アルトリア・オンライン   作:ら・ま・ミュウ

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迷走中


霜麟鞭

四帝国統一大会。騎士としての最上位の称号である整合騎士の地位や名誉を褒賞として、人界全てから名のある剣士が覇を競い会う大会での出来事。

エルドリエ・ウールスブルーグは病弱な母と共にその会場へと訪れて、素振りをする参加者や各国の重鎮が佇む観客席全てに目を輝かせて見物していた。

 

「あれはアドミニストレータ様に初めて整合騎士になったとされるベルクーリ様ではありませんか!

内政の為、あまり表舞台には姿を現さないお二人があんな所に!」

 

石作りの地面を跳び跳ねて嬉しそうに話すエルドリエ。

息子の楽しそうなことに頬を緩める母親は藤色の長髪をたなびかせる芸術のように美しい女性と、鎧の上からでも分かるほどに鍛えられた強靭な筋肉を持つ大男を見る。

 

「確か、我々の数倍も長生きなさっているのよね」

 

「ええ!あのお方らは未来永劫人界の平和の為に尽くすことを条件にステイシア神様から永遠の命を約束された素晴らしき存在です!」

 

頬に手をあてて、こうしてみると自分達よりも何百年と長生きしているようには見えない。むしろ親近感が湧くと口にする母親に、エルドリエは首を傾げたが、よくよくみるとアドミニストレータの目下には濃い隈が浮かんでいる。

エルドリエは気付かなかったか、母親はあんなに偉い人でも苦労しているんだなぁ、と少しだけ同情した。

 

 

 

 

「ね、眠いわ……少しだけ仮眠をとってもいいかしら?」

 

「勘弁して下さい。そんな所をアグラヴェインの旦那に見られでもしたら、殺されてしまいます」

 

「私、昨日から寝てないのよ…?」(涙目)

 

 

 

 

 

開会式も終わり、第一回目の試合を前に整合騎士と整合騎士のデモンストレーションが行われるという話が出るとエルドリエのテンションは今季最高潮に達していた。

 

整合騎士と言ってもやはり実力はピンからキリ。無論一番下だからと言って、自分のような若輩者がどれだけ苦労してもかすり傷出来ないほどの強者であるのには代わりないが、やはり強いヤツと強いヤツが戦う時が一番面白い。

上位貴族であるエルドリエは一般の人間が知りようがない知識も修めていて、整合騎士の名前と、だいたいどれぐらい強いかといわれているかは頭に入っていた。

 

ゆえにベルクーリ様が出られた時、これはもう誰が出てきても勝負にならないのではないかと少しだけ落胆したのを覚えている。

ベルクーリ様は初めの整合騎士、そして最強の騎士として知られるお方。

老いることのないその肉体で何百年も修行を積み重ねただけでなく暗黒界との戦場から幾度も帰還してきた彼を打ち負かすほどの武功を轟聞かせる整合騎士をエルドリエは知らなかった。

 

だからこそエルドリエはその結果が信じられなかった。

 

「――貴公も腕を上げたようでなによりだ」

 

シーンと会場は静まりかえる。

 

圧倒。その劇場での出来事を一言で表すとしたらそれ以外の言葉が見つからない。

 

黄金の髪を揺らす女神のように美しい少女。

誰もが見惚れるそのプロポーションからは想像も出来ない瞬発力と力量を兼ね備え、その鋭い眼光は獅子のごとき勇ましいものだ。

 

……彼女の全てが剣士としての己の遥か上を行き、そして誉れある騎士が授かるとされる最上の称号、整合騎士最強の名を冠するベルクーリから一太刀も許さずに下した無駄のない剣舞のような蹂躙劇はあまりに衝撃的だった。

 

「皆、この者が何者であるか――」

 

未だ誰もがその衝撃に立ち直れずに呆然とする中。二階にある席からフワリと降り立ったアドミニストレータ様は彼女=アルトリアが上位整合騎士を越える最上位騎士という地位につくものだと語った。

 

「最上位騎士は通常の整合騎士の百倍の力を持つ、正真正銘ステイシア神様の寵愛を受けた眷属といえるでしょう」

 

エルドリエはその言葉を固唾を飲んで聞き入った。

 

「整合騎士になれば、彼女に指南することも叶うかもしれませんね」

 

整合騎士にならねば、と思ったのはその瞬間。

会場は沸騰した水のように沸き立って歓声を上げる。

あれほどの剣士に無限の時の中で習えるのだ。剣を一度でも握ったことのあるものなら嬉しく思わない筈がない。

 

「母さん、僕は整合騎士になるよ!」

 

母親は目の下に隈が出きるような辛い仕事を息子が死ぬことも出来ずに何百年とすることになるのを思うと、止めさせたほうがいいんじゃないかと思ったが、続けて整合騎士になれば、母さんにちゃんとした治療を受けさせてもらえるようにもなる筈だよ!

と満面の笑みで言う息子に、自分のせいで夢を諦めるよりはいいかもしれないと快諾した。




アドミニストレータ「十八時間労働なんてブラックよ、訴えてやる!」
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