恋愛相談。
古今東西を問わず、学生は恋愛に悩むことがある。
それは白銀先輩もそうだし、四宮先輩もそうだし、優もミコも、ついでに僕や美青や千花もそうだ。
まぁ、恋の悩みとは言っても、それぞれで悩み方が違うのだけれど。
それでも皆悩んでいる。
悩みを解決する為の一つの手段はやはり人に相談することだろう。
特に知識を持った人に相談することは実際に有効な手であると言えるだろう。
さて、問題。
ラブ探偵とはどういう人のことを言うのだろう?
***
「恋愛相談?」
「はい。恋愛に関して一家言ある生徒会に相談したくて…」
新学期が始まり、2週間位。
放課後の生徒会室にて。
生徒会の男子陣で普段通りに仕事を片付けていると、とある男子がやってきて切り出してきた。
「ええと……、誰だ?」
「ああ、新一年生で確か名前は
「覚えていてくれたんですか!一回会っただけなのに、流石ですね鳴山先輩」
「白兎、知り合い?」
「まぁ、今の一年とはそこそこの付き合いがあるからな」
今年の灰被の件で色々と干渉してたしな。
まぁ、去年も去年で美青のことで色々と関わったし。
でも、僕が出来たこともたかが知れている。
所詮、僕は外野の立ち位置でしかないし。
色々と指摘は出来るし、ある程度動くことも出来るけど、でもそれだけだ。
根本的な解決は当事者たちにしか出来ない。
僕は僕が出来ることしか出来ない。
それはまぁ、良いとして。
「というか、恋愛に一家言がある生徒会って?」
「いえ、悩んで歩いている時に『生徒会は会長とかぐや様による愛の園ですわ』って言ってたのを聞いて」
「……俺、そういうことを言う人に心当たりがあるんですけど」
「多分、それで正しいよ」
あのナマモノ先輩。
相変わらずだな。
まぁ、あの人はあのままが一番味があるからあんまり手出ししないんだけど、それで周りに迷惑をかけるようならちょっと面倒みなきゃだよな。
う~~ん。
あんまりやると、絶対にあの二人に伝わるし、というか、千花には絶対にバレるしやりたくないな。
「まぁ、いいや。それで恋愛相談っていうけど具体的には?」
「ええと、その…」
石作くんは若干しどろもどろになって、言葉を詰まらせてから、
「その、大仏先輩とお付き合いしたんです!」
「………」
「大仏、とね」
僕は顔に手を当てて、優は優で若干苦い顔をしていた。
白銀先輩が聞いてくる。
「二人とも、その大仏というのを知っているのか?」
「ミコの親友で、僕も友人ですから」
「大仏こばち。旧4大難題美女の一角で、文化祭頃にあの風野先輩と付き合い、そしてクリスマスにはフッていたという難易度最大の女です」
「なんか、口調に悪意を感じるが」
「そんなことはないです」
当たりだけど。
えっ、なんで、あいつ?
多分、碌なことにならないんだけど。
正直、僕自身の補正が入ってるのは分かるけど、あいつ結構性格悪いタイプだとおもうんだが。
う~~ん。
いやでも、後輩の頼みだしな。
それに、失恋も失恋でいい経験にはなるだろうし。
「まぁ、アドバイス位はするよ」
「ありがとうございます!それでなんですけど…」
「ん?何?」
「皆さんはどうやって彼女を落としたんですか!?」
「単刀直入に凄いこと聞くな」
どうやって、って……。
………。
………。
分からん!
ていうか、僕は落とされた側!
