鳴山白兎は語りたい   作:シュガー&サイコ

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家デートの今日この頃。


後日談 みおホーム

鳴山白兎は、高等部の一つ上の先輩だ。

生徒会庶務にして、怪異の専門家であり秀知院学園の神様だ。

そして、私の恋人だ。

長年の夢、というには8月から3月で大体半年位だけれど。

それでも、長い半年だったと思う。

今までの人生で一番長い半年だったように思う。

……きっと、私は傍観者でしかなかっただろう。

私は、白兎が何をしたのかは知っている。

逆に言えば、行動を知っているだけだ。

そこに至る考えを私は知らない。

怪異という存在は知っている。

けれど、白兎が対峙した怪異がどういうものかは知らない。

これは、意図的にあの人が私に伝えなかったことだ。

プロとしての彼は決して私をそこに踏み込ませようとはしない。

それは私を守る為でもあるだろうし、自分自身を見せない為でもあっただろう。

自分がどれだけ人を心配させているのかをあの人は知っている。

でも、あの人はそれを見ないように一人で動く。

あの人はきっと人が怖い。

人から拒絶されるのが怖くて、人に自分の弱い所見せるのが怖くて。

だから、自分のことを伝えようとしなかった。

弱くて、愚かで、それじゃあ何も掴めないのを知っていた。

それでも、あの人は人が好きだ。

人が好きだから、余計なお節介を焼き、自分のようにならないように動いた。

それをずっと眺めていた。

そんなあの人の態度が許せなくて、色々なことを言った。

キスだってした。

けれど、結局の所、それがあの人をどれだけ変えたのかは私には分からない。

あの人のその後の行動を考えると。

自分の幸せを願えるようになったとは思いたいけれど。

でもきっと、それは他人の幸せに勝ることはないのだと、私はそう思うのだ。

 

***

 

GW。

目を覚ますと、あまり見慣れていない天井を見つめる。

意識をはっきりさせると、体のダルさと顔が熱くなるのを感じた。

昨日のことは言うまでもない。

まぁ、正確には今日のことではあるのだけれど。

横を見ると、白兎は既にそこには居ない。

油の跳ねる音がうっすらと聞こえるから、既に朝食の準備をしているのだろう。

時刻は8時を少し過ぎた頃だ。

寝室からリビングに行くと、既にご飯と味噌汁が置かれていて、白兎は厨房で何かを焼いているようだった。

 

「おはよう。体は大丈夫?」

「おはようございます。……体はちょっとダルいです」

「そっか。……ごめん」

「別に良いですよ」

 

無理をさせた自覚はあるようだ。

というか、一晩経ってトリップから戻ってきたのか。

意外な程に性欲が強くてビックリした。

白兎は鮭の塩焼きと切り干し大根をもってくる。

 

「それじゃあ、食べるか」

「いただきます」

「いただきます」

 

一口、鮭を食べる。

今日はシンプルな料理だけれど、シンプルなもの程、純粋な腕が伺える。

だからこそ、白兎の腕がどれほどのものかが分かる。

凄い上手だ。

 

「美味しいです」

「良かった。それで今日はどうする?」

「どうする、とは?」

「このまま帰る?それとも、どこか出掛けるか?」

「………」

 

そう言えば、考えてなかった。

昨日のことで頭が一杯だったし。

でも、体はダルいし。

どこかに出掛けるのも大分億劫だ。

 

「体調的にキツイなら、もうちょっと家に居る?」

「……そうします」

 

相変わらず、こちらの内心を読んだように白兎は言う。

まぁ、でも、ここは大人しく甘えさせてもらった方が良いだろう。

 

「さて、それじゃあ何をしようか?」

「なら、久々にスマブラをしましょう」

 

***

 

朝食を終えて、横並びになってゲームをする。

先輩は相変わらずポケモン系ばかりを扱う。

しかし、前に戦った時よりも動きが大分良くなっている。

 

「先輩。もしかして、特訓とかしました?」

「いいや?ただ、勝ち上がり乱闘の5.0から9.9でクリアしただけだよ」

「成程。通りで強い訳ですね」

 

VIP勢でもそれが出来る人はそんなに多くはないだろう。

そもそもで対人とCPUでは戦い方が変わるというのはあるにしても、それでもその難易度をクリア出来るなら相当に頑張ったのだろう。

なんというか、今までならしなそうなことだ。

 

