鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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いよいよ、あの二人の戦いが始まる今日この頃。


ちかリクエスト

どうも、白銀御行だ。

先月の冬休みに遂に四宮との交際がスタートした。

色々と長い道のりだった。

だが、これはあくまでスタートライン。

恋愛は付き合ってからが本番だ。

これからも多くのトラブルはあるんだろうし。

それを表すのは、新学期2日目。

元々はドッキリの話だったのが、俺たちが付き合い出したのを生徒会の全員、特に藤原書記にも気付かれていたことだ。

正直、肝を冷やした。

無能ラブ探偵だと思っていたが、そんなことも無かったということなのか。

実は分かった上で妨害していた可能性も出てきて、ちょっとイラッとしてたりはする。

脱線した。

四宮の家のこともある。

生徒会の皆には内緒にしておくようには頼んであるが、俺たちも注意する必要があるだろう。

しかし、今回のその宣言からあることが浮き彫りになった。

それは生徒会内の恋愛事情を全員が全員のを把握したことだ。

俺と四宮のことは勿論、石上と伊井野の関係もステップアップしている。

そして、もう一つ。

藤原書紀と鳴山庶務。

この二人の関係も複雑だ。

簡単に言ってしまえば、藤原書紀の片思いなのだが、鳴山はその気持ちに気づいているし、もう一人、中等部の後輩の鬼ヶ崎という子が鳴山のこと好きだったり、それにも鳴山は気づいていたり、三角関係の体をなしている。

更に、鳴山は今の所、恋愛しないとも言っている。

正直、面倒なことになっている。

そして、大体鳴山が悪い。

拗れてる原因の大半は、鳴山の優柔不断が原因だ。

いつもは、即断即決ってくらいの速度で行動する癖に。

いや、本人のスタンスがぶれている訳ではないんだろうが。

今回はそんな話だ。

 

***

 

「かぐやさん!会長!手伝って欲しいんです!」

「お、おう。取り敢えず、ファミレスだから静かにしような」

「そうですよ、藤原さん」

 

三学期が始まってすぐの頃の土曜日。

金曜日に藤原に相談したいことがあると四宮と一緒にメールで呼び出された。

それで今、あるファミレスに集まっていたのだがいきなり何を言うんだ?

 

「手伝うって、何を手伝って欲しいんだ?」

「ちょっと白兎くんを攻略するのを手伝って欲しいんです!」

「ああ……」

 

四宮は察したように声を漏らす。

鳴山の攻略か……。

 

「しかし、どうして今訊くんですか?今までは一人でやっていたじゃないですか?」

「確かにな。どうしてだ?」

 

そもそも藤原が何かを相談するというシチュエーションが珍しい。

藤原は基本的に相談を受ける側(それが功を奏すかどうかは別だが)で、相談をしている場面をあまり見た覚えがない。

それに一応はラブ探偵を自称している。

相当にポンコツだが。

こういう恋愛事に対して相談することは本人の意地にも関わる気がする。

つまり、そんなに面倒な相手なのか?鳴山は。

 

「正直煮詰まりなんです。距離もちゃんと詰めれているんだが詰めれていないんだかイマイチ判断しづらいですし」

「でも、名前呼びとかの進展も見られますが」

「それだけなら鬼ヶ崎ちゃんもそうですし大した指標にならないんです。それにその理屈だと一番近いのは千石さんになるんです!」

「千石?」

 

そう言えば、文化祭の時に名前を挙げてたな。

あいつの生活を知る人物。

 

「会長は知っているんですか?」

「ああ、いや、話の流れでそういう友人が居るって話を聞いたことがあるだけで、どういう人物かは聞かされてないな。四宮は?」

「私は実際に会ったことはありますが……、なんというか、人見知りするタイプではあるようなんですか、彼の友人らしくからかうのが好きな人みたいですよ」

「へぇー」

 

あいつにもそういう友人居るのか。

意外というか、まぁ、分からなくもないか。

 

「二人とも一応知っているんですね。多分鬼ヶ崎ちゃんも同様に考えていると思いますが、まずはその千石さんのラインを超えないと彼の付き合う付き合わないのラインに届かないです」

