鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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最終回の今日この頃。


はくとラブズウォー

この一年は本当に長かった。

仕事的にもプライベート的にも数え切れない位の多くの出来事があった。

最早、昨年度に何があったのかなんて殆ど思い出せない位に。

僕はこの秀知院で、多くの人に出会えた。

多くの人と繋がりを持てた。

多くの人に助けられた。

2年前のあの冬の日。

死ぬことには未練がなかった。

未練なんて持ちようがなかった。

味方なんていなかったから。

想ってくれる人なんていなかったから。

生きる意味なんてなかったから。

ただ、当たり前の結末として。

人を呪ったものの結末として。

簡単に受け入れて死んでいく筈だった。

けれど、僕は生きていた。

生かされた。

あの兎に、生かされた。

僕のそれから1年は延長戦みたいなものだと思った。

死ぬ前の一時に見る儚い夢。

少し息吹きかけただけで消えてしまうろうそくの火。

そんなものだと思っていた。

しかし、今はそう思っていない。

この一年。

果たして、僕はこの秀知院で何を得たのだろうか?

何を掴めたのだろうか?

何を求めたのだろうか?

きっとその答えは、どこか遠くにあるものじゃない。

確かに僕の傍にあるものだ。

だから、僕はその答えを……。

 

***

 

「桜はもうじき咲きそうだな」

 

3月始め。

いつも通りの朝の道を僕は歩く。

一年間歩いたこの道も随分と見慣れたものだ。

まぁ、東京だから基本的にビルとビルとビルしかないんだけど。

それでも、どこかに感傷に浸る僕がいる。

こういう時はそれなりにある。

僕にとっての当たり前は当たり前とは言えない。

生き方的にもまぁまぁな頻度で命がかかることがあるし。

そもそものあり方でさえ、怪異混じりで不安定だ。

いや、怪異と関わる前でさえ、安定しているとは言えないだろう。

当たり前と保証できることはない。

だからこそ、当たり前にあるこの道に思う所があるのだろう。

なんて、たかだか高校1年の子どもが言えたことでもないのだろうけど。

 

「そうか、まだ一年だもんな」

 

たった一年。

それを長いと感じられるのは、若者の特権だ。

人間、年をとるにつれて一年の長さが短くなっていく。

30代を超えたら、F1カーが通り過ぎる位の速度で一年が終わるって聞いたことがあるし。

 

「まぁ、今考えることでもないか」

 

そうして僕はこの道を歩く。

 

***

 

僕はいつも通りの学校で授業を受ける。

期末も終わり、内容としても総集編というか、振り返りに近いものばかりだ。

休み時間。

 

「もうすぐ、卒業式だな」

「そうね。つばめ先輩とか風紀委員長とかが卒業するね」

「俺は色々とお礼言わなきゃいけない人ばっかだな」

 

クラスの中で仲良く優とミコと僕とで集まる。

これも随分前からの定番だ。

一つの当たり前。

 

「僕もお礼しなきゃだし、定番は花だから優の家の店で選ぶかね」

「それで良いんじゃない」

「そうだな。花の日持ち的に一日前位に見繕う方が良いだろうな」

「花関連は優にまるっと任せちゃいたいけど」

「それ、3人共通の人ならともかく、個々で送るのだと駄目なパターンだろ」

「だよな」

「卒業式だと……、カーネーションとかスイートピーとかかな」

「その辺りかな」

 

そこから、仲良くどういう花がいいかを話していく。

けど、花の知識は僕はそこまででもない。

しかし、優とミコは簡単に話題に挙げては選んでいく。

優がミコに教えているのだろう。

最初はあんなに喧嘩していたのに。

随分と変わったものだ。

今、あの頃のあいつらを見たら、絶対に笑う自信がある。

本当にね……。

 

「……おい、なんだよその緩みきった顔は」

「いや、お前らは本当に可愛いなって」

「何言ってるのよ。アンタも真面目に考えなさいよ」

「うん」

 

***

 

放課後。

今日は部活の日だ。

 

「フハハハハハハ!吾輩のドロー4である」

「こちらもドロー4です!」

「むむむ!卒業前なのに!」

「我が部に卒業なんて概念ないでしょ」

 

今日は卒業記念、チキチキゲームアスロン!と称して、色々なゲームをしている。

今は3種目目、UNOである。

 

「それにしても、鳴滝はなんで魔王風の口調なんですか?」

「今の吾輩は10万16歳、あるいはスタンド使いだ、フハハハハハハ」

「いや、閣下でしょうが。パクリのパクリでしょうが」

「BGMはこれだ」

 

そうして、僕は用意したラジカセに音楽を流す。

 

せんのか~ぜ~に、せんのか~ぜになあ~って

あの~~大きな~そ~らを~ふきわたって、います

 

「なんでこの曲?いや、分かるけど。確かにお別れソングでもあるけど」

「鳴滝ってその辺のセンスが大分アレに侵されてるよね」

「むぅ~~。私だけついていけてません」

 

まぁ、確かに千の風になってをセレクトしたのはその辺が理由だけど。

でもこの場合、親にちゃんと歌いなさい!って言われるぐらい下手に歌わないと意味ないしな。

え~~、じゃあ、

 

みーんーなのアホが合わさって~~~

どでかい、契約むしりとれ~~

みーんーなのアホが合わさって~~~

巨大な、悪も打ち倒せ~~~

カイカイカイカイ、カイエ~~ン、カイエ~~ン

宇宙超商船隊

 

「「ロボ!」」

「カイエ~~~~ン!」

「だから私の分からないネタで盛り上がるのは止めて下さいよ!」

 

ふむ。

何気にこの会話に混ざってこれる人が少ないんだよね。

こういう、ちょっとした小ネタ的な部分に金を使いすぎて色々とカッツカツになっている話とか。

どこぞの刈り上げの話をしたら、一面真っ黒になった怪談とか。

やっぱ、そういうノリが出来るのはここだよな。

まぁ、不治ワラはついてこれないんだけど。

本当に…、

 

「箱入りですからね。漫画系で規制がかかると中々こういうのにも付いてこれないですよね」

「でも、鳴滝のチョイスは絶妙にそうじゃないってものが多いのも理由じゃね」

「それは私も思う。もうちょっと、一般に流通しているネタじゃないから嫌われるんだよ」

「…………」

『……腹が下ってきたZ』

「いや、確かに中の人一緒だけど!そこは『俺は嫌われてない』でしょ!」

「ご丁寧にフリップまで用意して……」

「ていうか、流行りのネタをしても意味ないでしょ。流行りは乗るものじゃなくて、作るものなの。つまり、……」

 

僕は荷物を探し、掲げる。

 

「この五千万入るバックだよ」

「流行りませんよ!」

「アハハ」

「随分とレパートリー豊富に持ってきてんな……」

「日常装備だしな」

「どんな日常装備ですか。絶対にいりませんよ」

 

と、ギャグを挟むことで戦略を考える思考を削ろうとしたが、まぁ、その程度で削れるような連中でもない。

特に不治ワラの方は削れていない。

やはり、ネタがわからないと面白さが分からないのか。

クソッ!