「僕はどちらかというと、落とされた側だからな。それじゃあ他に何をしたって言っても普段通りにしてただけだから、イマイチ、参考にならないな。優は?」
「俺?う~~ん。俺はアピールの為に勉強を頑張ったり、バレーを頑張ったりはしたけど……」
「ああ、まぁ、お前らの場合は殆ど同時期だからな。好感度高めからのスタートじゃあ、大した参考にはならないか」
一瞬、白銀先輩に目線を送る。
そう。
この話題であるなら、一番に参考になるのは白銀先輩だ。
完全にゼロからのスタートであり、その相手は一癖も二癖もある四宮先輩。
まさしく、この相談にはお似合いと言った感じだ。
が、しかし。
今現在、白銀先輩と四宮先輩は秘めたる恋愛の真っ只中だ。
まぁ、その割にはいろんな方面にバレてるし、なんなら四宮家にも既に気づかれてるであろうことは分かるけど。
一応、ジェノサイドする準備は整えてはいるけど、それもまともにゴーサインはでないだろうし。
とはいえ、秘密事はきちんと守るべきだろう。
とか、考えていると、
「恋の味はチョコの味!恋を味わって愛を探すラブ探偵千花!参上!!」
「「うわっ…」」
「ええと……」
他の生徒会メンバーからのゲッソリとした声と後輩のなんと言ったら分からないといった感じの声が響く。
その元凶たるは藤原千花。
最早定番となった鹿撃ち帽を被り、ここに登場した。
最後に見たのは、四条先輩の時か。
これはこれで可愛い。
好き。
「千花先輩」
「ふふん。分かってますよ、ワトソン白兎。今日の依頼人はそこの彼で女子とお付き合いする為のアドバイスを求めてきたんですね。良いでしょう!私がその恋という探しものを探り当ててあげましょう!」
「おい、藤原の勘が今回は鋭いぞ!」
「おかしいですね……、何か裏があるのでは?」
などと、男どもは隠れている話しているが、まぁ、秀知院の神様でもある千花ならその位の言動は普通把握しているのだろう。
それともう一つ。
千花は愉快犯にはなっても、アドバイスに関しては結構まともだ。
少なくとも、頓珍漢なモンスター童貞よりもよっぽど真っ当なアドバイスを送る。
普段の言動ばかりではなく、きちんと一つ一つの言動から相手を洞察することも今後必要になってくると言いたい。
それがこの二人の今日の教訓になるように、
「それじゃあ、ホームズ千花。女性側からの意見を聞かせてくださいな」
「良いでしょう!」
***
「そうですね。まずは大仏さんとは何の位関わりがあるんですか?」
「いや、その、関わりらしい関わりはなくて、その、毎朝の大仏先輩の風紀委員の仕事振りを眺めてたら、その、好きになった感じで…」
「ふむ、そうですか」
ええー…。
いや、まぁ、うん。
そういう動機の人はまぁまぁいるし、そう思うのにも理由はあるんだろうけど、
「要するに一目惚れみたいなものってことか?」
「そう、ですね」
「可愛い後輩だな」
「つまりは面識はないってことか」
これは中々と厄介だ。
別学年で、元々の面識がないとなると、関わりらしい関わりが築けない。
と、なると、何かしらの組織、部活やら委員会に属するのが早いだろうな。
て、ことは、
「風紀委員の方には志願した?」
「志願はしました」
「そうか。なら、関わり自体は持ちやすいな」
「でも、風紀委員だろ?風紀を守ることが仕事の風紀委員でそういう浮ついた展開にするのは難しくないか?」
「まぁ、確かにね」
優達も学校内では清く正しい付き合いしているしね。
いや、まぁ、大仏も風野先輩と付き合ってたりはしてるから清いだけって訳でもないのは知ってるけど、風紀委員内でそういう話に持っていくのは難しいだろうな。
ていうか、風紀委員に入るのに入った動機が不純すぎるな。
現実にはよくあることだが。
「それはきっかけにするとして……。どういう風にアプローチするかですよね」
「そこが一番の問題なんですよね。あいつ、よく追っかけとかもあしらっていて、モテること自体に辟易している様子だから下手なアプローチはむしろ逆効果にしかならないんだよね。風野先輩と付き合ってたのも虫除けみたいな側面もあったんだろうし、ていうかお試しとしてみたいだし。なんというか、恋愛事的なアレやコレやに冷めているだろうな。まぁ、親的な所でも仕方ない側面ではあるんだろうけど……、それもそれでどうなのって、いや、止めよう。これ以上は碌なこと言わないだろうし」
