鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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展開に悩む今日この頃。


みこインコンスタンシィ

私は石上優が好きだ。

それはもう、全然言葉に出来ない位に好きなのだ。

私は一体いつから、あいつのことが好きになったのだろうか?

自覚したのは生徒会選挙の時だけれど、本当は二学期に入ったときには既に好きだったように思える。

一学期にあいつの事件の真相を知って、ステラの花の送り主であることを知った。

それからあいつを見る目が変わっっていった。

夏休みの間はずっと悩んでいた。

私にとって、石上とはどのような存在なのか?

もう何も手が付かないぐらいに悩んでいた。

そうして悩んでいたのは、きっと事件の真相よりもステラの人であることが分かったのが大きいのだろう。

私にとって、ステラの人は憧れの人で、理想の人で、そして淡い恋心を抱いていた人だった。

中等部当時、周りから疎まれて辛かった時にあの励ましを受けたことは、私にとって、それだけ大切で重要なことだった。

そう考えると、あるいは私は、中等部の頃から石上のことが好きだったと言えるのかもしれない。

……いや、それは流石に違うか。

でも、夏休みに石上と花屋で会って、そこでの会話でスッキリした。

あれから、石上と仲良く話すようになった。

きっと、あの花屋での事が私にとっての決定的な変化なんだろうなと、そう思う。

いつかは、告白したい。

この気持ちを確かに伝えたい。

でも、今は出来ない。

私には一つ、悩みがある。

あいつには、沢山の恩がある。

ステラの花のこともそうだし、生徒会選挙でのこともそうだ。

私はそれを、全然返せていないように思う。

直談判のことは多少の恩返しにはなったとは思うけれど、それだって、一番重要な所は白銀会長が引っ張り出して救ったことだろうし、体育祭でも応援しただけで何も返せていない。

あいつには、やられた分をやり返さないと気が済まない。

だから、きちんと恩を返したい。

あいつと、対等な立場でありたい。

きっと、それが出来た時に、私は告白することが出来る気がするから。

 

***

 

「彼に浮気されたんです!」

「浮気!?」

 

ある日の昼下がり。

私と四宮先輩は、柏木先輩からある相談を受けていた。

それにしても浮気って…、

 

「ひどい…、それは許せませんね……!」

「あらまぁ……」

 

浮気するなんて、最低な所業じゃない!

許せないわ!

 

「私、こんな事初めてで迷っているんです……」

「何に迷ってるの?」

「どっちをやるか……」

「怖っ!」

 

怖い!

えっ、柏木先輩ってこんな怖いの!?

いや、確かに浮気を最低な所業とは思ったけれども、それで人殺しは流石に駄目だと思う。

と、ここで紹介。

柏木先輩は田沼先輩の彼女で、ボランティア部の部長。

確か、白銀会長と藤原先輩と同じクラスだった筈だ。

基本的に大人びていて、穏やかな人という感じである。

また、田沼先輩との付き合いが有名になっているが、それが少々行き過ぎているのではないかとの噂もある。

特に風紀委員の間では、彼女らが不純異性交遊を行っているのではないかという具体的な疑惑から警戒対象になっている。

……まぁ、暗黙の了解というか薄々()()()()()()をしているのは分かっているが、なまじ証拠が無い上に誤魔化すのもうまい為に、風紀委員でも追求出来ない状況なのだ。

そんな強かな先輩だ。

それにしたって、こんなに怖いのかこの先輩は。

 

「こんな惨めな思いをさせられたのは初めてです……。誰かが責任を取らないといけませんよね?」

 

重い……。

結構、嫉妬深いというか重い一面があったんですね。

なんか、四宮先輩もちょっと呆れてる風に感じる。

 

「ひとまずは浮気が発覚した経緯を教えてくれますか?」

「そうですね。ピンと来たのは……。こないだ昼休みに……」

「二人で仲良さそうに話していたの!」

「「……」」

 

えっ…。

 

「えっ!それだけ!?それだけで浮気だと思ってるんですか!?」

「はい」

「キスをしてたとか、二人でホテルに入っていったのを見たとかじゃなく!?」

「そんな事してたらもう殺してますよ」

 

あはは、と柏木先輩は笑うけれど、笑えない。

いや、流石に仲良く話しているだけで浮気判定は流石に…。

仮に石上が、例えばこばちゃんと仲良く話しているとしても……。

 

『ねぇ、石上。最近イイ感じじゃない?』

『そうか?確かに調子は良いけど』

『ふぅーん。ねぇ、石上』

『なんだよ』

『これから…

 

って、違うーー

仲良く話すの範囲を越えてるし!

