コンサート会場での事件が起きてから2年の月日が流れた。
コンサート会場での事件で重傷をおった少女──立花響──は海を臨む高台に建てられた音楽学校──私立リディアン音楽院高等科──に通っている。そして、その少女は、現在食堂で項垂れていた……。
「うう……朝からクライマックスな気分だよ~。私、呪われてるのかな~?」
「元気だして、響。確かに響は授業に遅れたけど、人としてはいいことしたんだから」
「……うん、ありがとう未来‼」
「ふふ…どういたしまして」
幼馴染みでルームメートである少女──小日向未来──の励ましで、元気になったようだ。
「そういえば、今日だっけ?翼さんの新曲の発売日」
「うん‼学校が終わったらすぐに買いに行くんだ‼未来も一緒に行かない?晩ごはんは、おばちゃんのお好み焼きで‼」
「……ごめんね、響。明日までに出さないといけないレポートがあるから、今日は無理なの」
「そっか~。じゃあまた今度ね‼」
「うん」
その後、響は昼食をとり、午後の授業を受けた。
それから数時間後、午後の授業を受け終え、放課後のHRが終わった響は、未来に「行ってくるね‼」と告げて、
学校を後にした。
CDショップに向かう道中、響はふと2年前の事を思い出していた。
「(私が見た、奏さんと翼さんは、ノイズと戦う戦士だった。だけど、ニュースや新聞では軍の人たちがノイズを鎮圧したってなってる。私が見た奏さんたちは……幻だったのかな?それに…………)」
響は足を止めて立ち止まる。
「(あの仮面の人は誰だったんだろう………………でも、私はあの仮面の人を知ってるような気がする。)」
響は仮面の戦士の事が気になり、考え込んでしまった。
と、その時、
「道のド真ん中で立ち止まるな、響…危ないぞ」
「えっ?ああ‼す、すみません……って!イサムさん!」
注意され、謝りながら後ろを振り返ると、響の知る人物が目に映る。
「卒業祝い以来だな…響、ったくお前は……周りを見て立ち止まれよな」
「アハハハ……ごめんなさい、ちょっと考え事をしてて」
そう、響に注意したのはイサムであった。惨劇後、二人は色々あって、交流関係を深めていく内に名前で呼び合うようになった。それは未来も同様である。
この後、響とイサムは、近くの喫茶店へ足を運んだ。
「ごめんなさい、ジュースご馳走になってしまって」
「気にすんな。俺が好きでやってる事だ」
「ありがとうございます」
しばらく会話もなく、響はオレンジジュースを、イサムはコーヒーを口にする。一口飲むとイサムは口を開く。
「そういえば…未来はどうした?今回は一緒じゃないのか?」
「未来は明日までに提出しないといけないレポートがあるみたいで…今回は私一人です」
「そうか…ところで、あいつらは元気か?何も問題を起こしてないか?」
「はい!元気ですよ!あの時は、本当にありがとうございます!あの子達のおかげで私とお母さんとおばあちゃん、未来はあの二年間何もなく過ごすことができたんです。今でもリディアンに持ってきてるんですよ」
「……そうか…あいつらもお前らに懐いていたからな……安心だ」
イサムは、2年前、気分転換に響の住んでいる街にバイクでドライブに来たことがある。その時、暴力やいじめを受けている響を目撃したのだ。イサムがバイクを止め、暴漢達の間に入って止め、理由を問いただすと、とんでもない答えがかえってきた。それで、怒りを覚えたイサムは連中を力でねじ伏せて殺意を込め脅し追い払ったのだ。
そして、響のそばにいた友人で幼馴染の未来に詳しく事情を聞き、ライブでの事件が原因だと悟る。
自分自身は迫害など無かったが、響の家族まで迫害に遭っているのを知った。未来に手伝ってもらいながら全身あざだらけな響を手当てした。
更に怒りを覚えたイサムは、常備していたサポートアイテムをバイクから取り出し、ディスクアニマルやカンドロイド、ライドガジェットのコダマスイカアームズとタカウォッチロイドを起動させた。
