「オラァ、オラァ、オラァ!」
戦いはモードレッドのパワープレイに圧されるアスナが必死に防御するという一方的なものになってきた。
「くっ!」
もう何度目かになるつばぜり合いの後、アスナは大きく後退して額から溢れる汗を拭う。
電子世界で疲労の概念は精神的なものによるが、今は全身の筋肉が悲鳴を上げるような苦痛がある。
アスナは息一つ乱れていないモードレッドを見て嘆息する。
「(正攻法じゃ、やっぱり彼女には勝てない)」
それに体が極端に小さくなった影響でソードスキルの狙いを定めるのも難しく、直接の斬り合いで劣るアスナにとって状況はかなり切迫したものになっていた。
「どうした、逃げてばっかかああん!?」
せめてもの救いは敵を怯ませる彼女の恫喝が幼女の姿となって微笑ましいものに変化したことだろうか。
思わず庇護欲を擽られるそれは、平常であれば瞳を輝かせて話かけていたと思う。
「ねぇ、そのアバターって貴方の自作?」
「うっせ、今は関係ねぇだろうが!」
確かにそうだが、この戦いが終わった後に頭を撫でさせてほしいと思う。膝枕して耳掻きしてあげたい。お金を払うので写真を撮りたい。
思わず、理性がとろけてしまうほどに今のモードレッドは可愛かったのだ。
「喋る暇があったら打ち込んでこいや!」
コスプレをした幼女が大きな剣をもって、強がっている。
アスナにはそう見えた。
モードレッドはそんなアスナの態度に舐められているとでも思ったのか、小さく舌を打ち、強く地面を叩いて勢いのままに剣を振り下ろした。
「死っね!」
アスナは左足を下げてそれを避ける。
けれどモードレッドは剣を地面に突き刺して、それを支点に回し蹴りを放つ。
咄嗟に片腕でガードするが金属ブーツの蹴りを素肌で耐えるのは無理がある。
アスナの片腕は鈍い音を立てて、HPがゴソッと減る。骨折扱いになったのか感覚が極端に薄くなった。
「これで詰みだな閃光!」
モードレッドはその瞬間に勝利を確信したのだろう。
止めをさすべく、地面に刺さった後ろの剣に手を伸ばして―――
「なっ!?」
スルリと空振った。
ここにきてアバターの身長を変えすぎた弊害が出る。持ち前の戦闘センスをきかせて身長差に対応してきたモードレッドだが、無意識間においての距離感はまだ掴めていなかったらしい。
「私の友達の実体験なんだけど、勝負は強い弱いが勝敗を分けるものだけど、負けたくないって想いが実を結ぶこともあるそうよ」
不味いと思ってモードレッドが振り返った時には遅い。
細剣ソードスキル『ニュートロン』
五連の閃光がモードレッドのアバターを突き抜けた。
「勝者!バーサーカーヒールのアスナァァ!!!」
モードレッドの敗因、慢心。キャラ育成不足。