うう、妄想とかはなるべくしない方が良いって、石上にも鳴山にも言われてるのに。

勘違いの元になるからって。

……確かに、石上関係とか生徒会とかでもそれで誤解したから、反省してるんだけど。

まぁ、それは良いとして。

確かに、他の女の子と仲良く話していたら、ちょっとはムカッとするかも知れないけど、それだけで浮気と言うのは……。

 

「ちょっとそれだけで浮気扱いは……。四宮先輩はどう思……」

「これは浮気でしょうね」

「えーっ」

 

えーー。

四宮先輩もそこに賛成するんですか!?

そこに同調するんですか!?

 

「彼女の知らぬ間に女性と密会……。これは下心があるでしょう。完全に浮気です

「そう!それなんです!」

 

えっ、えー…。

四宮先輩もそう言う風に言いだすんですか。

いやいや、でも!

 

「一応、民法770条では離婚の事由として配偶者以外との不貞行為が定義されています。そもそも結婚してないので配偶者じゃないですし、不貞行為があった訳じゃないんですよね」

「法律がどうこうって話じゃないでしょう?心の不貞行為よ。心が許せるか許せないかの話をしてるの」

「結婚してなければ浮気し放題なんですか?というか、石上くんに同じことされて平気なんですか?」

「うっ…。いえでも、石上が他の女性と話してても浮気とは思いませんよ」

 

死んだような目で、冷たく言われた。

いや、確かに何も思わない訳ではないですけど、それは行き過ぎでしょう。

しかし、そんな風にも言えずに二人は話を続ける。

 

「それで…、こないだ二人でご飯食べに言った時、トイレに立ってる間に彼のケータイを見てみたの」

「ちょっ、ちょっと!それは駄目ですよ!プライバシーの侵害です」

 

普通に犯罪行為じゃないですか!?

不貞行為を調べるにしたって、やりすぎじゃ…。

 

彼女だからいいでしょ」

「先に浮気したのは向こうですよ」

「……!」

 

うっ!?

駄目だ。

この人達、常識が通じない。

彼女だから問題ないって、どんな理屈なんですか。

 

「パスコードは指の動きでわかっていたので」

「メールとか一通り開いてみたの」

 

あーあーあー。

不正アクセス罪に信書開封罪。

流石にOUTな案件だ。

私はそこまでしない。

もし、仮に、石上が浮気をしたとしたら……。

……多分、すぐに批判するように問い詰めて、責めてる気がする。

 

「でも、その時には怪しいメールのやりとりを見つけられませんでした」

「ほら見たことですか……」

 

本当にそう思う。

 

「いいですか!携帯の中はプライバシーの塊なのです!!」

「不貞がどうのじゃなく見られて恥ずかしい物は誰にだってあるんです!!」

 

私もあの音声を石上に聞かれた時に死にたい位に恥ずかしかったんだから!!

あれ以来、取り敢えず、石上に言われた通りにイケメンの音声は消したし、二人で新しい癒やし音声を探し始めたけど!

ゾウの鳴き声とか、キリンの鳴き声とか、色々見つけたけど!

……どうやら、二人は少しは反省しているようだった。

そうそう、そのまま落ち着いて……。

 

「浮気なんて私の思い過ごしなんだろうと、彼を信じてみる事にしたんです」

 

私は頷く。

うんうん。そうそう。

 

「彼を信じて探偵を雇ったんです」

「ちっとも信じてない!!」

 

全然信じてないじゃないですか!!

駄目じゃないですか!!