響と未来は俺が取り出し展開させたメカ系のアニマルを見て驚いた表情をしていた。俺は、生活に支障がないよう響やその家族、未来の護衛すること、そして、手を出した奴にはバレないよう痛い目に遭わせることを指示した。
効果抜群だったのか響や家族を迫害をしていた連中は響に手を出すこともなくなり、家にあった張り紙や落書きもしなくなっていた。
その時、互いにの連絡先を交換し状況確認の為、未来に話を聞いたところ、どうやら響や家族に何かしたらタタリが起こると噂が流れてしまったようだ。しかし、唯一響の親友であり支え続けた未来には異変がなかった為、タタリの信憑性が増し、立花家に手を出した連中は避けるようになった。このことは、立花家や未来にとってはありがたいことだった。
事が落ち着いてアニマル達を回収に行こうとしたらアニマル達は響や未来に懐いてしまい離れなくなってしまっていたのだ。
俺は仕方なく響達に一部のアニマルを任せることにした。周りにはアニマル達の事を外部に漏らさないよう念を押し、未来にはディスクアニマルを展開させるための「音角」と呼ばれる音叉型のアイテムを渡して使い方を教えた。未来はディスクアニマルにかなり懐かれていたからだ。
「……そういえば…学園生活はどうだ、楽しいか?」
「はい‼毎日充実してますよ‼」
笑顔で答える響の様子から見て嘘はないみたいだ。
「今日未来からメールで聞いたが、お前…木から降りれなくなった猫を助けて遅刻したらしいじゃないか」
「未来ってばそんなことまでイサムさんに教えたの⁉︎」
「ハハハッ!、まぁ…人助けが趣味なお前らしいがな」
響はあれ以来、困った人を放っておけなくなり、人助けが趣味になっている。おそらくあの時の天羽奏の影響もあるだろうが……。
「今更なんだか、お前が通ってる高校って確か有名な音楽学校だったか?」
「そうですよ‼しかもリディアンには、あのツヴァイウィングの奏さんを輩出し、しかも翼さんが現在通っている学校なのです‼」
「へぇー(驚いた…まさかあの2人に関わりがある学校とはな…………しかし)……ふっ」
響の顔を見たイサムは、少し笑ってしまった。自分を見てイサムが笑っていることに気づいた響は、何かしたかと思い慌ててしまう。
「えっ?何で笑うんですか⁉」
「ワリィ。あのコンサートでツヴァイウィングにあまり興味がなかった響が、ここまで自慢そうに言うぐらいのファンになっているとはな」
「うぅ、言わないでくださいよ~」
「ふっ。……そういえば響、何か買う物があってきたのか?確かリディアンは全寮制だったろ?」
「そうなんです‼今日発売される翼さんの新曲のCDを買いに、外出して来たんです‼」
「風鳴翼のか?お前…それちゃんと予約したのか?」
「ううん、してないけど」
「そういう有名歌手のCDは予約していない限り、ファンが朝から並んで買うものじゃないか?」
「えぇええええええ⁉そうなんですか⁉どっ、どうしよう⁉」
イサムから言われ、響は慌て出す。そんな響に、イサムが救いの手をさしのべた。
「響、とりあえず落ちつけ」
「で、でも‼」
「そうだろうと思って俺が予約してお前の分も買っておいてやった、ホラ」
イサムはバッグから風鳴翼の新曲CDを取り出す。
「えっ?これって!翼さんの新曲のCD!しかも数百人限定の特典付きだ‼︎」
響はイサムが取り出した物をみて驚いていた。
「…… いいんですか!これ、もらってしまって」
「別に構わん、俺は特典には興味なかったからな、CDが買えれば俺は充分だ。」
イサムはツヴァイウィングの歌を聴いてCDを買い始めた。響みたいにファンではないが歌自体は気に入っているので最近はよく聴いている。特にイサムは天羽奏のシングルソングをよく聴く
「イサムさん……ありがとうございます‼︎」
イサムは、答えの代わりに、残っていたコーヒーを全部飲み干した。響は嬉しそうに特典付きのCDを手に持つ。
そしてイサムは、響の分の代金を支払い、彼女と喫茶店から出る。片耳にイヤホンをつけ歌を聴こうとすると突然響がもう片方のイヤホンを耳に近づけ聴く、響はニヤニヤしながらイサムを見る。
