鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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文化祭編3日目。


せいとかいフェスティバル 其の参

文化祭初日終了。

私達、生徒会メンバーはホームグラウンド(生徒会室)に集まっていた。

 

「いや~、なんだかんだ言って、結局ココに集まっちゃいますよね~っ!」

「実家のような安心感があります」

 

藤原さんの言葉に、石上くんが同意する。

確かに、ここに来ると大分落ち着いた感じがしますね。

 

「皆、大分お疲れですね」

「ええ。客商売も簡単ではありませんね」

 

変なおじさんも来ていたようですし、でも、早坂は大分イキイキしていましたね。

あの子の楽しそうな顔を見るのは久々だったわ。

それだけで、価値はあったのでしょうね。

 

「結構、長蛇の列になってましたもんね。時間があれば入りたかったですけど、残念です」

「鳴山くんの休憩時間、大分短かったですもんね」

 

鳴山くんと藤原さんが言う。

……というか、アレ?

 

「もしかして、二人で回ったんですか?」

「いえ、TG部と友人二人と一緒に回ってました」

「その友人、二人共女子でしたけどね」

 

鳴山くんの返事に対して、藤原さんが若干拗ねたように言いました。

確か、TG部の部員は鳴山くんを除いて全員女子。

ということは、女子5人に男子1人。

 

「ハーレム状態じゃねぇか」

「別にハーレムじゃねぇよ」

 

石上くんのツッコミを鳴山くんは否定する。

ハーレム?というのが、どういう状態を指すのかは分かりませんが、しかし、その状態は、周りからは相当アレな人物に見えたんじゃないかしら?

 

「というか、もうその論争は良いよ。小野寺とやり尽くしたよ」

「……そう言えば、麗ちゃん。交代際に、

 

『……鳴山って怖いね』

 

って、言ってよ」

「あいつ、まだ誤解してる訳?」

 

鳴山くんは呆れたように言う。

その時、どんなことをしていたのよ。

 

「……誤解されても仕方ないと思いますけどね」

「いや多分、千花先輩もその原因のひとつなんですけど」

「……嫌なんですか」

「仲良しって思われるなら良いけど、ハーレムは流石に嫌です。その不誠実みたいな…」

「いや、その通りじゃないですか」

「失礼な。皆、大切な友人ですから」

「だから、それが……!」

 

何でしょうかね、この二人の距離感は。

藤原さんはあまり好意を隠そうとはしていませんが、鳴山くんは気付いていない振りをしている。

……いや、最近は気付かない振りを止めつつありますけど。

でも、藤原さんの好意を止めようとはしていない。

……一体、何が目的なんですかね?

 

「そう言えば、藤原先輩。私達のクラスのお化け屋敷、どうでした?」

「ああ…、それはですね…」

「まともに聞いてないんですよ。ロッカーの中で口論していて」

「なんで言うんですか!?」

「どうせオチは同じなんですから、今の内に言ったほうが楽になりますよ」

「大体、それも鳴山くんが原因…

「じゃないですよ!!」

 

鳴山くんが被せ気味に言う。

いや、本当に何があったんですか?

気になってくるんですけど。

 

「あれは絶対、僕関係ないですよね!?勝手にそっちでやってたことですよね!!」

「確かにそうですけど、根本的な問題はあなたにあるでしょ!!」

「いやいやいや、仮に僕が根本の部分を担っていたとしても、根は栄養を送っているだけで争っているのは葉の方でしょうが!!」

「今、実質認めましたよね!?」

 

この二人がギャアギャアと言い争いをしている。

なんか痴話喧嘩にも見えてきますね。

 

「……この二人の言い争いって、痴話喧嘩に見えるよな」

「…うん」

「「痴話喧嘩夫婦に言われなくない!!」」

「「だ、誰が夫婦だ(よ)!!」」

 

石上くんと伊井野さんの感想に対して、仲良くツッコミを入れる鳴山くんと藤原さんに対して、石上くんと伊井野さんがこれまた仲良く返した。

確かに、このタイミングの良さは、夫婦と呼ばれるわね。

というか、

 

