五等分の花嫁 IF   作:フリードg

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2話

 

 なんとビックリ!

 なんてことでしょう!

 

 

「ほらあの子だよ! あの男の子っ!」

 

 チームの中で たった1人だけの男の子が あの時の子だった。

 

 

「へぇー、じゃあ四葉が気になる男の子って事だね」

「や、そ、そんなのじゃないよ一花。 えっと あの時、猫ちゃんを助けてくれたことのお礼が出来てなくってさ!」

「ほんとにそれだけー?」

「そーだよ!」

 

 

 何だか一花にからかわれてる様な気がするけど、気にしないもん!

 

 でも、一花には要注意しないとって思う。

 だって、直ぐにわたしのモノ持って行っちゃうから。おやつも、前にも集めてたシールも、横取りされちゃったし!

 

「わたし、お礼いいにいく!」

「ちょっとまってよ、四葉。今試合中だよ? 終わってからだって」

「うー」

 

 それもそうだった。試合中に乱入するなんて事しちゃダメだよね。

 

 

「まぁ! 四葉の探し人も見つかって良かった良かった、と言う事で、試合に出てくれ! サッカーで語り合えば良い!」

 

 

 

 

 

 

 と言う事で、私達は試合に出る事になったんだ。

 

 

 

 正直、今日は出るつもりは無かったんだけど、待ってるのも退屈だし。

 

 この間も勝つ事が出来たし、上手くなってるって 一応言ってくれたし、今日だって勝てるって思ってた。思ってたんだけど――――。

 

 

 

“ピピーーーッッ!”

 

 

 

「3対0……、負けちゃった……」

「ホント、何あの子…… 沢山うったのに全然入らなかった」

「今回皆にシュートチャンスがあったのにね。あんなに止められるなんて」

「サッカーにそこまで興味ある訳じゃないんだけど、ここまで完敗しちゃうのは悔しいな」

「四葉が風みたいな子って言ってた理由が分かったかも。動きが早い~」

 

 

 ボールを沢山カットして、シュートのチャンスも沢山あった。

 皆、2回か3回くらいシュート出来てたと思う。

 でも、決まらなかった。

 

「四葉が一番惜しかったよね。後ほんの少しだけ下だったら、入ってたよ」

「うー、入らなかったら一緒だよ……。それに 三玖だって惜しかったよ。 だってあの子、キャッチ出来てなかったから。それに五月や二乃、一花だって」

「うん。私も、みんな最初は良い感じ、って思ってた。もうちょっとで決まるって。でも……」

 

 多分、みんなおんなじ気持ちだと思う。五つ子だから解る、って訳じゃないよ。きっと 他の人だって感じると思う。

 最初だけ。最初だけは良かったんだ。でも、回数を重ねていくと……。

 

「くああーー、あっちにも天才がいたのか。完敗だ。次こそは負かしてやれ!」

「監督がヘボだから負けちゃった……」

「監督の責任」

「うぐっ、今度は二乃と三玖……どっち?」

「「両方に決まってるじゃん」」

「ぐぅ……」

 

 

 色々とビックリしたんだけど、それはまだまだ始まりに過ぎなかった。どんどんビックリする事が増えていくから。

 

「お前が、四葉か?」

 

 いつの間にか、あの子がわたしのすぐ後ろに来てた。

 ビックリした。後ろにいた事もそうだけど、私達がいる中で……ピタリと言い当てたから。

 

「え、なんで……??」

「あれ? 違うのか?」

「い、いや、そう! そうだよ!」

「ん。ほら、これ」

 

 またまたビックリした。

 ポケットから取り出したのは……見覚えのあるモノだったから。

 

「この財布、お前のじゃないか?」

 

 そう、財布。

 前にサッカーの試合をした日に無くしちゃった財布だった。

 

「あ……、拾ってくれてたんだ。ありがと。ほんと、ありがと……っ」 

 

 凄く嬉しかった。ずっと、気にしてたんだ。皆誰かの失敗も五等分って言ってくれて、一緒だって言ってくれたんだけど、なくしちゃったのはわたしである事には変わりないから。

 だから、嬉しかった。それとそれ以上に聞いてみたい事があったんだ。

 

「どうして、四葉だってわかったの?? あ、因みに私は一花だよ」

「ん? あー………」

 

 聞きたかった事、一花が私より先に聞いちゃってた。また、一花が先に……って思っちゃったけど、男の子がちょっと困った顔をした訳の方が気になった。

 

「私達も気になるね。びっくりした。あっ、私は五月」

「三玖」

「二乃よ。ヘボ監督はいっつも間違えるのに」

 

 どんどん、皆が自己紹介。それと後ろで監督が崩れ落ちちゃってる。

 

 わたしが言うのもなんだけど、これだけ同じ顔が揃ってるのに、どうしてわかったの?

 

 

「……秘密だ」

「「「「「ええ?」」」」」

 

 

 でも、答えてくれなかった。

 

「何で?? どーして秘密??」

 

 凄く気になったから、教えて欲しかったから、わたしは一番前にいた一花より前に出た。

 

「秘密だから応えれない。それ以上の理由がいるか?」

 

 口元をへの字にさせちゃった。でもほんと何で教えてくれないのかな。 

 

 

 

 そのあと何度か聞いてみたけど、やっぱり答えてくれなかった。

 

 秘密にするような事……なのかな。

 でも、沢山話して、話せて楽しかった。

 彼の名前はユースケ君だって。

 相手のチームの皆から頼りにされてて、皆のお兄さんって感じだった。 

 

 あっという間に時間が経って、もう皆は帰る時間になったんだ。

 

「はぁ。財布落ちそうになってるぞ」

「おおっとー! えへへ。ありがと」

 

 それで――彼は、最後までビックリさせてくれた。

 

「やっぱりドジだな四葉。次落としても拾ってやらないからな。もう落とすなよ」

 

 ――やっぱりドジ。 だって。

 まだ あの時のお礼を言えてなくて、あの時。あの木の下でオロオロしてて、最後に木に登ろうとしてたのが 私だって まだ言ってなかったのに。

 

 ユースケ君は、わたしの事だってわかってくれたんだ。

 

「え、えっと、その―――あの、猫ちゃんの事、ありがとっ」

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の帰り道で、私達姉妹の間の話題はユースケ君の事だけだった。

 サッカーが上手だって事もそうだけど、それよりも何よりも、私達の事が判った事の話題が中心。

 

「ほんと凄かったよねー! あの後も何度か こそっと入れ替わったのに見事に当てられちゃった」

「うんうん。間違えられるほど そっくりだって事は褒め言葉だけど、当ててくれるのも何だか凄く嬉しい!」

「四葉が気になるだけはあるー」

「私も気になっちゃったもんねー。って、あれ? 五月? どうしたの?」

 

 でも、何だか五月だけがちょっとだんまりだったんだ。

 ずっとじゃないんだよ? ほんのついさっきまでは、一緒に盛り上がってたから。

 

「お母さんが言ってたこと、思い出した」

「え?」

「ほら、私達を見分ける為には、って……」

 

「「「「えーっと……… っ!?」」」」

 

 

 皆、同時に思い出したみたい。だから 同時に顔真っ赤にさせちゃった。やっぱり息ぴったり。

 

 だって、お母さんが こう言ってたから。

 

 

―――愛さえあれば、自然とわかる。

 

 

 って。

 

 


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