「どうしたんですか?今まで極めるって行為に否定的だったじゃないですか」

「今でもそれは変わらないよ。勝ち上がり乱闘は暇だったからしてただけだし」

「……本当にそれだけですか?」

 

白兎は一瞬、考えるような素振りを見せると、

 

「仮に、他に理由があったとしてもきっと僕は意識してないだろうな。僕は存外、僕自身のその辺の変化に鈍感だし」

「自分でそれを言いますか」

「自分のことを明確に自覚できれば、僕は苦労してないよ」

 

自嘲したような顔で白兎は言う。

それは、本人の後悔でもあったのだろう。

意識していないのか、あるいは意識しようとしていないのか。

どちらにしても、それによって起きた問題をあの人はずっと意識している。

ずっと、後悔している。

いつの間にやら、私のキャラは飛ばされていた。

戦績画面に映る。

 

「辛いなら、言ってくださいよ」

「別に、辛いってことじゃない。ただ、そうやって逃げている自分がどうしようもなく嫌になるだけだし」

「それが辛いんじゃないですか」

「辛くないよ。自己肯定感の薄い人にとって、自分で自分を傷つけるのはそんなに辛いことにはならない。見ている方がどれだけ痛ましくても」

「白兎先輩」

「……ごめん」

 

私の雰囲気が厳しくなったのを感じ取ったのだろう、白兎はすぐに謝った。

白兎の言うことが分からないという訳ではない。

私だって、みーちゃんの時はそんな感じだったし。

みーちゃんも、伊井野先輩もそういう傾向はある。

それが悪いと言いたいのでなく、見ている側の気持ちをこの人は分かっているのが腹立たしいのだ。

それが分かっているのなら、ちゃんと言って欲しいのに。

 

「私に話していないこと。他にも沢山ありますよね」

「仕事関係の話はしないよ。怪異の道に引き込む気はないから」

「藤原先輩にはするのに、ですか?」

「千花は神そのものだからな。言うまでもなく、秀知院のことなら把握してるし」

 

白兎は淡々と言う。

私はそうして関わらせて貰えない。

そのことには、関わらせて貰えない。

 

「私って、頼りないですか?」

「どうしてそんなことを訊くんだ?」

「だって、怪異に関しては何も……」

 

私の為を思っているのは分かっている。

仮に私が知った所で何か助けになれる訳ではないことも。

それでも、言って欲しい。

白兎のお節介を白兎に返したい。

 

「美青」

「なん、んん」

 

白兎は私の頬に手を置くと、唇を重ねる。

舌は入っていないけれど、深く求めるように口付けされる。

そして、そのまま隙間のないように抱きしめられる。

 

「ハァハァ、白兎。なんで急に……」

「随分と酷いことを言われたから」

「酷いって……」

 

私が白兎にお節介を焼こうとするのは酷いことなのだろうか?

いや、白兎はそんな風には言わない筈だ。

白兎はそういう気持ちを否定する人じゃないから。

でも、それならどうして。

 

「頼りない訳ないだろう。そんな人を恋人にしようなんて僕は思わないよ」

「なら……」

「別に頼るって、怪異ばっかりじゃないよ」

 

白兎は呆れるように言いながらキツく抱きしめてくる。

あまりにも密着しすぎて、ドキドキしてくる。

 

「今、こうしているのだって頼ってるようなものなんだよ」

「どこがですか?」

「……昨日のことを覚えてる?」

 

昨日のこと?

正直、恥ずかしくてあんまり思い出したくないけど……。

…………。

そう言えば、

 

「……寂しいんですか?」

「うん。だから、誰かが傍に居てくれないと、また一人になったら、もう耐えられないと思う」

 

白兎は辛そうな声で言う。

少し、涙声のようではあった。

 

「でも、それは別に私じゃなくたって」

「まぁ、そうだな。確かに一人が嫌なだけなら美青じゃなくたって良い。確かに理屈ではそうだけど、でも僕は美青じゃなきゃ駄目なんだと思う」

「どうして……?」

「美青なら絶対に離れないから」

 

白兎は確信めいた声で私の肩に顔を置きながら言う。

でも、

 

