応援団が嫌いだった。
イキイキしてて、楽しそうな様が腹立たしかった。
滅びてしまえといつも思っていた。
だけど、そんな風に思う僕が間違っているのだろう。
だって、僕は何も行動していないから。
後ろを、過去を、見続けているから。
そんな風に言うと、鳴山は、
「そうだな。正直、お前は過去を見過ぎていると思う。過去を振り返るのは今の自分、これからの自分を考える上で大切だけれど、前も見ないと今は見えてこないだろうよ。まぁ、それはそれとして、お前が
と言う。伊井野は、
「そんな訳ない!!確かに、あんたは動き出すのにどこか怯えが混じってるとは思う。でも、ちゃんと行動している!選挙の時だって、ちゃんと動いて、助けてくれたじゃない。私はそんな石上に、感謝してるんだから」
どこか、赤い顔でそんなことを言ってくれた。
そんな風に言ってくれた二人には感謝しているけれど、それでも僕は思う。
やっぱり、僕は動いていないと。
なのに、
…だったら、僕が応援団に入ればいいのだと気づいた。
何も行動していないなら、ちゃんと行動すればいい。
そうしていけば、僕もリア充の一員になれると思った。
そう、思ったのだった。
***
「もしかして赤団アゲてっちゃうぅぅうううう!?」
「「「わしょーーーい!!」」」
「「「ウェーーーーイ!!」」」
……やらかした。
論理展開がそもそもで間違っていた。
応援団に入ればリア充になれるんじゃない。
リア充しか応援団に入らないのだ
急速にクラスで手を上げた時のことを思い出す。
鳴山が、
『まぁ、お前なりに考えは有るんだろうが、辛くなったら言えよ。お前が抱え込まなくてもいいからな』
と、哀れみと心配がこもった目で見られたが、これが分かっていたのか。
だったら、言ってくれ!
いやでも、この場合は僕が分かってると思っての発言か。
流石に分かるだろうと思ったのか。
確かに、ちょっと考えれば分かることじゃないか。
こいつら全員、ウェイ系だ。
事あるごとにウェーイと叫ぶイケイケ、ナウな
正直、
一時の気の迷いで大変なことをしてしまった。
完全に場違いだ。
同じクラスの小野寺が「正気かよ」という目でこっちを見ている。
ぶっちゃけ、その通りだと思う。
何やってんだろ。
「つわけで、俺が団長、子安が副団でいこうと思うけど、オケマルぅ??」
「「「オケ丸水産!!ウェーーーーイ!!」」」
なんか知らん内に団長が決まった。
今の間にどんなやり取りがあったんだよ。
こっち、全然話し合いしてないぞ。
オケマルぅ!?→ウェーイで全ての採決を完了させる大胆なシステムだ。
民主主義を越える仕組みがここにはある。
「まず最初に我ら、赤組のスローガンを決めなきゃだけど、何か案ある人ー」
まぁ、ここまではよくある普通の……。
いやいや、なんで全員でボードの前に行くんだよ。
「えーだったらさー」
「この辺良くない~」
ワイワイガヤガヤとしてる。
あーはいはいそういうシステムになるのね。
本当に話に参加できないんだけど。
て、ああ、そうか。
机を並べた意味は特に無いのか。
じゃあ、なんで並べた?
「という訳でこの中から選びたいと思いまーす」
燃えろ赤組マジ卍
最THE高風林火山
インスタ映え赤組
クソかよ
なんで無駄に流行りのものを入れようとするんだよ。
なんで、THEの位置がそこなんだよ。
後、インスタ映えする赤組ってなんだよ。
なんでもかんでも、パンケーキ感党か。
「んーじゃあ、こうすりゃよくね」
風林火山最THE高☆マジ卍~インスタ映え!~
やべぇやつ来た
何を融合させてんだよ。
悪魔合体かなにかか?
劇物に劇物混ぜたら危険だって教わらなかったのかよ。
しかも、一番体育祭ぽい赤組だけが消されるってどういうことだよ。
「えーいいじゃん!」
「アリ寄りのアリ!」
いや、ナシ寄りのナシだろ。
これ、伊井野とかが見たら絶対、真面目にやりなさい!!って、言う系だろ。
……でも、こいつら、僕よりも成績良いんだよな。
「ラインでインスタ送るね!」
「やっべ、ストーリーでハイプいけるわ!」
「もー今日、クラブオフっしょ!」
やっべ、何言ってるのか一つもわかんね。
異世界の言語聞いている気分になる。
実際、似たようなもんだが。
うんと、周りの様子から察するにラインのグループとか作る流れか。
どうしよう、ラインとかやってないし、スカイプじゃ駄目かな…
もう、周りフルフルしてるし、今から入れても間に合わないか…
とか、考えていると、肩を叩かれた。
「君が噂の石上優くんだね?もしかしてラインやってない人?」
「あ…副団長」
「優くんのメアド教えてよ。どうせラインなんて無駄なスタンプの打ち合いになるだけだし。連絡事項だけメールするからさ」
「すみません。お手を煩わせて…」
助かったー。
けど、いきなり名前呼びする辺り、陽キャだよな。
「でー、うちらの応援服なんだけど」
「女子は学ラン、男子は女装でいきまーす!」
ワイワイガヤガヤと周りが話す中で僕は呆然とした。
……え?
