鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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かぐや様の二期はどこまでやるのだろうかと考える今日この頃。


みこジャスティス

伊井野ミコは風紀委員である。真面目であり、品行方正であり、そして自身の正義を信じて疑わない人である。

彼女のその真っ直ぐに理想を貫こうとする姿勢は良いと思うし、是非とも今後も貫いてほしいと感じるが、しかし直さなければならない点も多くある。

例えば、周りの同級生からは石上ほどでないにしろ疎まれている。まあこれは自分たちの自由を奪うような真似をし、学年1位を取り続ける僻みも混じっている。

まあでも男女は50cm以内接近禁止だの男は坊主、女はおさげだの公約に従おうと考える人はあまりいないし、僕自身もここまで行き過ぎているのは嫌だ。

後は明らかにお世辞な褒め言葉ですぐにほだされたり、すこし強かな生徒にころっと騙されて校則違反を見逃してしまったり非常にチョロい子であるのも、欠点のひとつである。

他にも色々あるが、そんな彼女でも毎日花壇に水をやったり、トイレの掃除をしていたり、石上のゲーム機を取り上げたりして、努力続けている。

本人に正義とは、何であるかと聞いてみると、

 

「見返りを求めない、無償の愛」

 

というのをかなり真面目な顔で言った。

きちんと話せば、石上とも分かりあえるだろうに思う返答だった。

彼女には報われて欲しいものだ。

 

***

 

「ねぇ、ちょっと鳴山。放課後時間空いてる?」

 

そう聞いてきたのは、同じクラスの大仏だった。なんでも周知院四大美女の一角をなすほどの美女だそうだが、個人的には十把一絡げである。

そもそも僕が求めるのは美女であるよりも、可愛い子であることである。肉食は求めていない。

 

「なんか失礼なこと考えてない?」

「考えてないし、仮に失礼だとしても事実だと思う」

 

とどうやらこちらの顔からそんな風に感じた大仏の追求を躱しつつ本題を聞いた。

 

「で、空いてるけど何のご用件?」

「ああ、ミコちゃんに生徒会選挙に向けてのアドバイスが欲しいの」

 

それを聞いて、疑問に思う。あれ、生徒会選挙って二学期じゃないっけ?

 

「選挙があるのは二学期だけど、その前にイメージアップしておきたいから」

 

と、こちらの疑問に思った表情で察したのか、補足を入れてきた。

 

「ああ、そういうこと。それなら大丈夫だよ」

 

こちらが了承すると大仏は、お願いね、と言って、伊井野の方に向かった。

そこでは、石上と伊井野がやれ雑誌を持ってきただのやれ会長に見せるだのと騒いでいた。

……ここまでくると痴話喧嘩に見えてくるな。

 

***

 

そして、放課後。伊井野と大仏の二人と話していた。

 

「それで、ミコちゃんが生徒会選挙で当選するのに必要なものって何だと思う?」

「好感度じゃね。現状好感度が高いといえないし」

 

僕がそう答えると、大仏はまあそうだよねという顔をし、伊井野は若干涙目になっていった。

 

「やっぱり私って嫌われてるの?」

「まぁ嫌われてるというか、疎まれてるな」

 

そう言うと彼女は今にも泣き出しそうになり、大仏は何すんのと批難するような目線を向ける。

確かに今のは僕が悪いが、現状を正しく認識しないことには話が進まないので仕方ないだろう。

フォローも兼ねて、話を続ける。

 

「実際には、お前の校則を守ろうとする行動自体は良いことだし、社会的にも奨励されていることだ。

だから、教師の方からの評価は高い。けれど、生徒会選挙で投票するのは、()()()()()だ。

自分たちが楽しめるような人を選ぶのは当然だし、そういう意味では、お前の思想と対立するのは当たり前だ」

 

ある程度立ち直ったのか、伊井野は僕の話を複雑そうに聞いていた。

 

「それじゃあそんな対立する人たちを説得するのに必要なのは、風紀はなぜ守る必要があるかというのきちんと語ることだ。

そこに関して理解がしてもらえないと、当選なんて出来ない。

そして、それについて、理解してもらった次に見られるのが日頃の生活だ。普段から風紀を守るためにこんなことをしている。

それが分かってもらえれば後はなるようになる」

 

