鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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ヒロイン力とはなんだろうと考える今日この頃。


ちかライフ

自作ゲームとは作るのが難しい。

それは、実際にゲームを作ろうとした人が誰しも感じることである。

僕も、昔オリジナルのゲームを作ったことがある。

とは言っても、小学二年の頃の話だ。

そのゲームの内容は今でもうろ覚えながらに憶えている。

具体的には、決められたユニットの中から好きなものを選び、サイコロを振って相手と勝負をする。

ユニットごとに属性が決められていたり、ランダムなフィールドによって、ユニットに効果を及ぼしたりと色んな要素があった気がする。

勿論、小学二年なので、アナログで作った。

しかし、その時もそれなりに悩んだ。

それが、今となっては更に複雑なゲームを考えたりもするようになる。

ハッキリ言うと、アナログよりもデジタルなゲームの方が作るのが難しい。

RPGなど、個人の制作でやるものでない。

絶対に力尽きてしまう。

まぁ、つまり、何が言いたいかと言うと、自作ゲームは難しいという話である。

 

***

 

双六。

起源を辿れば紀元前三千五百年前の古代エジプトまで遡る歴史のある遊戯である!

ゲームとしてはサイコロを振って進むという運ゲーだが、そこでの一喜一憂を楽しむゲームである。

さて、何故そのような話をするかと言えば、

 

「双六を作りました!みんなでやりましょう!!」

 

と、藤原先輩が宣言したからである。

現在、生徒会室には生徒会メンバーの4人と、伊井野、僕がいる訳だが、

 

「いや、藤原先輩。まだ、それ部活内でも試運転してないでしょう」

 

と、ツッコませて貰った。

流石にまだ試運転で問題ないことを確認してもいないのに、人にやらせるのは駄目だ。

 

「えー。そこでそう切り出すんですか鳴滝」

「部活内でのあだ名で、言わないで下さい。それに風紀委員もいるのにやれる訳無いでしょう。な、伊井野」

 

伊井野に同意を求めると、そうだね。と、返ってきた。

まぁ、当然の反応なので、そのまま藤原先輩の方を向こうとしたらいなかった。

ハッと思い伊井野の方を再び向くと、伊井野が藤原先輩に籠絡されていた。

 

「ま、まぁ、そういうことなら」

「やったー!!」

 

早い!!

ツッコむタイミングさえなかった。

というか、藤原先輩にはチョロいままなのか。

どういうことだ石上!!

 

「ああ、藤原先輩へのリスペクトぶりは知ってる。二時間も聞かされたからな。だから、、、訂正は出来ないんだ」

 

悟った目でそう言われた。

……お前が匙を投げたなら仕方ない。諦めるか。

 

「それにゲームだし、ちょっとやってみたい」

 

若干、目が輝いていた。

それなら、いいか。

 

「はぁー。やってもいいですよ藤原先輩」

「やったー!!」

「白銀先輩と四宮先輩はどうします?」

 

伊井野もやるだろうし、二人にも一応聞いてみる。

 

「ふむ。まぁ、息抜きだ一回だけだぞ」

「ここで、一人だけやらないのも感じが悪いですし、私もやります」

 

どうやら、二人共やるようだ。

 

「それじゃあ、やっていきましょう!!」

 

***

 

ここで、TG部制作双六、名付けてハッピーライフゲームについての説明。

マスごとにカードが存在しており、全99マス。

子供ゾーン、大人ゾーン、老後ゾーンが存在し、それぞれ33マスずつある。

属性カードが全10種あり、それぞれ裏にイベントが書かれていて、そのイベントの結果をサイコロで決める。

表になったカードは取り除かれ、後ろの人が追いつきやすくなっている。

最終的に誰かがゴールした時点で、一番金を持っていた人の優勝である。

一着の特典は一億円である。

()()()、このゲーム、イベントの制作は不治ワラに任せている。

つまり、何がイベントに入っているのか、僕も知らない。

という訳で、正直クソゲーになっている可能性が高いのである!

 

「という訳で気を付けて下さいね。皆さん」

「「「うん、分かっている(います)」」」

 

伊井野と不治ワラ以外は頷いた。

不治ワラは何か言いたげだったが何も言わない。

つまり、クソゲー要素はやっぱり有るのだろう。

伊井野はそんな訳無いと噛み付いているが、不治ワラは前科持ちなので、誰の説得も出来なかった。

さて、一番は僕である。

サイコロを振る。

3が出た。

不幸マスだった。

交通事故イベントだった。

サイコロを振る。

1だった。

死亡した。

最下位でリタイアとなった。

うん。

 

