声が聞こえる…
…さ……
声が聞こえる…
名前を呼ぶ声が…
…さ……や…
声が聞こえる…
私の名前を呼ぶ声が…
…さ…くや…
水底から聞こえるように不鮮明な…
…さくや…
それでいてはっきりと…
さくや…咲夜…
まるで耳元で囁かれるような…
…咲夜…咲夜ってば…
そしてどこか懐かしい…
咲夜っ…おい起きろっ咲夜っ…
そこで私…十六夜 咲夜は目を覚ました…
‐序章‐
十六夜 咲夜
[紅魔館]
………
……
…
「おい、咲夜起きろって…」
「ん…」
誰かに声をかけられて私はゆっくりと目を開けて周りを見渡す…。
正面には大きな黒板ときょうだい。
慌しく教室から出て行く制服姿のクラスメイト達、机、それに椅子が見える…ここは。
「がっ…こう?…」
「やっと目覚ましたかもうとっくに授業は終わっちまったぜ」
声の主はあきれたように言った。
(…そうか、私、授業中に寝ちゃったんだ…)
時計を見ると針は昼の12時を少し回ったところだった。
「大丈夫か?」
二つの瞳が私を覗き込んでくる…
「魔理沙…うん大丈夫」
彼女の名前は霧雨魔理沙。ウェーブのかかったブロンドのロングヘアーと男まさりの口調が特徴的な私のクラスメイトで親友だ。
「それにしても、あなたが授業中に居眠りなんて珍しいわね…」
魔理紗の後ろから霊夢が話しかけてくる。
「霊夢。」
博麗 霊夢。髪は黒色、ストレートにセミロングのいかにも日本人といったかんじで、
今はそれをポニーテールにしている。
クラス内で私と気軽に話せるのはこの二人だけだ、
いつから親しくなったとかは覚えてない、三人でいるのがごく当たり前のように、いつの間にか三人で集まるようになっていた。
「寝不足?」
霊夢が訊ねてくる。
「昨日読んだ本が面白くて、[銀河系を滅ぼし兼ねない危機が迫りきたとて、
それを虫の知らせ程に感じ取ることも敵わない一介の高校生出である彼にとって
明日の太陽が必ずしもいつもと同じ方角から同じ速度同じ軌跡を辿って昇り同じ輝度で輝くなんて保証は何処にもないのだ
という漠然とした不安を感じることさえ
時は感情を押し流し少年は如何にして心配することをやめて少女を愛するようになったか]
て題名の本なんだけど」
「なげぇよっ」
魔理紗が的確なツッコミをいれる。
「…それ、面白いの?」
魔理沙をスルーしつつ、霊夢が聞いてくる。
「ええ、邪神ハンターの主人公と、邪神の少女の殺伐とした冒険劇を書いた超スペクタクル青春ラヴコメディホラーなんだけど」
「ホラー何だかコメディ何だかはっきりしてほしいわね。」
「いやそこじゃねーだろ!!」
そんなどうでもいいやり取りをしつつ私達は昼食をとるために机を合わせた。
クラスメイトの殆どは教室以外で食べるらしく教室には私達を含め数人程度しか残っていなかった。
「そんなことより売店いこうぜ、急がないといとパン売り切れちゃうぜ?」
魔理沙は、一刻も速く行きたいということいったように足踏みしながら言った。
「私、お弁当だから。」
「私も」
霊夢と私は弁当箱を掲げながら、そう言うと魔理沙は。
「…なん…だと…」
と言いながらこの世の終わりにでも直面したような、絶望的な表情で、二歩三歩と後ろに下がる。
「だっ騙しやがったな、私はお前達のことを信じてたのに…まさか弁当派だったなんて…」
チックショーと叫びながら魔理沙は廊下に飛び出して行った。
「どうしよう?」
「ほっときましょう、いつものことだし」
そういうと霊夢は、弁当の包みを開けた。
私は、魔理沙を待っている間、霊夢のお弁当をちらっとみた。
三段重ねの重箱弁当になっており一段目にはそぼろご飯が二段目にはエビフライや玉子焼き、ポテトサラサダに煮物といったおかず類が詰められており見た目もさることながら栄養バランスにも優れていることが一目でわかる。
さらに三段目にはなんとデザートの和菓子が詰められている。