「どうしてそう思うんだ?」

「女の勘です」

 

女の勘って……。

いや、存外馬鹿に出来ないとは聞いたことはあるが。

 

「……そうですね。確かに千石さんと居る時の鳴山くんは普段、私達に話しているときよりも遠慮している様子はありませんし、時々会話が飛んでいることもありますがそれも互いに言ってない部分を理解しているが故なのでしょうし、相当に仲が良いのは確かだと私も思います」

「そうなのか?」

「ええ、そうです。まぁ、付き合う付き合わないって感じでもないので大丈夫だと思いますが、もし彼女が参戦していたら、私や鬼ヶ崎ちゃんじゃ勝てない位近いんです」

「そこまでか…」

 

実際に会ったことがないから、本当に分からん。

しかし、藤原はポンコツだから分からんが、四宮が納得するように頷いているから実際にその通りなんだろうな。

 

「それは分かりましたが、具体的に私達に何をして欲しいんですか?」

「私と鳴山くんと鬼ヶ崎ちゃんの、そう、『恋愛争奪戦』の手助けをして欲しいんです!」

 

うわー、何言ってるんだろうとか思うけど、どこかで聞き覚えのある単語が出てきた。

四宮も呆れている。

 

 

「その、恋愛争奪戦?を手伝うって何をすればいいんだ?」

「例えば、どのようなアピールが有効なのかとか、男の唆る表情はどんなのなのかーとか、後はシチュエーション作りとかを協力して欲しいんです」

「何故私達なんですか?他にも石上くんや伊井野さんも居るでしょう?」

「あの二人はウブ過ぎて参考にならないんです!かぐやさん達は、何か駆け引きもしてたみたいですし参考にするならそっちの方が良いと思ったんです」

 

……マジで、藤原に気付かれてたのか…。

ていうか、分かった上で妨害してたってことにならないかそれ?

だとしたら、本当に碌でもないが。

 

「藤原さん気づいてたんですか?」

「何となくですけど。イマイチよく分からなかったので、思った通りに動いてましたけど」

「ラブ探偵はやっぱり鳴山だな」

 

鳴山は分かった上で誘導するからな。

普段の行動で変なことをすることはあるが、俺や四宮の邪魔はしない。

むしろ、トスをする位だ。

それに比べてコイツは。

気づいてても意図がわからないとは……。

尚更質が悪い。

 

「むぅ~~!鳴山くんのどこがラブ探偵なんですか!彼なんて、ちょっと人の気持ちに聡くて、ちょっと人の意図を読むのが上手くて、ちょっと人よりもお節介で下世話で、誰よりも人の為に動いているだけじゃないですか!!」

「なぁ、これ惚気じゃないか?」

「そうですね。文句言ってる振りして、良い所しか挙がってませんでしたよ」

「いいえ!これは彼の駄目な所なんです!彼は何だかんだ自由にやっているように見えますけど、その実裏で色々と人、具体的には石上くんやミコちゃんの為に動いて、その辺を表に出そうとも思わないから色々と抱え込んでパンクしそうなんですよ!文化祭のときとかいい例ですよ!彼、石上くんや伊井野ちゃんが拗れている間、イマイチ他のことに集中出来ていない二人の代わりに動くし、二人の仲直りの為にも動いているし、挙句の果てに会長の企画の為にも動いてて、表に出してませんけど、倒れる一歩手前でしたよ!!そういう時に頼るってことが出来ない人なんですよ!!ホントに駄目な所なんです!」

「……まぁ」

「確かにな」

 

四宮と一緒に少し震えた声で言う。

心当たりがあり過ぎる。

いや、これは前に鬼ヶ崎にも言われたな。

結局、そこまで疲れているようにも見えなかったから何もしなかったが、そうか、そんなに追い詰められていたのか。

だとしたら、俺にも責任の一端がある。

もう少し、鳴山のことを気遣った方がいいのか?

