Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》 作:アグニ会幹部
好き。とても好き。メチャクチャ好き。
やはり梶浦さん×Aimerさんは最強。
柳洞寺で、意識不明者が多数確認された。
そう聞きつけた俺は、柳洞寺に住む友人、柳洞一成の見舞いの為、病院を訪れていた。
「――遠坂?」
見舞いを終え、一成がいた病室を出ると、廊下には遠坂がいた。遠坂はくいっと顎を動かし、無言で歩き出す。付いて来い、というコトだろう。
遠坂と共に病院の屋上に出て、設置されたベンチに腰掛ける。晴れているコトも有り、屋上のほぼ全面にシーツが干されている。
「昨夜、柳洞寺に行ったの。
結論から言うと、柳洞寺を拠点としていたのはキャスターだったわ」
「…だった?」
「ええ。私が行った時、キャスターはいなくなってた。キャスター自身は消えてないみたいだけど、結界は綺麗サッパリ。境内には、魔力を奪われて昏睡した人達だけが残されてたわ」
せっかく張った結界を、片付けた?
キャスター自身は消えていないのに?
「そ。おかしな話だけど、事実キャスターはそうしてる。何でかは分からないけどね。
それと――葛木先生だけは、行方を眩ませているみたい。庭に血溜まりが出来てて、その血からは葛木先生のDNAが検出されたらしいんだけど…死体は見つかってない。
私もその血溜まりを見たけど、間違い無く致死量の出血だったわ。見つからないのは不自然よ」
「…キャスターが、何かしたのか?」
「それは分からないわ。キャスターの英霊が、自分を現世に留まらせるだけの人形としてマスターを操るコトは有るかも知れないけど、それなら怪我をさせる必要は無い。殺したんだとしても、死体は隠したのに血がそのまま、なんて有り得ない。
葛木先生がキャスターのマスターだったか、もしくは何かを見てしまって消されたのか。現場を見ても、謎は解明出来なかった」
何かが起き、キャスターが柳洞寺から手を引いたコトは間違い無い。葛木先生がそれにどう関わってるかは不明だが。
「衛宮くん。一つ提案なんだけど」
「?」
遠坂が立ち上がり、座ったままの俺の前に立つ。
「私と共闘しない?」
「共闘…?」
「ええ。今朝、新都で昏睡事件が起きたのは知ってるわよね?」
それは知っている。
ニュースでは「ガス漏れによる昏睡事件」と報道されていたが――
「…一成達と同じで、魔力を吸われて昏睡したって言うのか?」
「ええ。昨日までも昏睡事件は起きてたけど、私はそれがキャスターの仕業だと思ってたの。柳洞寺が有る円蔵山は冬木一の霊脈で、冬木のどことでも繋がってる。それを使って、魔力を吸い上げてたんじゃないかって」
だが、キャスターは昨夜、柳洞寺から引き上げた。にも関わらず、今朝も昏睡事件は発生している。
「昏睡事件は、キャスターの仕業じゃなかったってコトか?」
俺の言葉に遠坂は頷きつつ、もう一つの可能性を述べる。
「もしくは、昨夜までの昏睡事件はキャスターが起こしてたけど、今朝の昏睡事件はそうじゃないか。何にせよ、キャスター以外の誰かが、街の人から魔力を吸い上げてるコトは間違い無いわ。冬木の
とにかく、今この街で何が起きているのか。一体誰がやっているのか――それが分かるまで、無駄な戦いは避けたいのよ。衛宮くんはそんなコトやってないでしょうし、セイバーもそういうタイプじゃなさそうだし。裏切ったりもしないだろうから、パートナーとしても信用出来そうだもの」
「…休戦協定、兼可能な限りの協力か」
こちらとしても、遠坂の申し出は有り難い。
セイバーはともかく、俺は三流以下の魔術師だ。遠坂とマトモに戦ったら勝ち目は無い。
(セイバーはどう思う?)