「どうしたの?」
霊夢が私の視線に気がついて首を傾げる。
「いや...相変わらず凄いの持ってきてるなーて思って」
「...あげないわよ」
霊夢は自分の弁当をかばうように両手で覆った。
「いや、いらないわよ自分のあるし...というかよくそれだけ食べて太らないわね...」
「まあ運動してるからね」
「あれ霊夢、運動部だっけ?」
「いえ帰宅部よ、でも家に帰って神社の掃き掃除とかしてるわ」
「それは運動とは言わないのよ霊夢...はぁじゃあやっぱり体質かしら...羨ましい」
「何が羨ましいって?」
後ろを振り返ると、両手いっぱいのパンを抱えた魔理沙が立っていた。
「霊夢の体質の話よって魔理沙またそんなに買ったの...」
「ふふふ、魔理沙さんは成長期だからな、おっと弁当派のお前らにはあげないからな」
魔理沙は、机の上ドサッとパンを置くと、私の隣に腰掛けた。
魔理沙が来たので、私も自分のお弁当を食べることにした。
「しかしいつの間に弁当派に寝返ったんだよお前ら」
一つ目のパンを開けながら魔理沙が頬をふくらます。
「いやパンだけだと飽きちゃうしたまにはお弁当もいいかなって...。」
本当は朝、夢見が悪く早く目が覚めてしまい。もう一度寝るにもなかなか寝付けず仕方がなく
時間を潰すためにお弁当を作つくるはめになったのだけど…心配かけたくないし言わないでおこう。
「霊夢はどうなんだよ。」
「どうって私いつもお弁当なんだけど」
弁当をつつく手を止めて、霊夢が言った。
「あれ?そうだっけ?」
「アンタは、1日の終わりに記憶がリセットされてるの?」
「魔理沙さんは過去にはこだわらないんだぜ」
魔理沙はそう言って笑った。
「そもそもパンかお弁当かなんてそんなに気にすることでも無いじゃない」
「バカヤロウ、咲夜、お前は全然わかってないぜ」
魔理沙は鼻と鼻がくっつきそうなほど顔を近づけると人差し指を立てて語り始めた。
「いいか手間のかかる弁当を持ってきて、親御さんに迷惑かけて、それで私たち学生はいいのか?青春はそれでいいのか?」
また魔理沙がわけのわかんないことを言い出した。
「学生と言ったらお昼のチャイムと同時に売店へダッシュ!
生徒達がひしめき合い、罵詈雑言が飛び交うなか目的のパンを掴みとる。
それこそが青春を謳歌してると言えるんじゃないか?」
「いやうち学校の売店そんな競争率高くないでしょ。」
それを聞いた魔理沙は勢いよく机を叩く。
「そこなんだよ咲夜ッうちの学校の連中は弁当派ばっかだからパンの取り合いとか起きないんだよ!」
「良いじゃない平和で」
「いいわけないだろっハングリー精神が足りないぜ喧嘩とパン争奪は学校の華だろ?」
いや初めて聞いたけどそんな言葉。
「弁当派は親に作ってもらってるから軟弱なんだ...。」
バシッ
よ。と言う前に霊夢が机におもいっきり箸を叩きつけた。
「それは源爺に毎日お弁当を作ってもらってる私への宣戦布告と考えていいのね魔理沙?」
霊夢の額にうっすら青筋浮かんでいる。
「おやおや今さら気付いのか霊夢?」
魔理沙はニヤニヤ笑いながら肩をすくめてお決まりの挑発ポーズをとる。
お願いだからお昼ごはんくらい静かに食べさせてほしい。
「その喧嘩買ってあげる。」
「口で私に勝てるわけないだろ?」
その言葉をきっかけに二人の言い争いが始まる。
「まったくもう...」
これが霊夢と魔理沙の日常である。
一見、いがみ合っているようにも見えるが、実際は本音をぶつけ合える気の知れた仲なのだろう...少し羨ましくも思う。
「あなたたち本当に仲いいわね。」
「どこがだよっ」
「どこがよっ」」
こうして二人を見ているとある疑問が頭のなかに浮かんできた...二人はいつから一緒にいるのだろうか?...と。
私が出会った時にはもう二人は一緒にいたと思う...そもそも私とはいつ出会ったのだろうか...中学校?小学校?