 

「それにしても、藤原さんはそれに気づいてたんですか?」

「気づいていましたよ。どうにかして休めるようにしようとも思ったんですけど、彼、先手必勝とばかりに先回りして動くし、休みの時間も別件で動こうとするからもう連れ回して食べ物を食べるという面目で休ませるしかなかったんですよ!」

「それは、お前が食べたかっただけじゃないのか?」

「そんな訳ないじゃないですか!?私のことをなんだと思ってるんですか!?」

 

藤原が必死の形相で言う。

いや、全く信憑性がないわけじゃないんだが、それこそ1日目が終了した時に更に食べようとしたからな。

やっぱり、食い意地じゃないかって感じがあるからな。

 

「まぁ、良いです。今回の主題は別ですし……。それで、手伝ってくれませんか?」

 

藤原は怒り疲れたのか少し疲れたように訊く。

ふむ。

藤原が言っているのは、俺にとっての鳴山のように裏で少し手伝ってくれないかということだ。

しかし、鳴山はそこまでしてくれてたか?

あいつも指摘というかアドバイス送るばかり、いや、俺が気付いてないだけで裏でも相当助けられてるのかもしれない。

少なくとも、藤原からしたらそう見えるらしいしな。

なんだろうな、この感覚。

あるのかないのか分からない。

まるでドッキリ箱が目の前に設置されているような感覚だ。

……やはり、俺はもう少し鳴山に近づくべきだろう。

今のままでは、あいつのことを知らなさすぎる。

なら、俺としては結論は決まりだ。

 

「俺は構わない。が、四宮はどうする?」

「そうですね。藤原さんからの折角の頼みでもありますし、良いですよ」

「やったー!ありがとうございます!」

 

そう笑顔で藤原は笑う。

なんか踊りだしそうだな。

 

「それで早速会長に頼みたいことがあるんですけど…」

「なんだ?」

「ちょっと鳴山くんの好みを聞いてきて欲しいです」

 

鳴山の好み?

確かに好みを知ることは恋愛において重要な要素にはなるだろうが。

 

「それ、最初にするべきことじゃないのか?」

「まともに教えてくれないんですよ。恋愛する気がないって言ってる人が自分に対して好意を向けている相手にそのまんま好みを伝える訳ないじゃないですか」

「ああ、なるほど」

 

まぁ、どちらにしても早めに知っておくべきではとは思うが。

 

「後、私と鬼ヶ崎ちゃん、どっちがリードしているのかが知りたいです!」

「それがメインだろ」

 

正しく現状を知ることがメインじゃねぇか。

確かに自分への好感度は知っておきたいこと、か。

しかし、

 

「俺ではそこまで踏み込めるか分からんぞ。そんなに親しい訳でもないし」

「確かにそうですね」

「それについては私に案がありますよ」

 

と、ここまでそんなに話に関わってこなかった四宮が声を上げる。

 

「どんな案ですか?」

「石上くんも混ぜて男子会?というものをするんです。そこで恋愛談義にもっていければ良いと思いますよ」

「ああ!良いんじゃないですか!」

「まぁ、手としてはありだとは思うがその状況を作るのが中々…」

 

プルルルル、プルルルル

 

「会長、スマホが鳴っているようですが」

「ああ、スマン」

 

『明日、鳴山の家で男子会開きませんか?鳴山の方にはもう許可を貰ってるので来れるようなら連絡下さい 石上』

 

「……ドンピシャだな、おい」

 

いや、タイミング良すぎるだろ。

なんか怖いんだが。

 

「これはチャンスです…!会長、頼みましたよ!」

「あっ、ああ」

 

本当に大丈夫かこれ?

 

***

 

という訳で次の日。

俺は鳴山の家を知らないので石上と合流して、家に向かうことになり、俺は待ち合わせの駅で石上を待っていた。

 

「うっす」

「おう、それじゃあ案内してくれ」

「ええ」

 

俺と石上は一緒に歩く。

 

「しかし、急に男子会なんてどうしたんだ?」

「ああ、いや、僕も会長もこう大きな問題が一つ片付いたじゃないですか」

「確かにそう言えなくもないが」

「それで、思い切り話したいなぁーと」

「そうか……。それで本音は」

「人のことを散々とからかった鳴山にお返しがしたいです」

「だろうな」

 