「……なんだよ?」
「イサムさんも翼さんのファンだったんですね~」
「ファンって程じゃねぇよ。個人的に歌がいいだけだ」
「へ~」
「……用はすんだだろ。そろそろ帰るぞ」
「あっ‼ま、待ってくださ~い‼」
慌ててイサムを追いかける響。
それから帰る道中、響は貰ったCDを大事そうに抱えながら歩いていた。
「今日はありがとうございます、イサムさん‼」
「気にすんな」
「~♪〜♪」
鼻歌を歌いながら歩く響と、響を見ながら微笑むイサム……だがイサムは何かを感じ取り、表情は厳しいものへと変わった。
そして響は、イサムが止まったことに気づき、イサムの方に顔を向ける。
「?……イサムさん?」
イサムの視線の先に目を向けると、そこには、大量のチリのような物があった。
「コレは⁉」
「ノイズ…………」
「きゃぁあああああ⁉」
「ッ⁉悲鳴⁉」
「あっちからか‼」
イサム達は悲鳴が聞こえた方に走り出した。駆けつけると、1人の少女が怯えながら座りこんでいた。少女の視線の先に、大量のノイズがいたからだ。
イサムと響は、すぐに駆け出した。響が少女を抱き抱えて奥の路地へと入っていく。
「オイ…大丈夫か?」
「うん‼ありがとう!お姉ちゃん‼お兄ちゃん‼︎」
「良かった~」
「……………………」
少女がなんともないことを知り、響は安心する。イサムは無事を確認すると、無言のまま後ろを振り返る。振り返るとそこには、大量のノイズが迫っていた。
「……響、走れるか?」
「えっ?うっ、うん。走れますけど」
「俺がノイズの気を引く。その間にお前はその娘を連れて逃げろ」
「で、でも‼それじゃあイサムさんが!」
「いいから行け‼みんな揃って死にたいのか‼︎」
「…………ッ‼」(ビクッ)
響は納得はしなかったが、イサムに言われた通り、少女を連れて奥へと走っていった。
「絶対に生きて戻ってきてよ‼︎イサムさん‼︎」
響達が走り去ったのを確認したイサムは、ウォッチを起動させバックルについたショットライザーを腰に装着する。
「ノイズ共……ここから先に進めると思うな!」
《バレット‼》
いつも通り無理やりプログライズキーを展開させショットライザーに装身させる。
《オーソライズ!》
プログライズキーを銃に装身させ、ショットライザーを構える。
「変身‼」
《ショットライズ!》
《シューティングウルフ!》
「うおああああ‼」
バルカンへ変身したイサムは、ショットライザーで連射しながらノイズの大軍に突っ込んでいく。
数時間が過ぎた。
イサムと別れた響は、少女を連れて工場地帯に逃げていた。
「はぁ…………はぁ……わぁっ‼」
響は足がもつれて少女と一緒に倒れてしまう。
何とか立ち上がるも、大量のノイズに囲まれていたことに気づく。
「そんな……⁉こんなに逃げたのに⁉」
「お姉ちゃん……あたしたち、死んじゃうの?」
絶望する響に、少女は怯えながら響の袖を掴む。
そんな少女を見て響は、少女を抱き寄せ、コンサート会場で奏に言われたことを思い出す。
『生きることを、諦めるな‼』
(そうだ。あの日、あの時、私は間違いなくあの人に救われた──)
(私を助けてくれたあの人は、とても優しく、力強い歌を口ずさんでいた──)
―ドクン―
あの時の事を思い出す響の体に、変化が起こり始める。
(私にできること…………できること、きっとあるはずだ‼)
(――歌が)
「お姉ちゃん?」
「生きるのを、諦めないで‼」
響は少女に力強く言い放つ。
すると、響の体が光りだす。
(────とても、優しく、力強い、歌がッ‼)
「BalwIsyall Nescell gungnir tron」
響は歌のようなものを呟いた。
すると響を包むかのように、響の体から光が放出される。
やがて光がおさまると、響の姿が変わっていた。
その姿は、奏や翼と同じ装者の姿であった。
今ここに……新たな歌姫が誕生した瞬間である
今回の変身は本編でもあるように短縮版です。