シンフォギア・ウルフ   作:狼ルプス

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読者の皆様、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
2020年最初の投稿です。

第7話をどうぞ!


第7話 剣のウルフと諸刃の剣

イサムと響が特異災害対策機動部二課に協力するようになって、1ヶ月──響はあの戦いの後、何かを決意したようないい顔つきになった。響は、今言える自分の覚悟をイサム、ツヴァイウィングに伝えた。そして響はイサム達に戦い方を教えて欲しいと頼んできたのだ。

 

奏は、あの惨劇が原因で響をこちら側に巻き込んでしまったことに負い目を感じ、余り乗り気ではなかったが、翼は逆に先輩として彼女を鍛える事に意気込んでいた。イサムは響が決めた事を止めるつもりはなかったので、響の意思を尊重した。しかしイサムは装者ではないためシンフォギアの戦い方は教える事はできない。その為、二人に装者としての戦い方の指導を任せた。

 

 

 ところ変わって一角にある休憩スペースにて、司令の弦十郎がエージェントの1人である緒川と仮面ライダーバルカンであるイサムと共に、コーヒー片手に雑談に興じていた。

 話題は主に3人の装者についてだ。

 

「どうだ? 最近のあの3人は?」

 

「悪くない感じだと思います。奏さんは最初は彼女に負い目がある感じでしたが…今はいい感じになっていると思います。何故か翼さんは彼女を鍛える事に意気込んでるみたいです」

 

「ははっ、そうか。翼に気に入られるとは、響くんも苦労するだろうな」

 

「響ならきっと大丈夫ですよ。最近はやっとシミュレーター訓練で型になってきてますし。」

 

最初の響の動きは酷いにも程があった。敵を殴ると言う動作にしたって素人感丸出しで見ていて危なかった。あの時、怒鳴ってでも止めて良かったとイサムは思った。

 

その為、イサム、奏と翼は極力響を実践に出すことは控え、今は戦い方を叩き込むことに専念した。未だアームドギアさえ出せていない響には、危険と隣り合わせの実戦はまだ早すぎる。

 

装者としての戦い方は二人に任せ、武術は現在イサムが教えている。二人は武術はそれなりにできるが戦いではほぼ武器を使っている為、イサムよりは劣る。イサムは近接や遠距離をこなす事ができるバランスタイプなのだ。

 

響は筋が良かったのか覚えが早い、学力に関してはアレだが…体で覚えるのは得意みたいだ。

時折何故か訓練中どうしても密着する際に響が顔を赤くする時があったのは謎だが…なんだったのだろうか。

 

ピロリン♪

とイサムのスマホから着信音が鳴った。相手は未来からだった。(ここからはメールでのやりとりになります)

 

(未来)イサムさん、今大丈夫ですか?

 

 

(イサム) 大丈夫だが…どうした?

 

 

 

(未来)今日もしよかったら響と一緒に流れ星見に行きませんか?

                  

 

 

(イサム)流れ星?確かこと座流星群だったか?

 

 

 

(未来)はい、それでもし大丈夫でしたらイサムさんも一緒にみませんか?

 

 

 

(イサム)うーん、こっちも都合があるからな、いけなくなった時は連絡する。

 

 

 

(未来)わかりました。響にはそう伝えておきます。それと…最近ノイズが頻繁に現れているみたいですけど大丈夫ですか?

 

 

 

(イサム)ああ今の所大丈夫だ。心配すんな、無茶はしねぇ

 

 

 

(未来)分かってはいますけど、やっぱり不安なんです。もしイサムさんに何かあったらって思うと。

 

 

 

(イサム)ありがとな…心配してくれて、その気持ちだけでも充分さ

 

 

 

(未来)わかりました。無事に帰ってきてくださいよ。それと最近響の様子がおかしいのですが、イサムさん…何か知っていますか?