「それだって、皆そうなんじゃないですか?」

「そうでもないよ。優にしてもミコにしてもきっと卒業を期に離れる」

「そんなこと……」

「親友は親友だよ。そこは変わらない。でも、だからって同じ大学に行かなくちゃいけないとか休日は絶対に会わなきゃいけないとかそういう風に縛れるものじゃない。それは、親友じゃなくてただの依存だ。それを、あいつらに求めるのは間違いだ」

「それって、私なら依存しても良いってことですか?」

「そうだな。僕自身、依存体質な側面が大きいし。ある意味千花もそうなんだけどさ。僕が人と距離を置いてたのはその辺が理由なんだよ。僕は誰かのことを大切に思ったら、きっと執着してしまう。それは相手に対しての重荷になるし、それがなくなることで自分がどうなるかなんて想像したくない。でも、お前たちがそれでも良いんだって言っただよ」

 

白兎にとっての幸せ。

それは白兎自体が笑って、抱え込まずに、暮らせることだと思っていたけれど。

しかし、

 

「……思っていた以上に重いですね」

「……嫌か?」

「ふっ。そんな訳ないじゃないですか」

 

重いけれど、それが嫌な訳じゃない。

その重さは、私への確かな愛情なのだから。

 

「でも、ただ傍に居るだけなのは悔しいので嫌ですよ」

「それじゃあ、時々昔話に付き合ってくれないか?」

「昔話ですか?」

「そう、昔の話。それでいて、今の話」

「素直に愚痴らせてで良いじゃないですか」

 

私はそう言って、白兎を抱きしめ返した。

 

***

 

昼頃になって、白兎は昼食としてチャーハンを作っている。

 

「そう言えば、伊井野先輩の誕生日がもうすぐですけど先輩はどうするんですか?」

「ああ、もう誕生日プレゼントは郵送してるよ」

「郵送なんですか…」

 

学校が始まってから渡すということはしないらしい。

変な所で律儀だ。

それにしても、

 

「それなら、当日に遊びに誘えば良いじゃないですか」

「あのさ、誕生日はデートしているに決まってるじゃん」

 

白兎はニヤニヤとしたからかいの顔を浮かべて、断言する。

これは……。

色々と裏取りとかしてそうだ。

 

「白兎さん」

「心配しなくても、デートを覗くなんて野暮な真似はしないよ。ただ、まぁ、休み明けの学校で惚気を沢山聞きたいなとは思うよ」

「はぁ、その辺はそのままですね」

「変わらないだろうね、その辺は」

 

白兎は諦めたような口調でチャーハンを並べる。

自分のそういう性根を変えるつもりはないらしい。

まぁ、悪いことばかりとも言えないけれど。

 

「でも、少しは見直した方が良いんじゃないですか?」

「これでも、僕の一つの楽しみだからね。取り敢えず、食べよう?」

「そうですね。いただきます」

「いただきます」

 

そう言って、チャーハンを食べる。

前に食べたものよりも美味しくなっている。

この辺は純粋に成長なのだろう。

 

「白兎は誕生日に何を贈ったんですか?」

「これ」

 

と、指先に挟んで見せる。

そこにあったのは、とても綺麗なピンク色の真珠のブレスレットだった。

 

「え、これ高くないですか?」

「いいや。真珠自体は千花に作って貰ったから、大した値段はしないよ」

「あれ、藤原先輩ってそんなものを作れたんですか?」

「作れるよ。まぁ、これは神様以前の怪異としての特性だけど」

 

それにしたって、友人の誕生日プレゼントに真珠のブレスレット。

これは誤解されるのでは?

ていうか、私が羨ましい。

 

「いや、それはないよ」

「?どうしてですか?」

「優には水色のブレスレットを郵送して、それを伝えてあるから」

「うわー……」

 

正直、結構引く。

普通に考えて、友人にそんなものを贈るのは怖い。

なんていうか、本当にこの人まともじゃないよね。

良い人ではあるけど、それ以上になんか怖いっていうか。

というか、重い。

 

「それ、藤原先輩に何か言われなかったんですか?」

「いや、あのカップルを弄りたくないですか?って誘ったら余裕で協力してくれた」

「本当に仲が良いな」

 

それで乗っかちゃう辺り、意味は違うけど愉快犯というか。

正直、呆れる。

……あれ?