「鳴山がそういう風に言うのは珍しいな」
「まぁ、相性がすこぶる悪いので」
「同族嫌悪ぽいですね」
千花が小さい声で言うのが聞こえる。
同族嫌悪。
まぁ、恋愛観はともかく、他の側面で似たような一面を抱えていることは否定出来ない。
微妙に他人を信頼出来ない所とか、変に分かったような口を聞く所とか、まだまだガキなのに大人ぶる所とか。
認めたくはないけども。
しかし、認めない訳にもいかないのは確かだ。
それを認めなきゃ成長出来ない。
そういう意味では今回はそれへの脱却をする機会かもしれない。
そんなに出来る気もしないけれど。
「それじゃあ、俺はどうすれば……」
「そうだな。まぁ、今までの言動から推測するに周りに優しくするタイプが好みではあるだろうな。この場合の優しさっていうのは、いじめられている相手を助けたり、自然とサポートをしたりすることだな」
「……それって白兎くんっぽいですね」
「違いますよ。優の方の優しさです」
「おれ?」
「そうだよ」
本人は否定するだろうけど、恋愛感情になりそうな傾向はあったんだろうしな。
そういう所は早坂先輩のそれと近いんだろうけど、まぁ、誰にでも優しいタイプだから気が引けたって感じなのだとは思うけど。
ともなると、バランスが難しそうだな。
「大仏ってそんな感じなのか?」
「まぁ、確実にこうだとは言えないけど、大体そんな感じだよ。後はアレだな。あいつは減点タイプだから、普段からそれなりに気張らないと容赦なく減点されることには注意するべきだな」
「な、成程……」
「私としてはそうですね。なるべく好意があることは目に見えてだした方が良いと思います」
「えっ!でも、それは……」
「別に好きだとか可愛いとかは言わなくていいです。ただ、自分に対してああ好意があるんだなって気づかせるような振る舞いをした方が意識して貰えると思いますよ。こういうので怖いのは、仲の良い友人で固定されることですから」
「でも、そうしたら他の人にバレてからかわれたりとか、後、本人に気づかれるのも……」
「確かにそうかもしれないですね」
そこで千花は一瞬、間を置くと大人っぽい笑みを浮かべて、
「でも、そうやって自分の為に頑張ってくれる人を無下にする人はあまり居ないですよ。それに、本当に好きなら、どんなに隠したって自然と皆にバレますから」
「そ、そうですか?」
「そうですよ!ね、白兎くん!」
「………そうですね!」
ちょっと、ヤケグソ気味に言う。
ああ、もう、僕への想いだって分かるし、千花はとってもいい笑顔で言うし!
なんかもう、恥ずかしい!
そして、可愛いよ!
ああ、もう!
「とりあえずは基本的に周りに優しくして、好意を示すこと!優しさと大仏の趣味とかについてはそこに聞き耳を立ててる風紀委員に聞けば教えてくれるから!」
「……バレてた?」
「まぁ、俺も気づいてたけど……」
生徒会室の扉からミコとついでに四宮先輩が顔を出した。
優も気づいてたらしい。
普通に入ればいいのにとは思うが、親友に関しての相談なのと、どこかで愛の言葉が出てくるかもという期待があったんだろう。
「でも、私はそんなに簡単に教える気はないわよ?」
「ミミちゃんの新作でどうだ?」
「のった」
「いや、誰だよ」
白銀先輩が反応するが、知っている奴らは何も答えない。
まぁ、ミミちゃんだからねー…。
あの子の新作はミミちゃんを知る人なら、誰でも欲しくなるだろう。
「でも、こばちゃんでしょ?相当に蛇の道になると思うけど」
「大丈夫です!」
石作くんは明朗な声でそう言う。
そうして断言が出来るというのは良いことだ。
グダグダと認めずに、引き伸ばすような奴よりも。
「さて、優はちょっと退場するとして……、白銀先輩も一緒に男子会しません?」
「おい、なんで俺が退場なんだよ」
「いや、だって、本人の居る所で褒めるのはしづらいでしょ。それに、人が沢山いる所で話したくもないだろうし。なら、男性陣はどっかに行ってた方が話しやすいでしょ。ね、ミコ」
「そうして貰えるとありがたいわ」
ミコは少し恥ずかしがるように言う。
本当にこういう所可愛いよな。
「さぁ、石作くん以外は退場、退場!」
「おい!押すなよ!」
「ああ、それじゃあTG部の部室を使ってて下さい!」
「それでは、会長。また、後ほど」
