ここ、秀知院学園高等部には、マスメディア部なる部活が存在する。
部活内容としては、校内広報からSNS裏サイトまで、ありとあらゆる情報の場で活躍する部活だ。
部員は報道関係の家系の人も多い。
今回の番外編では、この部活と僕との関わりについて語っていこうと思う。
まぁ、語るのは主にあの二人だけれど。
***
これは、1学期の終わり頃、石上が自分の生活態度を見直している頃の話である。
午前の授業が終わり、昼休みの昼食を取ろうと中庭に出ていた。
昼食を食べ終わり、少し日向ぼっこをしようかと考えていた時に丁度。
石上と一緒に、とび色の髪をした少女が来た。
二人はベンチに座ると、とび色の髪をした少女が石上にノートを渡し、石上はそれを読んでいく。
そして、石上は読み終えると、
「拝読しました」
「ど、どうでしょう…」
「正直、本当に持ってくるとは思いませんでした。まぁ、僕はそんなに漫画に詳しい訳ではないですし、一般的な意見しか言えないですけど」
「お願いします!」
「会長の肩幅。どうしちゃったんですか、コレ!?」
そのノートに描かれていたのは、肩幅がどこぞの肩パット並にある白銀先輩と妙に乙女顔な四宮先輩だった。
「会長の包容力を表現すれば、妥当な肩幅では…」
「ねーんですわ、残念ながら!!!」
そう、あのノートに描かれているのは、白銀☓かぐやのナマモノ妄想漫画である。
あのとび色の髪をした少女の名は、紀かれん。
親に出版社社長を持つ、マスメディア部の一員である。
性格的には良い所のお嬢様と言った感じで、対外的には普通に良い人という感じの印象持つ。
ただ、明らかにおかしな所があり、白銀先輩と四宮先輩を崇拝していて、更にこの二人のカップリングが好きな人物である。
あの二人への崇拝具合は相当にぶっ飛んでいて、2年B組に行くことで酸素カプセルに来ているようなものだとか、二人が一緒にいるだけでナマモノのネタを思いつくだとか、もうなんか色々と熱心で纏められないファンである。
……一応、基本的に良い人であるのは、再び述べておく。
因みにどうして石上が編集のようなことをしているかと言うと、どうやら以前、あの
まぁ、僕はその辺の様子がどうだったのかというのは、聞いていないので知らないが。
「ーと、そんな所ですかね」
「成程。ありがとうございますわ。石上編集」
と、そんなこんなしている内に石上によるダメ出しのコーナーは終了したらしい。
紀先輩は少し凹んでいるようだ。
まぁ、石上は指摘する時は結構容赦しないタイプだからな。
聞いてて、書いている側にとってはかなりグサリとくるものもあった。
僕はこの辺に関しての理解は……、まぁ、あるにはある。
まぁ、でも必要無いようにも感じるけれど。
だって、妄想以上の
あの人達のやっていることは本当に笑えるしね。
「それにしても、最近はヘッドフォンを付けていないなどの生活改善の傾向が見られるようですけど、何かありましたの?」
「……別に。友人が改めた方が良いと言うので」
「そうですか。いい友人を持たれているのですね」
石上は少し、ごまかすようにそう言う。
まぁ、その友人は僕なんだろうけど。
実際的には僕の言葉がそんなに刺さっていたとは思えないんだけどな。
というか、
「いつまで僕の存在に気が付かないだろうね?」
「え!?居ましたの、鳴山くん!?」
「いや、まぁ、気づいてたけど」
石上は気づいていたようだけれど、紀先輩は本当に気がついていなかったようだ。
そこまで存在感がないつもりは無かったんだけどな。
「も、もしかして、さっきまでの会話は…」
「丸聞こえでしたよ」
「キャーーー」
そういうと、顔を手で覆ってブンブンと顔を振り出した。
「別に今更ですよ?僕は前から知ってましたし」
「そ、そうですの!?」
「別に気にしませんよ」
紀先輩は顔を上げる。
そう、僕は随分前、とまではいかないまでも、少なくとも石上が知るよりも前には知っている。
「そ、そうですか。あっ、でも!他言しないで下さいよ!!」
「分かってますよ」
「所で鳴山」
「うん?なんだ?」
「この人。名前はなんて言うんだ?」
「え?」
「え?」
石上の質問に対して、僕は固まってしまったが、紀先輩は顔を赤くして、
「あらーー!?名乗っていませんでした!!?2年C組マスメディア部の紀かれんと申します」
「あ、石上優です」
「存じて上げております~」
と、二人は挨拶する。
……名前、名乗ってなかったのか。
***
さて、どうして紀先輩と僕が知り合いなのか、気になった人もいると思いたいが、まぁ、その理由はここにある。
「マスメディア部さ~ん。あそっびっましょ!」
「やりません」
「いいじゃないですか。別n、グェ」
「なんで、部員が集まると同時にマスメディア部に迷惑かけようとしてるんですか、不治ワラ」
