アルトリア・オンライン   作:ら・ま・ミュウ

43 / 48
シリアルからシリアス時空へ


カーディナルゥゥゥ!!!

あの日、人界は滅んだ。

セントラル・カセドラルが陥落し、人界の要である安住の地とそして、円卓の騎士を失った我々整合騎士は最後に円卓に残ったアドミニストレータ様とアドミニストレータ様の御子息を名乗るローブ姿の少女に導かれて、最果ての地の先にある空虚の森と呼ばれる漂白した大地にたどり着いた。

 

「ここは、空虚の森。

文字通り神聖力の欠片もない何もない所だが、暗黒界の連中にここは探知出来んよ。当分の間は私で食糧を用意しよう、先ずは体を休めるといい」

 

少女の言葉に、ベルクーリはどっと倒れ付す。

 

「そうか、取り敢えずアルトリアの願いを叶えられたようでなによりだ」

 

彼は尊敬すべき上司であり師でもあったアルトリアが羨望した民達を守り通すことが出来たことにホッと息を吐く。

道中では何度も老人や怪我人は捨て置くべきかなどを整合騎士達や守備兵団の長達と口論した。

誰も見捨てないなどと、ずいぶんと強引な案を押し通したものである。此方は彼方側の一兵のゴブリンごときに決死の覚悟で挑まねばならぬほどの追い詰められた状況だというのに、円卓の騎士が消えた今、戦力の要である俺たちが老人などを背負っているのは、端から見れば腹が捩れるほどに滑稽な様だったに違いない。

 

「……一応、聞く。アグラヴェインの旦那は助かりそうか?」

 

「……無理じゃな。アドミニストレータの前に現れた時に既にアヤツの天命は尽きていた。それに加えて空間リソースの乏しい空間での身を削った完全武装支配術。

肉体の損傷も激しく、今は何とか凍結術式で消滅を誤魔化しているがフラクトライトが砕け散ったのだ。目覚めることはなかろうて」

 

まったく、あの女があれほど忠誠深い部下を持ち、そしてあれほどまでに焦れ込んでいたとは私も思わんかった。

 

最後の言葉は声に出ず、もし自分がもう少し早く書庫から出ていれば円卓の何人かは残せていたかもしれないと思うと少女――カーディナルは臍を噬まずにはいられない。

 

あと少しという所まで人界の平和はきていた。もしかすると私とアドミニストレータが和解するなどというありえない未来もあったかもしれない。

 

現にあの女は私が姿を見せて先ず、『何でもするから彼を助けて』と言った。

 

己と同等の管理者権限を持つ私を心底煩わしく思い、あれほど殺意を抱いていた女の口から開始一幕にもたらされたそれがあまりに信じられず、さしものカーディナルといえどあの時は目を見開いて驚いた。

 

私の知るこの自己愛主義者に何があったかは知らぬが、どこまでも他を顧みぬアヤツの心を変えて見せた円卓の騎士と呼ばれるもの達は類い希なる偉大人であったと感嘆を覚える。

 

だからこそ、惜しいと思う。

アドミニストレータが円卓と、つまりは自身と卓を囲むことを許可してしまうほど心許していた彼ら全員が故人となってしまったことに。

 

主の危機に死に体であった己に鞭を打って駆けつけ、見事救って見せた男は恐らくはアドミニストレータの所に駆けつけるより前に死んでいたのだろう。心意でこの世界の法則に逆らって死を拒絶していたのだ。

心意だけであれほど戦えるというなら……万全ならどれほど強かったか。

彼一人でも生きていれば、私とアドミニストレータをもってしてもこの世界の者でないと言う以外に正体すら分からない男とそれが率いる無敵の軍勢を相手にして人界を建て直すことも出来たかもしれない。

 

「……そうか。少しだけ休ませてもらうわ」

 

陰りのある表情をしたベルクーリ。

薄々分かってはいたがやはり、彼の死には堪えるものがあったのだろう。

 

カーディナルはゆっくり休むといいと言葉をかけて見送った。

 

 


 

一方その頃

 

アド「死なないで、死なないで……」

 

凍結処理の施されたアグラヴェインの死体にすがり付いて弱々しく嗚咽を漏らす。

 

 

〈おまけ〉

【此方の世界の円卓の最後 その一『アルトリア』】

 

バグ茅場「所詮は贋作。英雄の影法師。

騎士王の一側面を切り取った貴様は真作に遠く及ばない。

だから何も守れず、何も残せない。

あの王に比べればお前など我が身に触れることすら叶わないだろう」

 

アル「……ふっ、贋作、影法師ですか。

この世界に降り立ってから、どうにも拭えなかった違和感の正体が分かりました。

どうやらこの身は、元から何者でもなかったらしい」

 

バグ茅場「絶望したか……?だとしたら興醒めだな」

 

アル「……まさか。むしろ清々しくあります」

 

そう言って黄金の剣を捨てるアルトリア。

 

バグ茅場「なら何故剣を下ろす。

貴様……さては諦めたな。あの王の姿をして戦う前に意思を砕いたな?

我が仇敵を汚した罪、万死に値する」

 

男は瞳を細めて、自身の怒りを表すかのような禍々しいオーラを漂わせる。

 

アル「いいえ、私がアルトリアでないというのなら、この剣が不要であると言うだけのこと。私が私であるというのなら――私の剣を使おうと思ったまで」

 

来なさい。エクスカリバー!

 

バグ茅場「おお……それは!」

 

アル「この世界が作り出した人界の王を選定する剣。そして()()()アドミニストレータが鍛え上げた至上最強の神器。

……これは我が人生の集大成である。

忠告するぞ、異界の者よ。

この剣を取った私は、どうやら敗北が許されないらしい」

 

アルトリア(アドミニストレータの友)はニヤリと笑う。

 

バグ茅場「それでこそ英雄!それでこそ騎士王よ!」

 

男は嬉しそうに笑い、そして彼女に答えるように反十字の盾と剣を構えた。

 

 

 

アル「…………」

 

バグ茅場「…………」

 

 

 

アル&バグ茅場「「ハァァァ!!!!!」」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。