「石上くんと伊井野さん。いつの間に仲直りしていたんですか?」

「そうだな。それは俺も気になっていたんだ。大分心配していたんだが、結局何が原因だったんだ?」

 

そう、この二人は文化祭直前に喧嘩、というか、伊井野さんが一方的に石上くんを避けるという事態が発生した。

生徒会に入った頃には、大分仲が良かった二人のこの事態に、周りの人達は大分焦ったものだ。

それが、文化祭初日の今は仲直りをしている。

その理由を私達は知らない。

いや、恐らく鳴山くんは自身の聴力を持って一部始終を把握しているのだろうけど。

なので、訊いたのだけれど、伊井野さんが顔を赤くしているわね。

 

「ええと、その、私が恥ずかしい勘違いをしただけなんです」

「その勘違いとは?」

「……恥ずかしすぎるの言えません」

 

伊井野さんが完熟トマトのように赤くなっている。

そんなに恥ずかしい勘違いしてたの?

気になるけど、ここで訊くと伊井野さん、恥ずかしさで死にかねないから止めたほうが良いわね。

 

プルルルル

 

スマホが鳴る。

送り主は鳴山くんだ。

この流れだと、原因のことを書かれているのだろう。

周りを見ると、他の人に送られている様子はない。

ということは、私にだけ送っているということか。

どれどれ。

…………。

 

「ブフッ」

「わぁー!?かぐやさん、どうしたんですか?」

「い、いえ。何でも無いです」

 

思わず吹き出したのを藤原さんに反応されてしまった。

いえ、でも、これは確かに恥ずかしい。

嘘の方の勘違いでも十分に恥ずかしいと言えば恥ずかしいですが、本当の方の勘違いは本当に恥ずかしい。

本人が知ったら、恥ずかしさのあまり、別の意味で石上くんの顔が見れなくなるわね。

というかこれ。

本当に、そっちで勝手にやってくれというレベルでくだらない話ですね。

 

「それで、白銀先輩はどうでした?」

「保護者の案内のついでに多少は見て回ったが…、それらしい事と言えば四宮の所でカフェイン補充した位だ。まぁ、寄付金も今日で集まったし、明日は色々と見て回るつもりだよ」

 

と、ここで鳴山くんが会長に話題を振った。

鳴山くん、良いですよ!

 

「そうでしたか……、では忙しくて食事する暇もなかったじゃありません?」

「まあなー」

「でしたら、たこ焼きお一ついかがです?」

 

これが今日の作戦!

その名もハートロシアンたこ焼きだ。

この文化祭でハート型の物を贈れば永遠の愛が与えられるという伝説がある。

恐らくは、それを便乗したたこ焼きなのでしょう。

ハート型のかまぼこが入っている。

これを直接本人に渡すのは憚られる。

ですが、普通のたこ焼きに混ぜてしまえば、見分けなんてつかない!

 

「そういえば、やたらとハートを推すたこ焼き屋もありましたね」

「そ、そうですね。でも、これは違うものよ。容器を見れば判るでしょう?」

「そうですね」

 

ハート入りのたこ焼きは左手前…。

石上くんを誤魔化せる程度には、見た目は全く違和感ないわ

会長に気づかれる事なくハートを贈り、しれっと永遠の愛を獲得……

完璧な作戦だわ!

 

「じゃあ、一個貰おうかな」

「ええ」

「いいなー!私も一個貰っていいですかぁ~?」

 

やっぱり、藤原さんは来るわね…。

 

 

「冷めたたこ焼きもオツなものですよね~」

 

本当に、この子はいつもいつも…

 

「千花先輩」

 

低い声で鳴山くんが言う。

えっ、何?

 

「僕にあれだけ奢らせておいて、まだ食べるんですか?禁句を言われたいんですか?」

「……かぐやさん。私はいいです」

「え、ええ」

 

鳴山くんがあんなに怒ったような雰囲気になるって、どれだけ奢らせたんですか。

彼、それなりに収入があるから、多少の出費は痛くない筈なのにああ言うって…。

禁句は、まぁ、あの言葉なんでしょうね。

取り敢えず、藤原さんは大丈夫ね。

 

ぐぅ~~。

「!!」

 

伊井野さんのお腹が鳴る。

たこ焼き(これ)を見て、反応したんですね。

しかし、鳴るほどにお腹が空いているとなると…

 

「伊井野。焼きそばあるんだけど、食べるか?」

 

!!

