五十層攻略記念祭り―――ヒースクリフとアルトリアの戦いから二週間が経過していた。
二日ほど湧き部屋に篭っていたアルトリアは重い瞼を擦り剣を振るう。
「しゃぁ!」
そんな彼女と違って疲れ知らずなモードレッドは今のモンスターを倒した時、一際大きな声を上げた。
「ふわぁ~やっとレベルが上がったみたいだな」
「おうっこれで俺も百レベ勢の仲間入りだ!付き合ってくれて有り難な父上!」
「気にする……私も…………僕も?…………キミには助けられているから…………」
「おいおい、父上が父上の口調に戻ってるぜ」
「何言って……るんだい……僕はアーサー…………おぅ……」
やっと帰って寝れる。そう思うと緊張の糸が切れてしまい、猛烈な眠気に襲われるアルトリアはフラフラと左右に揺れ動きモードレッドに抱きつくような形で倒れた。
「むにゃむにゃ……しーるさーてぃん……」
「おおっと……そういやぁ、父上は中坊だったな。いくら剣が強くてもニ徹はツレェか」
モードレッドは眠ってしまったアルトリアにどうしたモノかと迷う。このまま目覚めるまで待つべきか、それとも担いでギルドホームまで戻るべきか。
アルトリアの疲労からして直ぐには起きないので担いで帰るべきなのだろうが、仮にも父と慕う人間をおんぶや抱っこなどして運べるだろうか?
……いいや無理だ。恥ずかしすぎて死ぬ。
「父上ー!おーい父上!」
普段ならまだしも、アルトリアの先程の言葉にモードレッドは思い返すだけで死ねるトラウマ級の黒歴史。ベータ時代の事を思い出していた。
『ちちうえー!ちちうえー!遊びましょう!』
『ははっモードレッドは甘えたがりだな』
身長は今と真逆。幼くして両親を失った彼女が舎弟から偶然譲り受けたSAOベータ版で出会った彼、アーサー王。
兎に角、モンスターを切り殺したい。そんな彼女のわがままに文句一つ言わずゲームの基礎やソードスキルの手解きなどをしてもらい成り行きでフレンドになった。
最初は「レベルさえ追い付けばお前なんかボコボコにしてやるからな!」と無駄に噛みついて、会うたびにPVPを申し込んだのは苦い思い出。
それから何度もパーティーを組んでクエストをこなし、世間話などをする内に、ふと天涯孤独な身の上を自嘲気味に相談とかしてみたら、まるで実父のように真摯になって答える彼の誠実さに不覚にも涙腺が緩んでボロボロと泣いてしまうことがあった。
「クソ、くそ……なんで、止まらない」
そんな時に優しく言葉をかけて慰めてもらい「大丈夫。大丈夫だよ。君には僕がついている」
…あぁもうダメだな。
と自分の中で何かが壊れる音がした。
それからはまるで今まで我慢してきた分が一気に溢れてきたみたいに見た目相応に彼に甘えて、甘えて、甘えて……女としてではなく子供として
ゲームが現実になって、
アバターがリアルフェイスに戻った時、彼に全てがバレてしまう。高校生にもなって甘えた声をして小学生のふりなんか!
蔑まれるんじゃないか、見捨てられるんじゃないか!
喧嘩なら負け知らずの俺が本当の顔も知らない『親』に見放される恐怖に怯えて、デカイ体を縮こまらせ闘技場の隅で震えていると――
『探したよモードレッド。また迷子になったのかい?』そんな時に手ッ手を差し伸べッッッッ!!!!
「あぁぁぁぁぁ!!!!父上!何であんたが男じゃねぇんだよぉ!!!!完全に惚れたんだぜ?あん時は男だと思ってたから柄にもなくお洒落なんかに気をつけてよぉ!マジでマジでうわぁぁぁ!!!!」
「うぐぐ……モードレッド苦ちぃ」
「あっ」
気づけばHPが減少するほど強く抱き締めていたモードレッドはオレンジになった。この後、オレンジ化の理由を聞いたアルトリアガチ勢のアグラヴェインに斬り殺されそうになったのは言うまでもない。
【円卓の騎士】ギルドメンバー
モードレッド…昔のプロトセイバーアバターだった頃のアルトリアを本当の父のように慕っていた。
今でも父上と慕っているが、同姓である為、母上と改めるべきか葛藤している。
βテスター時代のアバターは小さい方が攻撃が当たり難いだろうという考えで身長を最低値に設定した。