。

 纏っていた「ガンダム・バエル」の装甲は、その全てが剥がれ落ちている。全身から血を流すばかりか、肉が所々で剥ぎ取られ、筋肉や骨が露出している。

 生きているコトが不自然であるほどの外傷。まさに満身創痍となったが、それでも――世界を斬り裂いた一撃を、確かに突破した。

 

「うおおおおおおおおおオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――!!!』

 

 アグニカが吼える。その声は、最早人間のモノではない。それほどまでに、アグニカは悪魔そのものと化していた。

 

「――ッ!?」

 

 この時、ギルガメッシュは初めておののき――がむしゃらに、乖離剣を回転させた。ギルガメッシュ自身への被害すら顧みず、暴風が放出され、二人の直近から荒れ狂う。

 

『ガアッ!』

 

 しかしアグニカは怯まず、左の剣を全力で振り下ろし、乖離剣を持つギルガメッシュの右腕を切断した。それでも排出された乖離剣の暴風が接触し、アグニカの左腕が千切れ飛ぶ。

 

 

 だが―――アグニカはこの瞬間、ギルガメッシュを己が射程圏内に収めてみせた。

 

 

 ギルガメッシュはその気迫に圧され、半歩ばかり後退り――それに気付き、激昂した。

 王たる自らを。天上天下に君臨し、その威を示してきた「英雄王」ギルガメッシュを――たかだか一匹の半端者が、後退らせたのである。

 

「おのれ、獣畜生が――!!」

 

 バビロンの門が、無数に開かれる。アグニカを取り囲むかのように開かれた門の数は、優に二百を超えている。

 全方位、三百六十度から、アグニカに向けて宝具が撃ち出された。その全てが必殺にして、宝物庫の中でも最上級の武具。逃げ場など一切無く、そもそも逃げる暇など無い。

 

 装甲(よろい)を無くしたアグニカの全身に、その悉くが突き刺さった。

 

 最上級の武具を一身に受けたアグニカは、ハリネズミのようにすら見える。間違い無く霊核まで達し、あらゆる身体の機能を瞬時に奪い去る攻撃。一瞬の後に、アグニカ・カイエルはこの世から退場し、聖杯へと還るだろう。

 

 それでも。

 漆黒の剣士は、止まらなかった。

 

 

『「厄祭の英雄(アブソリュート・カラミティ)』―――!!!」

 

 

 その叫びは果たして悪魔のモノか、それとも英雄のモノだったのか。

 何であれ、齎された結果――発生した、一つの事実が変わるモノではない。

 

 

 ギルガメッシュの身体が、アグニカ・カイエルによって両断された。

 

 

 これだけは、確かなコトである。

 最新の英雄が、最古の英雄王に届いた。

 

 アグニカが地に倒れ込み、突如として広がった泥に呑まれて行く。

 此処で、アグニカは消滅する。もう動くコトは無く、そもそも何故動けたかも定かでない。

 

「―――見事だ」

 

 最後の最後。

 ギルガメッシュが放ったその言葉は、果たしてアグニカの耳に届いたのだろうか。




次回「春はゆく」
最終話になります。後書きと同時投稿予定。
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