こんな時はありがとウサギで勝ちを取りに行かなくては。

 

「ここで吾輩はドロー2である」

「はい、ドロー2」

「私も」

「残念だったな、鳴滝。私もドロー2だ」

「………いいや。ドロー2である!

「そんな!10枚ドローなんて……!」

 

これもまた一つの日常。

大切な、日常。

 

***

 

「っていうことがあったんだ」

「色んな意味で古いネタを持ってきてません?」

 

夜。

それとなく、僕を待っていたであろう美青と一緒に帰る。

因みに千花先輩は犬の散歩で先に帰った。

 

「たかだか10年かそこら位の昔じゃん。新しいって。僕の世代なんかはあれ、ストリートファイターⅠをやってた世代だからね」

「いや、その頃先輩生まれてないじゃないですか?」

「最初は本当に力加減が難しくてな。台パン必須ってなんだよ。それがⅡになってからガイルとザンギの宿命の対決が…」

「だから、生まれてませんよね?完全に純愛系ゲームラブコメのアレにハマってただけですよね?」

「どうせ今どきの人は、昔のゲームでファミコンしか挙げられないんだろうな。PCエンジンとかメガドライブとかゲームボーイとかドラクエとかマリオとかドンキーとか色々あるのにな」

「いや、途中から普通に有名なシリーズ挙げてますよね?本体名から、シリーズ名になってますよね?」

「どうせ復活の呪文とかもしたことないでしょ。さるお方の寿限無しか知らないんでしょ」

「いや、それを知ってたら知ってるでしょ、復活の呪文」

「ドラクエⅤも子どもの頃はビアンカ派だったけど、今となってはフローラを経由して、デボラだからね。男は皆、デボラに帰結するんだよ」

「いや、大半はビアンカ派って言うと思いますけど」

「と、まぁ、こういうネタでちゃんと返しが来ると凄い安心感があるんだよね」

「そうですか」

 

そう言って、少し美青に近づく。

そうして、少し今日という日を振り返る。

何か特別な何かがあった訳じゃないけれど。

でも、充実した1日だった。

 

「先輩、何か良いことでもありました?」

「うん?いや、良いことって程のことでもないけど。楽しいなって」

「楽しい、ですか」

「当たり前の日常って、本当に大切なんだって。今までもそう思ってきたつもりだったんだけど、でも、言ってるだけなのと身に沁みて理解するのはやっぱり別物だって感じたよ」

「……なら、まだまだですね」

 

そう言って、美青は一歩前に出る。

 

「まだまだとは?」

「当たり前は確かに大切ですけど、でも当たり前は当たり前なんですから、いちいち大切だって感じている内は当たり前じゃないんですよ」

「まぁ……」

「非日常ばかり送ってるから、そうなるんですよ?もうちょっと、日常を送りましょうよ」

「それは難しいな。非日常があるから僕はここに居るともいえるし」

「むむむ。それは難しいですね。どうにか日常を9割にしないと」

「9割は難しくないか?」

 

そうして悩みだす。

こいつもこいつでお人好しなんだよな。

まぁ、僕の周りなんて大概お人好しなんだけど。

本当に人が良いやつばかりだ。

……あの日、あいつに言われた通りだ。

おかげで少しは成長した気がする。

 

「ありがとうな」

「何がです?」

「いや、なんとなくかな?なんか言いたくなったから」

「なんとなくでお礼を言われても困るんですけど…」

 

そりゃあそうだ。

僕だっていきなりお礼を言われたら反応に困る。

じゃあ、ついでに更に困らせるようなことを言うとしよう。

 

「なぁ、美青」

「なんですか?」

「好きだよ」

「へぇー、好きなん………、え?今、なんて言いました?」

 

 

「だから、お前のことが好きだって言ったんだよ」

 

 

「えーーーーーー」

 

 

見事な叫び声だった。

顔真っ赤。

こんなに驚いて貰えるとは。

不意打ちした甲斐があるな。

ここ最近のやられてきたのの仕返しになってるなー。

 

「なんでこのタイミングなんですか!もうちょっといいタイミングあったでしょ!」

「いやね。もうちょっとロマンチックな感じが良いかなとか思ったけど、なんか言いたくなっちゃったから」

「気分で流されないくださいよ!」

「そもそも、一般的な傾向として何かしらのイベントで告白すると付き合える確率が高いけど、それってイベントでテンションが上がって流されてるだけで別れるのも早いってされてるから。奉心祭も付き合うカップル率高いけど、現時点で別れてるカップルもそれなりに居るし」

「だからって……」

 

美青は凄い不満そうな顔をしている。

まぁ、確かに不満にもなるよな。

………。

ちゃんとやり直そう。

 

「じゃあ、改めて」

 

僕は美青の手を掴み、目を真っ直ぐと見て。

 

「美青、好きだ。付き合ってくれ」

 

美青は顔を赤くして、一度目を閉じて。

 

「私も白兎先輩が好きです」

 

凄く可愛い笑顔で返事を返してくれた。

 

「先輩、顔赤いですよ?」

「お前に言われたくないよ」

 

***

 

と、恋人繋ぎをしながら少し遠回りをして歩く。

互いに冬なのに、かなり熱い。

 

「それにしても、正直もうちょっとなぁなぁで流されるのかなって思ってましたよ」

「そんな風に見えてた?いや、まぁ自覚はあるけどさ」

 

随分と遅延プレイはしてたけど。

でも、

 

「先月の内にちゃんと向き合ってたよ」

「じゃあ、なんで先月言わなかったんですか?」

「色んな要因が重なった」

 

要因というか、準備というか。

色々としなくちゃいけないことが多々あったから。

まぁ、微妙に尻込みしていたのは否定出来ないけど。

 

「その話は詳しく聞かせてくれないんですか?」

「まだ終わってないからな。話すにしても、終わってから」

「そうですか……。後、もう一つ聞いて良いですか?」

「なんだ?」

「どうして、私を選んだんですか?」

 

不安そうな顔で美青は尋ねる。

まぁ、聞かれるとは思っていた。

僕達、()()にとって重要なことだから。

それに対する回答も既に考えてある。

というか、素直な僕の気持ちを言うだけだけど。

 

「……僕はーーーー」

 

***

 

次の日の放課後。

僕は生徒会室に行く。

 

「こんにちわ~」

「おお、鳴山」

「こんにちわ」

「……白兎くん」

 

中には既に2年生組が居た。

優とミコは少し遅れている。

 

「石上と伊井野は?」

「向かう間際に先生に捕まっちゃいまして。今は仲良く、荷物運びしてます」

「お前は手伝わなかったのか?」

「まだまだ付き合い出したばかりですし、こういうちょっとした所でも二人きりの方が良いんですよ」

「そんなもんか」

「そんなものです」

 

特別な出来事で育む愛情もあるけれど。

なんてことない日常で育む愛情も大切だ。

 

「所で白兎くん」

「どうしました?」

「何か、言うことがあるんじゃないですか?」

 

