僕の名前は、石上優です。一応、生徒会の会計をやっています。
一時期は、辞めようとしたときもありました。
ですが、四宮先輩に
そんな生徒会の生活にも慣れ始めて、早退することも減りました。
正直、高校では一人でばかり過ごすものだと思っていました。
だって僕はそれだけのことをしてしまったから。
今でも、他にも方法はあっただろうと考えることがあります。
会長たちは、おかしくないと言ってくれています。
しかし、それでもやってしまったことに違いはないです。
同級生からは、陰口や悪口を言われ続けるのだろうと思うし、それに間違いはありませんでした。
強いて、変わらず接してくれたのは伊井野だけど、あいつにとっての僕は最初から嫌悪対象だから大して意味がない。
けれど、復帰してすぐの頃に新しい友人が出来ました。
彼の名前は鳴山白兎。
高等部からこの学校に入ったいわゆる混院なのですが、復帰して早々の席替えで近くになり、普通に話しかけてくれました。
それを見た、クラスの人はおそらくは善意で、僕と関わるのは止めたほうがいいと言いました。
しかし、彼はそれを意にも返さず、ずっと話しかけてくれました。
それなりに仲良くなった今、その理由を聞いてみると、
「いや、ぱっと見、陰キャに見えるだけで悪いやつには見えないし、他人からの噂だけで判断するのは、いままでろくに傷つけられてこなかった人達ぐらいでしょう」
と言っていました。
その時の彼は、少し悲しそうに見えて、けれど聞くのは憚られました。
その代わり、今は僕のことをどう思っているのかを聞くと、
「大切な友人かな。
個人的には、親友の位置までにたどり着きたいけどな」
と、いい笑顔で言ってくれました。
会長も、鳴山も、四宮先輩も、藤原先輩も、みんなが僕の恩人で大切な人達です。
しかし、僕にはもうひとり恩人がいます。
それは、中等部から高等部に上がる際に、手助けしてくれた人。
会長達が調査を始めたのは、二年生になってからだそうなので、会長達ではないことは分かります。
鳴山でもないです。
誰だか、分からないけれど、もし分かったなら僕は感謝を伝えたい。
高等部で、この出会いをくれて、ありがとう、と。
***
期末テストを終えて、赤点も1教科のみで済み、少しほっとしている。
「いや、赤点とってる時点で、無事じゃねぇよ」
妙に眠たそうな感じで、ちょっと機嫌の悪い鳴山がツッコんできた。
「つーか、なんでそんなイライラしてんの?」
「ずっと試験勉強で徹夜コースだったから、寝不足でイライラしてんの。
ほら、あるだろう。
眠っている時に無理に起こされると、機嫌が悪くなる奴」
あれと一緒だよ。と、そう言うと彼は机で丸くなり、仮眠の体制に入った。
あれで、こいつはチャイムが鳴る前のタイミングできちんとパソコンが起動するが如く動くので、特に問題がない。
普段が11時寝の5時起きであるらしく、睡眠時間6時間の比較的整った生活だ。
徹夜は予想以上に、響くのだろう。
徹夜することが二週間に一回ぐらいあるそうだが、その度にこの仮眠をとっている。
一度、伊井野が注意(なんか優しく)していたが、その時にこいつは、
「これは、徹夜した時に授業に集中するためのルーティンみたいなものだよ。
授業時にきちんと起きてるから、ちょっと見逃して」
「それでも駄目なものは駄目よ。
……まあでも、本当にキツそうだし、今日の所は見なかったことにするわ」
と言って、伊井野が見逃すのだから、こいつには結構信用があるのだろう。
純粋に伊井野を全く煙たがらずに、話しかけているし、基本的に真面目なのもあるのだろう。
正直、扱いにこうした差が出ることに苛立ちを覚えない訳ではないが、日頃の行いがものを言うのだから仕方ない。
……こっちの気遣いには、全然気づかないのになぁ。
***
ここで、伊井野ミコについて語ろう。
とは言っても、僕とあいつは犬猿の仲……いや、それだとどこか絆めいたものがあるように思われそうだから、普通に仲が悪い。
いつから、仲が悪くなったのか。
それを明確思い出すことは出来ないが、少なくとも小等部の時点で仲は相当悪かったように思う。
あの頃から、伊井野は真面目であったし、僕はそれなりに不真面目だった。
流石に、小等部の頃はゲームを持ち込んではいなかったと思うが、授業態度は悪かった。
それを、授業中に指摘して叱っていたと思う。
……今にして思えば、それもそれで授業妨害になっているように思うが、まぁ小等部だし、そこはご愛嬌だろう。
