鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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いよいよ文化祭編が始まる今日この頃。


みゆきアグレッシブ

俺は海外に進学する。

スタンフォード大学に進学する。

海外の大学の入学時期は、秋頃。

つまり、残された高校生活の期間はおおよそ半年だ。

もう四の五の言えるような時間はない。

だから、俺は決めた。

文化祭までに四宮から告らなかったら、俺から告る!

この際、好意がバレるのは二の次だ。

文化祭までになんとしても進展しなければならない。

時間はあまりない。

やれる限り、やっていくしかない。

あいつと一緒に居るために。

 

***

 

四宮との関係を発展させる為に、最近は少々積極的な行動をしている。

例えば、四宮のコスプレ姿を褒めたり、デートに誘ったりした。

しかし、コスプレの時は照れや恥ずかしさに耐えられなくなった。

デートに誘った時は、誘った時に四宮に断られた挙げ句に、翌日には四宮からの誘いらしきものがあったが、石上に、

 

『さっき廊下で文化祭デートに誘ってる奴がいたんですけど、にこやかに断られたんですよ!撮って見せたい位の顔でしたよ』

 

と、石上に勇気を5下げられ、

 

『女子を公衆の面前で文化祭デートに誘う男子がいて、一応、規則なので取り締まったんですけど、ちょっと悪いことしたなって思ったんです』

 

と、伊井野に勇気を2下げられた。

因みに、その時石上が、

 

『あの伊井野が、そういうことで悪いと思うなんてな』

 

と言って、

 

『私も色々と思う所があるのよ』

『……そうなのか?』

『うん』

 

と、妙に甘い雰囲気を醸し出していた。

こっちは発展してないのに、あっちはイチャついているのが、少し腹が立った。

閑話休題。

その後、鳴山は、

 

『でも、文化祭デート位良いんじゃない?そもそもで、付き合うこと自体が悪い訳じゃないでしょ。問題なのは、そこからアホな真似をする奴らの方だし』

 

と言って、こっちの勇気は7上げて、

 

『お祭り気分に浮かれているナンパが多かったですねー』

 

と、藤原に言われ、勇気が10下げられ、最終的に、

 

『だったら、会長と石上くんで行けば良いんじゃないですか?』

 

と、言われて、勇気が0になった。

その日の帰りに、鳴山から

 

『すいません。折角、決意した感じなのに今回はフォローしきれませんでした』

 

と、メールで送られてきた。

……色々とバレていることはよく分かった。

しかし、変な所で義理堅い奴だ。

と、言った所までが先日までにあったことだ。

そして、今回は自身の見直しをしようと思う。

 

***

 

文化祭も徐々に近づいてきた朝頃。

少しだるそうな様子の鳴山をちらりと見つつ、俺は教室へと向かった。

教室に着くと、藤原がギターを引いていた。

 

「藤原、ギター弾けるのか?」

「お遊び程度ですけどね」

 

藤原は、ピアノを筆頭に音楽関連に強い。

進路の選択肢には入れていないらしいが、それでも、音楽には妥協しない情熱があることを知っている。

主に、毎回の特訓からだが。

それにしても、

 

「何?文化祭で演奏するの?」

「いえ…私は出ませんが、友達が文化祭でオリジナル曲をやりたいと言うのですけど、大譜表でしか作曲したことがない子なので、私がTAB譜に起こしてあげてるんです」

「ふーん?」

 

音楽系に強くないからハッキリとは言えないが、それでも、凄いことなのだろう。

しかし、その話を聞いて思うのは、

 

「よくわからんが格好良いな。男なら一度は文化祭のステージでギターかき鳴らすのを夢見るものだ」

 

と、言ったら、

 

「会長。そんな夢はすぐ捨ててくださいね」

「酷い」

 

藤原に震えた声でそう言った。

心底、怯えた様子だった。

いや、流石にそこまで言われる程のことをしたか?

そんな覚えはないんだが。

ただ、席に向かおうとしただけなのに、

 

ひっ…!!それ以上、近づかないでください!!

 

と、言われた。

流石にそこまで言われると、傷つくんだが。

 

「私はもう、決めたんです!」

「会長が今後、どんなにポンコツ晒そうと私は知りません。一切、協力しないと」

「いっつも、いっつも、ちょっと苦手。ちょっとだけ下手とか言いますけど。ちょっとで済んだ試しがないじゃないですか!」

「会長はもう少し自分を客観的に見た方が良いですよ!!」

 

……そこまで、言う程なのか?