千花先輩は目を細めて、少し低い声で訊いてくる。

優やミコには朝の内に伝えた。

二人とも喜んでくれた。

そのときに千花先輩はいなかった。

そこからの人づてという可能性も一応ある。

でも、恐らくそれはない。

つまり…………。

まぁ、ちゃんと言わなきゃいけないことだしな。

 

「言うこと?」

「なんですか?」

「実は、僕、美青と付き合うことになったんです」

 

一度、静かになる。

白銀先輩と四宮先輩は目を見開いて驚いている。

千花先輩はやはり目を細めている。

千花先輩は一度目を閉じると、にっこりと笑い、

 

「おめでとうございます!また、生徒会メンバーで付き合ってる人が増えましたね。これも私のお陰ですね!」

「いやいや。皆にラブ探偵(笑)って言われてるじゃないですか」

「なんですか!私のお陰じゃないって言うんですか!」

「はてさて、どうでしょうかね」

 

と、少しだけ軽口を叩く。

しかし、ぎこちない。

凄い冷えるような空気になる。

白銀先輩も四宮先輩も何か言いたそうにしながらも何も言えない。

少し沈黙が流れる。

 

「こんちわ~」

「すいません。遅れました」

 

と、そこに優とミコが来る。

 

「なんすか、このくう……、ああ……」

「白兎」

「そういうことだから」

 

その日はそんな気まずい空気のまま、仕事だけはこなした。

 

***

 

帰る時間になった。

既に優とミコは帰っている。

 

「それじゃあ、お疲れ様」

 

ひとまず、そう言って生徒会室を出た。

……本当は何か言うべきなのかもしれない。

でも、誰かが居る中で話すことは出来ないし。

それに話す機会はすぐ後にくることも分かっていたから。

そうして、僕は帰らずに屋上に行く。

そこにはやはりというべきか、金髪の少女が居た。

それはそれは美しい、絶世の美少女がとも言うべき存在が。

 

「結局、選んではくれないんですね」

「……両方なんて解答は許されないからな」

「事がこうなった以上、私は、蓬莱玉枝(ほうらいたまえ)は、止まることはないですよ。ありとあらゆる呪いを振りまきます」

「止めるよ」

「無理ですよ。あなたには絶対に出来ません」

 

目の前には既に果てしない量の怪異が、呪いが、想いが、そこにあった。

それは、秀知院学園が抱えていたもの。

それは、蓬莱玉枝が抱えていたもの。

それは、

 

「藤原千花が抱えていたもの」

「ええ、そうです。今から3時間後に世界を滅ぼします」

「時間をくれるのか?」

「下校の時間ですから」

 

その言葉の意味は彼女の友人たちを思い遣っての発言だ。

何も知らないあの人達が普通に帰る時間を与えた。

ただ、

 

「あなたは別ですけど」

「悪いけど、時間があるなら僕は一旦退散させて貰うよ」

 

僕はそう言うと、屋上から空中に飛び上がる。

 

「行きなさい」

 

玉枝のその宣言で後ろにいた無数の怪異が僕に襲いかかる。

僕はオールでいくつかを撃退しながら、ある場所を目指す。

 

***

 

僕はその場所に着く。

途中から軽い結界によって怪異は追ってこれなくなった。

まぁ、それも一時的な時間稼ぎ程度にしかならないけれど。

僕はそのマンションの一室の前でチャイムを鳴らす。

少ししたら、僕の専門家仲間で一番の信頼を置いている撫子が出てきた。

 

「ひとまずは戻ってこれたんだ」

「うん。例のものを受け取りにきた」

「出来てるよ。持ってくる」

 

そう言って、撫子は一度部屋の中に引っ込んだ。

僕は外を眺めながら考える。

蓬莱玉枝。

オリジナルの怪異であるが故にその性質の全てを見抜けてはいないが、名は体を現すの通り、その名からある程度の推測は出来る。

元になったのは、かぐや姫から蓬莱の玉の枝。

かぐや姫の課した5つの難題の一つ、藤原不比等に課したお題。

それはかぐや姫が難題の中で唯一かぐや姫が所有していたものとされている。

根は白銀、茎は黄金、実は真珠で出来た木であり、人の穢れを栄養に美しく育つ。

玉枝もその性質はある。

人の穢れ、つまりは怒りであり、悲しみであり、妬みであり、恨みであり、闇であり、それは呪いという形で現れる。

この一年、秀知院学園ではいくつもの呪いが、怪異が現れた。

日常の中でも現れた。

テスト期間でも現れた。

体育祭でも現れた。

そうした呪いは彼女を大きく、美しく成長させた。

出会う度に美しくなっていった。

出会う度に脅威は増していった。

彼女自身が呪いを発生させたこともあるから、ある種のマッチポンプではあるが。

厄介なことこの上ない性質だ。

そして、その彼女を生んだのは藤原千花だった。

どうして気が付かなかったのか。

どうして分からなかったのか。

それはきっと、動機が見えなかったから。

それはきっと、僕の藤原千花という人間への理解が足らなかったから。

それはきっと、千花先輩のことを強い人間だと思っていたから。

結局の所、僕が気づいてあげられなかったのが一番の理由だ。

あの時言ったことが確かなら、全ての原因は僕にあるのだろう。

なら、向き合うべきだ。

今まで見ていなかったことから。

 

「おまたせ」

「うん」

 

僕は撫子に頼んでいたものを2つ受け取る。

 

「……行くの?」

「行くよ。僕がやるべきことだから。あいつのことを頼むよ」

「美青ちゃんね」

「それともし僕が帰らなかったら、このUSBを四宮先輩に渡しておいてくれ」

「なにこれ?」

「別に。ある家系を没落させる為の計画というか人脈というかそういうのの情報が入ってるだけだよ」

「怖っ!」

 

まぁね。

色々と苦労したというか、真っ当な手段ばかりもとれないからな、家が家なだけに。

これだって、確実には程遠いし、色々と詰める必要はある。

でも、一助ぐらいにはなるだろう。

 

「……本当に最後まで世話焼きだね」

「半端が嫌なだけだよ」

 

僕は後ろを向く。

撫子の部屋には美青が居る。

授業が終わったら、今日は撫子の家に行くように言ってある。

きっと撫子の家に着いたら、すぐに眠らされたと思うけど。

こいつが一番、危ないしな。

ターゲットにされる。

 

「今までも、多分これからも、色々と迷惑かけるな。ごめん」

「全くだよ。本当に、本当に、本当に、本当に面倒ばっかり」

「本当にそうだよな」

 

よく知ってる。

僕自身が一番。

迷惑をかけ倒してることは。

でも、そこは頼むことしか出来ない。

別に僕はなんでも出来る訳じゃないんだから。

 

「ちゃんとその分の迷惑料を払って欲しいな。食事10回じゃ足りないから」

「ああ、分かってる」

 

僕は苦笑いをして、空を跳ぶ。

 

***

 

跳んでいる途中、自分自身の準備をしながらビルを跳んでいると人影が見えた。

僕はそこに降り立った。

 

「やぁ~~、久しぶりだね。はーくん」

「ええ、久しぶりですね。臥煙さん」

 