私には彼女達と出会った記憶がない、ただあるのは友人であるという感覚。
その感覚が自分の中に違和感という形で影を落としていた。
「なあ咲夜もそ思うだろ」
「ふぇ?」
急に話しを振られたので変な声が出てしまった。
「なんだよ聞いてなかったのか」
魔理沙が呆れたように言う。
「ご、ごめん...なんの話し?」
「お菓子と言えばきのこの村かたけのこの里かって話しをしてたんだが、霊夢の奴がたけのこ派だったんだよ」
いや、そんな話してなかったでしょう。
「お菓子といえばたけのこでしょうが、あのチョコレートの量、大きさ、
クッキーの配分...完璧じゃない咲夜もそう思うわよね?」
「い...いやー私はなんとも言えないかな」
そう言いながら私は、力説する霊夢の
熱い視線から逃れるために顔を背けた...。
「はっこれだから食い意地の張ったやつは嫌なんだチョコの多さがどうしたと言うんだキノコのあのフォルムを見ろ
滑らかな曲線を画くクッキーその上に微妙なバランスで乗るチョコレート!!まさにこれこそが黄金比!!」
もはや誰なのかわからない口調に大袈裟な身ぶり手振りで力説する魔理沙の顔がぐいっとこちらを向く。
「咲夜もそう思うよな?」
「え?えっえーーとーー...」
返答に困っていると霊夢が机をバンッと叩きながら勢いよく立ち上がる。
「ちょっと!!うちのたけのこ精鋭隊を誘惑するのはやめてもらえるかしら」
私は断じてそんな部隊に入った記憶はないんだけど。
「ハッ、咲夜がそんな物量だけのたけのこ部隊に入るわけないだろ。」
「そ、そうなのよ私どっちも…」
「咲夜はきのこ親衛隊の隊長だぜ」
うん、この展開は、わかってたわ。
「ちょっと勝手なこと言わないでよ」
霊夢が魔理沙に詰め寄る。
「霊夢だって適当言っただけだろどうせ」
「ちょっと二人とも落ち着いて」
いまにも取っ組み合いの喧嘩になりかねないので一旦二人の間に
割って入ろうとすると、急に霊夢がポンッと手を叩く。
「あっそうだ、このまま言い争っても堂々巡りなだけだし咲夜に決めてもらえばいいのよ。
どっちか決めかねてるみたいだし。」
「え?」
「確かにそれが一番手っ取り早いかもな。じゃあ咲夜が選んだほうが今回の勝者てことでいいな。」
「決まりね」
そう言うと、にらみ合っていた二人の顔がぐいっとこちらを向く。
「咲夜は当然、たけのこの里のほうがいいわよね?」
ニコニコと笑いながらそんなことを言う霊夢、逆に恐怖を感じる。
「いやいや咲夜、お前はきのこ派だよな私はちゃーんとわかってるんだぜ…二度もうらぎらないよな?」
こちらはもう純粋に脅してきてますよね魔理沙さん?
