響は現在自分の変化に驚きを隠せない状態だった。
「えっ?なにコレ⁉」
「お姉ちゃん、格好いい‼」
聖詠を唱えた事により姿が変わり、天羽奏と似通ったシンフォギアを纏った響は、突然の事に戸惑っていた。
だがその戸惑いも、目の前にいるノイズを見て頭を切り替える。
「(なんだか分からない……けど‼)今なら、何だかいける気がする‼」
そう言った響は少女の手を握り、頭に浮かんだ歌詞を歌いながらノイズの攻撃を回避した。
「(凄い……ノイズの攻撃を私、避けてる。コレなら)「お姉ちゃん‼後ろ‼︎」えっ?」
次々とノイズの攻撃を回避していた響であったが、少しの慢心が仇となり、ノイズに背後をとられた。
(ま、まずい⁉)
ノイズに背後をとられ、もう駄目だと思ってしまった。
だがその時、
《カバンストラッシュ!》
『#&¢$@§¥%*⁉』
「「えっ?」」
突然緑色の光の斬撃が飛んできてノイズを斬り裂く。斬撃を放ったのはバルカンへと変身したイサムだ。響の背後をとったノイズを、アタッシュカリバーで斬撃を放ち斬り裂いたのだ。
斬り裂かれたノイズは灰となって消え、イサムと響は背中合わせになるような形で着地した。
「あ、あなたは「何で」えっ?」
「何でお前が、それを⁉︎」
イサムは背中越しに驚いた様子で響に質問した。
イサムは、内心かなり混乱している。
「え、えっと、分からないんですけど、何か頭に歌詞?って言えば良いのかな?歌詞みたいなのが思い浮かんで、それを呟いたらコレが体に」
「歌詞ぃ!?……ッ⁉︎(まさか…あの時の傷が関係があるのか!確か未来が…響の体に破片が残っていると言っていた。おそらくあの時、天羽奏の武器の破片が今になって響に影響を及ぼしたのか)」
「あの、あなたはコレが何か知ってるんですか?」
「詳しい事は知らん。簡単に言えば、それを纏っている状態でいればノイズを倒せる事ってくらいだ」
「ノ、ノイズを⁉な、なら‼」
「お前は戦うな」
「な、なんでですか⁉」
「今の自分の状態を見ろ。その子を危険に晒す気か?」
「……あっ」
自分の状態を確認した響は、彼の言葉の意味を理解した。
響の腕の中には少女がいることに気がついたのだ。
「その娘を抱えながらでは、戦い方を知らないお前じゃ守れん。お前はその娘を守ることだけを考えろ。いいな?」
「わ、分かりました‼えっと……」
「バルカン……仮面ライダーバルカン」
「バルカン……さんですね。私は立花響です‼」
知り合いが目の前にいるのに自己紹介をしてきた。
「いいか?俺が合図したらこの場から全力で…………ん?」
「えっ?」
バルカンは響への指示を途中でやめ、ある方向に視線を向ける。
イサムにつられ、同じ方向に視線を向けると、光を放つ何かが、此方に向かって来るのが見えた。
「あれって…………」
「あれは……バイクか?」
近づいて来るバイク……
そして2台のバイクとその操縦者はイサムたちを横切り、ノイズに向かって加速していく。
「ちょっ⁉あのままじゃ⁉」
「……いや、どうやら心配はいらないようだ」
「えっ?」
バイクの操縦者を心配して慌てる響を落ち着かせるようにバルカンは答えた。
響は何故バルカンがそう言い切ったのか不思議に思いながら、バルカンの顔を覗き、再びバイクの方に視線を戻す。
その時、操縦者たちは空に高く翔び上がり、2台のバイクだけがノイズにぶつかって爆発した。
そして
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
2人の操縦者、翼と奏は聖詠を唱えそれぞれシンフォギア【天羽々斬】と【ガングニール】を纏って、イサム達の前に着地した。
「え…………えぇえええええ⁉翼さん⁉それに奏さんまで⁉」
「…………最悪だ」
「大丈夫か2人……じゃなかった!、3人とも‼」