「だって、その方が楽しいじゃないか」
「そうそう」
「だからって、部活中の人を巻き込むんじゃない!」
放課後。
TG部として活動する辺りに、何故かこのアホの三連星は、マスメディア部に
「いいから。さっさと撤収しますよ」
「いつも、ありがとうございます。鳴山くん」
「いえいえ。こちらこそ、随分と迷惑を掛けてすみません」
「い、いい加減。首根っこを掴むのを止めて貰えませんか」
と、不治ワラが少し苦しそうになってきたので、手を離す。
そう、僕にはこのTG部のお目付け役としての役割がある。
この部活は、色々と常識を超越していて、好き勝手にやらかす。
その結果、色んな部活に迷惑をかけているが、特に迷惑をかけているのがこのマスメディア部である。
「ふぅーー。全く。どうして、こんな風に止めるんですか」
「それは他の生徒に迷惑がかかっているからです。迷惑がかからないなら僕だってノリますけど。迷惑がかかるなら止めますよ」
「良いじゃんか、ちょっと位」
「どうせ、ちょっとじゃ済まないでしょうが。マッキー先ハイ」
マッキー先ハイは駄々をこねるようにそう言う。
だが、マッキー先ハイは特に周りへの迷惑の度合いが大きい。
こいつが本気を出すと、対象者は確実に心が抉られる。
こいつの情報網はマスメディア部とも渡り合える位にはあるぽいし。
それを野放しにするような事態には流石に出来ない。
「本当に鳴山くんはTG部の良心だよねー」
そう言う黒髪の少女の名は、巨勢エリカ。
大手味噌メーカーの社長令嬢であり、これまたマスメディア部の一員である。
相当な味噌好きであり、そして、四宮かぐやの信者である。
その心酔ぷりは激しく、本人の顔を見て、話そうとするだけで気絶するレベルである。
他にも言うべきことがありそうな気がするが、ぶっちゃけ四宮先輩の信者としての意識が強すぎて、後は鈍感位しか言うことがない人物だ。
まぁ、そんな重要ではないことはさておき、
「いい加減にしてくださいよ。迷惑かけちゃ駄目です!」
「むぅぅ、仕方ないですね」
「しょうがないか。鳴滝がこう言ってるんだし」
「そうだねー」
物分りが良いとそれはそれで恐ろしいがひとまずは良かった。
これで、変に粘られると中々厄介だしな。
「それじゃあ、失礼します」
「あ~あ、残念だったな」
「ねー。折角、
「「是非、やりましょう!!」」
わーい!と、騒ぐアホの三連星と信者達。
……アホだなーー。
***
さて、今回の計6人で行うゲームはNGワードゲームである。
紙に隣の人のNGワードを書き、その隣に回す。
そして、貰った人は自分には見えないように紙を掲げて会話する。
ここで、NGワードを言った人が負けという、分かりやすいルールだ。
分かりやすいが故に難易度が高いゲームであると言える。
言ってみれば、相手への理解力が問われるゲームだ。
そして、理解と言われれば、このマスメディア部の二人は簡単に思考が読める。
大体、信者的な発言を誘発すればいいからだ。
ぶっちゃけ、この3人は絶対にそれを分かった上で誘っている。
全く、仕方のない奴らだ。
ほとほと呆れる。
まぁ、僕も容赦はしないがな!!
という訳で、ゲームスタート。
紙に書かわている言葉は、不治ワラはドーンだYO。ギガ子は会長。マッキー先ハイは副会長。紀先輩は会長。巨勢先輩はかぐやである。
……なんというか、皆マスメディア部を中心に考えていることが良く分かるセレクトだ。
しかし、ここまで皆揃って露骨だと誰も引っかからないだろう。
少なくとも、絶対に言わないワードに、『会長』『副会長』『白銀』『かぐや』が入ることになる。
多分、僕のワードも似たようなものだろうと考えられる。
注意して進めないといけない。
中々、厳しい戦いになりそうだ。
「さて、何のことについて話そうか?」
「やっぱ、生徒会のことじゃね?」
「やっぱり、そうなるよねー」
「それじゃあ、藤原さん。何か、生徒会でのホットな話題ってあります?」
「うーん。そうですねー。ああ!そう言えば、前に生徒会の皆で心理テストしたんですよ」
「ああ、前に言ってましたね。私達もやりましたよ」
「それじゃあ、これはやりましたか?薄暗い夜道の中で、誰に後ろから肩を叩かれたかって奴」
「あー…私はエリカでしたわ」
「私はかぐや様」
「ちょっ、エリカ!」
「ドーンだYO」
「「「ドーンだYO」」」
「……へぇ?」
不治ワラが間抜けそうな顔をしている。
予想外だったようで安心した。
よし、これで巨勢先輩と不治ワラは脱落だ。
まぁ、ここまでは予定調和というか、予測可能な範囲だったから大丈夫だろう。
問題はここから。
マッキー先ハイとギガ子は、これで中々のクセ者。
調子に乗せれば簡単にボロのでる不治ワラと違い、簡単に誘いに乗ってこないだろう。
え?紀先輩?
