クリスマスイブの藤原家。
俺はここに生徒会メンバーとのパーティーに来たのだが、
「……まず聞こうか。あれはなんだ?」
俺は、針葉樹と竹がセットになっているてっぺんに星があるものを指す。
「かどまツリーです」
「かどまツリー?」
「はい。門松とクリスマスツリーが一つになったやつです」
「すいません。これはなんですか?」
と、石上が獅子に恐らくはトナカイの角であろうものがくっついているものを指す。
「これはししまトナカイです」
「それじゃあ、あなたは誰ですか?」
と、鳴山は鬼の仮面のついた赤い服を着た藤原に聞く。
「なまはげサンタです」
「「はい」」
そうして、俺と石上は一拍置くと同時に叫ぶ。
「「何故この家はクリスマスと正月を混ぜる(混ぜるんですか)!?」」
いやいやいやいや!!
おかしいだろう!
色々と!
「会長の気持ちも分かりますよ?私達も最初はそうでした」
藤原は言う。
「何年か前にクリスマスが終わっても片付けていなかったツリーを姉が門松に改造しちゃって……」
「勿体ないので毎年そのまま使ってたら……」
「だんだん……、これこそがクリスマスの本来あるべき姿だって思えてきたんです」
「勝手な文化を定着させるな!」
「ただの異教徒の奇祭じゃねぇか!」
俺と石上が突っ込む。
くそっ!
今夜はオシャレな夜にして、四宮との関係をはっきりさせようと思っていたのに…
寄りにも寄って、こんな奇祭に……!
「これ絶対、藤原先輩に準備任せたの失敗でしたよね!」
「まぁまぁ。優に白銀先輩も。長い人生、10回位はこういうクリスマスも経験しますよ」
「いや、10回もあってたまるか!」
「まぁ、そうですよね。せっかくのクリスマスイブなんですし、こうして皆でゆっくり年を越すのも悪くないよ」
「おい!圭ちゃんが正月モードになっちまってるだろうが!年越しまであと1週間はあるのに!」
「1週間なんてあっという間でですよ?F1カーが通り過ぎる並の速度で過ぎますから」
「鳴山はなんでちょっとフォローする方に回ってるんだ!?」
普段ならこいつも呆れながらツッコミ加える側なのに。
藤原に甘くなっているということか?
「良いじゃないですか。こういうハチャメチャな感じではしゃぐのって楽しいじゃないですか!」
……いや、違うな。
こいつ、普段が普段だから誤魔化されてるが、根本的にTG部なんだよな。
他者への迷惑を考えているだけで、迷惑考慮しなかったら、普通にやらかすタイプだよな。
「……これがクリスマスですか?」
「いや、伊井野違うからな。これは例外中の例外だからな!」
「本当にオシャレさの欠片もない……」
「オシャレじゃなくてもいいじゃないですか。私、いつも正月は本家に顔を出さねばならないので、皆と正月が出来るのは嬉しいです」
「……まぁ、四宮が良いなら」
***
「それじゃあ、プレゼント交換をしましょう!」
鍋を食べ終わった頃。
藤原先輩がそう宣言した。
「どのプレゼントを受け取るかはくじで決めます!」
「へぇ……。割り箸がくじになるんですね」
「取り敢えず、四宮先輩は手を洗ってきて下さい」
鳴山がそう言うと、四宮先輩は少し眉をひそめた。
どうやら、何かを仕掛けようとしてみたいだ。
私としては、石上のプレゼントに当たると良いんだけど。
「それじゃあ、私から引きますね」
そう言って、藤原先輩が引きました。
「私は…、石上くんですね」
ぐっ!いきなり、石上のプレゼントが持っていかれた!
この形式上仕方がないのはそうなんだけど……
悔しい!
「僕のプレゼントはアロマです」
「へぇー…。もっとヤバいのが来ると思ってました」
「僕を何だと思ってるんですか」
石上はアロマか。
確かにらしいプレゼントだ。
……欲しかったな…。
「それじゃあ、次は私が」
そう言ったのは、白銀会長の妹さんだ。
確か名前は、圭だったっけ?