鳴山は色々と助けてくれたが、その合間合間でからかいをいれてくるからな。

本気で嫌なからかいをしてくる訳ではないが、それでもちょっと鬱陶しく感じることはあった。

それ抜きにしても、あいつの周りは女子が多いし、それでからかい返したいってのは当然あるだろうな。

そうして、二人で歩いて10分ぐらいした所にアパートがあった。

石上はちょっと迷いつつも案内している。

この様子からみるに石上もあまり鳴山の家に行ってないみたいだな。

 

「ここですね」

 

石上がチャイムを鳴らす。

すぐにはーいという声がするとドアが開いた。

 

「よく来たな。インスタントだけどお茶とコーヒーどっちがいい?」

「「コーヒー」」

「了解」

 

鳴山は中に入れる。

部屋の大きさはそこまででもないが結構広く感じる。

部屋のものが少ないからか。

なんというか、生活に必要なものばかりで趣味のものとかが少ない。

 

「相変わらず、なんか殺風景だよな」

「ザ・趣味なお前の部屋に比べたらな。一人暮らしすると分かるけど、物が多いと窮屈で暮らしづらくなるぞ」

「そんなものか」

「そんなものですよ。白銀先輩もこの辺は早めに覚えておいた方がいいですよ」

 

む。

これは俺の進路を知っているが故の発言だろうな。

実際の環境は違うから一概には言えんだろが。

しかし、覚えておくに越したことはないか。

 

「はい。コーヒー」

「ありがとう」

「さて、今日は男子会するけど、お題は何?」

「いや、来る途中で会長と話してて、恋愛談義しようってなった」

 

石上はお題を早速出した。

俺の目的まんまだし、これはそのままでいいだろう。

 

「恋愛談義かぁ……。ふむ。大方、僕をからかい返そうという意図なんだろうけど、談義というからにはそっちの話もしてもらうからな」

「くっ!」

 

石上が悔しそうな顔をする。

まぁ、何も話していない段階で意図が読まれればそうなるか。

しかし、それは他人事ではない。

おれの意図もちょっと油断したら見抜かれるかもしれない。

注意して聞き出さなければ。

 

「さて、まずは何の話をしようか……」

「好みの女性、とか…」

「二人揃って両片想いしてたんだから、大体それが好みでしょ」

 

言われてみればその通りだな。

それに俺にとっては初恋だし、好みも大体四宮ということに……。

うん?

 

「今、両片想いって言った?」

「えっ、事実でしょ?優はともかく、あなた達の場合は分かった上で延々と遅延行為してたでしょ?」

「そうなのか、白兎?」

「そうそう。この人達のモットーは『相手に告らせる』だからなぁ。しかも、告白したら付き合ってやらんこともないとかって言うし、両片想いじゃなければまず実らねぇよっていうことやってたぞ」

「おい、止めろ!」

 

人のちょっとアレな歴史を掘り返すな!

今となっては、ちょっと恥ずかしいんだよ!

 

「まぁ、10数年後位に自分の子ども相手に友人のおじさんに暴露されて恥ずかしくなる系のエピソードだよ」

「えらくピンポイントなシチュエーションだなおい!」

「奥さんの親友でも可」

「最早、特定の誰かを想定しているレベルだよな」

 

俺と石上でツッコむ。

この辺が鳴山が鳴山たる所以というか、先をよく見通している。

後、俺が知らない四宮の友好関係を知っていることをしれっと伝えられたような気がするんだが。

 

「そう言えば、石上はツッコまないんだな。両片想いについて」

「いや、まぁ、そっすね…」

「ああ、冬休みに互いにその辺のことを話してイチャイチャした後なのね」

「的確に突いてくるのを止めてくれる?」

 

石上がこういうんだから事実なんだろう。

えっ?ってことはイチャイチャしてたの?

1学期の頃考えると、本当に別人レベルなんだが。

 

「うんじゃあ、そろそろお前の好み言えよ」

 

石上が本題に踏み込んだ。

 

「うん?まぁー、そうだなー。取り敢えず、変人であることかな?」

「「変人?」」

 

変人って……。

どういうことなんだ?