(休戦条件的にも彼女の性格的にも、協定終了即不意打ちでサヨウナラにはならないだろう。デメリットよりメリットの方が大きい、どころかデメリットはほぼ無しと言える。こちらに取ってもあちらに取っても、な。
俺としては受けない選択は無いと思うが、最終決定は士郎に任せる)
念話でセイバーに確認するが、セイバーも共闘に賛成している。最終決定権は俺に渡してくれているが、俺としても受けない理由は無いと思う。
敵が減るだけでなく、二騎のサーヴァントが共闘出来るなら単純に有利になる。前に出るセイバーと、後方支援のアーチャー。戦闘スタイル的にも、共闘に向いているだろうし。
「分かった。共闘しよう、遠坂」
右手を差し出すと、遠坂も握り返してくる。
「それじゃ、よろしくね士郎。
早速だけど――今夜、出られる?」
◇
病院から帰ると、桜が回復していた。
とは言え、まだ夕方。それも冬だ。
夕飯を作るにはまだ早い時間だったので、土蔵でガラクタを弄っていると――来訪者を知らせるチャイムが鳴った気がした。桜が出ているんだろうなと推測しつつ、一応家長として出るべきだと思って、玄関に足を運ぶと。
パシン、と。
何かを叩くような音がした。
「…!?」
玄関に急ぎ足で出ると、そこには慎二と――頬をぶたれ、倒れ込んだ桜がいた。桜の頬は赤く腫れている。
「―――慎二、お前…ッ!」
目の前が真っ赤に染まった。
ズカズカと、慎二に向かって歩き出す。
「何だよ衛宮。僕は桜の兄貴だ。帰って来ない妹を迎えに来て、何が悪いのさ」
慎二の言葉など知ったコトじゃない。その胸ぐらを掴み、ドアに慎二を叩き付ける。
「ぐ…!」
「妹を殴る兄貴がいるか!!」
それから口を慎二の耳元に寄せ、桜に聞こえないようにして言う。
「美綴を巻き込んだお前に、桜は任せられない」
「…ああ、そう言うコトね。
昨日の今日で手を出しちまって――まだヤり足りないから手放したくないのか」
「ッ、慎二!!!」
慎二の頭突きが、俺の額に直撃する。
俺は思わず後ずさり、痛む額に右手を当てるが――今回ばかりは、慎二が許せない。
「――慎二…!」
「へえ。良いねその顔。
やろうぜ、この前の続きだ!」
上等だ。やってや――
「兄さんやめて!!」
――俺の怒りは、桜の悲痛な懇願によって一瞬収まった。桜の方を見ると、桜は俯きながら泣きそうな声で言う。
「何でも言うコトを聞きます…だから、先輩の前ではやめて下さい…!」
「…桜」
慎二の方も、桜の言葉でやる気を失ったらしい。舌打ちの後、桜に言い放つ。
「――桜。その言葉、絶対に忘れるなよ」
そして、慎二は衛宮邸を後にした。
慎二が去り、ドアが閉められた後、桜は俺に言う。
「…先輩、ごめんなさい」
「――桜が、謝るコトじゃない」
これで一層、桜を家に帰せなくなってしまった。俺は拳を握りしめ、残った怒りを噛み潰した――
◇
夜。
遠坂が指定した時刻までにはまだ時間が有るので、土蔵で壊れていたストーブの修理をしていると。
「先輩。いますか?」
閉じられた扉の向こう側から、桜の声が聞こえて来た。俺は立ち上がり、扉を開けると――
「…桜、その格好は――」
桜は、白いワンピースに身を包んで、扉の前に立っていた。
純白のワンピースは、桜の綺麗な身体のラインが見えている。白いサンダルも相まって、清楚なイメージを与えてくれた。…勿論、白いワンピースとサンダルでなくても、桜は清楚で綺麗なのだが。
「あの――少し、お話よろしいですか?」
「――ああ、うん。じゃあ、どうぞ」
「はい、失礼します」
外は冬の風が吹き付けるので、かなり冷えて寒い。俺は桜を土蔵へ招き入れつつ、直したストーブに火を入れる。
「さっきは、兄さんがすみませんでした」
「――だから、桜の気にするコトじゃないって」
謝る桜に対し、そう言う。実際、掴み合いになったのは俺と慎二の問題だし、それ以前に桜には何の非も無いのだから。
そして、俺と桜はストーブの前に隣り合って座った。
「…暖かい。これ、直ったんですね」