 

「神様の作った小物?それって……」

「ああ、気づいた?まぁ、当然のことながら並みのお守りなんて目じゃない程のご利益満点の品だよ」

「本当にあの二人はいつの間にか神の寵愛が酷いことになってますね」

「まぁ、あいつらの幸運値的にそれでもちょっと運が良いぐらいなんじゃないかな」

「どんだけ運が悪いんですか」

「いや、なんというか運が悪いというよりも運が中々と上がらない二人だよ」

 

まぁ、なんとなく言わんとすることは分かるけど。

それにしても、伊井野先輩や石上先輩のそういう所は羨ましい。

私も白兎にそういう何かが欲しい。

 

「まぁ、それは今月の20日まで待って欲しいけども。しかし、運勢の話をするならお前も今は相当に良いのでは?」

「えっ?」

「僕自身はきちんと力の制御はしているけど、それでも無意識で発動している力はあるから、それはお前の方に向いていると思うんだけど」

「そう言えば、最近卵の黄身が2つあったり、自動販売機で飲み物買うときのルーレットが当たったりとかしてますね」

「自分でいうのも何だけど、凄い半端な運だな」

 

確かにどうせならもっといい結果があって欲しい。

けど、白兎の力でそれが出来ても、それを当たり前だって思うのは間違いだろうし。

そこで自惚れたら、碌なことにならないし。

 

「現状の運はそんなもので私は良いですよ」

「お前が良いなら、それはそのままにしておくけど」

 

そうやって話している内に、いつの間にかチャーハンはなくなっていた。

 

「ご馳走様でした」

「ん。それじゃあ、そろそろ帰るか」

「そうですね」

 

***

 

後日談。というか、今回のオチ。

帰りを荷物を持って貰って手を繋いで歩く。

そうした帰り道にふと思いつく。

 

「そう言えば、デパートの抽選券って確か明日だ」

「抽選券?」

「はい。GW期間限定でそういうイベントがあって、だからデパートに寄っても良いですか」

「良いよ」

 

そうして、二人でデパートに向かう。

 

「そう言えば、さっきの話なら一等賞とか当たるかもね。一等賞は何なんだ?」

「確か、どこかの旅館に3泊4日だった気が」

「それはゆっくり出来そうだね」

 

流石に当たりはしないと思うけど。

デパートに着き、抽選券は3枚あるのでグルグルと回す。

 

「「あっ」」

「おめでとうございます!三等賞です!」

「やっぱり、運が微妙だな」

「そうですね。でも、3等は高級お肉ですし」

 

これはこれで普通に当たりだ。

今日の夕飯に使えるだろう。

そんなことを考えながら、2回目を回す。

 

「「え」」

「お、おめでとうございます!三等賞に続き二等賞です!」

「あれ?フラグ立ったか?」

「そんな感じがありますね」

 

因みに二等賞は最新の車だった。

残念ながら高校生なので運転は出来ない。

白兎の家ではただ邪魔になるので後日送ってもらうことになった。

 

「さぁ、最後の一回です」

「どうなることやら」

 

二人で呆れながら、回す。

出てきたのは金色だった。

まぁ、つまり、

 

「いっ、一等賞!!なんと、一等から三等までの賞を当てました!!」

「白兎」

「何?」

「私、相当運が良いみたい」

「うん。まぁ、今ここに僕が居るからなのもあると思うよ。うん」

 

酷い当たり方を見た。

ここまで当たるとむしろ怖い。

なんかヤバい感じになりそうな気がするのだ。

 

「まぁ、素直に喜べば良いと思うけど」

「そ、そうですかね」

 

そういう白兎も顔が引きつっているから思う所もあるのだろう。

佐渡の方は今年中に行けば良いらしい。

定員は二名らしい。

………。

 

「白兎、今年の夏休みに一緒に行きません?」

「……美青の両親が許すならな」

 

そう言って、白兎は顔を赤くして顔をそむけた。

本当にこういう所が可愛いですよね。

 




次回で後日談編は一旦止めて、新しい二次創作しようと思います。
その為のアンケートをよろしくお願いします。

次の二次創作シリーズ何をしよう?

  • オリ主の禁書
  • fateのイリヤルート
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