 

***

 

その日の放課後。

生徒会室で、俺は考えていた。

自分を客観的に……か。

俺は確かにモテる。

今まで何度か告白されたこともある。

だが、俺に『男としての魅力』が無いから四宮が告ってこない可能性もある。

確かに、モテた相手も失礼かも知れないが、真っ当な人は少ない。

なんか怖い人達が多かった気がする。

それはつまり、普通の感性を持つ人達には好かれないということに繋がるだろう。

勿論、その可能性自体は低いと考えるべきだとは思う。

だが、その可能性が少しでもあるならば…、検証する必要がある!

 

「こんにちわ」

「………、伊井野だけか?」

「ええまあ…」

 

丁度、伊井野だけが来たようだ。

聞くのには丁度いいタイミングだな。

 

「伊井野……、大事な話がある。真面目に答えてくれ」

「え?」

「俺の事を男としてどう思う?俺を恋愛対象として見る事は可能か?」

「ええ!?」

 

伊井野は困惑したような声を挙げた。

そんなに動揺するようなことを言ったか?

 

「ええと、その、ゴメンナサイ!!

「うん?」

「私には好きな人が…、その…、居て…」

 

アレ?

なんで、俺がフラれた感じになっているんだ?

 

「いや、今の言葉は普通に告白の言葉に聞こえますよ。白銀先輩」

 

そう言う、声の方を見ると鳴山が来ていた。

 

「え?」

「いや、男としてどう思う?とか、そう思われても仕方ないですよ。普通に、客観的な評価を知りたいから教えてくれでいいじゃないですか?」

「………あっ、ああそういう…」

 

………やっべーー!!

確かに、告白の言葉だ、コレ!

そりゃ、フラレもするわ!

だって、伊井野は石上のことが好きな訳だし!

つーか、鳴山の補足が無かったら相当マズイことになってた気がする。

 

「……すまん。伊井野、鳴山」

「いいですよ、別に」

「私も驚きはしましたけど…」

 

鳴山と伊井野の後輩二人にフォローされている。

う~~~ん。

確かに俺は自分を客観視出来ていないだろう。

翌日になって発言を後悔するタイプだ。

そうでは、俺は客観的に見てはどういう感じなんだろう?

 

「それで、伊井野は実際の所、白銀先輩を男性的に評価するならどんな感じなんだ?」

「うん?う~ん。私は白銀会長の事嫌いじゃないです。むしろ尊敬も感謝もしています…。ただ……」

「ただ?」

 

そう言うと伊井野は鳴山に耳打ちする。

それを聞いて、鳴山は、ああ、という納得するような顔をした。

 

「……なんて?」

「う~ん。なんて言えば良いんですかね?好みの種類が違うって感じですかね?」

「……イマイチ、分かりづらいんだが。つまり、どういうことか?」

 

俺が訊くと、鳴山はかなり渋るような顔をしたが、少し悩んだ後、決心がついたような顔をして言った。

 

「顔が全然タイプじゃないそうです」

「グフッ!」

「鳴山!なんで言うの!」

「いや、柔らかく、分かりやすい言い方が浮かばなかったんだよ」

 

グッ。

確かに、これは正面からは言いづらいよな。

全然タイプじゃないのか……。

………そうか…。

 

「で…でも、白銀会長はカッコいい方だと思いますよ!実際クラスで4~5番目位の顔です!」

「いやいや、フォローになってないぞ。クラスから4~5番目って、全体で見たら平均よりも上ぐらいじゃないか?」

「うっ!」

 

4~5番目かぁーー!

自己評価だと2~3番目位だったんだが。

それに、鳴山が言う通り、全体の平均より上ぐらいでしかないのは事実だ。

……そう言えば…。

 

「鳴山はなんで納得したような顔をしたんだ?」

「あーあ。いや。こいつのコレがこれだから」

 

こいつの時に伊井野を指し、コレの時に手でハートを作り、これで手で左目を隠した。

………。

成程な。

あの一連の流れを纏めると、伊井野がラブは左目を隠している人。

つまり、石上か。

確かに石上の顔と俺の顔じゃあ、方向性は違う、のか?