「おのれー不治ワラ!!!!貴様のせいでもう負けてしまった!!!!」

「へっへん。サイコロ運の悪い鳴滝が悪いんですよだー」

「貴様、次の部活で覚えておれ!!散々と辱めてくれるわ!!」

「やれるものならやって見なさい」

「ちょっと、鳴山!藤原先輩に何する気よ!!」

「いや、ちょっと罰ゲームで恥ずかしいこと言ってもらうだけだよ。語尾ににゃんをつけるとか」

「あ、そういうこと」

「僕がそんな変態的なお題出すわけ無いだろう」

 

全く、心外である。

そもそも、女子の方が多い部活で、そんな変なこと出来るわけ無いだろうに。

石上も、伊井野を窘めてるし。

次は、石上の番である。

 

***

 

そんな訳で、僕の即死から始まったゲームは進行する。

白銀先輩は放課後カードでガリ勉カードを取得し、一流大学に進学。

四宮先輩は持ち前の運を使って、ラッキーマスを多く、引き当て現在所持金トップ。

石上と伊井野は、石上が、女性不信カードを引くが、伊井野がラッキーイベントによる救出で、女性不信カードを解消し、ペアカードを入手。

不治ワラは、山もなければ谷もない平凡な人生を歩んでいる。

因みに早々に死んだ僕は、不治ワラのイベント一覧をみながらゲームマスターとして動いている。

そして、ここより子供ゾーンから大人ゾーンに突入していく。

 

「次は、僕ですね」

 

石上が、サイコロを振る。

出た目は4だ。

そこは、結婚マスだ。

 

「それは『結婚マス』だな。一番近くのマスにいる人と結婚する」

「ええと、僕と一番近いのは藤原先輩ですね」

「ええー、石上くんと結婚ですかー」

「そ、そんな!?」

 

テンションの盛り下がっている不治ワラ。

テンションの変わらない石上!

今にも絶望で魔女になりそうな伊井野!!

色々とカオスだが、実はまだ続きがある。

 

「ただし、ペアカードがある場合は、マスに関係なくその二人が結婚します。結婚したプレイヤーは踏んだマスの効果を共有します」

「そ、そうなの!!」

「えっ、ま、マジで!!」

「良かったです。石上くんと結婚しないで」

 

一転するテンション!!

ひどいことを言いながら、テンションが戻る不治ワラ。

伊井野との結婚で動揺しつつもどこか嬉しそうな石上!

石上との結婚でテンションがハイッになる伊井野!!

つくづく見ていて楽しい風景である。

 

「それじゃあ、二人のお祝い金に他のプレイヤーは5万ずつ二人に渡します」

 

そこは、速やかに終わらせ、次の四宮先輩の番。

ラッキーマスで一千万獲得。

次の伊井野の番。

子供ゾーンを抜けて、出産マスに止まる。

見た瞬間、固まりながら赤くなる二名。

僕は、空気を読まずに解説。

 

「子供が生まれます。このマスは双子ですね」

「「双子!?」」

「そうだ。祝い金をもらう。他のプレイヤーから20万ずつ貰うぞ」

 

そして、次の白銀先輩の番。

結婚マスに止まる。

 

「ええと、確か結婚マスは近いマスのプレイヤーと結婚するんだったな。一番近いのは石上だが、石上は既婚者。つまり、次に近い藤原書記だな」

「イェーイ!会長と結婚しちゃいました」

 

それなりにテンションの高い不治ワラ。

不治ワラと結婚しそうで微妙そうな白銀先輩!

やっぱり、魔女になりそうな四宮先輩!!

しかし、これも続きがある!!

 

「この結婚マスは、玉の輿婚ですね。つまり、一番ゴールに近い人と結婚します」

「なーんだ。そうなんですか」

「ほ、ほう。そそ、そうなのか」

「へ、へぇー。そそ、そうなんですか~」

 

ここでも、一転するテンション!!

普通に戻る不治ワラ。

動揺の隠しきれない嬉しそうな白銀先輩!

最早、隠れていないニヤケ顔の四宮先輩!!

いや、本当に面白いなこいつら。

 

不治ワラの番。

不幸マスに止まる不治ワラ。

中身は、金縛りイベント!

既に誰か死んでいる場合、一を出さない限り、動けないイベントである。

僕が既に死んでいるため、一が出るまで、動けない不治ワラ。

絶望する不治ワラ!!

喜ぶ他のメンツ!!

ここに救済処置はない。

まぁ、日頃の行いである。

 

***

 

それ以後、老後ゾーンまでの展開。

順調に資金を集め続ける四宮先輩。

一発、事業を当てて資産を手に入れていく白銀先輩。

交互に出産マスに止まり、慣れてきた石上と止まる度に顔が赤くなる伊井野。

そして、みんな老後に行ってるのに未だに抜け出せない不治ワラ。

このゲームも終盤まで来ていた!!