 

「何を言ってるんですか。信じてるからこそ潔癖を証明しようとしてるんじゃないですか」

「身辺調査は結構勇気がいるのよ?」

「私がおかしい……?」

 

凍りついたような顔で、四宮先輩と柏木先輩は言う。

えっ、これは私がおかしいの?

確かに探偵の職種上、そういう側面はあると思うけど、でも、それは信用してないからするのであって、信用しているならしないんじゃないの?

 

「信じて調査をしたのに……、それなのに見てください。昨日二人で雑貨店に行ってるんですよ!」

「でも、これで浮気と断定するのは……。何かの買い出しという可能性だってありますし」

 

確かに怪しいラインだけれども、でも流石に大丈夫な筈だ。

 

「絶対浮気です!」

「仲良いですね……」

 

四宮先輩も結構、嫉妬深いのかな?

もう、なんか、何が何やら分からなくなってきた。

仮に石上が私以外の女性と雑貨店に行くとしたら……。

生徒会メンバーだと、、それこそ只の買い出しな気がする。

それ以外だと………、それ以外だと…………。

…………………。

うん。

浮気って感じそうだけど、でも流石にそれで断定はしない、と、思う。

 

「この店……。前から私が気になってるって言ってた店なのに、よもや他の子とのデートに使うなんて……」

「酷い裏切りですね……」

 

本当に怖いんですけど、この先輩達。

まぁ、確かにそれはムカつくような気はしますけど。

 

「そして、じっくり店を見終わった後…、二人でカラオケ行ってるんですよ!信じられない!!」

 

………。

あー…。

それは……。

 

「伊井野さん……。別に二人でカラオケは浮気じゃないですよね?」

「これは浮気ですね」

 

これに関してはOUTですね。

駄目ですね。

 

「カラオケでいかがわしい事をする人も多いです。だというのに男性と二人きりで入るなんて。男性側にあわよくばという気持ちが有ったに違いありません」

「違うわ!!別にカラオケ位、普通に行くでしょお!?」

「絶対違います!あれは絶対浮気じゃありません!」

 

急に四宮先輩が養護しだした。

……四宮先輩にも好きな人が居るのかな?

それは兎も角。

確かに皆が皆、カラオケで()()()()()()するなんて思わないけど。

石上も、流石にそういうことはしないはずだし……。

 

 

ブーーーン

 

あれ?携帯が鳴った。

鳴山からメールが来た。

 

『おい、確かにカラオケ店でそういうことするクソバカどもは居るけど、それを男の総意みたいに言うなよ。石上だってそういうことはしねぇぞ』

 

!!怖っ!!

思わず、周りを見る。

これはこれで怖い。

えっ、どこから聞いてるの?

いつから聞いてるの?

怖いんだけど。

 

ブーーーン

 

また鳴った。

 

『P.S.まぁ、あいつもお前もそれなりに進むと、流されそうな感じはするけどな』

 

「ふざけんな!!」

 

何を言い出すんだ、あの男は!?

なんか最近、邪悪というか、色々と配慮の足りない面が出つつあるんだけど!

もう、なんなのこいつ。

いや、良い人でもあるのは知ってるんだけど!

それにしたって、酷いんだけど。

 

「大丈夫ですか、伊井野さん?」

 

ああ、先輩達に心配かけちゃった。

 

「いえ、大丈夫です」

 

精神も落ち着けて、座り直した。

しかし危なかった。

危うく、スマホを床に叩きつける所だった。

と、話が戻る。

 

「それでこれが最後なのですが、ファミレスで勉強教えてもらってたんです。今まで苦労して私が勉強教えてたのに、私より成績が良い子が現れたら用済みって事なんですかね……」

 

無表情で、しかし、周りの温度を下げるような表情で言う。

もう、普通に怖い。

本当に怖い。

で、でも、私は風紀委員。

怖くても、頑張る。

石上のように!

 

「絶対に許してはいけないわ」

「えっ」

「自分の知らない所で他の女に手解きを受けてるんですよ。その女に内側から染められている訳じゃないですか。私なら絶対に許さないです」

 

助けて、石上!!