そこには明らかにサイズ違いの服を着た若そうな女性が、余りにも長い刀を携えて立っていた。

あの刀。

嫌な気を感じる。

恐らくはアレは、妖刀『心渡』。

怪異のみを切り裂く、怪異殺しの刀。

その刀の持ち主は、確か旧キスショットアセロラオリオンハートアンダーブレードの筈だけれど。

 

「いや~~、随分と迷惑を掛けたようだね。このお姉さんもすっかりヤラれたよ。君の友人が私を見つけてくれなかったら、まだどこともなく彷徨っていただろうよ」

「本当に苦労しましたよ。鳴山くん」

「ありがとうございます。早坂先輩」

 

後ろに居た早坂先輩が姿を表す。

正直、本当に見つけてくるとは思わなかった。

あくまで駄目元気分で、当たれば良いな程度にしか思ってはないなかった。

しかし、こうして見つけ出して連れてきたということは相当な苦労したのだろうということは分かる。

ありがたい限りではある。

今、来て欲しい人物ではなかったけれど。

僕は早坂先輩にきちんとお辞儀をして、一旦この場から離れてもらうようにした。

 

「まぁ、うちの未熟者な後輩にまで探させた件を少し問い詰めたい所ではあるけど、この惨状を考えれば不問にせざるおえないね。まさしく、世界の危機といっても全く過言じゃない。お陰でこのお姉さんもこよみんとの約束を少し反故しなければいけなくなったよ。このツケはかなり大きい。君となでっこには後でたっぷりお礼をしなきゃいけないね」

「そんなのは別にいいですよ。で、ここで僕を待ち伏せていたのは僕をこの件から追い出す為でしょう?」

「……相変わらず、察しが良いようで何よりだよ」

 

先程までのフランクのオーラが消え、見定めるような雰囲気が顕になる。

 

「今回の件、君には随分と迷惑かけたからね。ここからは大人のお仕事だ」

「見え透いた嘘を。単純に僕がそこに来られると僕の動きもあいつの動きも全く読めないからが理由でしょう?今までまともに絡んでいなくても、あなたなら事件の理由も把握してるんでしょう?そうやって、無駄に他人の見られたくないものを見て」

「そんなに睨みつけないでくれるかな。君だって似たようなものじゃないのかい。他人の情報を集めて、他人の心に深入りする。そういう所は随分と嫌われてるようじゃないか」

「……そうですね。嫌われることも多かったですし、大変な目にも遭いましたよ。僕は臥煙さんみたいにスマートに立ち回ることも出来ませんし。でも、不器用なりにやってきた甲斐はあったって、そう今は思える位には大切なものも出来ました。……ただ僕は自分が大切だと思うものを、大切な人を守る為にあそこに行きます」

「……君はもう少し、大人だと思っていたよ」

「大人に一体どんな価値があるっていうんですか?ただ大人になった所でそれに価値なんてないでしょう。そもそも今回のことは大きな事件でも、まして世界の危機でもない。どこにだってある、ただの高校生の惚れた腫れたの拗れた恋愛でしかないんですよ。そこに大人の出張る幕はないし、まして、何かの専門家が出張る幕でもない。これからあそこに行く僕は、専門家としての僕じゃない」

 

「秀知院学園高等部1年、TG部の部員にして生徒会庶務の鳴山白兎です」

 

「これは藤原千花と鳴山白兎の痴話喧嘩です。誰の干渉も許さない。もし、干渉するんだとしても、その資格があるのはあいつだけですよ」

「ハァーー。仕方ない君には無理矢理引っ込んでもらうとしよう」

 

そう言って、臥煙さんはひとつため息をつくとこちらを見据える。

しかし、同時に僕は身体の感覚が徐々に変わっていくのを感じた。

人の感覚から人ならざるものの感覚。

今まで見えていたものが見えなくなり、見えていなかったものが見えてくる感覚。

それは人間性の喪失。

今まで、少しだけなくしていたものを完全になくしていく。

しかし、そのことに僕はそこまで恐怖を感じなかった。

僕の視界の端に映る自分の髪の毛が白に変貌したのを確認し、僕は臥煙さんの横をすり抜けた。

臥煙さんは僕を止めようとしたが、()()()()足を滑らして止められなかった。

 

「……君はそこまでするのかい。お姉さんは驚きだよ」

 

そんな声を聞いた気がした。

 

***

 

そして、僕は秀知院に降り立った。

あいつの宣言から、残った時間は大体1時間半。

その間に、僕はやりたいことをする。

目の前には、魑魅魍魎が数を数えるよりも質量を数えた方が早そうな位に広がっている。

僕は一つ息を吐くと、目の前をまっすぐに見て、宣言する。

 

「さあ、最後のお掃除といきますか」

 

「「「■■■■■■■~~~~~」」」

 

僕はオールをきちんと持つと、大振りに薙ぎ払う。

これで前方にいる奴らも吹き飛ぶ。

そのまま跳び上がり、目の前に見えるやつを片っ端から叩き倒す。

更に叩いて消えかかっている奴を踏み台にして、更に跳ぶ。

横から、同時に爪が襲いかかる。

僕はオールを目の前の奴に刺さるようにして、少し上の方に跳ぶ。

すると、()()()()その爪同士が相手を切り裂く。

僕は一回転するようにすると、足が()()()()敵にぶつかり、その弾みで少し位置が戻る。

その一寸前に爪が空振るのが分かった。

運が良い。

僕はオールを引っこ抜き、1周するようにオールを振るった。

違和感のあった感覚も徐々に慣れてきた。

音的に、あいつが居るのは……、体育館か。

僕はそこを目指し、多少の運に助けれながら、魑魅魍魎の網を抜ける。

ここまでで30分ぐらい使ってしまった。

後、1時間か。

 

「結構、時間がかかっちゃったな」

「それはあなたが校舎を傷つけないように戦っていたからでしょ」

 

目の前には金髪をはためかせて、ついでに分かりやすく額の所に真珠柄のリボンを付けている玉枝が目の前に居た。

僕は彼女に思い切り近づき、オールでぶっ叩きにかかる。

玉枝は手元に木の剣を持って、僕を弾き返す。

本来なら、床に叩きつけられるがたまたま手が触れて、身体を回転させてダメージを軽減させる。

そして、再び僕は近付きながら呑気な会話をする。

 

「どうなんだ?それ。正直、リボンない方が好みなんだけど」

「私のチャームポイントに文句あるんですか!」

「いやーー、別に可愛くないという訳じゃないんですけど、なんていうんですか?普段から見慣れている所から違うのが萌えるんです。燃えて、萌えるんです。一回、リボンとかじゃなく簪とか使った和服が見たい」

「え、そんな風に思ってたんですか?というか、なんで今そういう願望を言い出すんですか?」

「下手すると、存在がなくなっちゃうので。言いたいことをちゃんと言っておきたかったんですよ」

「やっぱり。どうりでおかしいと思いましたよ。あなたの兎は既に取り込んでいるというのに、私の知らない力を使ってましたから」

 

