「えーー、今日もユースケ君来てないのー?」
「……みたいだな。と言うかサッカーしにくる理由が男か? 男が目的なのか? 四葉。マセ過ぎてませんか??」
今日もやってきたサッカーの練習試合。
でも、そこにはあの男の子……ユースケ君は来てなかった。前回も来てなかった。自分達姉妹と一緒で 助っ人と言う事は知っていたんだけど、もうチームの大黒柱って感じだったから普通に入ってるんだと思ったんだけど。
取り敢えず、監督がいってることは無視する方向で。
「んー…… ま、女の子のチームだし? ユースケ君がいつも来てるとは限らないじゃん」
「それもそうだったね。そもそも男子が混ざるのって結構ズルいかもだし、たまたま来てただけだったらもう難しいんじゃないかな」
一花と二乃の2人は納得してるみたいだけど、やっぱり自分は凄く残念な気持ち。毎週楽しみにしてるから。話すのが凄く楽しくて楽しくて、また話したいってすごく思ってるから。
そして勿論、明確な目的はある。
「えー、でも 一花も二乃も気になるって言ってたじゃん? 五月が言ってたこと――」
そう、五月が言ってた事。
ユースケ君が私たち五つ子を見分けれた理由についてだ。
ユースケ君は頑なに話してくれなかった。
でも五月が……お母さんが言っていた言葉を思い出して、皆で顔真っ赤にさせたんだ。
勿論、そんなワケないだろーーって思ってる。だって知り合って直ぐだったし、いきなりあ、あ、愛がある~~ なんてあり得ないし。
とても楽しかったのは事実なんだけど、そんな大人な感じなのはまた別だよ!
「う~ん……、気になると言えばそうだけど、教えてくれないし、と言うか 最近会ってもないし……、無理じゃないかな? って思ってるかも」
「ん…… 二乃に賛成。教えないって言ってるのに無理に聞くのはどうかなと思う」
「えー、三玖もなのー?」
何だか段々と旗色が悪くなってきた気がする。
今日も結構強引に行こう、って皆誘って 納得してついてきてくれたけど…… もう来ないって言われたら……。
「四葉」
「うー……、っとと、どうしたの? 五月」
「四葉が気になるってずっと言ってたから、私聞いてきたよ。あの男の子の事」
「……え?」
と言うワケで、今日は私たち5人は試合に参加せず、とある場所へと向かっていったんだ。
勿論―――ユースケ君に会う為にね。
今日……晴れて本当に良かったと思う。
天気予報は微妙な線だって言ってたけど、何とか晴れてくれた。じゃないとこうやってのんびり公園のベンチに腰掛けて空を仰いだり出来ないだろうって思う。
「…………ふぅ」
ぐっ、とオレは身体をベンチに預けた。所々汚れてる箇所があったけど、この公園は基本的に綺麗。でもしっかり帰る時、帰った後は手を洗う。手洗いは必ず率先して。
だって………。
「にぃにーーっ」
「にーちゃんーっ」
オレはこいつらのお兄さんだから。
お兄ちゃんは弟と妹をちゃんと守ってあげないといけないから。
幸せに、家族を幸せにしなきゃいけないから。
「どうした??」
「ブランコいこーー!」
「えーー、ジャングルジムだよー」
「やーーっ、ブランコいくのーー!」
行先で揉めてる2人を見て、頬が緩んでるのが判る。元気いっぱいな所を見ると嬉しい。頼ってくれてるのも嬉しい。こいつらの為に、出来る事なら何でもするつもりだ。
「ほらほら2人とも。順番順番。ジャンケンで決めて、両方遊ぼうな」
「わかったー!」
「うんっ!!」
ケンカしてても、次にはケロっとしてる2人。大きな動作でジャンケンしてる2人を眺めつつ、カバンの中に入ってる本を取り出して本に目を向けた。
2人のジャンケンは、順番とかを決める以外にも ジャンケンそのものが遊びになってしまうので、時間はかなりかかる。2回勝つまで、3回勝つまで、とどんどん回数が広がっていって、目的が変わっていくんだ。
それもいつも通りなんだけど、時間がかかるので その間様子をみつつ、本も見るのが決まりだったりするんだ。途中まで読んでる本だから、今日は最後まで読む事になるかな? と予想しつつ、本に目を通し始めたんだけど、ここでいつもとは違う事が起きた。
「にぃにー、にぃにーー」
「ん?」
まだ、ジャンケン初めて直ぐだっていうのに、妹に呼ばれたんだ。ジャンケンがスタートしたら、それが遊びになって 10分、20分は掛かってしまう筈なのに。
「すごーーい! みんな同じ顔―! ルーガー戦隊みたいーーっ」
弟もはしゃいでるのが判る。
そして―――何やら気になる事を言ってた。……みんな、同じ顔と。
同じ顔をしている人なんて、それも弟が好きな戦隊に例える程の多さの人達なんて 彼女たちしか思い浮かばない。
あの五つ子の彼女たちしか。
「ユースケ君みっけっ!」
