アルトリア・オンライン   作:ら・ま・ミュウ

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闇神ベクタァァァァ!!!!

「成る程、お前がアドミニストレータか」

 

何者であろうと干渉を遮断する空間が裂けた。

 

「何ッゥ??」

 

アドミニストレータは目を見開いて驚く。……あり得ないと。

この空間には円卓の騎士は勿論のこと自分と同一の管理者権限を有するカーディナルでさえ守りを破る事は不可能だ。

それこそ()()()()()()()でさえ閲覧することは不可能だろう。唯一の弱点は、寝ていながらこの空間を維持することが困難な為、籠城には向いていないことだが本気を出せば一ヶ月は維持できる。

 

「半神半人と呼ばれているからは期待して来てみれば、隠れてやり過ごす気だったのか?

存外……臆病だな」

 

漆黒の鎧と血のように赤いマントを揺らす金髪の男だ。

裂けた穴から顔を出して、宝石のように光を反射しない瞳が驚愕に息を飲むアドミニストレータを捉え、男は彼女に対して侮辱の言葉を浴びせた。

 

「探すのに少しだけ手間取った」

 

褐色の肌と顔の彫りの深さから暗黒界の人種である事が伺える。実年齢は青年とも初老とも見れる微妙な所、ガッシリとした肉体と遊びのない歩行から近接戦に心得があることは分かった。

 

「我が名は、暗黒神ベクタ」

 

その名に彼女は目を見開く。

 

「何ですって」

 

その名は、その名前は――この世界の創造種たる現実世界の人間達(ラース)が、安い金で雇った三流ライターに適当にでっち上げさせたこの世界の創世記にある魔王と怖れられた悪神の名だ。

 

かつては竜や巨人がいたこの世界でもその存在は完全に創作の物であることを彼女は知っている。

 

(……ブラフ?

それとも思い込みの激しい異常者かしら?)

 

警戒心を強めるアドミニストレータは相手の真意を探るべきか早急に撃ってでるべきかを迷い、後者を選択した。

一歩下がって片手を翳す。

 

「《システム・コール》《ジェネレート・サーマル・エレメント》《ディスチャージ》」

 

生命の源たる神聖力。呪文を用いてそれにあらゆる属性を付与して現象化させる魔法のような神秘。

アドミニストレータの高速詠唱を経て、熱性を帯びた十の光球が男に射出された。

 

「…………」

 

命中する。空間に漂うありったけを注いだ一撃を前に余波で大理石の床は砕けて粉塵が辺りに舞った。

咄嗟に対応しおうにも彼女がこの空間にある神聖力(空間リソース)を使いきってしまったせいで、神聖術による防御は不可能。

腰にある剣に触れず、何も抵抗せずに受けたのは疑問に残ったが、天命か防具に余程の自信があったのだろうとアドミニストレータは当たりをつけ、相手がどう動くと様子を見た。

 

整合騎士なら膝をついて立ち上がれない負傷となる筈だが、円卓なら無傷だ。その前例が彼女の慢心を控えさせたのである。

 

「いつまで、土煙の中に隠れているつもりかしら。この空間に侵入するような存在がまさかこの程度でくたばると――私がそんな滑稽な考えに至る訳がないでしょう?」

 

言いながら寝室に腕を伸ばした。

天涯付きのベッドからその屋根を突き破る破壊音が鳴り響き、彼女の手の平に納まったのは、藤色のレイピアである。

 

円卓一のクレイジーモンスター『モードレッド』。アグラヴェインの小言から逃げ、道中で出くわせでもしたら最後、有無を言わせず斬りかかってくるヤツ対策に彼女が自らの得物である神器『シルヴァリー・エタニティ』を元に再構築し、無駄な装飾を取り除き、効率と切れ味を追求した上位整合騎士の神器すら越えた至高の武器だ。

 

「それとも近接戦がお好みかしら?」

 

「――そうだな、この世界のシステムは既に網羅したが」

 

彼女の言葉に答えるように粉塵を振り上げた剣で吹き飛ばす男。

その右手には腰にあった剣があり、左手には反十字が掲げられた大盾があった。

 

「こちらの方が馴染み深い」

 

 

 

 

 

 

 




次回、『○○ァァァ!!!』

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