そんな二人がジリジリと迫ってくる。
そして私は思う、コレ逃げられないヤツだ。
「はいはいそこまで、咲夜が困ってるじゃないか」
いつの間にか背後に二人の人物が立っていた。
二人とも一見、小学生かと思うほど小柄で一人は金髪のボブ、もう一人は水色の髪にショートヘヤー
という相変わらず何処にいても目立ちそうな二人組だ。
「チルノ先輩、ルーミア先輩」
「やあ、お昼ご一緒してもいいかな?」
そう言いながら先輩は軽くお弁当をかかげる。
「もちろんですよ、ねっ二人とも?」
このチャンスを逃してはならない。
急いで周りから空いてる机と椅子を二人のために運ぶ。
なんとかうやむやにしなくては今後の学生生活にかかわる…かもしれない。
霊夢と魔理紗どちらかと雰囲気が悪くなるのはいやだ。
「ああ、ありがとう咲夜。」
「ごめんね運ばせちゃって。」
「二人とも、気にしないでください」
椅子と机を二組運び終え全員が席に着いた。
後はがうまく話題を変えさえすれば…。
「ところでさっきの話だけどさドッポが最強だと私は思うんだけどどうだろう?」
チルノせんぱーーーい!
せっかく収まりそうな話をぶり返さないで。下さーーーーい。
そう叫びたいのをぐっとこらえた。
「やばいぜ霊夢…第三勢力だ。」
「そうねでもドッポも捨てがたいわチョコたっぷりだし。」
「おまえは量が多ければなんでもいいのか。」
「私は切りかぶの森が好きかなー」
「「いやそれはない」」
ルーミア先輩の言葉に全員の気持ちが一つになった瞬間だった。
「ひどいっ!?あれおいしいのにっ」
「いやあれ入手難易度が高すぎるだろ通販でも売ってなさそうだし」
「あっこないだスーパーいなげやにあったよ」
「まじでか」
「そういえばあそこ見たことないお菓子とかたまに入ってくるわよね」
ルーミア先輩の発言をきっかけに好きなお菓子戦争はどうやら影を潜めたようで
このあと私達はいなげやの、懐かしいお菓子トークで盛り上がりつつお昼ごはんを食べた。
そして時計の針が30分をさしたころ。
「ご馳走様でした」
私は空になったお弁当箱にむかって手を合わせた。
「咲夜はそういうところしっかりしてるわよね」
霊夢が弁当箱を片付けながら言う。
「え、普通じゃない?」
「目の前の奴をみてもそう言えるの?」
霊夢があごで示したほうを見るとそこには机に突っ伏した魔理紗がいた。
確かにこれは行儀が悪い。
「うっ苦しい…食い過ぎた…ルーミア残りは食べてくれ」
「えっいいのっ!!」
ルーミア先輩は瞳を輝かせながらパンを受けとると両手で持って一口ほうばる、
その姿は小動物のようでとてもかわいい。
「...何考えてるか知らないけど咲夜、鼻血出てるわよ」
「え?」
霊夢に指摘されて慌てて鼻の辺りを擦ると、
確かに擦った指に鮮血がついている。
「指で擦ったら広がっちゃうじゃないのよ、はいティッシュ!それと鏡も!」
「ありがとう」
霊夢からティッシュと手鏡を受けとると確認しながら拭き取っていく。
「鏡か...」
その様子を見ていたチルノ先輩が呟く。
「また始まった」
霊夢は呆れたように肩を竦める。
「私はまだ何も言ってなんだけど」
「いつものあれでしょどうせ」
いつものあれ...とはオカルト研究クラブに所属しているチルノ先輩が活動報告と称し昼休みに怪談や不思議な話を披露することでここのところ恒例となっている。
「まあそうなんだけど」
「おっ新しいやつか?」
突っ伏していた魔理沙が顔を上げる。
ちなみに魔理沙もオカルト研究会に所属している。
「鏡にまつわる話をね...」
チルノ先輩は少し間を取ってから話始めた。