「は、はい‼」
「うん‼」
「問題はない」
「久しぶりに会ったってのに、なんだよその反応は?」
「奏、今は戦闘中なんだから集中して‼それと、久しぶりだなバルカン。あの時は色々と助かった」
「俺が好きでやっただけだ」
「あたしの時と反応違いすきだろ~‼」
「………さっさと奴らを片付けるぞ」
それを見て、翼は呆れて頭をおさえ、響は話に追いつけず頭が混乱する。
「そうだな‼さっさとノイズども倒しちまおうぜ‼」
「そうね。えっと……」
「ひ、響です‼立花響」
「では立花、あなたはその子を守りながら、ノイズの攻撃を避けることだけに集中して。いいわね?」
「は、はい‼」
「バルカン‼色々話を聞きたいけど、今はノイズを倒すのに協力してくれ‼」
「そのつもりだ。が……その前に」
イサムはベルトのホルダーから別のプログライズキーを取り出した。
「なんですか…それ?」
「何をする気だ?」
「まさか…あの大きな一発を放つつもり⁉︎」
「バカ言え…こんな所でぶっ放したら被害が大きくなるだろうが。戦闘形態(フォーム)を変えさせてもらう」
《パワー!》
プログライズキーを展開しショットライザーに装身しているウルフのプログライズキーを外して新たなプログライズキーを装身する。
《オーソライズ!》
《kamen rider kamen rider kamen rider》
《ショットライズ!》
「フッ‼︎」
イサムはバルカンの状態で一発の弾丸を放つ。戻ってきた弾丸を今回は横払うように殴る。
《パンチングコング!》
《Enough power to annihilate a mountain.》
先程のバルカンとは大きく姿を変えた。装甲(アーマー)がパージするように外れると新たな鎧を身に纏う。見た目は狼からゴリラをモチーフにした姿に変わった。
「え……えぇええええええ⁉」
「別の姿……だと⁉︎…」
「オオカミの次はゴリラかよ」
「悪いか?………さっさと終わらせるぞ‼」
「あ、ああ‼」
「風鳴翼、推して参る‼」
バルカンを先頭に、奏と翼がそれぞれ武器【アームドギア】を構えて、ノイズの大軍に突っ込んだ。
「ハァッ‼」
「はぁああああああああ‼」
「てりゃぁああああああ‼」
『『『『『¥§¢$#』』』』』
「ほぇええ…………皆さん凄い」
イサムは、パンチングコングの常時装備のナックルデモリションでノイズを殴り倒し、奏はアームドギアの槍で貫き、翼はアームドギアの刀で次々とノイズを斬り裂いていく。それを見ていた響は驚くことしかできなかった。やがて3人は、1ヶ所に集まる。そして周りにはまだ、ノイズが大量にいた。
「くっ‼まだいるのか」
「どうする?でかいのまで出てきたぞ?」
「……二人とも雑魚を頼んでいいか?」
「ああ、問題ねぇ‼」
「承知した‼」
「ならば、大型ノイズは俺に任せろ。お前たちは残りの雑魚を頼む」
「わかった、頼んだぜ‼」
「行くぞ‼」
イサムに大型ノイズ2体を任せた奏と翼は、ノイズに向かって跳んだ。
「こいつをくらいな!はぁああああああ‼」
『LAST∞METEOR』
『%&¢$§#℃@*⁉』
「はぁああああああああ‼」
『天ノ逆鱗』
奏はアームドギアである槍の先端を回転させ、竜巻を起こしてノイズ達を撃破した。
そして翼は、アームドギアである刀を投擲した後、巨大化させ、それをノイズ目掛けて蹴り貫きノイズは炭化させた。
「流石だな…前よりもかなり腕を上げたみたいだな。俺も決着をつけるか!」
《パワー!》
イサムはショットライザーを手に持ったままプログライズキーのボタンを押し、2体の大型ノイズに狙いを定める。
「ハアァァァァァ………ハァッ‼︎」
トリガーを引き両腕のナックルデモリションが勢いよく発射された。片方ずつ二体の大型ノイズに直撃し大きな風穴が空き、大型ノイズは炭化する。