もう、この人達怖い!!

嫌だ!嫌だ!

助けて!!

 

「気持ちに整理がつきました。今から彼を問いつめてきます。それで納得のいく答えが得られなければ別れます」

 

そう、柏木先輩は言った。

……色々と思うことはあるけど、今は取り敢えず。

助かったーー。

 

***

 

少し後。

 

「あっ、かぐやさ…」

 

藤原先輩や石上先輩達が来た。

四宮先輩がシーッと言う。

 

目線の先には、柏木先輩と田沼先輩がいた。

柏木先輩は強めの口調で言う。

 

「こないだマキと二人で出かけてたよね。どういう事なの」

「あ………、知ってたの…。ここで言わなきゃ駄目?」

「駄目。私の事……本当に好きなの?」

「好きだよ」

「口ではなんとでも……」

 

田沼先輩は柏木先輩にハートのアクセサリーを付けた。

 

「付き合って半年記念のプレゼント」

「マキちゃんには渚へのプレゼント選ぶの手伝ってもらってたんだよ。今夜、渡そうと思ったんだけど…、心配させちゃってごめん」

 

ださ…。

センスないし、今時ハートのネックレス喜ぶ女なんて……。

 

「うれしい」

 

そう言うと、柏木先輩はその……、あの……、深い感じのキ、キスをしていた。

 

***

 

後日談。というか今回のオチ。

オチは既についているのだけれど。

当然、学校でそういうことをするのは駄目なので、叱ろうとしたのだけれど、それよりも早く、

 

「TPOを弁えろよ!!」

 

と、鳴山が本気で先輩方の頭を殴り、二人が文句を言うよりも先に説教を始めた。

風紀委員が全然、説教出来ないけれど、ここは鳴山に任せるのが正しい気がする。

しかし、鳴山はああいうことには怒るのよね。

さっき、あんなメールを送っといて……。

いや、さっきの発言とかこれまでの発言から考えるに、場所を考えればそういう事には肯定的なのかもしれない。

真面目ではあるけれど、はっちゃける時は本気ではっちゃけるタイプだよね。

と、そんな鳴山のことは置いといて、

 

「なんか死にたいので帰ります」

 

と言って、実際に帰っている石上を追いかける。

 

「おーい、石上!」

「……おう」

 

反応が返ってきた。

どことなく、気まずそうだった。

 

「帰るなら一緒に帰らない?」

「……そうだな」

 

と、一緒に帰る。

 

「……どうして、あんな感じになったんだ?」

 

石上が聞いてくるので、まぁ、隠すことでもないし言う。

 

「あれよ。田沼先輩に浮気の疑いがあって、それで話ししてたらそういう感じになった」

「でも、あの先輩が浮気するのかな?」

「ああ、疑いの内容も友人の女の子と仲良く話してた所から始まって、二人で出掛けたり、カラオケ行ったり、勉強を教えてくれたりとかだった」

「……単体なら兎も角、纏めるとそれっぽく見えるな」

 

ああ、言われてみればそうだ。

それっぽくなる。

石上も微妙な顔をしてるみたいだ。

 

「しかし、浮気か。する気持ちが分からないんだけど」

「それは石上が意外と一途そうだからじゃないの?」

 

石上は少しむくれたように言う。

 

「意外となのか?」

「ふふ」

 

私は笑う。

 

「一学期頃の私なら、まず、浮気しそうだって言ってたから」

「……一学期頃なら確かに言いそうだけど、どっちにしたって心外なんだけど」

「ゴメン。でも、今は違って思ってる」

 

こいつは誠実だ。

少なくとも、信じた相手に対して不義理なことはしない。

だから、もし、こいつが付き合っても、浮気なんてしないだろう。

願わくば、私がその相手になれたなら……。

……今は言えないけど。

 

「所で石上。そういえばー

「そうそう、あれがー

 

と、いつものトークをし始める。

こういう毎日がずっと続けば良いな。

 




次回、みんな大好きマキちゃんが登場!
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