「これはこれは騎士王殿」
「……ヒースクリフか」
王は空腹である。
会議を抜け出し蜂蜜パイを所望するArutoriaの前に現れたのはヒースクリフ、円卓の騎士がトップに立つまで攻略組を率いていた血盟騎士団の団長をやっている男である。
そして私はこの男が嫌いである。
「珍しいではないか、君がこんな低階層に来るとは」
何か然り気無く隣歩くし、話は長くて英雄とは王とは何か哲学めいてつまらないわ、会って数回の付き合いで妙に馴れ馴れしいわ。一度ラーメン屋を知っていると言うので着いていったらゴムみたいな食感のラーメンを食べる羽目になりもっと嫌いになった。
こんな男に構っていては限定蜂蜜パイが売り切れてしまうかもしれない。
「―――そう言えば、選定の剣という物を知っているかい?」
ステータスの隠蔽スキルに伸ばしかけたアルトリアの指がピタリと止まる。
「ある村のNPC曰く、村から程近い平原には選ばれた者しか抜けないとされる剣があるらしい。まるで、アーサー王伝説の選定の剣カリバーンのようだとは思わないか」
「………」
「ここに先日部下に買い占めさせた蜂蜜パイが――」「その話、詳しく」
食欲には勝てなかったけど……是非もないよね!
「ヒースクリフゥゥゥ!!!!」
怨嗟の声が地底深くから響く。
「何で挑戦者が全然居ないか、分かってたのにあえて黙っていやがったなあの野郎ぅぅぅ!!」
声の主は円卓の騎士ギルド長アルトリア。彼女の現状を分かりやすく纏めるとヒースクリフに騙された。それに尽きる。
村から程近い平原?
村人NPCが指差した先は断崖絶壁、剣を抜くにはあれを昇る必要があるらしい。
山頂の間違いだろう?
クエストが始まると剣を装備出来なくなり、解除条件は制限100時間のタイムオーバーかクリアのみ…………100時間もアイツらが休暇くれるわけないし、クリアしないと私、素手でボス攻略に出ないといけないからね!?
「決めたぞカリバーン、お前をエクスカリバーに進化させる為に斬り捨てる騎士はヒースクリフだ!私はあの男を殺す!」
登り始めて三時間。アルトリアはヒースクリフに殺意を抱いた。
「なっワイバーンだと!?関係あるか!挽き肉にしてやるよぉぉ!!!!」
登り始めて五時間。素手でワイバーンを殴り殺した。
一秒たりとも気が抜けず、足場のない中モンスターと戦い寝る間も惜しんで登り続けたアルトリア
何度落ちそうになっただろう、何度心が折れそうになったであろう
――父上!
――我が王!
――王よ!
――王、王、王!!!
―――剣がないから何ですか?効率の良いレベ上げにトラップ部屋巡りをしますよ!
「流石に死ぬからそれぇぇぇ!!!!」
‐シャキーン‐
そして、1日が経ち。アルトリアはカリバーンを手に入れた。
何の抵抗もなくカリバーンが抜けたのはアルトリアが特別……とかではなく、恐らくこの崖を登りきる事が条件だったからだと思うのだが嬉しかったアルトリアは円卓の騎士の連中に無茶苦茶自慢した。
後日、彼等はアルトリアと同じようなクエストをこなしエクスカリバー・ガラティーン等。魔剣クラスの武器をぶら下げていた。
彼らのクリア時間を聞いたアルトリアは少しだけ泣いた。
皆は誰推し?
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アスナ
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リーファ
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シノン
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アリス
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その他