 

「良いの?」

「どうせ、朝の内はあまり食べれてないんでしょ。お腹空かせてると思って、残しておいたんだよ」

「ありがとう」

「ちょっと、鳴山くん!?」

「な、ん、で、す、か?」

「……なんでもないです」

 

伊井野さんの対策をしている!?

私の思考を読んでいたのか、それとも単純に伊井野さんの心配をしていたのか。

……後者の方だとは思いますが。

 

「なら、会長。一個と言わずに全部食べてしまって構いませんよ」

「確かに、小腹も空いているし頂くとしましょう」

 

ふん。

予定よりも予定通りになりましたね。

これも鳴山くんのお陰ですね。

大して表情も変えずにこなす辺りは、別系統とは言えプロフェショナルなんでしょうね。

会長は的確にハート入りたこ焼きを避けるように食べるわね。

まぁ、でも、邪魔も入りませんし、これでミッションコンプリート…

 

「ん…、なんかこのたこ焼きだけゆるいな…」

 

え?

 

「あっ、中の具だけが出て…」

 

!!

マズイ!!

そう思った瞬間。

私はその具を会長に見られより先に食した。

 

もぐもぐ

 

「それじゃあ、みなさん。お疲れさまです……」

 

そう言って、私は帰った。

この後、鳴山くんに

 

『何やってるんですか?』

 

と、送られてきた。

ええ、本当にそう思います。

 

***

 

初日の夜。

俺と鳴山はまだ校内に居た。

 

「まぁ、こんなものですかね」

「こんな時間まで付き合わせてすまんな」

「気にしなくて良いですよ。したくてしてるんですし」

 

俺達は、校舎内の風船を()()()()の為に集めていた。

しかしこれ。

大半が鳴山が集めていた。

しかも、夜にライトも点けずに移動している。

夜の学校を歩き慣れている感じだ。

本当にどんな生活送ってるんだ?

 

「それにしても、夜の学校というのはどことなくワクワクしますよね」

「そうか?俺は少し怖く感じるが」

「まぁ、実際は警備員に見つかるかどうかの恐怖との戦いなんですけどね」

 

そんな風に言う。

 

「お前、実はそれなりに夜の学校に来ているんじゃないのか?」

「それをする理由を挙げられるなら、認めますけど?」

 

そう言っている時点で認めているような気もするが、確かに理由は挙げられない。

そもそもでこの行動自体、大分非行に入る気がするが、それを平然とする辺り、こいつの基準が見えてこないな。

ああ、そう言えば、

 

「暗号の方は出来たのか?」

「ええ。千花先輩を誘導する為の暗号は既に出来ています」

 

鳴山は、暗号の制作の方を行っていた。

元々は意味のないものを作ろうとしていたのだが、

 

『実際に答えがあるものの方が、釣りやすいんですよ』

 

と、言って作っていた。

単純に暗号とか作るのが好きなタイプなのだろう。

 

「しかし、四宮がそれに騙されるということはないのか?」

「それは大丈夫です。その対策はもう出来ています」

 

自信ありげに鳴山は言う。

……こいつの言うことだ。

キッチリとした準備があるのだろう。

 

「それにしても、よくこんな計画立てようと思いましたね。ていうか、本当に四宮先輩のこと好きですよね」

「……悪いか」

「いいえ。むしろ、羨ましいぐらいですよ」

 

こいつには、俺の気持ちはとっくに伝わっている。

恐らくは、最初の頃にはバレていたのだとは思うが……。

 

「俺って、そんなに分かりやすいか?」

「ええ。そもそも相手を告らせたいなんて、よっぽど好きでもなきゃ考えないことですし。知ってました?生徒会室で白銀先輩の目線、5割ぐらいが四宮先輩に向けてましたよ」

 

優も言わないだけで察してはいるんじゃないですかねと言う鳴山。

しかし、そうか。

そんなに見ていたのか。

顔が熱くなる。

石上にもバレているかもしれないと考えると、中々とクルものがあるな。

 

