Fate/Iron-Blooded Orphans《完結》 作:アグニ会幹部
史上最長タイトルですが、これはゲーム版のなので仕方無いのであります。
深夜。
空には暗雲がかかり、街には大粒の雨が降りしきっている。
衛宮士郎は冬木大橋を渡り、新都の中央公園を訪れていた。十年前、大災害で焦土となった場所に有る中央公園はとにかく広い。明らかに無駄なスペースである気はするが、誰も此処に何か建てようなどと言ったりはしていない。
そんな広い公園の中にいても、街の方からは救急車やパトカーのサイレンが聞こえて来る。また、昏睡した人が出たのである。
「遠坂」
「歩きながら話をして。
私達、見られているからそのつもりでね」
士郎が中央公園に来たのは、遠坂凛に言われてのコトだ。合流して、士郎は凛の言葉を受けて周りを何となく見回しながら、二人は中央公園の広場へと出た。
「――アレは貴方の仕業で良いのかしら?
間桐の御老公」
『
凛が呼びかけると、公園にしわがれた老人の笑い声が響き渡った。それと同時に、公園内に散らばっていた蟲が集結し、人の形を成していく。
やがて、蟲は老人の姿を現した。
「流石は遠坂の娘――優秀優秀」
間桐臓硯。
間桐慎二と間桐桜の祖父にして、「始まりの御三家」と言われる三人の魔術師、その一人。
「臓硯…間桐は敗退したんじゃないのか!?」
「
臓硯の嘲笑と共に、その背後の森から閃光が走り――
「フッ!」
実体化したセイバー…アグニカ・カイエルの剣によって、その閃光が打ち落とされた。何かが飛んできたようだ。
アグニカに打ち落とされた物は地面に突き刺さり、轟音と爆煙を撒き散らす。
「アーチャー…!」
凛の声で、アーチャー…ラスタル・エリオンも実体化する。アグニカとラスタルは士郎と凛の前に並び立ち、飛んできた物を確認する。
「この弾頭、まさか――」
「…はい。間違い無く、ダインスレイヴです」
ラスタルが、そう断言した。
地面には、爪楊枝のような形状をした鉄か何かで出来た弾頭が突き刺さっており、クレーターを作っていた。
「アーチャー、狙撃手を狙えるか?」
「無論」
ラスタルは狙撃部隊を召喚し、光が発された場所に向けてダインスレイヴを放つ。先ほど撃たれた弾頭と同じ物だが、二十は下らない量が森へと突き進む。
「オルガ!」
「おう!」
茂みから、一人の男――いや、サーヴァントが飛び出して来た。
すると、森の奥を狙って放たれた弾頭は空中で下がり、男に向かって一直線へ突き進み――その全てが直撃し、爆発が発生した。
「うおあああああ!!」
男の断末魔が響く。
先程、一撃で地面にクレーターを作った攻撃が二十以上も突き刺されば、どれだけ守りを固めていても無事で済むハズが無い。
「やった!」
凛がガッツポーズするが、アグニカとラスタルは警戒を続けている。
大雨が降っているコトも有ってか、煙がたちまち晴れて行くが――
「…ったく、出番が早ぇよ」
男は無傷で、そこに立っていた。
「そんな、効いてない!?」
「いや―――とにかく斬り込んでみるか」
アグニカが体勢を低くし、全力で地面を蹴った。一瞬で凄まじい速度に加速して、アグニカは黄金の剣を振りかぶり。
「なっ!?」
通り過ぎざまに、男を袈裟斬りにした。
前髪が特徴的な銀髪の男は、派手に血を吹いてその場に倒れ込む。
「よっしゃ、今度こそ致命傷よ!」
「ああ…そう、だよな」
流石に、アレでは生きていない。
左肩から心臓、右腰まで完全に斬り裂かれている。完璧な致命傷だし、絶対に死ねる量の出血だ。
「いや――」
しかし、アグニカは剣を男に向ける。
雨で濡れていながらも、アグニカは冷や汗をかいていた。
男が起き上がった。
白い角張った装甲を身に纏い、パルチザンと呼ばれる槍を構え、アグニカに振り下ろす。
「――生きている…!」
アグニカはそれを受けずにかわし、士郎達がいる方へと五歩ほど後退する。
キャスター。真名をオルガ・イツカ。
彼が持つ宝具は、かつての仲間を召喚する「鉄華団」の他に、もう一つ有った。
攻撃を受けて死亡した際、自らを蘇生する概念的宝具である。蘇生回数は無制限。
また、代わりに銃弾や矢など、飛び道具を引き寄せる性質をオルガに与える。攻撃を吸い寄せるコトで、味方の盾ともなり得るのだ。
「何回生き返るか知らないが――」
アグニカはオルガの攻撃を剣で受け、剣を振り抜くコトでパルチザンを彼方の方向へと誘導すると共に、手首を返してオルガの首を斬り飛ばす。
