リハビリに一ヶ月の時を掛け剣道や剣術修行を再開し始めたこの頃、妙な気配を感じ路地裏に駆け込んだアルトリアは案の定それを追ってきた男に剣を突き立てた。
「我が身を脅かす者か?」
勿論、刃の潰れた鉄の塊である。
「い、いや…………彼には近づくなって言われてたけど、流石SAOをクリアに導いたアーサー王だ。僕程度の尾行なんて初めから気づいていたのかな?」
まずその男を見て感じたのは胡散臭さだ。
fateで言えばマーリン、身近に言えば師匠のような、深入りするとろくな目に遇わない飄々とした感覚。
そう言えば、病室の前で似た声をした男が一度追い返されていたが…………あの時はゲームクリアされて間もない。
「貴様、SAOプレイヤーでないな。何故私の名を知っている?」
メリメリと剣をコンクリートに押し込み、このまま押し潰すぞ……と、脅しをかける。円卓やラフィン・コフィンには通用しない手だが、男は目尻に涙を浮かべ(それでも余裕を残しているように見えた)己の素性をゲロった。
「僕は総務省通信ネットワーク内仮想空間管理課職員ミシッ…ミシッ「その割には体格の良いことで?」す、すまない!嘘だ本当は陸上自衛隊、二等陸佐!人工知能で戦闘機とか動かそうと研究者を集めて実験させてる腹黒い男であります!」
うむ、剣がだんだんと首を締め付けるこれ、SAOだとダメージ覚悟で切らせる奴が多いが思ったより使えるな。
それと、余裕があったのはアグ君と同じ軍人だったからか。二等陸佐ってアグ君より偉いのかな?
私の訓練メニュー考えたのはアグ君だし、明らかにリアルで実戦経験あったし、私的にはアグ君の方が上だと思いたいけど……また会ったときにでも聞こうか。
「で、その腹黒い男が私に何のようだ?
病室前で止められたことが分かる通り、家柄
アルトリアは「家凄い金持ちなんだぞ。悪い事したら両親がヤバいんだぞ!」的な意味合いで言ったのだが、男はこれ以上関わればここで殺す的なアルトリア個人の脅し文句ととらえたようで、
「そのようだね…………正直、君とは仲良くしたかったが、僕の手におえるような人物ではない。資料を見て理想の為に動く機械のような人間だと思ったが、君を見て“分からない事が分かった”よ、人間性を失いながらもその本質は王として輝き、決して機械のようではない……どういう育ち方をすればこうなるんだか」
何か凄い失礼な事を言われている気がするが、話が終わりそうなので無視しよう。
剣をコンクリートから引き抜き、パタパタと埃を払って少し覚束ない足取りで路地裏の外へ向かう男を見つめる。
「(足が震える……ははッ化け物だ。情報を聞き出されたのに収穫はゼロ。これ以上はこちら側が侵略されかねない……悔しいが彼女と円卓は、計画から外すしかないな)」
それ以来、男がアルトリアの前に現れる事はなかった。
菊岡誠二郎
アルトリアに脅された、胡散臭い人。
VR技術の専門家達が須郷ひいてはアルトリア陣営に流れて、アンダーワールドの完成が原作の二十倍ぐらい遅れている。