 

「さて、いよいよ大詰めだな」

「とは言っても、先輩たちの勝利が盤石なんですけどね」

「そ、そうね。で、でも、こんなに子供がいたらこっちもこっちでしあ、幸せじゃない?」

「ま、まぁ、そうかもな。子供10人だし」

「そんなに生むって、一体どれだけハッスルしたのやら」

「もう!!私は抜け出せてないんですよ!!その癖、祝い金だけは奪っていって!!」

 

赤くなり言う伊井野に、照れくさそうに返す石上。

そんな様子には目もくれず、自分のイベントにやられることを嘆く不治ワラ。

なんと、滑稽だろうか。

 

「誰ですか!?こんな鬼畜なイベントを作ったの!?」

「「「「「「藤原(不治ワラ)先輩(さん)(書紀)です」」」」」」

 

全員の一致した意見だった。

 

伊井野の番。

ラッキーマスに止まる。

旅行イベントだった。

子育てを終え、旅行に出掛け、二人でイチャイチャする。

絆カードを手に入れた。

それを聞き、また恥ずかしくなる伊井野。

 

次の白銀先輩の番。

不幸マスだった。

ネクロノミコンを手に入れて、死者蘇生を行う。

蘇り、会長の資産の3割を貰う僕。

イェーイ。帰って来たぜ。

しかも、資金は不治ワラを上回った。

完璧な蘇生だった。

 

「ありがとうございます。白銀先輩」

「ふむ。良いんじゃないのか。初手死亡は流石に可哀想だしな」

「ズルじゃないですか!?理不尽です!?」

「いや、イベント作ったの藤原先輩じゃないですか」

「おのれ、鳴滝ーーーー!!」

 

石上に正論を言われ、言い返せない不治ワラ。

まぁね~。そりゃ言いたくもなるよね~。でも、これってルールなのよね~。

ニヤケ顔になるのが分かる。

後で不治ワラから、邪悪な顔だったと言われた。

 

そして、次の不治ワラの番。

やっぱり、抜け出せなかった。

 

「うわ~ん」

 

終いには、泣き出した。

だったら理不尽なマスを作らなければいいのに。

そして、次の石上の番。

ラッキーマスだった。

 

「ええと、子供が大成功。国の王様になった。って、王様!?」

「ルールブックによると、子供が王様になった場合は一千億手に入ります」

 

ここまできて、石上と伊井野が一千億を入手。

次の四宮先輩の番でゴール。白銀先輩と四宮先輩が一億円入手。

これにより、ゲーム終了となった。

総合結果。

1位、石上   一千億三千万

2位、伊井野  一千億二千万

3位、四宮先輩 一千億

4位、白銀先輩 七十億

5位、僕    三十億

6位、不治ワラ -三千万

 

***

 

後日談。というか今回のオチ。

 

「しかし、最後の最後でとんでもんないイベントを引いたな石上」

「まぁ、あんな一発逆転があるとは思いませんでしたけど、それでも自力で同等まで稼いでる四宮先輩も凄いじゃないですか」

「いえまぁ、運が良かっただけよ」

「私はしばらくやりたくないです」

 

結構楽しんだ様子の白銀先輩と四宮先輩、石上。

余りにも赤面展開が多くて、疲れている伊井野。

そして、端でシクシク泣いている藤原先輩。

それぞれの感想が入り交じっていた。

因みに僕は楽しかった。

皆の一喜一憂した様子は楽しかった。

それに最後の最後に藤原先輩には勝てたしね。

 

「ああ、鳴山」

「なんだ?」

「あのゲームの改善点なんだけど、

 

その後、一時間ぐらい改善点を聞いた。

玩具会社の息子らしく、有意義な意見を貰えた。

改善していこう。

 

後日、ゲームのイベントを見直していると、

 

「鳴滝はいつも常識で止めようとしますよね。ひどい人だよ」

「そんな事ないですよ。日頃からきっちりしていれば、本当にしたいイベントの時に無理が通しやすくなるんですよ」

「そんなものですか」

「そんなものです」

 

その辺は、彼女が生徒会だから通せる企画もある。

というか、不治ワラも基本は優等生で通っているから外面はいいのだ。

 

「しかし、喉が乾きました」

「未開封のペットボトルありますけど、飲みます?」

「それじゃあ、頂きます」

 

そういうと彼女はごくごくと飲んでいた。

 

「こういう所で、気遣い出来るんだからモテそうですよね」

「モテないですよ。基本が陰キャなので」

 

そういうと、僕もごくごくと自分のペットボトルを飲む。

藤原先輩は少し色気のある顔をすると、

 

「私、()()()()のそういう所、好きだよ」

「そりゃどうも、後、あだ名で呼ぶのを忘れてますよ」

「あら、失礼」

 

と、まぁ、こんな部活トークをしたりする訳だ。

取り敢えず、そこのドアの前で盗み見ている二人をこっちに連れてくるか。

 

()()()()、変わらない部活の日常。

 




次回からの生徒会選挙編は、3話になる予定です。
1話、2話は表サイド、3話は裏サイドの予定です。

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