「私は伊井野さんらしいです」
「あっ、私?」
まさか、初対面の相手に当たるとは思わなかった。
「私のプレゼントは、テディベアです」
「……ありがとうございます」
周りが静かになった。
……あれ?
私、何か間違えた?
「じゃあ、次は僕ですね」
流れを断ち切るように、鳴山が引く。
「僕は四宮先輩みたいですね」
「……どうぞ」
「そんな怒らんでも」
何やら不機嫌な四宮先輩にそう言うと中身を開ける。
「おお、肩もみ機か…」
「何か不満でも」
「いや、プレゼントの候補の一つだったので」
鳴山はそう言うとプレゼントを片付ける。
流石にその対応はどうかと思うんだけど。
「……次は僕ですね」
と、石上は言う。
「僕は、会長の妹さんですね」
「あっ、石上さんに当たりましたか」
妹さんは気まずそうにする。
なんでだろう?
「私、絵本なんですよ」
「ああ、成程。良いよ。嬉しい」
そう言って、石上は受け取る。
確かに、男に絵本は中々とミスマッチだと思うけど、嫌な顔ひとつせずに受け取って…。
……やっぱり、好きだなー。
それをそうと、
「次は私で」
「ハイハイ!ミコちゃんも引いて下さい!」
そうして私が引くと、鳴山と書かれていた。
「私は鳴山みたいです」
「伊井野に当たったか。ほい、これ」
そう言って、鳴山はプレゼントを渡してきた。
中身を開けるとそこに当たったのは、ウイスキーボンボンだった。
「……鳴山」
「ウイスキーボンボンは、合法的に未成年がアルコールを摂取できる食べ物です。ていうか、ウイスキーボンボンで酔うやつはいないだろう」
「それはそうだけど」
前の私なら、ツッコまなかったかもしれないけど。
でも、流石に今は文句を言いたい。
常識ないの?
「私はこれ食べないわよ?」
「だったら、……、いや、取り敢えず貰うだけ貰っといてくれ」
鳴山は変な間を開けて言った。
……何を言いたかったのも、想像つくけど。
変な所で気を使うんだから。
「では、今度は私が引きますね」
四宮先輩は、そう言って引く。
「私は……、藤原……千花さんですね」
どうやら、藤原先輩のを引いたようだ。
「うっふっふ、私のプレゼントは手作りのバスボムですよ~!」
「バスボム?」
「はい!お風呂に入れるとしゅわしゅわいい匂いで楽しいですよ~!」
「へぇ、それは楽しみです」
……意外と普通にいいプレゼントだ。
藤原先輩のことだから、もっとぶっ飛んだものが出るかもと思ったけど…。
ちゃんとしたプレゼントも送れるんですね。
「あっ、私と白銀会長がプレゼント交換ですね~、偶然~~」
「鳴山くん…」
「いや、大体の方法の想像はつきますけど。気にするほどのことでは無いですね」
「あなたね…」
どうやら、藤原さんの妹が何かをしていたらしい。
鳴山はそれに気がついていたみたいだけど……。
あいつが対応しないということは、そんなに気にすることじゃないだろうけど。
「白銀会長のプレゼントは……」
「ハンカチ!素朴で良いですね!」
ハンカチ。
……ハンカチ?
えっ、流石にそれは……。
「なんか無難というか、面白味ないですね」
「まぁ、時間なかったでしょうしね。仕方がない。で、片付けきれないですけど、仕方がないですね」
鳴山がフォローの振りをした追撃をかましてくる。
こういう時、鳴山は容赦しないのよね。
「あっ、私のプレゼントもどうぞ!」
そう言って、会長が藤原先輩の妹さんのプレゼントを開けた。
そこにあったのは、手錠だった。
……もう一度言おう。
手錠だった。
「萌葉!人の兄になんてもの渡してるの!」
「ごめんなさい会長!うちの家族私以外全員ちょっと変なんです!」
「そうなことはないんじゃないですかね?」
石上が疑問を投げかける。
確かに藤原先輩は少しおかしな所があるけど。
でも、流石に手錠はないと思う。
「いや、すっげぇ嬉しい」
「「「「ええーーー!!」」」」
白銀会長は心底嬉しそうな顔をしてそう言った。
白銀会長!?