……え?
***
そんな感じで、取り敢えずの顔合わせも兼ねた話し合いが終わった訳だが、だが、なのだが!!
ナニコレ?
地獄か?
地獄に住まう鬼たちかなにかなのか?
そりゃ、お前等は気軽に制服を貸してくれる女友達が居るんだろうけど、僕にそんな相手一人も居ないですけど!
何の疑問も無く、モチいけるっしょ?みたいな顔しやがって…
いや、陽キャはそんなことは考えないのか。
それを言って嫌われる可能性というのを考えないのか。
むしろ、考える必要がないのか。
というかどうする。
ただでさえ嫌われてるんだ。
うちのクラスの女子に服を貸してなんて頼めば物凄い勢いで拒否られるだろう。
したら生徒会の女性陣…
藤原先輩はその辺は軽そうだけど、
『絶対変な事に使うでしょ』
とか、あらぬ誤解をしそうだな。
あの人、僕を変態と思っているフシあるからな…
で、四宮先輩はもう聞くところから怖いし、除外だな。
後は、伊井野。
伊井野……伊井野かぁ。
いや、それなりに仲良くはなっていると思うし、言えば分かってはくれそうだけど、
『いや、流石に自分の服を男の人に着せるのは、ちょっと、、』
みたいな、やんわりな断りいれられそうだしな。
それにあいつの服って考えるとなんか、なんか、
「いやでも、伊井野か?いやでも、、」
「私がどうかした?」
「いや、ちょっと、って、、ええ!?」
「うわっ!?ビックリした。急に大きな声出さないでよ」
「お、おう。ごめん」
伊井野本人が来てた。
やべっ、聞こえてたかな?
ここで、こいつに変態扱いはされたくないんだが、、
「それで、私がどうかしたの?」
…どうやら、聞いてたわけじゃなさそうだ。
……そうだな。ここで会ったし、どうせなら相談しちゃうか。
「実はなぁ、……
***
「ってな訳で、応援団で女子の制服を借りなきゃならないんだけど、でも借りるアテがなかったんだ」
「ちょっと、応援団の人達に直談判してくる!!」
「いや、待てって!!」
伊井野を引き止めつつ、ここは生徒会室。
まぁ、生徒会メンバー以外は早々には来ない場所ではあるし、内緒話をするなら、ここはそれなりにいいと思ってのセレクトだ。
「いやだって!スローガンもそうだけど、何その応援スタイル!!風紀が乱れるとかのレベルじゃないんだけど!!」
「それは僕も思うけど、決まったんだから仕方ないだろ!!あそこに一人で行っても、陽キャの雰囲気に飲まれるのがオチだぞ」
「それでも、それであんたがキツいならちゃんと言うべきでしょ!」
「その気持ちは嬉しいけど、場違いは僕の方だから!!」
「そろそろ、夫婦漫才を終わりにしてくれない?」
「「夫婦じゃない!!」」
って、鳴山はいつの間に!!
全然気配なかったぞ!!
と、コントのような会話だったのは事実だったので、僕たちは息を整えて、取り敢えず座り直す。
「で、いつからそこに居たんだよ?」
「最初からだよ。事務の書類を提出して、生徒会室に戻る途中でお前等を見つけて、話を聞きながら戻って来たんだよ」
「「マジで!?」」
えっ、本当に気が付かなかったんだけど、ええ…。
なんか、恥ずかしいんだけど。
「まぁ、私的な意見としてはそういう祭典だから、普段できないはっちゃけが出来る面もあるから、一概に悪いと言えないなぁ」
「いや、急に話を本題に戻さないでよ。落差についていけない」
「そうか?別にそんなつもりは無いが」
閑話休題
「それで、僕の結論としては、伊井野が石上に服を貸せばいいと思うのだが」
「いや、すっ飛ばし過ぎだろ!!もっと、手順を踏めよ!!」
「えー、どうせ伊井野が貸すか貸さないかの話になるんだから、最初からそっち話した方が良いだろ」
「いや、伊井野だって、男に服を貸すのは抵抗あるだろ!!」
「…私は別に、良いけど」
……What?