 

 

(イサム)いや、知ってはいるが、こればかりは響本人から聞いてくれ、俺が口出し出来るような内容じゃないからな、ただ…響の事を責めないでやってくれ、あいつは嘘をつくのは下手だが、嘘をつく時は誰かのためと思っての嘘だからな

 

 

(未来) わかりました。いつか響から言ってくれるのを待ちます。イサムさんも怪我には気おつけてください。

 

 

(イサム) おう……わかった。それじゃあまた

 

 

そしてイサムは未来とのやりとりを終えスマホの画面を切る。未来はイサムがバルカンである事は知っているのでノイズが現れる度戦っているのは知っている。

その為ノイズが現れるたんびに未来はイサムの事が心配でならない様子だった。一時期無茶をして怪我をした時たまたま未来がイサムの家に訪ね酷く動揺して手当てをしてもらい未来に凄く怒られた。あの時の未来はスゲー怖かったよ。年下相手にだよ、笑っているのに笑っていない笑顔で俺をみていた。

 

 

 

「クシュン!」

 

「いきなりどうしたイサム君、風邪か?」

 

「風邪薬、用意しましょうか?」

 

「いや……誰か俺の事を噂していたような気がして」

鼻を摩りながら、イサムはそう告げた。心配した弦十郎と緒川は首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな装者の3人は現在二課本部施設のシミュレーターでの訓練を終え、スポーツドリンクを手に取り水分を補給している。

 

 

「ふぃ~。どうだ響、少しはギアの扱いにも慣れたか?」

 

「あはは、正直まだ分からない事だらけですけど、アームドギアなんか、全然出せる気配もありませんし……でも、いつかお2人について行けるように、私…頑張ります!」

 

「よくぞ言ったな…立花。なら、次からはもっと厳しく鍛えてやろう。泣き言は受けつけないからな」

 

「えぇっ!?」

 

「あっはっはっ! 墓穴掘っちまったね、響。ま……安心しな。あたしとイサムも付き合うからさ」

 

 笑いを交えながら談笑する三人の様子から容易に窺えるが、3人の仲は良好である。

当初こそ、奏は諸々の責任感から彼女を巻き込むことに難色を示していたが、響なりの強い覚悟を聞き、仲間として迎え入れることが決まってからは一転して先輩として甲斐甲斐しく面倒を見ている。

 

また翼は翼で、奏と同じガングニールを纏っているからか響をそれに相応しい戦士に育て上げようと気合を入れて接している。彼女の扱きは厳しいし、響は口では何度も弱音を吐いていたが、覚悟は本物だった。翼に課せられたハードな訓練にも耐え続けている。

 奏がそれとなく緩衝材となって、適度に訓練の手を緩めさせている事も理由の一つかもしれない。

 組んで間もないが装者3人はチームとして割と纏まりつつあった。

 

 

「話、変わるんだけどさ、お前……イサムの事どう思ってんだ?」

 

「はい?どう…とは?」

突然の奏の質問に響は首を傾げる。急に問いかけられた質問に響はどう答えたら良いかわからなかったのだ。

 

「ワリィ、わかりやすく言うと……この際はっきり言う、響は……イサムの事が好きなのか?」

ハッキリと響に告げると響の顔は茹で蛸のように一瞬にして赤くなる。

 

「な、にゃに言っているんですか奏さん⁉︎」

 

「呂律がしっかりしていないぞ……立花」

翼は響のわかりやすいリアクションに呆れながら言う

 

「その様子だと当たりみたいだな。どうもイサムといる時は笑っていることが多かったから……もしかしたらと思ってだんだ。」

 

「確かに……立花は不破といる時は、私達といる時以上に笑っている事が多いな」

翼も奏に同意する。響の表情は笑顔が多いが、特にイサムといる時は表情の変化は周りが気付くくらいかなりある。

 

「う〜、まさか…お二人にバレるなんて、そんなに私ってわかりやすいですか?」

 

「ああ/ええ」

 

「お二人揃って即答ですか⁉︎そこまでわかりやすいだなんて」

響は二人に即答され少し落ち込み気味になる、しかし響の性格上、余り隠し事をするのは得意ではない。ほんの数ヶ月の付き合いでも二人は充分に響の性格を理解している。

 

 

pipipipipipi

 

 

突如として翼の無線機にコール音が鳴った。

 

「ッ!? はい、こちら翼」

 