正気ですか!?
「ありがとうな藤原妹。これこそが俺の求めていたものだ……」
「会長!?どうしちゃったんですか!?」
「……一言言っておきますけど、ドベ争いしてることに変わりないですからね」
「グッ……!」
鳴山がそう言うと、白銀会長は思い切り落ち込んでいた。
ああ、成程。
ハンカチよりも酷いプレゼントを求めていたということなのね。
だとしたら、それを指摘するのは……。
……本当にこういう時の鳴山は躊躇がないのよね。
***
プレゼントの交換も終わり、パーティーの開始からそれなりに経った頃。
私は会長を探していた。
「うわー、ボンビラス星とか初めていったわ」
「中々見ないもんな」
「そんなに珍しいイベントなの?」
「そうだな。キングは基本サイコロのマイナスばかりだし」
後輩達と藤原さんは鳴山くんの持ってきたゲームで遊んでいる。
藤原さんの家はその手のゲームは禁止されていた筈ですし、圭もそこまでの経済的な余裕はない。
だから、楽しんでいるんでしょうね。
「それにしても、よくゲーム機を持ってこようと思ったな」
「いや、デジタルゲーなら千花先輩の余計な小細工を喰らわないだろうなと思って」
「ちょっ…!?酷くないですか!?」
「姉様のことよく分かっているんですね!」
「千花姉は確かにそういう所ありますもんね」
「萌葉に圭ちゃんまで!!」
鳴山くんの言葉に他のみんなが頷く。
藤原さんは基本的に嘘をつかないけど、ゲームに関しては卑怯な手も平気でとるのよね。
「はい、これで5つ目の独占!」
「白兎の無双状態だな」
「銀次を3回も食らってるのにね」
どうやら、現状のトップは鳴山くんらしい。
その鳴山くんは、ふと私の方を見ると、首で庭の方を指した。
……成程ね。
「物件がどんどん無くなっていく……」
「だ、大丈夫よ。まだ1年あるし」
「そうですよ。まだまだ、これからです」
「あっ!グヌヌ…。ここで銀次を食らうなんて…」
「まぁまぁ、頑張って下さいよ」
「腹立つ~~」
そんなみなさんを尻目に、私は庭の方に出る。
そこには、星を眺めている会長が居た。
「…プレゼント。お互いに当たりませんでしたね」
私はそう話しかける。
会長は少しこちらに視線を送ると、
「……そうだな。残念だった」
と言った。
私は懐から、プレゼントを取り出して、
「これ。みんなには内緒ですよ」
「ありがと……」
会長は嬉しそうな顔でそう言ってくれる。
「会長は……無いのですか?」
「……ある」
そう言って、会長はバックから袋に包まれたものを取り出した。
会長はそれをしばらく見つめると、
「いや……、ごめんやっぱ駄目だ」
「これ適当に選んだやつだから……、明日ちゃんと選んだやつ渡すから……」
会長はそう言って、誤魔化そうとする。
隠そうとする。
「いいですよ。別に適当でも……」
「駄目だ!」
「いやホントに時間がない中選んでさ……!今思うとなんでこんなもの買ったんだろって感じで……!」
「これは違うんだ」
「四宮にはもっと完璧なーー」
「だからーー」
会長はいつも、そうやって隠そうとする。
いつも無理をして、準備や手間をかけて、完璧なものを見せてくれる。
でも、今私が見たいのはそういうものじゃない。
完璧なものじゃない!
私は会長のプレゼントを掴んで、そして言う。
「わからない人ね」
「完璧じゃなくても、良いと言ってるのよ」
クリスマスは区切るのが難しい。