「ああ」
そうして、男性陣は生徒会室の外に出る。
「さて、TG部の部室に向かいますか」
「それはいいんだが、四宮達はいいのか?」
「いいんですよ。ああいうのは、女子が居た方が話しやすいものですし」
それに、四宮先輩や千花の惚気も聞けるかと思うと笑みが止まらなさそうだし。
まぁ、千花はその辺にも気づいてはいるだろうから、確率としては半々といった所だろうけど。
「それに僕としては、もう一つ聞きたいことありますし」
「?なんだ?」
「四宮家への対策。ちゃんとしてます?」
***
TG部の部室。
トランプのジジ抜きをしながら、僕たちは話す。
「ぶっちゃけ、自分ではどうしようもないなんて結論に達してたりしません?」
「………正直、な」
白銀先輩は苦虫を噛み潰すような顔をしている。
まぁ、そんなことだろうとは思ったけど。
「この学校で生徒会長とは言っても、所詮はそれは学園の中でだけの地位で、実社会では大したものじゃないだなと」
「まぁ、それは当たり前ですけどね。むしろ、今の年で実社会で通用する肩書を持っている奴なんて数百人位ですよ」
「いや、数百人は多くないか?」
「そうでもないよ。母数が違うから」
そして、僕はそういう肩書持ちではある。
まぁ、怪異的な範囲でという注釈はつくだろうが、それでもある程度の社会的行動が行える人間だ。
僕の知る中だと、現在漫画家の千石撫子だったり、平行世界の住人ではあるがカウンセラーとして仕事をしていた広瀬青星なんかは実社会で生きているメンツだ。
どれもこれも、癖の強いメンツだ、僕も含めて。
まぁ、それだって、必ずしも珍しくはない。
世界は思っている以上に喜劇も悲劇も奇劇にも満ちているのだから。
「それで?白銀先輩はどのようにお考えで?というか、どういう方針でやっていくつもりですか?」
「……周りの人の手を借りる。幸いにも今のクラスは俺たちに協力してくれそうな人物が集まっているからな。皆の協力を貰う」
実はそうやってメンバーが集まっているのが、校長の計らいだということには気づいているだろうか。
まぁ、気づいてないだろうな。
あの人は人の見えていない根幹の部分で暗躍するタイプだから。
というよりも、アレもアレでちゃんとした
子どもからは見えないだけで。
まぁ、聞きたいことはそうじゃないんだけど。
「そうじゃなくてですね。
「四宮家そのもの?」
「……白兎、お前随分と怖いことを考えてないか?」
優は僕の手元からカードを引きながら、若干引き気味に言う。
「そうか?僕としてはそれが一番分かりやすくて、後顧の憂いのない解だと思うけど」
「でも、明らかに不可能に近いし、それにもしそれが叶っても、後に残る問題が沢山あるんじゃ……」
「待て。どういう話をしてるんだ?」
白銀先輩はそうやって割り込む。
いや、何を言っているかが分からない訳ではないだろう。
ただ、普通にはそう思わないだけだ。
「だから、四宮家をぶっ壊せばって話をしてるんですよ」
「はぁ!?そんなの無理に……!」
「何をもって、そうだと決めつけるんですか?盛者必衰。どこにも絶対なんてものは存在しないですよ」
それは僕が見てきたことでもある。
絶対なんてなかった。
当たり前なんてのもなかった。
如何に強固な盾でも撃ち抜くことは出来るし、如何に鋭い矛でも貫けないものはある。
僕は時にそれに翻弄され、時に操ってもきたのだから。
「僕としてはそれが一番、四宮先輩の助けになると思うんですよね。契約だけもぎ取れば自由になれる?自分が一番高い所に立てばどうにも出来る?いや、どちらも確実性がない。契約した所でそれを平然と破ることはするだろうし、トップに立っても下剋上されるなんて可能性は当たり前にある。なら、
「いや、子どもの俺たちに出来ることじゃないだろ」
「どうでしょうかね。さっきは社会的な肩書の話はしましたけどね。本当に重要な場面で必要なのはそんなものじゃないですよ。子どもだ大人だなんていう区切りが人が勝手に決めてるだけですよ。子どもにだって、揺るがす力はありますよ」
「だが……」
白銀先輩は何かを悩むような口調になる。
良心の呵責なんだろう。
多くの人は巻き込むし、色々と覚悟のいるようなことを決断させる提案でもある。
それは確かにそうだ。
けれど、白銀先輩のそういう態度は僕としては羨ましくもあり、呆れるようなことでもある。