「――死ぬまで殺すだけだ」
オルガが倒れ込む。その時、アグニカの正面の森から、もう一騎のサーヴァントが飛び出して来る。
「これ以上はやらせない」
身の丈を遥かに凌ぐほどのメイスを振りかぶったそのサーヴァントは、アグニカにそれを振り下ろす。アグニカは流れるような剣捌きで向かって来たメイスを逸らし、懐に踏み込もうとしたが、股下から飛んで来たテイルブレードを弾き返して後方へジャンプし、距離を取る。
それと同時に、ラスタルが放ったダインスレイヴがオルガに直撃し、爆発にもう一騎――アサシン、三日月・オーガスも飲み込まれた。
「――オルガ、大丈夫?」
「攻撃が早えなアイツら…」
「良いじゃん、死なないんだから」
「死んで生き返ってるだけだぞミカ…痛みは有るんだから、あんまり酷使しないでくれよ」
煙が晴れると、そこにはやはり無傷のオルガと三日月がいる。思わず、アグニカは小さく舌打ちした。
「何だアレ、ちょっと面倒臭いぞ」
「何かと言われると、かつてのギャラルホルンの逆賊だとしか…。特にガンダム・フレームの方は、火星に埋まっていたモビルアーマーをほぼ単騎で破壊しています」
「ほう――何? MAだと?」
聞き返したアグニカに、ラスタルは頷く。
アグニカはそれから数秒、何かしらの考えを巡らせたようだったが――すぐに、相対する敵に向き直った。
「――成る程…あのテイルブレードは戦利品、って訳か。バルバトスが装備しているのは妙だと思ったが、そういうコトだとはな」
面白い、と言わんばかりに笑うアグニカ。その笑みを見て、ラスタルは恐れを抱いた。
(強敵を前にし、笑うとは…厄祭戦では、これが普通だと言うのか?)
「もう一人の方は?」
「反抗組織のリーダーだった男です。――何故死なないのかは分かりませんが」
死後の伝説か何かが宝具として昇華されたタイプだな、とアグニカは推測を立てる。その上で、これからの立ち回りを考えるコトとした。
「さてと、どうするか…」
まずはあの二騎のサーヴァントを何とかせねばならないが、森に潜む狙撃手と臓硯にも気を配らねばならない。
「オルガ・イツカ――キャスターの方は、何度殺せば死ぬかが分かりません。まずは三日月・オーガス――アサシンから攻略すべきかと愚考しますが」
「賛成だ。…だが、射撃がキャスターに吸われる以上、お前の攻撃はアテにならないコトになるのか?」
「そのようです」
オルガとラスタルの相性は悪い。攻撃が無効化されるにも等しい分、最悪とすら言える。…とは言え、何度でも蘇る奴と相性が良い奴の方が少ないだろうが。それこそ、不死殺しの特性を持つ宝具でも使わなければ、オルガを消滅させるコトは出来ないのだから。
しかし、それはオルガについての話だ。三日月の方は、一度殺せば消滅させられる。
「――お前とキャスターの間に、アサシンを誘導すれば良いな。よし、そうしよう」
「成る程…それならば、攻撃は届く」
「じゃあそういうコトで。撃つタイミングは任せる。射線に俺がいたとしても、好機ならば躊躇い無く撃て。気を配る必要は無い」
「…御意」
アグニカは背中にスラスターウィングを展開し、オルガと三日月に向かって突撃をかける。三日月がアグニカにメイスを突き出し、アグニカはこれを剣で叩いて飛び上がり、回避。空中で回転して三日月に剣を届かせようとするも、またもやテイルブレードが襲いかかる。
「おっと!」
右手の剣でテイルブレードを弾き返し、左手に剣を実体化させ、回転と共に三日月の肩に打ち込む。三日月が横に飛んだコトで腕を切断するコトが出来ず、剣は円形の肩部装甲を滑るのみに留まる。
すかさずテイルブレードとメイスで空中のアグニカに攻撃をかける三日月だったが、アグニカはメイスの側面を蹴って飛び跳ねる。
「放てッ!」
その時、ラスタルの命令でダインスレイヴがオルガに直撃し、煙が舞い上がってオルガ、三日月、アグニカを覆い尽くす。
「ナイスアシストだ、エリオン!」
煙の中、アグニカは左手の剣で三日月の右手を打ってメイスを取りこぼさせ、右手の剣で三日月の頭部に剣を打ち込む。角が折れ、三日月が怯むと同時に、三日月の横腹を思い切り蹴りつけて、オルガの方へと吹き飛ばす。
「やれ!」
再びダインスレイヴが降り注ぎ、オルガへと向かう。しかし、オルガとラスタルの間には、三日月が滑り込まさせられていた。