よく分からんが。

 

「それじゃあ、伊井野はどういう男がタイプになるんだ?属性というか、そういうのを教えてくれ」

 

そのまんま好みを挙げたら石上になりそうな気がするから、そういう風に訊いてみよう。

 

「そうですね。いつも私の事を見ててくれて、私の気持ちを分かってくれて、困った時は颯爽と助けに来てくれる王子様みたいな…」

「いねぇよ。そんな奴」

 

いくら石上でも、そこまでじゃねぇだろ。

流石に理想が高すぎやしないか。

そこまでのハードルを石上に課すのか。

 

「いますもん」

「いやいや、流石に…」

「まぁ、意外と居るかも知れませんよ。何せ、事実は小説よりも奇なりと言いますし、実際にそうであると限らなくても、そう見える、ということはありますからね」

 

鳴山はそう言う。

妙に実感がこもった声だった。

何か、実例を知っているのかもしれない。

 

「こんにちわ~。みんなで何の話をしているんですか~?」

 

そこに丁度、藤原も来た。

 

「ああ、千花先輩。今、白銀先輩の男性としての魅力調査をしてたんですよ」

「あーあ!さっきの話の続きですね」

 

藤原はすぐに理解したようだ。

どうせなら、藤原にも訊くか。

 

「それでどうなんだ?」

「ええと、気が進まないんですけど」

 

そう言って、藤原は少し考えるような仕草を見せると、話始めた。

 

「会長を恋愛対象として見れないのはですねー。なんというか、駄目な子供を躾けている気分なんですよ」

男らしさを感じないというか、ただの大きな子供というか、最初は割と尊敬の気持ちもあったんですけどね」

噛めば噛む程エグみが出る食べ物っていうか、別に嫌いじゃないですけど、人生最後の晩餐には絶対に選ばないというか…」

 

「先輩。いい加減止まりましょう」

 

藤原が残酷な位に悪口を言うのを、鳴山が止めた。

そ、そこまでか。

そこまで、駄目なのか。

 

「……因みに、藤原はどういう男がタイプなんだ?」

「え!?いやー…、それはその、ええと…

 

………ああ、そうか。

やっぱり、そうなのか。

 

「いや、やっぱり良い」

「そ、そうですか」

 

藤原はホッとしたように息を吐いた。

対して、鳴山は気にしていないように涼しい顔をしていた。

しかし、()()その話は良い。

問題は、俺の好感度の方だ。

正直、ここまで言われるとは思わなかった。

しかし、女から見たらしょうもない人間なのだろうか。

こんな、ボロクソに言われるような俺が四宮とどうこうなろうなんて、そもそも傲慢が過ぎたんじゃ…

 

ガチャ

 

ドアの開く音がした。

四宮が来たようだった。

 

「あら、これは一体どういう……」

「あっ、かぐやさん。会長が自分の悪口を言って欲しいと言うので、いま合法的に会長の悪口を言う会をしてるんですよ!」

「千花先輩。確かに状態は似たような感じですけど、嘘を言ってはいけませんよ」

 

藤原の四宮への返事に、鳴山が藤原に軽くチョップして言った。

藤原は軽く頭を抑えて鳴山を睨む。

鳴山は、ハァッと軽くため息をつくと、ジィーーと藤原を見て、

 

「叩いてすいませんでした。でも、先輩も悪いんですからね」

「……そうですね。会長、すいませんでした」

「いや、いいけど」

 

と、藤原が謝った。

……こういうことで素直に謝るのは、珍しい気がするな。

 

「…それで、結局どういう会なんですか?」

「会長が自身への客観的な意見が欲しいそうなので、それを言っていたんですよ」

「へぇー…」

 

伊井野が四宮に説明をした。

そうして、藤原が嬉々とした様子で、

 

「かぐやさんも会長に変えた方が良い所言ってやりましょう!ビシッと!」

「会長の変えたほうが良い所……?」

 

藤原がやっぱり反省していないように言うと、四宮は数秒考えると、

 

「変わらないで欲しいですけど」

「私は今の会長で良いと思います」

 

…………………。

ふん。

我ながら単純なものだな。

四宮のそんな言葉で自信が戻るなんてな。

だが、

 

「…いや、そんな事はないだろう」

「俺もまだまだだ」

「いくらでも改善しなければならない点がある」

「これからの男だ」

 