顔を上げてみると、予想通りだった。公園内に いつの間にかあの五つ子がやってきていたんだ。妹と弟は不思議な光景? に目を丸くしていたが、俺の名を呼んだ事で 何も知らない人たちではない、と判断したんだろう。一目散に駆け出して行ってた。
「わー、おねーちゃんたちおんなじお顔ー」
「すごいすごーーい!」
「えへへ。そっくりでしょ? ふふんっ、誰が誰かわかるかな~? 因みに私は四葉って言うんだ!」
「よつばおねーちゃん!」
「ねーちゃん!!」
そこからは、『これ、だーれだ!』ゲームが唐突に始まった。
五つ子の彼女たちは、何度も何度も入れ替わり入替り、で誰が誰でしょう! とまぁ ありきたりなゲームを開催してた。子供には少々難易度が高いだろう。……いや、大人でも十分に高い、高すぎる。ぱっと見同じなんだからこんな短時間で見比べるなんて無理だ。
それで、ちょっとした後四葉が俺の傍にまでやってきて隣に座った。
「あははは、すっごく元気だね? あの子たち」
「……まぁ、なんでここに? って聞く前に礼を言うよ。2人と遊んでくれてありがと」
「いえいえ、どーいたしまして! 人見知りとかしないんだね? あの子たちって」
「一応知らない人には絶対についていかない事を教えてる。四葉が俺の名を呼んだから、知らない人じゃない、って事になって 後は単純な好奇心だろうな」
五人が四人になったとしても関係なく遊んでるトコを見て、ただただ俺は笑っていた。
そんな横顔を四葉がじっと見てるのは視界の端に映ってるのでよくわかる。
「なに?」
「んーん。やっぱりわかっちゃうんだなーって思って。ユースケ君に五つ子クイズ! は無理だね。勝てる気がしないよ」
「…………」
「あ、もう無理に聞こうとかしないから、わざと間違えなくて良いよ??」
「……ははは。バレてるか」
「あからさま過ぎだよー」
ぐっ、と背伸びを一つした後、俺は読もうと思ってた本を仕舞った。
「それで、どうしたんだ? たまたまここに……かもしれないけど、何か俺に用があったりするのか?」
「んーん。ただ今日もサッカー行ってみたんだけど、最近ユースケ君来てなかったみたいだからさ」
「あー。ここしばらくは呼ばれても断ってて。ねえさんが病院行ってたから弟たちの面倒を優先してたんだ」
「あっ……、そう、なんだ。君もなんだね……」
「ん? 君
「うん。私たちもお母さんが入院してて、たまに帰ってきてくれるんだけど、直ぐに戻っちゃってて……」
「……そっか」
病院があまり良い所じゃないって思うのは、きっと俺だけじゃないって思う。大切な人が入ってるとなれば尚更。お互いに元気に帰ってきてほしい事だけを願うよ。
そうこうしてる内に、三玖と一花がやってきた。妹を連れて。
「四葉~ さぼってちゃダメじゃん!」
「ふーー、疲れた。サッカーくらい疲れたかも」
「えへへ。ごめんごめん」
四葉は、ひょいっと身体を起こして謝ってた。
俺は四葉が謝るのなら、その分 ありがとう、と言うつもりだ。この中野姉妹全員に。
「三玖と一花もありがとな。唯、ちゃんとお姉ちゃんたちにお礼は言ったか?」
「うんっ! 言ったよにぃにー! ありがとーって!」
それを聞いて、2人の顔を見ると 照れながら笑っていた。ちゃんと教えた事を実行できてる妹。自慢の妹だ。勿論、弟も自慢の弟。ちゃんと出来た事はしっかり褒める。
「えらいぞ。よしよし」
「えへへへ」
目を細めて笑う妹を見てるとこちらも良い気分になる。
「ねぇ、にぃに!」
「うん?」
「にぃにのおよめさんだれなのー? もてきなのーー?」
テレビの影響なのか、たまに随分とマセた事を言う事が多くなってきたのは気のせいかな? とりあえず、俺は頭をぽんぽんとやりながら首を横に振る。
「友達だよ。ともだち。唯にもいるだろう?」
「うんっ!」
納得してくれたのか、してくれてないのかはわからないケド、とりあえず俺は良しとした。
―――第三公園で弟と妹の三人で遊んでるらしいよ。
私たちは、それを聞いたから ここの公園に来てみたんだ。ちょこっとだけ離れてるけど 歩いていけない距離じゃないから。遅くもならないし。今日サッカーしないし。
それで行ってみたら、ユースケ君がいたんだ。聞いた通り弟と妹の3人で。
楽しそうだったから、ついつい混ざっちゃった。本当に楽しかった。
それで、ユースケ君のお嫁さんな話になって、何だかドキドキしたんだ。べ、別になりたい!!とかはまだないけど、やっぱりドキドキはすると思う。女の子だしさ。
でも、私は何も言えなかった。ユースケ君の顔を見たときから、何も言えなくなったんだ。
妹ちゃんの頭を撫でながら、妹ちゃんに見えないようにして、ユースケ君……、怖い顔してたから。