 素早く通話に出る翼に、無線の向こうに居る弦十郎はノイズ出現の報を知らせた。

 

『翼、ノイズが出現した!その場に全員居るか?』

 

「はい全員います。、不破は──」

 

『イサム君には先にポイント1に向かっている。三人も準備が出来次第出撃してくれ。』

 

 「了解、二人とも…分かってはいるとは思うけど、ノイズが現れた。準備が出来次第すぐに出撃する。立花、今回は私と共に行動するように。」

 

「わかりました!」

翼は場所を確認した後、通信を切り二人に指示を伝え行動を開始する。今回響は翼と共に行動する。今の響はまだ一人では任せられないので必ず誰かが一緒でなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、イサムはノイズが現れたポイント1のノイズを既に全滅させていた。

 

「こちらイサム、ポイント1のノイズは全て倒した。」

 

『ご苦労、連戦になると思うが…響くんが今、別のポイントで一人で戦っている状態だ。救援を頼めないか』

 

「了解…直ぐに向かう」

 

 

弦十郎から話を聞いたイサムは響が戦っている地下鉄内へ向かう。すると、中では響が一人で必死にノイズと戦っていた。

 

「響‼」

 

「イサムさん⁉」

 

「今すぐしゃがめ‼」

 

《フルチャージ!》

 

「えっ?うわ⁉」

 

「ハァッ‼」

 

《カバンストラッシュ!》

 

バルカンはアタッシュカリバーを手に持ち、響にしゃがむように告げて、斬撃を放つ。響がしゃがむのと同時に響の後ろにいたノイズを斬り裂いた。

 

「イサムさん、すみません‼助かりました‼」

 

「よく一人で持ち堪えたな、響‼動きはかなり良くなってきてるぞ!」

 

「はい‼でも、お前たちの……お前たちのせいで‼未来との約束がぁあああ!!」

 

 

 

「なっ⁉響⁉」

 

急に響の様子が変わり、まるで獣のようにノイズを撃退していく。イサムは響の変わりように、驚きを隠せなかった。

イサムは先程響の発言にあった「未来との約束」から、未来とのメールでのやり取りを思い出し、流れ星が見られない事に怒っていると直ぐに理解した。そして響は、一体のノイズを追いかけていった。

 

「おい!待て響⁉どこに行くつもりだ⁉︎単機行動はよせ!」

 

響を追いかけようとするバルカンだったが、ノイズたちに妨害される。

 

 

「チッ!邪魔だ‼」

 

バルカンは左手にアタッシュカリバー、右手にショットライザーを持ちノイズを倒していくが囲まれてしまい、ショットライザーで撃っても減る気配もない。

 

 

「この状況じゃ、今の形態ではきついな……だったら!」

 

バルカンは、ホルダーから蒼色のプログライズキーを取り出した。

 

「翼……お前の天羽々斬の力、使わせてもらうぞ‼」

 

《ブレード!》

 

《オーソライズ!》

 

《song rider song rider song rider》

 

《ショットライズ!》

 

バルカンは天羽々斬のプログライズキーを起動させ、ウルフのプログライズキーを外し天羽々斬のプログライズキーを装身しショットライザーを構えトリガーを引く。そして戻ってきた蒼色の弾丸を殴らず、持っていたアタッシュカリバーで斬り裂いた。

 

《ソード・オブ・ハバキリ!》

 

《Imyuteus amenohabakiri tron》

 

バルカンの姿から、ガングニールバルカンと同じように、天羽々斬のアーマーを上乗せし複眼は蒼色に変わる。右手には刀のアームドギアを握っている。

 

「ハァアアアアア‼」

 

バルカンは刀のアームドギアで、次々と斬り裂いていく。その動きはまるで侍の如し。

ノイズに囲まれていたバルカンはすぐに形成を逆転させた。

 

「ぶった斬る!」

 

《ファング!》

 

《Progrise key comfirmed. Ready to utilize》

 

《シャークズアビリティ!》

 

「はぁああああああああ‼」

 

イサムの持っていた天羽々斬アームドギアにプログライズキーを装身して、そして牙状のエネルギーブレードが形成される。そして円を描くように牙状の刃を振るう。

 