「鏡を覗くと異次元に取り込まれてしまう紫の鏡、0時ちょうどに鏡を見ると願いが叶うのぞみの鏡、
4時44分合わせ鏡を見ると自分の死に姿が見える合わせ鏡の怪...鏡の話にも色々あるけど今回は鏡の無い館の話だ」
「鏡の無い?」
「そう…この町に紅魔館という建物があるのは知っているかな?」
「あの町外れの森の中にある廃館だろ」
チルノ先輩がうなずく。
「そう、その館だ…あの館には鏡が一つも無いんだけどその理由を知ってる人は少ないと思う」
「100年ほど昔あの館はスカーレットという双子の姉妹が住んでいた、その姉妹はとても美しく
可憐で町の人にも人気があったんだけど少し変わったところがあった、それは日の光を極端に嫌っている
ということ、昼間はほとんど外に出ないしたまに外に出るときも日傘をさしたお付を何人もつれて外出していたらしい
まあでもそんな人もいるだろうぐらいに町の人たちは気にもしていなかった…ある事件が起きるまで」
「事件?」
霊夢が尋ねる。
「そう、紅魔館では毎夜のごとくパーティを開いてたんだけど
その客が館に入ったっきり戻ってこなかったんだ、それも何人も当然警察も動いたけれど
証拠は見つけられら無かった、そんなことがあったにもかかわらずパーティーは続けられた
まるで何かに誘われるように集まる人々そして翌朝には誰も戻らない…何かがおかしい
そう思うものが現れた」
「その青年は正義感が強く双子の悪事を暴いてやろうとパーティーの夜、館忍び込んだ
彼は館に入ってすぐに違和感に気づいた…静かすぎるんだパーティーをやってるはずなのに
話し声一つしない…彼は勇気を出して進んだ…とあることに気が付いたそれは鏡が無いこと
それも一つも無いおかしいと思いながら進もうとしたその時、青年は微かながらある臭いを嗅ぎ取った」
「臭いって?」
「…血の臭いさ…彼は怖くなった逃げ出したくなった…だが自分の意思に反して
足は一歩また一歩と臭いのする方へ進んでいく真実を知りたいという欲求が彼を突き動かした
ほどなくして彼は臭いの元へとたどり着いたその部屋の扉の前に立ってるだけで鉄くさい臭いが
鼻を突きむせ返るようだった…彼は恐る恐る扉を開けたそこには驚愕の光景が広がっていた
至る所に飛び散った鮮血…折り重なるように重なった無数の死体…その死体の上で狂ったように笑う双子…
彼は叫び逃げ出した走って走って走ったしかし笑い声はいつまでついてきたまるで耳元で笑っているかのように…」
その場面想像し少し身震いする。
「彼が町に付いたころにはその笑い声は聞こえなくなっていた…彼は急いで警察に駆け込んだその後
突入した警官隊が見たものはおびただしい数の死体だった…パーティーに来ていた
客も使用人も全員死んでいたそうだよ…ただ双子だけが忽然と姿を消していた…それからだよ
あの館では夜な夜なおびただしい数の霊たちが現れるんだそうだ」
「鏡関係ないじゃない」
霊夢がするどいツッコミを入れる。
「まだ話は終わってないよ…そんな惨劇があったにもかかわらずあそこホテルになっただろ」
「ああ、あったなロイヤルホテル紅魔館だったか」
「そう、開業するにあたったオーナーのノーレッジという人が改築をしたんだけどその際、話題作りで鏡の
ある部屋と無い部屋を作ったんだそして開業して程なくして行方不明者が続出したその部屋の共通点が…」
「鏡のある部屋ってわけだな」
「そのとおりあの館では鏡を覗くと鏡に映らない女に連れ去られるという噂が立った
それ以降全ての鏡を取り外したんだけど結局廃業して今の紅魔館になったってわけ」
「で結局双子はなんだったわけ?」
霊夢がたずねる。
「これはあくまで仮説だけど吸血鬼の一種なんじゃないかと思うんだそれだと消えた理由も想像できる」