蓬莱玉枝は藤原千花の怪異であるが、実態としては秀知院学園の怪異としての要素の方が強い。

僕の兎も当たり前だが呪いの怪異であり、この秀知院で過ごしていることで僕の兎も栄養として扱われているだろう。

僕が如何に怪異化しようとも、いや、むしろ怪異化したら格の違いで負けることは決定的だ。

怪異はそういう序列に厳格だ。

だから、僕は小細工をしなければならなかった。

僕は自分の兎のあり方を変えた。

カチカチ山の兎ではなく、因幡の白兎として。

そのあり方を偽った。

 

「……馬鹿なんですか?そんな程度の小細工で私に勝てる訳ないじゃないですか」

「それはどうかな?」

 

距離を離すと、地中から木が伸びてくる。

僕は特に考えることもなく、横に跳ぶ。

すると、そうして跳んだ先以外は木で覆い隠される。

オールで周りの木をへし折る。

 

「足りませんよ」

 

切った傍から木は再生してくる。

これは以前戦ったときに見た。

折った方の木からも伸びてくるだろう。

僕はオールでへし折りながら、直感的に場所を移動していく。

そうすると自然と弾幕というのか、密度の低い方に移動していく。

 

「因幡の白兎、幸運の象徴ですか。勝負は時の運とは言いますけど、その運を味方につけることで勝ちを拾おうって訳ですか」

「そうですよ」

「でも、時の運になり得るのはレベルの差が一定の差の範疇の時だけですよ」

「……分かってるよ」

 

これは簡単な話だ。

ボールも投げたことのない子どもとプロで投げている投手とでは運で覆るような差にはなり得ない。

今の状態を例えるなら、RPGだ。

中盤までの主人公がいきなりラスボスに挑むようなものだ。

如何に運がよくとも、精々回避率が上がっているだけ。

急所に当たった所で大したダメージになり得ない。

まぁ、この例えは千花先輩に言ったって分からないだろうけど。

優なら分かるかな?

それに、

 

「ただ避けるだけじゃあ、何も出来ませんよ?それに…」

 

玉枝が軽く手を挙げて、それを前に突き出す。

それと同時に周囲360°の木が一斉に中心たる僕に襲い来る。

 

「絶対に避けられない攻撃は避けられない」

 

僅か数瞬にも満たないであろう速度だ。

速度の面であれば、一応強化されているから周りの木をへし折るのは出来る。

だがそれだけ。

僕の兎は呪いの怪異ではあっても、不死身の怪異ではない。

死ねばそれまでだ。

すぐに生長する木を耐えることは出来ない。

オールでは足りない。

……そう、オールでは。

 

「………?」

 

静まり返る。

肉片の潰れる音もしない。

僕は未だに立っている。

 

「5円玉を束ねた剣?………そういうことですか」

「そういうことだ」

 

玉枝は僕の手に持つものを確認し、一瞬の思案をするもすぐに答えに行き着く。

知識も経験も能力も全てにおいて、彼女が数歩先、あるいは一次元先にいる。

だから、この切り札(小細工)の種も簡単に見抜ける。

なんてことはない。

かぐや姫より。

藤原不比等は職人に瓜二つの蓬莱の玉の枝を作らせ、それをかぐや姫に献上し、あれやこれやとデタラメを告げる。

しかし、否定できる根拠のないかぐや姫にあわや同衾かというときに職人が金が払われてないんですけど!!と言われて、瓦解する。

食べ物の恨みは怖いと言うけれど、金の恨みもまた怖いという側面がこの話にはある。

つまり、蓬莱玉枝もまたこの話を源流としてる怪異であるため、金に物理的に弱い。

まぁ、紙幣だと大した武器にもならないので5円玉を使って、作っている。

これは玉枝特攻の武器だ。

たまに50円玉混じってるけど。

 

「そこで徹底できてないのが、あなたらしいですね」

「まぁ、どうにも100点の解答がとれないものでね」

 

そうして、僕は目の前の木を片っ端から切っていく。

これで切られた木は生長しない。

見事な切れ味だ。

 

「でも、まだ足りませんよ」

 

木は切っても切っても無尽蔵に湧く。

まぁ、当たり前だ。

こいつのスペックなら、この東京を簡単に森に変えることが出来る。

たかだか一学校の体育館を埋め尽くすことなど、まばたき程度でしかない。

生長は止められるから、回避不能な圧迫死が避けられるだけで状況そのものが大きく良くなった訳ではない。

基本的に一回ミスったら終わりの難易度ルナティックの弾幕ゲーに近い。

クソゲーにも程がある。

近づくことは愚か、避けることさえあまり長続きしないだろう。

そうした攻防がそれなりに続いた。

ある時、急に木の動きが止まる。

 

「……なんでここに来たんですか?」

 

ふと、玉枝が、……藤原千花が訊いてくる。

 

「その姿になることが、そのあり方になることがどれだけのことを引き起こすか分かるでしょう?その癖、今のこの状況。何やってるんですか?」

「……今まで通りにしてるだけですよ」

「今まで通り?なら、なんであの専門家の元締めさんに従わないんですか?」

 

知っているのか。

いや、まぁ、そりゃあ知ってるか。

その位は。

 

「あなたは上下関係には従うし、小を切り捨てるって言ってたじゃないですか」

「今はまだ……」

「切り捨てなくても済むと?無理ですよ。私の呪いは白兎くんが鬼ヶ崎ちゃんを選んだ時点で止まれないんですから」

 

呪いと、藤原千花は言った。

そう蓬莱玉枝はどこまでも呪いの怪異。

呪うことしか出来ず。

呪うことでのみ、その存在を確立出来る。

そう言えば、

 

「訊いてませんでしたね。どうして、僕の雪兎事件がどう関わっているのか」

「それは単純に、あの時にあなたを、兎を、見ていたからですよ」

 

見ていた。

怪異を目撃した。

怪異を認識した。

それがどういう意味を持つのかは言うまでもない。

怪異はただそうであると認識するだけでも効果を及ぼす。

少なくとも、見た者の世界観は変わる。

否が応でも。

 

「私はそれを見た時になんて綺麗なんだろうなって思いましたよ」

「実態は醜い恨みでしたけど?」

「でも、私は心奪われたんですよ。その白い兎が必死になっている様子に。それからしばらくして、会長が当選して生徒会に入りました。それからは会長とかぐやさんはギスギスしていましたけど、段々と仲良くなっていって。その時に知ったですよ。ああ、かぐやさんは会長のことが好きなんだって」

「………」

 

結構、速攻でバレてんだな。

しかも、それで千花先輩は気づいていないと思って、頭脳戦してたのあの人達。

あらあらあら、お可愛いこと。

 

「それでドンドン可愛くなっていくかぐやさんに、ドンドンとかぐやさんを可愛くしていく会長に嫉妬しました。私がどんなに頑張ったってかぐやさんは氷のかぐや姫でしたから。それを会長が変えていくのが羨ましくて、妬ましくて。変わらない私に対してかぐやさんが可愛く変わっていくのが、やっぱり羨まして、妬ましくて。それをちょっと呪っちゃったんですよ。蓬莱玉枝はそこで芽生えたんです」

「………」

「きっと、あの時に白い兎(あなた)を見なかったらそんな風には思わなかった。特に気にせず、単純に親友が変わる様が嬉しいってだけになってたと思います」

「遠因過ぎません?」

 

蓬莱玉枝は、藤原千花は苦笑いを浮かべて、遠因ですねと言う。

 

「でも、私にとっては重要なポイントですよ。私、白兎くんの色々な所が好きですよ。お節介な所も。それをつい隠しちゃう所も。相手のことを思いやる所も、その実自分勝手にしちゃう所も。でも、きっと、最初は入学式の日に見た時に私はあなたの事が好きになってました」

「……そうなんですか?」

「……はい。あなたなら、私を変えてくれるんじゃないかって。何か素敵なことを起こしてくれるんじゃないかって。要するに一目惚れです。蓬莱玉枝はその時から形になって、あなたを離さない為の役割になったです。だって、蓬莱玉枝()がいれば、あなたは藤原千花()見てくれるんだろうって。……それが出来なくなった今ではもう呪いを振り撒くことしか出来ませんけど」

 

その言葉にかなりの狂気が混じっていた。

病んでいる。

狂っている。

何が彼女をおかしくしたのか。

怪異だろうか?