「ああ。随分、時間かかっちまったけどな」
それなりに古い物でも有るので、このストーブは直ったり壊れたりを繰り返している。今回は一度
「――先輩。覚えてますか?」
桜の突然の問い。何を、と返すと。
「ずっと昔の話です。私がまだ、先輩を知らなかった頃の話」
それから桜は、ストーブの火を眺めながら、ポツポツと話し始めた。ゆっくりと、ビデオテープを回すかのように、思い出しながら。
「真っ赤な夕焼けだったんです。教室も廊下もみんな真っ赤で――綺麗だけど、寂しかった。
そんな中、校庭で一人、走り高跳びをしている人がいたんです」
うっすらと笑みを浮かべて、桜は続ける。どうやら、大切な記憶であるらしかった。
「その頃、私は良くない子でした。跳び続けるその人を見て、失敗しちゃえ――って、ずっと思ってました。でも」
そいつは、跳ぶのを諦めなかった。
何度失敗しても、挑戦し続けていた――と、桜は回想する。
「結局、何回やってもその人は跳べなくて。最後には『自分じゃ跳べない』って納得して、片付けをして帰っちゃいました」
「あー…桜? それって――」
思い出した。それってもしかして…。
「はい。今、私の隣にいる上級生さんでした。その頃から、先輩のコトは知ってたんですよ」
流し目で桜が見てくるので、何だかいたたまれなくなって、とりあえず頬を掻いてみる。確かに、そうやって色んなコトをとりあえずやってた時期は有ったけど――
「そ、そうか…それは、初耳」
――まさか、桜に見られてたとは。
桜は嬉しそうに笑っているが、こっちとしてはかなり恥ずかしい。
「…あの。聞きにくいコトを、聞いてしまって良いですか?」
「? 桜なら、別に構わないぞ」
「ありがとうございます。
――前に聞いたコトが有るんですけど。先輩はここに引き取られた、養子だって…」
…別に、隠してるコトじゃなかった。
あんまり言うコトが無いから、知ってる人は少ないが。
「ああ」
「…何か、辛いコトとか有りましたか?」
何故、桜はそんなコトを聞くんだろうか。
疑問に思ったが、桜は真剣だ。
「そりゃ、最初は。でも、俺の場合、周りの人達がみんな頼りなかったからなぁ」
切嗣は放っておくと三食ファストフードになるくらい家事はまるっきりで、藤ねえは最早言わずもがなである。
「家事もやって、そうこうしてる内に今になった感じかな。――でも、俺が正義の味方になりたいのは、切嗣に憧れたからなんだ」
私生活はだらしなかったけど、切嗣は優しかった。俺が正義の味方を目指しているのも、切嗣がそういう人だったからである。
「――きっと、周りの人達が優しかったんですね」
「…桜?」
桜は膝を抱えて、俯いてしまった。
それとほぼ同時に、ストーブの火が弱まり、フッと消えた。
「あれ、おかしいな…?」
スイッチを動かすが、カチッと火花の散る音が立つだけで、火が付かない。しばらくスイッチを弄っていたが、暗闇の中で桜が呟いた。
「――先輩。もう一つ、聞いて良いですか?」
「…ああ」
桜は一拍置いて、意を決したように――でも、震えるような声でこう言った。
「もし――私が悪い人になったら、許せませんか?」
さっきと同じく、何故そう聞くかは分からない。けど、答えは決まっている。
俺が正義の味方を目指していて、桜が悪い人になるのなら――
「ああ。桜が悪いコトをしたら怒る。誰よりも叱る」
「――良かった…」
桜が俺に、視線を向けた。
「先輩になら、良いです」
そうして浮かべた笑みは、暗闇の中でもはっきりと見える。それはすごく、綺麗で――
「もう寝ますね。おやすみなさい、先輩」
桜が立ち上がり、礼をして土蔵を出て行く。
綺麗で――儚い笑顔に見とれていた俺は、出て行く桜を見ているコトしか出来なかった。
内容的にはほぼ原作通りでしたね(オイ)
今後の為に必要な描写なので許して下さい。
※アサシンが代わってないので、ランサーVSアサシン戦はカットです。
次回「ウォーバランス・ランダマイザー」