「吸血鬼っいるわけ無いじゃないそんなの」
霊夢が鼻で笑う。
「いや世界各国で吸血鬼の痕跡は数多くみつかってるぜ」
魔理紗が身を乗り出して言う。
「魔理紗の言うとおりさ…その吸血鬼たちの生き残りがあの紅魔館に住み着いてる私はそう考えている」
「それってつまり…」
「まだあの館に双子の姉妹は生きている」
チルノ先輩は真剣な顔で言った。
「ばからしい百年も前の話でしょ生き残っているわけ…」
「吸血鬼にとって百年なんてあっという間さ中には何百年と生きるやからもいるそれに
現にあの館での行方不明者は数多くいる」
「それ私もしってるぜ、たしかこの学校でも一人行方不明になったとかいう話だ」
「今もなお彼女達は館を彷徨っているんだ…生き血を求めて…ね」
静寂が教室を包んでいる、ありえない話だと一蹴するのは簡単だ、だが先輩の話には
妙な説得力があった。
「なんてね」
チルノ先輩が静寂を破る。
「いやーみんな真剣に聞いてくれるもんだからついまじめに話しちゃったけどさ、今の話
全部これに書いてあったのをそのまんま読んだだけなんだよね」
そう言うと先輩は鞄から一冊の雑誌を取り出した。
「おっ月刊ヌーじゃないか今月号か?」
魔理沙がいち早く反応する。
月刊ヌー、主にオカルト系の情報を取り扱ってる雑誌で心霊・UFO・未確認生物から超能力まで
幅広いテーマを扱っているのだが信憑性に乏しく胡散臭さが目立つ雑誌だ。
「貸してくれよ」
そう言いながら魔理沙が手を伸ばす、しかしチルノ先輩が雑誌を持ち上げたため魔理沙の手は空を切った。
「魔理沙に貸すと返ってこないからなー」
「たのむよ一生のお願いってやつだぜ」
魔理沙が手を合わせて頼む。
「あんた昨日もそんなこと言ってなかった?」
霊夢が呆れた様子で口を挟む。
「はぁしょーがないなぁ…明日には返してくれよ」
そう言うとチルノ先輩は雑誌を魔理沙に手渡した。
「おう任せとけって」
その時、キーンコーンカーンコーンという予鈴のチャイムが鳴った。
「やばっ!教室に帰らないと」
周りを見ると他の生徒達がぞくぞくと教室に戻ってきている。
「机は任せたよ」
そう言うとチルノ先輩は足早に教室を出て行こうとして途中で立ち止まるとこっちを振り返る。
「そうそう言い忘れたんだけど紅魔館に行こうなんて考えるなよ、あそこはマジな所だからな」
「え、それってどういう…」
こと、という前に先輩達は教室を出て行ってしまった。
「おい咲夜席戻さねーと先生来ちゃうぜ!」
おっとそうだった私は慌てて席を元に戻す。
そして一息つくと魔理沙が後ろから話しかけてきた。
「なぁ、今日の放課後に例の紅魔館行ってみないか」
ああチルノ先輩は魔理沙に言っていたのかと一人納得する。
「私は行かないわよ」
そう言いながら霊夢はヌーの雑誌を広げて読み始めた…というかいつの間に取ったのだろう。
「ええーなんでだよ」
「めんどくさいからよ」
即答である。
「ええー咲夜は行きたいよな?」
「えっいや私もちょっと行きたくは無いかなー」
正直大量虐殺があった現場になんて行きたくない。
「二対一ね諦めなさい…」
「えぇーいこうぜいこうぜー」
魔理沙が駄々をこね始めた…高校生にもなってまったく
そんなことを思ってるとページをめくっていた霊夢の動きが止まった。
「ねぇ紅魔館て出るの?」
「え…まぁ一応けっこう有名な心霊スポットではあるな」
「つまり…出るのね」
この流れはまずい気がする。
「行くわよ!紅魔館に!」
「ええー!」
「諦めろ二対一だぜ」
満面の笑みで肩を叩く魔理沙…なぜこんなことに…
こうして私達は紅魔館に行くことになった。