確かにそれは正しい。

兎に、怪異に魅了されたから、おかしくなったと言えてしまえるかもしれない。

…………いや、そうじゃない。

怪異に善悪などない。

怪異は求められたからそこに居る。

求められ、願われたからそこに居る。

ならば、それは所詮人間の性に過ぎない。

兎が彼女を狂わしたのなら。

それは、僕が彼女を狂わしたのと同じだ。

僕はその狂気と向き合えていなかった。

グダグダと理由を並べて、自分の恋愛から逃げていたから。

だから、気づけなかった。

それなら僕は、ちゃんと向き合って、本音をぶつけるしかない。

 

「千花」

「なんですか?」

 

 

「僕は千花のことが好きです」

 

「……なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!」

 

動きを止めていた木が先程以上のスピードで襲いかかる。

 

「なんで今になって言うんですか!だって、白兎くんは選んだんでしょ!鬼ヶ崎ちゃんを!鬼ヶ崎ちゃんを選んで私は選ばなかったんでしょ!だったら、今更好きなんて言わないで下さいよ!哀れにも失恋してやっけぱちになった女の遣わした怪異を仕留めるって、それで良かったでしょ!それで全部丸く収まったでしょ!なのに、なんでそんなことを言うんですか!」

 

怒り任せで、動きは先程に比べて単調だが速度が違う。

運で避けても、余波でダメージを食らう。

 

「言いたかったからですよ。今まで言えなかったことをちゃんと言いたかっただけですよ!」

「こっちの気持ちを考えているんですか!」

「考えましたよ!でもね。考えていく内に分かったですよ。喧嘩した方が良いって!」

「なんでですか!わざわざ怒らすようなこと言ったって白兎くんに何の得もないでしょ!」

「だって、喧嘩でもしなければ互いに本当の本音なんて出せないでしょ!」

 

喧嘩する程仲がいいという言葉がある。

確かに相手の気持ちを尊重して、相手のワガママを聞いて、それをこなすことで安定する関係はあるかもしれない。

でも、それは相手に譲歩しているだけだ。

本当に親しい人間関係には、半端な譲歩なんて必要ない。

 

「実際の所、気持ち的な差なんて一ミリ程もなかったですよ!本当に出来るなら、普通に二人とも付き合いたい位ですよ!」

「世間一般では、それを二股って言うんですよ!この最低男!」

「ええ!そうですよ!結局、まともにそこで結論なんて出せない最低男ですよ!だから、嫌っちゃって良いんですよ!むしろ、嫌っちまえそんな男!」

「何開き直ってるんですか!ていうか、そこに結論が出てないなら何を基準に選んだんですか!」

「そんなの、あいつが千花の好きな僕ごと受け入れるとか言うからですよ!その時は否定しましたけど、本当はそれが嬉しかったってだけですよ!」

「本当に最低じゃないですか!クズ!人間としてクズ!」

「今は人間じゃないですけどね!全く!どうしてこんなクソで最低でクズで碌でもない男に惚れるんだよ!」

「仕方ないじゃないですか!結局、そういう所があるって知っても!それが本心だって知っても!そういうこと言って、さっさと悪者になろうとしている意図が見えるんですから!そうゆう本当に馬鹿なことをする所が好きなんですから!」

「本当に馬鹿ですね!僕としてはまだまだ色々なゲームしたり、ご飯食べに行ったり、一緒に楽しいことを一杯したいって思ってるのを言わないで悪者になるんですから、大人しく酷い男として切り捨てればいいのに!」

「言ってるじゃないですか!私だって本当はゲームしたり、ご飯食べに行ったり、手を繋いだり、キスしたりしたいって思ってるんですよ!それでもそういう役割の怪異だからこうしているのに勝手なことばっかり言って!どうしろって言うんですか!」

「負の形で秀知院を治める怪異になればいいでしょ!元々、秀知院はエアスポットとしての問題あったし、そこを統治することが出来るのもこの数ヶ月で証明してるんだから、後は危険性が薄くなれば成り立つでしょ!」

 

木の動きは止まった。

息もつけない言い合いで互いに息が乱れる。

特に僕は怪異の身体なのに過呼吸になりそうだ。

というか身体はボロボロ。

避けても避けても余波は食らってる。

まだ動けはするが、それもあまり長持ちしないだろう。

息が乱れて、大きな声が出せないのかさっきまでと比べて小さな声で千花は言う。

 

「そんなこと出来るんですか?いくら私が藤原千花の願いで動く怪異とは言っても、そんな設定変更」

「やれるよ。その為に僕はここに来たんだから」

 

僕は身体が無茶だと認識しているのも無視して、前へと進む。

息は乱れ、頭はクラクラする。

それでも、まっすぐに。

そして、玉枝の前まで来ると、僕は撫子に頼んでいたものを玉枝の胸に打ち込む。

 

「グッ!!これは……!」

「御札ですよ」

 

撫子に頼んでいたもの。

それは御札。

それも神性を帯びた。

この御札の効能は貼り付けた相手に神性を与えるもの。

殺意満載のものなら怪異を強制分解するものもあるらしいが、そんなもの僕が持ったら、こんな状態でなくても一発で昇天するし、これならこいつを生かせる。

神性を与える、つまりは神にする御札。

一見すると、とんでもない力を与えるように見えるかもしれないがその実、神化した際の土地に囚われる呪いも含んでいる。

元々、八百万の神がいる国だ。

神様にも得意とする土地柄、事柄が存在する。

その土地の部分で、玉枝を縛った。

テリトリーとして定義された場所からは、早々に離れられなくなる。

更に神であろうと、それを信仰するものがいなければ成り立たない。

だから、秀知院への被害も適度な範疇になる。

後はちゃんと統治すれば、臥煙さんも文句は言えないだろう。

 

「でも、こんな御札、どんな巧妙な陰陽師でも……!」

「いいや、撫子はあれでも()神様だからな。神を通過点とするあいつの才能は飛び抜けてるよ」

 