そう、まだまだこんなものじゃ足りないだろう。

四宮と釣り合う為にもだ。

 

「ちょっと、かぐやさん~。良い子やるなんてズルいですよ。会長なんて叩けば埃しか出てこないじゃないですか!」

 

と、藤原が貶めにかかるが、石上が来て、

 

「藤原先輩……。今の自分の姿を客観的に見てくださいよ。人の悪口を嬉々として言う自分の姿を。マジでどうかと思いますよ

「石上くんがそれを言う!?」

「伊井野さんも鳴山くんも人の事を悪く言ってはいけないですよ」

「いや、別に私は……」

「伊井野はそれ程、悪口は言ってないですね。後、四宮先輩に言われたくないです」

「はぁ……。君等はあれだな」

 

言い合いを見て、そう思う。

 

「もう少し自分を客観的に見た方が良いぞ」

「会長が言う!?」

 

***

 

後日談。というか、今回のオチだな。

その日の終わり頃。

鳴山と俺は一緒に帰っていた。

たまにする、情報交換の時間でもある。

 

「そう言えば、最初の方から居たのにお前の評価を訊いていなかったな」

「いや、訊きたいこと的には男の意見なんていらないでしょう」

 

鳴山は当たり前のような顔をして言った。

 

「いや、まぁ、そうなんだが……」

「まぁ、そうですねー。特訓の件で千花先輩にとやかく言われるのは当然だと思います」

「!!お、おま、なんで……」

 

バレないようしていた筈なのに。

 

「別に千花先輩がバラした訳でもないですよ。ただ、僕がその様子を見たことがあるだけですよ」

「……マジでか」

「まぁ、四宮先輩には言っていないので、安心して良いですよ」

「……そうか」

 

こういう所は、きちんとしてるんだよな。

いや、こいつは大体きちんとしているが。

ただ、自分が気付いていると言っているだけだが。

 

「個人的には、努力を続けてきちんと結果を出し、人の事を思い遣れるのは良いと思います。ただ…」

「ただ?」

「体を壊しかねないぐらいに努力中毒になっているのは、駄目というか、心配な点ですね」

「む」

 

こいつは確かに見抜く能力が高い。

だが、たまにそれだけでは説明がつかないエピソードなどを知っている。

まるで、校内でのエピソードはなんでも知っているかのようだ。

四宮とも、雑談している中で話していた。

 

『彼の情報収集能力は恐らく、校内に限れば間違いなく一番でしょうね』

『彼が会長と同じく、一般の出かつ混院という立場で平然と立ち回れるのはきっと、その辺りが理由でしょう』

『会長は確かな実績によって、みんなを認めさせていますが、彼は情報をうまく使う』

『自身の持っている情報をうまく活用して相手を黙らせることが出来るのも強いですが、それを支える情報収集能力が彼の最大の強みなんでしょうね』

『意外と忍者の家系かも知れませんよ』

 

そんな風に四宮は言っていた。

()()四宮がそうして認める程の能力。

忍者の家系、というのは流石に冗談の類にしても、何かしらの秘密は確かにあるんだろうな。

だが、恐らくは俺にどうこう出来るようなことでもあるまい。

それこそ、家系的な話かもしれんしな。

それにしても、

 

「……そのぐらいしなくきゃ、あいつとは釣り合わないよ」

 

そう、四宮と俺とでは、才覚も、器用さも、家柄もまるで違う。

そんな俺が、あいつと釣り合う為には人並みよりも遥かに多くの努力を積み上げるしかない。

そうしなければ、あの(しのみや)は手に入らない。

 

「まぁ、確かに、貴方たち二人はそうやって張り合わなきゃ、お互いのことをより知っていくことは出来なかったんでしょうね」

 

鳴山は柔らかな顔でそう言う。

 

「でも、どの道、そんな張り合いも、そろそろ終わりにしませんとね」

「………さては、お前…」

「ええ、知ってますとも」

 

どうやら、俺の進路も聞いていたようだ。

本当に、どこから聞いているのやら。

 

「まぁ、手伝えるだけ手伝いますよ。頼って下さいな」

「……そうだな。それじゃあ、早速、頼みたいんだが…」

 

こうして、俺のウルトラロマンチック作戦も始まった。

 




進路の話は思った以上に膨らまなかったのでカットしました。
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