《ファング!ブルースラッシュ!》

 

噛みちぎられたようにノイズは斬り裂かれ炭化する。バルカンの周囲にはノイズはいない。先程の攻撃で全滅したようだ。

 

「今ので最後か。こちらイサム、司令部、響の現在位置は?」

イサムは周囲にノイズがいないのを確認し無線で響のいる位置を確認する。

 

 

『イサムさん、友里です‼今すぐ響さん達の所に向かってください緊急事態です‼』

 

「了解!直ぐに向かう」

 

イサムはあおいの指示に従い、響の元に向かう。地下で戦っていた為、地上は辺りは暗くなっていたが、響と翼を視認することはできた。

そして翼は、対峙するように1人の少女と向かいあい、相手の少女を見て驚いていた。

 

「ネフシュタンの鎧⁉」

 

「へぇ……てことは、この鎧の出自知ってんだ?」

 

「2年前、私達の不始末で奪われた物を忘れるものか‼」

 

「(ネフシュタンの鎧?2年前?…まさか、あのライブの時に関係している物か?)」

 

翼の言葉を聞いて、イサムは2年前のライブのことを考える。すると翼は、アームドギアである刀を構えた。

 

「やめてください‼翼さん‼相手は人です‼人間です‼」

 

「「戦場で何をバカなことを⁉」」

 

響が翼と少女の戦いを止めようとするが、2人は同じ言葉を言い放ち、やめようとしなかった。

 

「……ッ⁉どうやら、あなたとは気が合いそうね?」

 

「だったら、仲良くじゃれあうかい‼」

 

そう言って少女が翼に向かって飛び出す。

だが

 

《ショットライズ!》

 

「ッ⁉ちぃっ⁉」

 

《シューティングウルフ!》

 

 

イサムは通常形態に戻り、放った弾丸を、少女に向かって放った。

それに気づいた少女は後ろへ後退し、弾丸を避けた。

 

「テメェがバルカンか」

 

「お前……俺のことを知ってるのか?」

 

「まぁな」

 

「イサム‼あの者は私が相手する‼」

 

「了解だ。だが気を付けろ、あの少女もだが、あの纏っている鎧……お前達が使っているシンフォギアとは一味違うぞ」

 

「心得た‼」

 

「はんっ‼ぶっ飛ばしてやる‼その前に…お前ら二人はこいつらが相手だ!」

 

そう言った少女は、杖のような物を取り出した。そしてその杖から光が放たれ、その光がノイズへと変わった。

 

「なっ⁉ノイズを生み出した⁉」

 

「チッ、厄介な事を……響、あいつは翼に任せて…俺達はノイズを倒すぞ」

 

「は、はい‼」

 

俺と響は翼の邪魔をさせないように、ノイズを倒していく。響を一人で戦わせるのも不安だったが上手く戦えている。訓練の成果が出ている証拠だ。

 

「(クソ!数が多いな…響は今の所問題はないが出来るだけフォローはしてやらないとな。それに…あいつの持っていた杖はいったいなんだ?)」

バルカンはアタッシュカリバーを左手に、ショットライザーを右手に握る。

バルカンはショットライザーでノイズを撃ち抜きながら接近しアタッシュカリバーでノイズを斬り裂く。

 

 

「ハァッ!」

ノイズはバルカンの一閃により炭化する。イサムは辺りを見渡すと一部のノイズが一箇所に集中している。

 

「まとめてぶっ潰す!」

 

《バレット!》

 

ショットライザーからエネルギーが蓄積され、イサムはトリガーを弾き放つ。すると複数のエネルギー体の狼がノイズ達を噛みちぎり炭化させる。そしてバルカンはもう一度トリガーを引き、銃口に青いエネルギーの弾を凝縮させて放つ。

 

「ふんっ!」

 

《バレットシューティングブラスト!》

 

放たれた弾丸は残ったノイズを一掃する。そしてバルカンはすぐに別方向にいるノイズに向けショットライザーをバックルに装着する。

 

《チャージライズ!》

 