「まぁ、僕はその辺で気を遣おうとは思わないので、こうして本人の目の前で言うんですけどね」

「……そこは気遣えるようになった方が良いんじゃないか?」

 

石上の人の良さはそこら辺の気遣いが所以になっている部分も大きい。

それを学ぶことは決して悪いことではないと思うが。

 

「僕と優は違いますよ。あいつは根っからな部分が多分にありますけど、僕は必要だから身につけたに過ぎません」

 

天然ものと同じところには、中々行けませんよ、と鳴山は言う。

 

「必要って…、お前は一体どんな生活を送ってきたんだ?」

「そんなに大したことではないですよ。起きたことはどこの学校でもあるような、そんなありふれたことです」

 

鳴山は大して気にしてないかのように言う。

しかし、そこまでぼかされると気になるな。

こいつの仄めかし癖は、どうにかならないのだろうか?

 

「お前のその辺をよく知っている人物はいるのか?」

「撫子と、後臥煙さんは確実に知っていますね。後は、斧乃木はしれっと知ってそうな感じはしますねー」

「すまん。誰一人として分からないんだが」

「そりゃ、プライベートな関係の人達ですしね」

 

やっぱり、こいつは教える気はないらしい。

……石上に対しての大友京子のような存在がいるということなのだろうか?

本当にこの後輩に関しては分からないことが多いな。

分からないことと言えば一つ、

 

「お前は藤原書記と鬼ヶ崎。どっちが好きなんだ?」

「……僕は現状、恋愛する気はありませんよ」

 

鳴山はそう言う。

 

「何故だ?俺や石上の恋愛を応援するんだ。恋愛が嫌いという訳ではないだろう。それに、あの二人のことも…」

「白銀先輩。僕にだって、訊かれたくないことぐらいはあるんですよ」

 

普段、気楽そうに話すのに、ここでは低めの声でそう言う。

鳴山の確かな拒絶だった。

こいつがこんな風に拒絶するとはな。

普段は簡単に話すのは、本当に知られたくないことを隠すための手段ということなのか。

 

「でも…、そうですねー。隠されたままなのもアレだと思うので少しだけ明かしましょうか」

 

努めて明るい口調で言う。

……本当はそんな話はしたくはないんだろうな。

 

「いや、別に良い。話したくないのなら、話さなくてもいい」

「……そうですか。なら、話しません」

 

ここでハッキリ宣言をするのも、彼らしい。

少し不機嫌そうな顔もしているがな。

 

「さて、詰め終わりましたし、帰りますか」

「ああ、そうだな」

 

***

 

「先輩としては、この計画。成功する確率はどのくらいだと見ているんですか?」

「100%、俺はここで成功させなくてはならない」

「成程。CanではなくMustであると。僕としては、7割ぐらいですかね」

 

学校から出た後の帰り道。

俺たちは、そんな話をしていた。

 

「なんで、七割なんだ?」

「四宮先輩が告白してくることも込みでの7割ですよ。単純にお願いを通すだけなら、9割は堅いと思っています」

 

こいつの中で、どんな計算が行われているのかは分からんが、しかし、心情に左右されることなく考えることの出来るこいつだ。

それなりに、確かな根拠があってのことだろう。

 

「まぁ、この文化祭で付き合えたとしても、すぐに大きな問題に直面しそうな気もしますが」

「大きな問題?」

「結婚まで見据えているなら、確実に立ち塞がるであろう問題です」

「けっこ…!?」

 

いきなり何を言うんだこいつ!?

いや、まぁ、確かに四宮と結婚出来ればとは思うが、しかし、今考えるべきことなのかは…。

 

「四宮先輩だって、()()の女の子ってことを忘れちゃいけませんよ」

「何の話だ?」

「気にしなくていい話です。いざとなったら、フォローはするので安心して突っ走っていけばいいんです」

 

なんか、色々と誤魔化されているような気もするが、ここからはいくら訊いても、何も引き出せないだろうな。

 

「さて、それじゃあこの辺で」

「ああ、明日の文化祭もよろしく頼む」

「ええ、勿論」

 

そして、運命の奉心祭、二日目は始まる。

 




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