本当に。

凄いもんだ。

まぁ、文化祭から頼んでこっちまで、制作に大分かかったみたいだけど。

と、そうしている間に玉枝の姿が徐々に藤原千花になっていった。

どうやら、統合化していたようだ。

まぁ、藤原千花も蓬莱玉枝も同一人物でありそこに差なんてないんだけれど。

だから、僕もこういうことをしたのだけれど。

 

「……ごめん、なさい。こんなことに巻き込んでしまって」

「別に。僕の責任の面もありますし、……千花には謝りよりも笑っていて欲しいですから」

「でも……!」

 

その先を聞く前に僕は今回の戦闘で空いた穴から外に出た。

 

「あなたはこのままだと…」

 

***

 

屋上に跳び上がり、寝そべる。

 

「ハァーーーーーーーーーーーー」

 

思い切り息を吐く。

そして怪異化を解くようにする。

身体はまるで鉛のようで指一本も動かない。

 

 

 

しかして、『それ』は急に現れた。

『それ』はただの暗黒であり、吸い込む穴であり、まっくらであり、暗闇だ。

怪異ではなく、存在ではなく、非存在である。

人はこれを神隠しと呼び、中立者と呼び、イレイサーと呼び、くらやみと呼ぶ。

因みに僕はバランサーと呼んでいる。

それに大きさはなく、距離もなく。

怪異の道を踏み外したもの、自分を偽った怪異を消し去りなかったことにする世界の修正力だ。

絶対のルールそのもの。

あるいは真理そのもの。

僕の罪状は、言わずもがな、呪いの怪異であるのに誰も呪わず、それどころかこの怪異を因幡の白兎であると偽ったことだ。

偽れば、嘘をつけば、それ相応の報いを受ける。

極めて当然のことだ。

 

「まぁ、そんな上手くはいかないか」

 

僕としての最適解は、このまま僕は元の自分へと戻ることだ。

そうして普通の人の営みをすればバランサーの対象にはならないからだ。

あくまで一時的にそう言って見せただけだと誤魔化せれば良かったのだけれど。

やっぱり、僕に100点の解答は出来ないらしい。

バランサー的には一発退場のようだ。

指一本も動かない。

バランサーからは一時的に距離を取れるらしいが、この状態で不可能だろう。

これが僕の人生の終わり。

中学時代に拾った延長戦の、終わり。

 

「……ふふ」

 

笑みが零れる。

……僕は、死にたくない。

消えたくない。

まだやり残したことが沢山ある。

まだ、優とミコの孫の顔を見ていない。

まだ、四宮先輩と白銀先輩の結婚式を見ていない。

まだ、早坂先輩と横浜に行っていない。

まだ、マッキー先ハイに完全勝利していない。

まだ、テラ子のゲーム大会優勝した姿を見ていない。

まだ、紀先輩の最新刊読んでいない。

まだ、巨瀬先輩の田楽味噌食べていない。

まだ、撫子に飯を作っていない。

まだ、千花と遊び足りない。

まだ、美青とイチャイチャしていない。

まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ、まだ。

心残りが沢山ある。

こんなにも、未練が沢山残っている。

あの冬の日。

僕には心残りなんてなかった。

僕の手には何も残っていなかった。

あそこで終わっても、なんとも思わなかった。

でも、今は違う。

僕の手にはこんなにも多くのものがある。

それを僕は『幸せ』と呼ぶ。

悔いを残さない人生を送りたいと言う人が居る。

それが綺麗な人生だと言う人が居る。

でも、僕はそうは思わない。

本当に良い人生は、思い残すことも悔いることも気になることも沢山沢山あるのが良い人生だと。

そう思う。

だから、死ぬ時になって。

消える時になって。

こんなに、こんなに沢山の心残りがあって。

随分と勝手だとは思うけれど。

それでも。

 

「幸せな人生だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を馬鹿なことを言ってるんですか」

 

そこには居ない筈の声が聞こえた。

 

「これから幸せになるんでしょ?今のままで満足なんて省エネ過ぎますよ。()()()()()()()()()()()()()()が、勝手に居なくなったら皆困ります。だから、戻りましょう?皆の所に」

 

ふと、目前に迫っていた重圧感が消えた。

バランサーのあった方を見ると何もなくなっていた。

僕は驚いて、どうしてなのかを考え、すぐに分かった。

『皆を幸せにしてきた幸運の象徴』

僕は自分のことをそんな風には欠片たりも思わなかったけれども。

しかし、こうして存在しているということは、実際にそうであったということなのか。

声のした方を見る。

そこには僕の恋人、鬼ヶ崎美青が居た。

美青はゆっくりと僕の方に近づくと、膝枕をする。

 

「全く。今回の、今回は、絶対に、許しませんよ……。馬鹿。本当に、馬鹿!無茶なんてレベルじゃ、ないじゃないですか」

「……ごめん」

 

途切れ途切れになりながら、美青は涙流しながら言う。

本当は拭いてやり所だが、あいにくと腕はうんともすんとも言わない。

だから、僕の顔に流れ落ちるのも止められなくて。

キスされるのもされるがままだ。

 

「そんなに、藤原先輩が大切なんですか?」

「ああ、大切だ。自分の存在を簡単にかけられるぐらい。まぁ、これに関しては仮にお前でも、優でも、ミコでも変わらないけど。大人なら、いや、子どもであっても、他人の為に命を賭けるなんて馬鹿で愚かだって言うと思う。僕もそう思う。けど、僕が僕でいる為にはその他人がいなきゃ駄目なんだよ。だから、僕は自分に出来ることはなんだってするし、誰かに任せきるなんて絶対に出来ない」

「……本当に馬鹿ですね。その為に自分が居なくなっちゃ、世話ないじゃないですか」

「全くだな」

 

これ以外の選択肢も多分あった。

もっと、スマートな解答だってあった。

でも、僕にはこれしか浮かばなかったし。

選択権を誰かに譲りたくもなかった。

他の方法はきっと、それを誰かに委ねることだったから。

臥煙さんにも言ったけど、子どもの理屈だ。

まだまだ、大人には程遠い。

だから、今美青を泣かせてる。

本当に、こんな僕のどこが良いのやら。

美青は怒りながら、宣言する。

 

「本当に、これからはちゃんと見張って、幸せを食中毒になる位味あわせて、おじいちゃんになるまで生きて貰いますからね」

「うん。ごめん。……それとありがとう」

 

本当にろくでもない男だと思う。

でも、そんな僕でも必要とされるのなら。

僕は笑って、少しだけ動くようになった首を使って、美青とキスをする。

兎が餅をつく月の下の元、僕らはしばらくそうしていた。

 

***

 