《フルチャージ!》

 

《Progrise key comfirmed. Ready to utilize》

 

《ウェアウルフズアビリティ!》

 

アッシュカリバーをカバン状態に戻し再びブレード状態にした後、ショットライザーからウルフのプログライズキーを抜きアタッシュカリバーに装身させる。

そして刀身は青いエネルギーが蓄積される。バルカンはアタッシュカリバーのトリガーを引き、一気に振るう。

 

「ハァ‼」

 

《シューティングカバンダイナミック!》

 

無数の青い斬撃が放たれ直撃したノイズは斬り裂かれ炭化する。

 

「よし、こっちはあらかた片付いた…次は」

 

「 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl──」

 

 

「な、なんだ、歌…なのか?あいつらが戦っている際の歌とはまるで違う」

 

今まで聴いていた歌とはまるで違うことに混乱したイサムは、歌声の主に目を向ける。歌っていたのは、翼だった。

 

 

「 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl ──」

 

すると辺り一体の空間が、半球状をした紫色のフィールドに覆われる。

翼は刀を納め、ゆっくりと少女へ近づいて行く。

 鎧を纏った小女は縫い止められたように動けない様子だった。身体を動かそうと藻掻く少女へと、まるで抱擁と共に口付けを交わすように翼は密着する。

 

翼は最後の一節を唄いきった時、シンフォギアから放たれた圧倒的なエネルギー波が、翼中心に、その場にいた全てを吹き飛ばした。

「う、うわああああああーーーーッ!?」

 

「あっ……がっ、はっ……」

 ほぼゼロ距離で食らい、何本もの木にぶつかりながら後方へと吹っ飛ばされる。

 公園の池の真ん中に置かれた岩にぶつかってようやく、少女の身体は浅い水の中へと落ちた。

 

「ぐっ……ああッ……!うぐっ……がっ……ううっ……!」

 

 全身を鋭い痛みが駆け抜ける。鎧に備わった自己再生能力だ。破損した箇所を再生しようとして、装着している少女の身体を侵食しようとする破片の痛みが、全身のあちこちから突き刺してくる。

 

「(ぐっ──クソッ……ネフシュタンの侵食が……ッ!この借りは……必ず返すッ!)」

 

先程の余波で抉れた地面……その真ん中に、翼は独りで立っていた。俺と響は急ぎ、翼の方へと走る。

 

「翼!!」

 

「翼さーーーん!!」

 

そこへ、急ブレーキを踏む音と共に、二課の黒い自動車が停車する。

「無事かッ!翼ッ!!」

 

 ドアを開けて出て来たのは、司令である弦十郎と了子であった。二人とも険しい表情で翼の方を見ている。

 

「私とて、人類守護の使命を果たす防人……」

 俺達の視線が集まる中、翼はゆっくりと振り返った。ヒビ割れ、破損したギア。足元には真っ赤な血溜まり……

 

「こんな所で、折れる剣じゃありません……」

 両眼と口から血を流し、瞳孔の開いた虚ろな目をした翼の顔だった。

 そして、翼はそのまま糸の切れたように、力なく地面へと倒れる。

 

「…ッ‼︎」

 

倒れる瞬間、イサムは変身を解除し慌てて駆け出し、ボロボロになった翼の身体を抱き留めた。

 

「翼……しっかりしろ‼︎翼ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あ……あ、あ……翼さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

月が照らす夜空に、イサムと響の叫び声だけが、辺りに響き渡る。

 

「(クソ!どうする⁉︎このまま病院に連れて行ったところで、この状態じゃ間に合わない……いや、諦めるな!考えろ!何かあるはずだ‼︎何か…方法が!)」

 

するとイサムの周りの景色が突然と変わった。イサムは状況が理解できず辺りを見渡す。辺りは真っ白な空間に包まれていた。

 

「ここ…どこだ?なんで急にこんなところに」

 

「君を待ってたよ、不破イサムさん」

 

イサムは振り向く、そこにいたのは、イエローのTシャツの上に白衣を着た青年であった。

 

 

 

 

そして社員証らしき物には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“宝生永夢”と書いてあった。


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