《パワーパンチングブラスト!》
イサムは、ナックルデモリションから放たれた両腕で2体の大型ノイズを撃破した。
一瞬にして大型ノイズを倒したその光景に、響,翼,奏の3人は目を奪われてしまう。
「す、すご~い‼」
「まさか……大型ノイズ2体を一瞬で倒すとは……」
「やっぱスゲーよ‼バルカン‼」
ノイズを全て倒したバルカンたちは、響と少女の元に歩いていく。
すると、急に奥から黒塗りの車が何台も出てきて、響たちを囲むように止まったかの思えば、黒服の人が何人も降りてきた。
「……コイツらは」
「そういえばお前は初めて見る連中だったな……大丈夫だ。この連中はあたしらの仲間だ。心配しなくてもいい」
「……」
「ママ‼」
奏の説明にイサムは納得したその時、響が抱き抱えていた少女が、響の腕の中から抜け出し、母親がいる元に走っていった。
「あの子、お母さんと再会できて良かった」
母親と抱き合い、笑顔になった少女を見て、響は安心する。
その時、響が纏っていたシンフォギアが突然光だし、光が収まると、シンフォギアは解除され響の姿は制服を着ていた時の状態に戻った。
何が起きてるのか分からない響の元に、コップを持った女性が近づいてきた。
「あったかい物どうぞ」
「あったかい物?ありがとうございます。…………はぁ〜、美味しい」
「よく頑張ったな、立花?」
「あそこで怯えずあの子を守るとは、大した奴だ」
「あ、ありがとうございます‼奏さん‼翼さん‼先程は助けてくれて。実は私、奏さんと翼さんに助けてもらうのは2回目なんです」
「2回目?」
「……もしかして、お前」
奏がなんのことか分かり、響に言おうとしたその時、奏の通信機に通信が入った。
「こちら奏…………うん、ノイズはバルカンと共闘して倒したぜ。……ああ、ガングニールを纏った装者とバルカンもここにいる。…………了解」
通信を終えた奏は通信機をしまい、響に近づく。
「悪いんだけどさ、今からあたしらが所属する組織の本部に一緒に来てくれないか」
「あ、いいですよ」
「サンキュー…じゃあ念のために」
ガチャン!
「へっ?」
響から了解を得た奏は、どこから取り出したのか分からないが、でかい手錠を取り出して響の腕にはめた。
「えぇええええええ⁉な、何ですかコレ⁉」
「悪いな。念のための処置なんだ。我慢してくれ」
「そんな~‼」
「悪いな…………それから」
響に謝った奏は、今度はバルカンに近づいて行った。
「バルカン、あんたも組織の本部に来てくれないか?司令があんたに会いたがってるんだ」
「……………………」
「頼む……この通りだ‼︎あたし達を信じてくれ‼」
頭を深く下げ同行を願う奏の姿に周りは戸惑っている様子だった。
「…ハァ〜、わかった、俺の負けだ……ついて行ってやる。」
数年間もの奏達の執念にため息を吐き、遂に観念し同行を受理した。
「えっ‼信じてくれるのか⁉」
「ああ……ただし、そのかわり手錠は無しだ」
「分かった‼だけど、その姿は解除してくれよ、お前と遭遇して素顔も拝んだこともなかったからな」
バルカンと遭遇して以来数年もの間素顔を見た事がなかった奏達、ついにバルカンの正体があらわになるとあれば心中穏やかではない。
「…………わかった。」
イサムは奏の指示に従い、ショットライザーからプログライズキーを取り外し、変身を解除する。変身を解除したイサムを見て響が驚く。
「え⁉イ、イサム……さん?イサムさんが、バルカンだったんですか⁉」
「今まで黙って悪かったな。それも含め、後で説明してやるから落ちつけ」
「う、うん」
慌てる響を落ち着かせたイサムは、この後、奏たちと共に車に乗り込み、特異災害対策機動部二課へと向かった。
やっとバルカンにフォームチェンジをさせることができた。
おかしな所があればご指摘お願いします