後日談。

次の日。

僕は普段熱をだしても、38℃台いけば凄い位な感じなのに、まさかの40℃台をだして学校を休んだ。

今までの疲れが大きくぶり返したらしい。

その他にも肉体的な様々な事柄によるものだと思うが、詳しい相関性なんぞ分からんので、疲れということになった。

結局、あの時美青が的確な言葉で僕を救ったのは臥煙さんの働きだったらしい。

なんでも、前に似たようなことをした人が居て、その時と似たような対処だったとか。

いや、そんな馬鹿が居たのかと驚きが隠せないって感じだが、頭がフッワフッワしている僕の表情にあまり変換はされなかったらしい。

それと、臥煙さんを連れてきた早坂先輩は事実上の僕の命の恩人になった。

これは横浜に行く時はそれ相応なことをしないと釣り合いが取れないな。

体育館は無事、一晩で復旧……、とは流石にいかなかった。

流石に無理だった。

どのように誤魔化したかは校長と臥煙さんの手腕なのでここでは割愛していおこう。

まぁ、大方軽い地震で目に見えなかったな老朽箇所が原因で、みたいな感じだろうが。

そう言えば、千花先輩も家に来た。

何かを話したような気もしたけれど、ぼんやりとしていて覚えていない。

いつだったか、四宮先輩が熱を出した時の症状を聞いたことがあるが、それよりは残っているが、しかし、似たような状態だったのだろう。

まぁ、きっと大したことは話していないだろう。

長々と引きずるようなことは言っていないと思う。

そして、更に次の日。

つまりは今日。

無事に熱からは復帰した。

僕は、今日も歩いて学校に向かう。

 

「おーい。白兎くん~」

「千花先輩」

 

千花先輩は走って近寄ると、

 

「千花って呼び捨てでお願いします」

「いや、でも…」

「一昨日は言ってくれたじゃないですか。まぁ、学校では言えないかもしれないですけど、二人きりの時はそう呼んで下さい。長い付き合いになるんですから」

「長い付き合い?」

「ちゃんと説明しますよ」

 

そうして、二人で隣合って歩く。

流石に手を繋ぐなどはしていないけれど。

 

「白兎くんは幸運の象徴として、因幡の白兎の要素を持った怪異になった訳じゃないですか」

「そうですね。人じゃあなくなっちゃいました」

「で、臥煙さんとしては負の要素ばかりだと問題なので、バランス取るために秀知院の正の要素としてあなたに付いて欲しいって言ってました」

「えっ!それはつまり……」

「こういうことです!」

「ゴフッ!」

 

そこで思い切りみぞおちに手を叩き込まれた。

色々と恨みのこもった一撃だ。

いや、正確には2日前に僕が叩き込んだものと殆ど同じ御札を叩き込まれたのだけれど。

 

「これで白兎くんも秀知院の神様の仲間入りです!」

「おお……。いくら自分が忙しくて、僕がその時聞ける状態じゃないからって」

 

勝手に決めやがって。

全く、もう。

ていうか、

 

「所で白兎くん」

「嫌な予感がするんですけど、なんです?」

「これで合法的な二股ですね!」

「やっぱりそうなるかーー!」

 

神様において、対となるものは多々ある。

閻魔大王に地蔵菩薩。

荼吉尼と宇迦之御魂。

アメとムチの両方がいてこそ、成立する関係がある。

そして、この対。

双子とかでない、男神と女神である場合、婚姻という意味を帯びている。

エジプトの神様とか、対の相手が結婚相手というのはかなりケースである。

という訳で、僕と玉枝という名の千花はそのケースに当たってしまうのである。

そして法律は、神様には適用されないのだ。

 

「この後に及んで最低街道まっしぐらだーー!」

「良いじゃないですか。私も思いましたけど、結局の所で好きで諦められないのはその通りですし!だったら、受け入れちゃうかなって」

「いやいや!確かに二言とか言いたくはないけど、ギルティだろ!どう考えても!」

「神様だから多重とか何の問題もないです!私の方も認めたんですから、後は白兎くんが認めるだけですよ?」

「随分とスッキリしてますね!元々、千花の嫉妬で発生していることなんですけど……」

「そりゃあ、喧嘩しましたからね」

 

千花はえらくいい笑顔でそう言う。

……そうだな!

何のための喧嘩かって言ったら、吹っ切るための喧嘩だもんな!

こんな形とは思わなかったけど!

 

「はぁ、分かりましたよ。これからは末永く()()()秀知院を統治することにしましょう」

「そう来なくっちゃ」

 

いい声で言うんだから、全く。

 

「でも、学校内では控えてくださいよ。ていうか、他に彼氏を作ってください」

「早々には出来ないと思いますけどね」

 

そうして、放課後。

生徒会メンバーは全員揃っている。

 

「えー、昨日は休んですいませんでした」

「いや、まぁ、40℃台となればそれはいいんだが」

「白兎くん!corianderやりましょう!」

「いや、まだ仕事終わってないですからね」

「……なぁ、白兎。お前らに一体何があったんだ?」

 

まぁ、昨日の今日でこの調子だとそう思うよな。

まさか、二人揃って神様になって、秀知院を治めているんですとは、言えない。

なんだそれ?が関の山だ。

と、いう訳で仕事を終えて、ゲーム中。

 

「こんにちわ~~って、なんで二人でゲームしてるんですか!」

 

僕と千花を認識した途端、お怒りモードの美青が現れた。

 

「別に良いじゃないですか!鬼ヶ崎ちゃんもやります?」

「なんですか!余裕アピールですか!分かりましたよ!正妻枠はあくまで私だってことを分からせてあげますよ!」

「私の方が色んな関係で正妻ですよ!」

「おい、鳴山」

「何も言わず、そっとしておいて下さい」

 

白銀先輩に突っ込まれる前に制しておく。

朝に言ったことを忘れているのか。

まぁ、僕が悪いんだけど。

いや、本当。

最低街道にも程がある。

どうやら、僕の悩みは永遠と残り続けるらしい。

 

「白兎くん。やらないんですか?」

「白兎先輩」

 

二人はいい笑顔を向けてくる。

ヤレヤレ。

本当にいつまでも勝てそうにない。

なんか、色々と悩むのが馬鹿らしくなる。

これから先、色々なことが待ち受けている人生ならぬ神生だけれど。

でも、出来る限りのことをして。

今この手にあるものを離さないようにしたい。

なんて、カッコつけられるようなオチじゃ、全然ないけど。

最低な結末だけれど。

鬱々しいバッドエンドではない。

それで良いということにしておこう。

まぁ、それはそれで僕らしいのかもしれないしな。

 

「はいはい。僕もやりますよ。皆さんはどうです?」

「順番が回ってくるようならな」

「まぁ、今日の所は見逃すわよ」

「はぁー、こんな資料をよこして…」

「俺はまだ仕事があるからな」

「じゃあ、やりますか」

「「はい!」」

 

そして、今日もその手にあるものを幸せ(もの)を持って。

今日も僕は笑って進む。

 




ええ、まずはここまで見てくださった読者の方々、ありがとうございます!
色々あって、75話を一年で書いていくのは中々と大変でしたが、お楽しみ頂いたなら幸いです。
白兎くんも紆余曲折の末、とんでもねぇ結末に辿り着いちゃいましたけど、それは100点のエンドに出来ない白兎くんらしさなのかなと思ってます。それはそれで最低だけど!
今後は後日談をちょこちょこ挙げつつ、別作品の二次創作をしようかなと思っているので、その時は是非読んで欲しいです。
それでは、直前に色々トラブルはありましたが、『鳴山白兎は語りたい』はこれにて完結です!
皆さん!ありがとうございました!!

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