 

「いや、ちょっと語弊もあるか?変人が好きって言っても常識が分かっている変人だし、変人じゃなければそもそもで僕のこと好きにならんだろってのもある」

「色々と聞きたいことはあるけど……、その常識が分かってる変人って具体的にどんな?」

「いやだから常識を知った上で変なことをしているタイプ。その手の人物は常識をちゃんと知っているからちゃんとラインを守るんですよね。逆に常識がない変人は、他人の迷惑とか全然考慮しないから正直苦手なんですけど」

 

分かるような分からないような。

他人への迷惑が基準みたいな感じだが、それだと藤原はギルティになりかねないぞ。

 

「イマイチ分かりづらいだが。具体例とかないのか?」

「そうですねー。まぁ、TG部のメンバーは常識が分かってるタイプですよ。そうは見えないかもしれませんけど、あれできちんとライン自体は設けていますし、というか、そうじゃなかったら僕もTG部に所属してませんし。悪い例は……、この学校だと中々挙げづらいですね。本当に迷惑かける人はVIP勢に消されてるし」

「今、なんか怖いこと言わなかった?」

「怖いって言っても、その人達には色々と世話になってるし。基本的に人の心をちゃんと持ってる人達だからな。やり方がエグいけど」

「いや、確かにそうだが……」

 

本当にこいつはどこまで知ってるんだ?

VIPの奴らのこともよく知ってる感じだ。

あの辺は、俺でも普通に怖くて、まともに交渉出来るのも四宮位なのに。

……深く考えるともっとヤバいものが表に出そうだからここら辺にしよう。

 

「取り敢えず、TG部位までは可だと」

「まぁ、そうなりますね」

「じゃあ、変人じゃなければそもそもで僕のことを好きにならんだろってのは?」

「読んで字の如くですよ。普通の人が僕のことを好きになったらこの世は滅亡するんだろうなって思います」

「そこまでか」

 

いや、確かに相当な人物なんだけどな?

でも、気は遣えるし、運動も勉強もそこそこ出来るし、そんなに悪い訳ではないと思うんだが。

 

「……嫌味かよ」

「優。別に僕はハーレム男じゃないし、あれら全員揃って変人なのを忘れて欲しくないんだけど」

「この野郎、それがどんだけ羨ましい状況なのか分かってんのか!?」

「いやいや、そんなに羨ましい面子でもないだろ。ていうか、彼女持ちな時点でお前が言うな」

「それは確かにそうだな」

 

彼女持ちな時点で既にそういう側か。

まぁ、その通りだな。

 

「この辺の話題は深堀りしても何も生まれないから次の話題にいこう」

「それもそうだな」

「……そうですね」

 

***

 

後日談。というか、今回のオチだな。

その後、5時間に渡り語り合い、鳴山が夕飯を作って食べたが、あまり有意義な情報は得られなかった。

というか、大体俺と石上のフェチを晒すだけで終わってしまった。

的確にこっちの知りたい情報から話題を逸らされる。

しかも、無意識で気付いてたら逸らされたという感じだ。

やはり、あいつの内面に入り込むのは難しいみたいだな。

因みに、夕飯はかなり美味しかった。

短時間で作った割に凝った感じがする辺り、意外と器用なのかもしれない。

 

「それじゃあ、俺たちはそろそろお暇するな」

「はい、今日は楽しかったです」

 

そうして、玄関の所まで見送りに来る。

 

「じゃあな」

「さようなら」

「うん。美青と千花先輩によろしく」

 

そう言って、あいつはドアを閉めた。

って、あれ?

もしかしてバレてた?

普通にバレてた?

後、美青って確か鬼ヶ崎だよな。

それによろしくって…。

 

「……会長。藤原先輩に協力してるんですね」

「そういう石上は、鬼ヶ崎に協力しているんだな」

「「………」」

 

さて、どうしよう?

対立する形になってないか?

それに石上が鬼ヶ崎に協力するということは、伊井野も協力してるんだよな。

ということは、生徒会内で対立してるよな。

 

「……会長」

「……なんだ?」

「お互い、フェアプレイで頑張りましょう」

「……そうだな」

 

確かに、一度引き受けた以上は止めるわけにもいかない。

やるしかないな。

 




変人の嫁は変人。

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