このゲームではそんなに強くない人だから、気にする必要がないんだよ。
戦いとは、非情なものなのだ。
「グッ、いつものノリを完全に読まれていたという訳ですか。くぅぅぅ」
「全く、エリカは。どうして、あんなバレバレなブラフに引っかりますの?」
「そう言えば、白銀先輩は歌声はなまこの内蔵だったな」
「会長の歌声は美声に決まってますわよ!?」
「はい、ドーン」
「あっ…」
はい。
これで紀先輩の処理は終えた。
流石に信者は分かりやすくて良い。
思考が読みやすいから、簡単に嵌められる。
さて、ここからが本番だ。
「流石だな、鳴滝。ここできっちり嵌めるなんて」
「ほほ、ホント、ですよね」
「不治ワラちゃんはなんでそんなに震えているの?」
心配しなくてもちゃんと知ってますよ。
不治ワラの努力も、会長の残念さも。
「さて、この3人で生徒会の話題か」
「中々ないよねー」
「そう言えば、石上くんって普段何をしてるの?」
「そうだなー。まぁ、最近は結構勉強しているかな」
「「ハイ、ドーン!」」
「あっ!それか!」
やられた。
自分のを見ると、『まぁ』と書かれている。
僕に対しては口癖を入れていたのか。
完全に、生徒会でセレクトする流れだから油断した。
不治ワラのNGワードから警戒しても良い筈だったのになぁ。
「悔しいな~」
「そんなに悔しそうに見えないけどな」
「これに関しては凡ミスだからな」
「そうですのね」
全く。
やらかしたわ。
***
後日談。というか、今回のオチ。
今回のNGワードゲームは結局、決着はつかなかった。
どちらも自分のNGワードを把握しているようなものだし、信者でもないからだ。
その辺りにトラップをかけられた僕や不治ワラが抜けた以上、展開の発展性はなかった。
強いて言うなら、マスメディア部の二人を仕事に戻した位だ。
「という訳で、もう下校時間だし帰りますよ」
「そうですね。帰りましょう!」
「チェッ、結局、終わらなかったな」
「流石はマッキーちゃんだよ」
「お前もな。ギガ子」
まぁ、今日はそこまで暴走はしていないし、まぁまぁ、平気な範囲かな?
これを平気な範囲と言えてしまえる自分に恐ろしさを感じるが仕方ない。
この部活に入った時点で基準はどうしたって変わる。
と、まぁ、そうこうしているうちに、TG部の奴らは出たので、僕はお礼を言う。
「マスメディア部の皆さん。今回はお邪魔してすいませんでした」
「いえいえ。今回は私達も乗ってしまった面がありますし、かなり楽しめもしましたから」
「そうだね。途中から、二人の戦いになった頃に離脱もさせて貰ったしね」
「感謝していますわ」
「そんな言われるようなことはしていませんよ」
実際、そんな風に言われるようなことはしていない。
今回は、あの3人の制御もしきれていないしね。
「いえいえ。謙遜しなくてもいいんですよ。あなたには、あの3人を諌めてくれていることに感謝しています」
「イマイチ、しきれてませんけどね」
「それでも、だよ」
……そんな風に言われるとは思わなかった。
まぁ、嬉しいけれども。
「まぁ、何か調べたいことがあるなら言って下さいな」
「お礼で何でも調べてあげるよ」
「……まぁ、そうですね。その時はよろしくお願いします」
なんだかんだ良い人達なんだよな。
「生徒会の、かぐや様や会長のことなら尚の事!!」
「そう、かぐや様のことならなんでも!!」
……面倒くさいファンでもあるけどね。
と、そんなようなことがあり現在。
「という訳で、別にマスメディア部はそんなに警戒しなくても良いと思いますよ?」
「いいえ。あなたを信用していない訳ではありませんが、確定的とは言えないですね」
僕と早坂先輩は夜の11時頃に話していた。
たまにしている夜のお話タイム。
またの名を、ぐちを聞く会だ。
このときの早坂先輩は、メイドモードだ。
「そうですか。少しは負担の軽減になるかもと思ったんですけど」
「その気持ちには感謝しますけど、私は大丈夫です」
「……ならいいんですけど」
「それにしても、あなたは顔が広いんですね。知っていることが多い」
「そうでもないですよ。交友関係は結構狭いですし。実の所、そんなに沢山の情報を持っている訳でもないですよ」
「……そうですか」
「そうですよ」
こうして、夜は更けていく。
物語は進んでいく。
番外編はこのような感じのも出していきたいな。