「ぐ…ああッ!」
「ミカァッ!」
着弾、その後即座に爆発。
きしくも三日月の死因とすら言えるダインスレイヴを受けたコトで、三日月はかなりのダメージを負ってしまった。
この隙に、アグニカは後退する。
「三日月! 団長! クソ、やらせねぇッ!」
すると、森の中に潜んでいた狙撃手――ガンダム・フラウロスが現れた。
「ほう、狙撃手はフラウロスだったか。…何だあのド派手な色は」
「このシノ様の、流星号をナメんなァ!」
フラウロスは背中に付いた二本のダインスレイヴを、アグニカに向けて放つ。
「よっと」
だが、アグニカは飛来する二本の弾頭の内、一本の側面を叩いて軌道変更させる。すると、軌道を変えられた弾頭がもう一本の弾頭に当たり、それぞれメチャクチャに回転しながら、あらぬ方向へと逸れて行った。
「何だァ!?」
フラウロスが目を剥き、アグニカが迫る。
その絶技の前では、ただ真っ直ぐ飛ぶだけのダインスレイヴなどあまりにも無力である。
「俺達は大丈夫だ、戻れシノ!」
「でもよ―――」
その時。
世界が、暗黒に包まれた。
「…まさか、有り得ん――!」
戦闘を見守っていた臓硯が、目に見えて狼狽える。士郎達も、臓硯の視線の先を見る。
そこには―――
在ってはならない、ナニカが在った。
黒い影。
細くのっぺりとした影が幾重にも折り重なったかのような、異様極まりない存在。
街灯の光に照らされながら、一切の影が出来ない――いや、それ自体が影なのだから、光が生まれないと言うべきか。絵画の上から全く別の紙を貼り付けたかのように、あまりにも世界にマッチしていない。完全に別のモノとしか表現出来ない、ナニカだ。
「遠坂、アレは――何だ…!?」
士郎が問いかけるが、凛にすら分からない。だが、サーヴァント達は一つの確信を抱いていた。――抱かされていた、とも言えるか。
勝てない。どうにも出来ない。
サーヴァントである限り、絶対にアレには勝てない――!
「何だか知らねえが!」
「ッ、ダメだシノ!」
勇敢にも――いや、無謀にもフラウロスが黒い影に近付く。すると、黒い影は触手をフラウロスに巻き付け、巻き取り。
フラウロスを、飲み込んだ。
「うぎゃあああああああああああ―――」
断末魔が途絶える。フラウロスは黒い影に吸い込まれ、分解され、完全に消滅したのだ。
「…虚数、空間――?」
消えそうな声で、凛はそう呟いた。
一方、臓硯は狼狽するばかりである。
「有り得ん――ッ!?」
そんな臓硯の首が、黄金の剣によって断ち切られる。注目が黒い影に集まった隙をつき、アグニカがやったのだ。
しかし、臓硯の首と胴体は蟲へと戻り、あちこちへと四散していく。
『有り得ん…有り得んわ…!』
「チッ」
アグニカは舌打ちしつつ、影に意識を向け直す。すると、影はその下から、黒いモノをズッと伸ばし――
「遠坂!」
「えっ…?」
凛に、黒いモノが向かう。そして、黒いモノが凛に触れる直前、士郎が凛を突き飛ばし――
黒いモノを、踏みつけた。
「が、ッ―――!?」
死ね。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
「―――、―――!」
「士郎!」
士郎が倒れ込む。
オルガと三日月は即座に撤退し、アグニカと凛、ラスタルは倒れた士郎に駆け寄る。
ふと、アグニカが視線を戻すと。
黒い影は消え去っており、何事も無かったかのように、世界には雨音だけが響いていた。
◇
結局、士郎は何とも無かった。
本体に触れた訳でもないので、
「――衛宮くん、大丈夫?」
「…あ、ああ――」
しかし、これではっきりしたコトが有る。
ラスタルに続き、アグニカが確信したコトを述べた。
「今、街で人々から魔力を吸い上げているのは――」
「――ああ。間違い無く、あの『影』だな」
あの影が一体何なのかは、分からないが。
臓硯がかなり狼狽えていたコトから、恐らくはあの臓硯すら想定していなかった何かが、この聖杯戦争で起きている。
間桐臓硯と、黒い影。
士郎と凛の陣営は、この二つを追わねばならないらしい―――
オルガの宝具チート過ぎて草バエル。
基本的にはマスターが死ぬか、魔力が尽きるかしない限り何度でも蘇生出来るという、何だかんだ最後まで生き残って聖杯を手に入れられそうなサーヴァントです。
性格も問題無し。やだ、強すぎない…?
次回「衝撃のマーボー」