付け足しに、それでも賛成してくれない人がでるのは当たり前だからそこは気にすんな、と言った。

伊井野はこの話を聞き、少し考える素振りをすると、こうきりだした。

 

「でも好感度を高くするってどうしたらいいの?」

「そうだな、まずは相手が何故校則を破るのかを理解する必要があるだろうな。相手のことをよく知らずに頭ごなしに否定しても反感を買うだけだし」

「それは、まぁ、そうよね」

 

伊井野は分かってはいても納得はしていないような顔をした。

まぁ日頃から間違ってるって意識だから仕方ないのだろうけど。

さて、そろそろ本日の僕の目的でも話すとするか。

 

「この提案をしたら、絶対怒るだろうが結構いい案だと思うから言うな」

「えっ、なによ」

「石上と仲良く「絶対に断るわ」

 

言い切る前にえらく低い声で否定された。

そのまま真顔で淡々と述べ始めた。

 

「だって生理的に無理だもの出来れば視界にもいれたくない」

「鬼みたいな事言うな。あんまりそういうことは言わないほうが良いぞ。普通に嫌われる」

「えっ、みんなそう思ってるんじゃないの!!ねぇこばちゃん」

「いや私はそこまで思ってないよ」

 

親友に裏切られたような表情をして、ショックを受けている伊井野に対して話を続ける。

 

「そうやって敵対してた人に自分の考えを理解してもらって、応援してもらえるようになれば、それは自信にも繋がる。

それに石上だって生徒会会計を勤めているだけあって、意外とプレゼン能力もあるし、味方して貰えれば心強い味方になると思うぞ」

「あいつの手を借りるなんて嫌よ」

「そういう所も込みで仲良くなって無くそうって話だ。それに周りに素直に頼るの必要なことだと思うし、石上も頼ってきた相手を無下にしないと思うぞ」

「私もそう思うよ。ミコちゃんと石上、仲良くとまでいかなくても普通に話せるようになって欲しいし」

 

でもーとまだまだ不満そうだが、一応の納得は得られたようなので、続けざまに言う。

 

「それじゃあ、石上の様子でも見に生徒会室でも行くか。見学もできるし」

「えっ!!ちょっと待ってよ」

 

……実際の所、石上は、伊井野の努力も思想も良い所もよく分かっているし、伊井野の方が歩み寄れば、ハードルは全然高くないのだけれども、この二人だから、結局高いままなのだろうなと感じた。

と、そんなことを思いながら、席を立ち、生徒会室に向かう僕に平然とついてくる大仏、そして、慌てて追いかけてくる伊井野の3人で移動する。

 

***

 

後日談というか今回のオチ。

生徒会室の近くに来ると何故か部屋の前で盗み聞きしてる石上がいて、伊井野が何やってんのよと話しかけようとした時、

 

「変態!?痴女なのか!?痴女なのか!?」

 

と、扉を開けて全力でダッシュしていく生徒会長の姿。

チンチン、チンチン言いながら踊る書紀。

それを、拒否しながらもしかし全力で笑ってしまう副会長。

そして、おそらくそれまでの一連の会話を聞いていたであろう鼻血を流す会計。

 

それを見た伊井野は、

 

「し、神聖な生徒会が穢れている!?許さない、学校の代表がこんなことを!!」

 

と普段を知らずに、誤解している様子である。

まぁ、おおよそ事の発端は藤原先輩だろうが、()()先輩を尊敬している伊井野はそうであるということは考えもしないだろう。

そのままの勢いで、ちょうど近くにいた石上に、

 

「あんた、なんで鼻血なんて出してんのよ、最低」

「なぁ!?いきなり来てなんだよ」

 

と、いつものごとくな喧嘩を始めてしまう。

 

「はぁー。こいつら、どうやったら仲良くなるのかね」

「さぁー、ずっとあんな感じですからね」

 

そうやって、呆れたように二人の言い争いを見る僕と大仏である。

まさかこの二人があんな感じになるとは、このときの僕は知る由もなかった。

 

 

 

 

 




鳴山くんは基本真面目なので、ミコちゃんとも普通に喋れる。
そして、怪異の話はまだまだ先。

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