「白銀先輩。僕はですね。恋愛にとって一番大切なのはエゴだと思うんですよ」
「エゴ……」
「まぁ、端的に言えば押し通したもの勝ちってことですよ。相手のことを気遣って思い遣る。それは確かに良いことで素晴らしいことですよ。でもね、その場合は相手から貰うしかない。だって、自分から求めていないから。自分が本当に欲しいものがあるなら、それがどんなに身勝手だとしても掴み取りにかかるべきだ。相手の意思をへし折ってでも、例え周りに理解を得られなくても」
僕自身が押し通されて、そして、押し通したように。
「白兎は相変わらずだな」
「そりゃ、どうも」
優は呆れたような口調で僕のことを言う。
まぁ、こいつは頑固ではあってもエゴイストじゃないからな。
ミコとの付き合いも決して無理矢理とかはない、清純な付き合いだ。
ある意味、僕が言ったこの言葉には当てはまらない人物だと言える。
だからこそ、羨ましいのだけれど。
そんな風に思っていると、白銀先輩が口を開く。
「鳴山。お前の言ったことは正しい。だが、だからこそ、俺はその手法は取らん。俺が、俺が本当に欲しいのは四宮との未来なのであって、四宮家の滅亡じゃない。そして、そのために誰かが不利益を被るような選択はしたくない」
「成程。それが白銀先輩の決めたことなら、コレ以上の口出しはしませんよ」
多分、そう上手くはいかないだろう。
ことがことだ。
絶対に誰かは不利益を被るし、皆幸せとはいかないだろう。
だが、この選択こそが四宮先輩が白銀先輩に惚れた所なのなら、それを外野が捻じ曲げる訳にもいかない。
外野は大人しく、このロマンスを飾るモブにでもなるとしよう。
「でも、会長。僕たちに出来ることがあるなら何でも言ってくださいよ」
「支障の出ない範囲で手伝いますよ」
「支障ってなんだよ」
そう言って、白銀先輩は笑った。
***
後日談、というか今回のオチ。
「それにしても、随分と惚気てましたね、ミコ」
「本当に、ミコちゃんはそういう所お可愛いですよね」
その日の放課後。
僕と千花はたこ焼き屋に寄り道して、たこ焼きを食べている。
「白兎くんも会長に対して随分と言ってましたね。ていうか、準備はどの位進んでいるんですか?」
「そこまでは進んでないですね。まぁ、四条帝と上手く交渉が出来れば、準備の8割は終わりますけど」
「流石の世話焼きぶりですね。妬ましいです」
「ハム」
千花が差し出してきたたこ焼きを僕は口に含む。
美味しい。
「会長にあんなこと言ってますけど、白兎くん自身は四宮家を滅ぼす気満々ですよね」
「まぁ、四宮先輩の他にも気になる人はいますし、その人の安全も含めたらそれが一番ですよ」
「本当に怖い人ですね」
「人じゃなくて神ですけどね」
それに滅ぼすと言っても、あくまで人的にでだ。
神様の力は使わない。
勿論、その力を使えば日本の四大財閥なんて簡単に切り崩せてしまうだろうが、それをすれば専門家が全勢力を持って僕を潰しにかかる。
だから、人としての手を使う。
少々悪どいが。
まぁ、することもちょっと、広い人脈で壮大な座布団取りを仕掛けるだけだ。
「そういう所が怖いんですよ。そして、不安なんですよ」
そう言って、頭を撫でてくる。
本当に簡単にスキンシップをとってくる。
全く、嫌いじゃないけれど。
「心配しなくても大丈夫ですよ」
「ハム」
「ちゃんと弁えてますから」
「ゴクッ。だと良いんですけど」
二人で肩をすくませ合う。
色々と言いはしても、互いにそれに信用なんてしていない。
「そう言えば、石作くん。上手くいくと思いますか?」
「多分、上手くいくと思いますよ。誠実そうな子でしたし」
「それだけで上手くいったら、苦労しないですけどね」
互いにたこ焼きを食べさせあう。
こういうのも、楽しいな。
「まぁ、ラブ探偵の仕事なんて相手にアドバイスをする位でしょ。気持ちを解くのも知るのも本人の仕事ですし」
「だとすると、それは探偵じゃなくて助手ですね」
「ワトソン位が一番楽しい仕事ですよ」
「随分と下世話なワトソンですね」
「からかいがちなホームズに言われたくないですよ」
そんな風に言い合って、店を出る。
「まぁ、私達もまだまだ探偵ですよ」
「そうですね。未だに最適解を探してますし」
なんで、ギャグ一辺倒に出来ないんだろう?