そのまま、中等部に上がると、流石に授業中に言ってくることはしなくなったけれど、代わりに授業終わりに言ってくるようになった。
ずっとそうやって、喧嘩してきたけれど、しかし、僕はあいつのことが嫌いではない。
あいつが、地道に努力を続けていたのを知っているから。
企画のための資料や道具を運んだり、みんなが嫌がるトイレの掃除を進んでやったりしているのを知っているから。
そうやって、努力を続ける姿勢は見習わなければならないと思うし、本人には決して言わないが、尊敬している部分でもある。
だからこそ、嫌いになれない。
そして、そんなあいつが、頑張っている奴が笑われるのがどうしようもなくイラつく。
あいつには、危うい所も多々あって、勉強が出来る癖に要領悪いし、指摘する時の言い方も相手の気持ち汲むこともしない。
だから、たまに陰ながらフォローもしている。
中等部時代に、あいつの背中に貼られた中傷の紙を、貼られた本人が気づかないように剥がしたり、
まぁ、それでもあいつは感謝したりしないけど。
でも、本人にそれを伝えたりは、しない。
だって、そういうのは
***
今日の生徒会は、学期末の生徒総会への報告に向けて、資料集めを行っている。
今会長たちは、部活動の方に活動報告の回収に出向いていて、僕は一人、資料を纏めている。
この生徒総会のための資料は、結構膨大であるため、作業が大変なのだ。
作業を始めてから、それなりにした頃、校長が部屋に入ってきた。
「オヤ、石上クンしかいまセンカ?」
「えぇ、他の会員は部活の方の報告を聞きにいっています。因みに、要件は何でしょうか?」
聞くと、簡単な用件だったので、一応メモを取り、こちらから会長に伝えることを伝えた。
その報告を終えると、校長先生はそのまま、ポ○GOをやり始めた。
……一応、この校長も僕が高等部に上がれた恩人の一人ではあるのだが、如何せん、フリーダム過ぎるのが難点である。
前も会長たちに、3日前にフランス交流会の
そうして、校長の様子を見つつ、作業していると、ふと、思ったように校長が話しかけてきた。
「シカシ、石上クンがこうして生徒会にナジンデ、生活を送っているのはウレシイですネ!!」
「いえいえ、会長達が助けてくれたからですよ」
「エエ、シロガネクン達のお陰ですが、伊井野クンにも感謝しないとイケませんよ」
「はぁ!?」
どうして、そこで伊井野が出てくるんだ!?
「ど、どうしてそこで伊井野が」
「おや、聞いてませんか。彼女は君がちゃんと課題を提出しているのに、いつまでも停学なのは教師側の横暴だと訴えていましたよ」
それをたまたま聞いた私が、君を高等部に入れるように手配したのですよ。と、続けたけれど、僕にはその言葉はいまいち聞き取れなかった。
凄い汗が出てくる。
なんだよそれ。
あいつ、なんで僕に。
……いや、違う。
あいつは別に、僕だから助けたんじゃない。
でも、それに僕は救われた。助けられた。
今まで、どこかあいつに僕の方が見守ってやってるという意識があったけど、なんてことはない。
僕の方も、あいつに助けられてたんじゃないか。
それを知らずに、僕はぬけぬけとそんなことを思ってたのか。
本当に、恩知らずなんだな僕は。
僕の様子から、気持ちを察したのか、校長先生はそろそろオイトマしますネ。と言って出ていった。
いや、正確には一言だけ言って。
「これからモ、
その日、僕は少しだけ目を開いた。
***
後日談。というよりもこれからのお話。
昨日の今日で、まだ気持ちが落ち着かないが、学校を休む訳にはいかないので、学校に行く。
朝登校するときは、よくヘッドフォンを付けて登校しているので、今日もつけて登校した。
そうして、校門前まで来ると今日は、風紀委員の取り締まりがあるようで、案の定、伊井野にそれを咎められた。
「だから、あんたはヘッドフォンを付けて登校するんじゃない!!」
いつものお叱り。言い返そうと思ったが、実際にその通りであるし、それにこいつがぼくの為にしてくれたことを考えると、反抗がする気が起きず、その言葉に従って、
「悪かったよ。これからはもうしない」
伊井野は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるが、すぐに顔を戻して、本当に分かってるのとか、そもそも分かってるなら付けてくるなとか色々言ってきた。
流石に、イラッとしたが、反論せずに教室に向かう。
そうだ、あいつにも助けられたんだ。少し位、ちゃんと従って、清く正しく生活していこう。
それが、あいつへの感謝になるはずだから。
白かぐが原作で完成されていて、弄れない。