赤くなって伏せている伊井野がそんな事を言った。
いやいや、伊井野さん?あなた何を言って……
「他の人ならあれだけど、石上なら、私は別に……」
「ええと、それはどういう…」
「ううぅ、なんでもいいでしょ!!兎に角、貸すって言ってるの!!」
なんか、怒られた。
鳴山はニヤケそうなのを必死に抑えてる表情してるし、伊井野は真っ赤になってるし、どうなってんだ?
誰か説明してくれ。
「取り敢えず、着てみたら?試着してみないと分からないだろ?」
「お、おう」「う、うん」
ほぼ、同時に返事して伊井野は更に赤くなった。
かくいう、僕もちょっとアツいし、恥ずかしい。
伊井野が絡むとこうなることが増えている気がする。
いつから、こんな風になったんだ?
……駄目だ、分からん。
取り敢えず、着替えよう。
伊井野から服を貰って、隠し部屋で着替える。
う、凄い伊井野の匂いがする。
……いい匂いだな…
って、ちょっと待て!!今のは変態ぽいぞ!!
駄目だ駄目だ!!
これじゃあ、伊井野に軽蔑される!!
夏休みから積み上げてきたものが崩落する!!
落ち着け、優!!
心頭を滅却すれば火もまた涼しだ!!
………………
よし、落ち着いたな。
着てみよう。
うぅぅ、なんか肌触りが…
って、あれ、これ……
………
「あれ?出てきた?」
「どうした?」
「いや、その、……小さ過ぎた」
「ああーー」
そう、伊井野の身長的にも胴回り的にも入らなかった。
かなり、キツい。
伊井野が恥ずかしそうに俯いている。
……無駄に恥を掻かせちゃったな。
「ごめん。伊井野」
「いや、謝らないで。余計に恥ずかしくなる」
「…ごめん」
気まずい。どうしよう。
どうすればいいんだ、この雰囲気。
「あっ、取り敢えずに四宮先輩にメールして事情説明したから、四宮先輩から貰って」
「「空気を読め!!」」
そりゃ、雰囲気変えたかったけど!!
だけど、変え方が雑なんだよ!!
はぁー。鳴山ってそういう所あるよな。
「だから空気を読んで、空気をぶち壊したんじゃん」
「だから、壊し方があるでしょ!」
伊井野が鳴山に説教を開始した。
鳴山は、えーーみたいな顔をしつつも、きちんと聞くみたいだ。
真面目だな。
いや、それで流されないぞ!
僕も参戦してやる!
と、ここで携帯が鳴った。
どうやら、子安先輩からメールが届いたようだ。
『火曜と木曜、5時から中庭で練習だよ。一緒にがんばろーねー』
…まぁ、少しだけ頑張ってみるか。
***
後日談。というか今回が前日談。
TG部が外でサイコロをするのを鳴山が止めているのが見える。
結構、自由にやっているように見えるけど、実はあれで、意外と気苦労が絶えないんだよな、鳴山は。
「今度のイベントが出来なくなるような活動は止めてくださいよ!」
「良いじゃないですか。大丈夫です!なんとかなります!」
「根拠の無い自信で言うのは止めて下さい!それをなんとかするのは、僕になるんですから!」
藤原先輩の対応は大変だろうな。
あ、伊井野も来た。
普通に藤原先輩も叱っている。
最近、伊井野も藤原先輩への
『大変そうだけど、頑張ってね!困ったら何でも言って!』
伊井野がそう言っていたのを思い出す。
…そうだな、頑張らないと。
今日は応援団の練習の日だ。
うちの学校の応援の動きは存外ハードだ。
かなり、激しく動くし、汗も結構かく。
フレー!フレー!赤組!!
と、大きな声で言い続ける。
「あんたさ、よく平気な顔して学校これるよね」
隣で練習する小野寺が聞いてくる。
「あんだけの事をしたら普通…」
小野寺の言うことは分かる。
確かに、事実はどうあれ、それだけのことを確かにした。
けど、
「平気なように、見える?」
自分に言うように、自分に誓うように僕は言う。
「僕は普通に小野寺さん達が怖いよ」
「でも、いつまでも逃げらんない」
「怖くても戦える奴に僕もなりたい」
だから、変わるために、進むために、僕は頑張る。
そして、体育祭が始まる。
僕にとって忘れられない体育祭が始まる。
それは、変化と気づきの体育祭。
この物語での石ミコが当初の予想よりも増えているなー。