「四十階層のフロアボスは我々『円卓の騎士』に任せてもらおう」
「ふざけないで!」
もう1ヶ月は前になろうか、軍の攻略組引退を機に急速に力を付け始めた二大ギルド『血盟騎士団』と『円卓の騎士』 は今後どちらが攻略組の指揮を取るかで揉め、話し合いでは収まらずリーダーのヒースクリフとアルトリアがデュエルで決着をつける事となり……圧倒的レベル差&直感Aのアルトリアが幸運にも勝利した事で名目上は円卓の騎士が指揮を取ることになった。
円卓の軍師アグラヴェインはリアルで軍人経験があるらしく彼が指揮を取ってから攻略組の死亡率は0、アルトリアの下に集う円卓の勢力拡大に伴い攻略スペースは目に見えて上がった。
一見、順風満帆に見えるアインクラッド攻略だが、最近モードレッドやランスロット、円卓の中でも屈指の実力者達がボス攻略会議を待たず単独でフロアボス攻略を行うような事態が増え、豊潤なフロアボス経験値を独り占めされては攻略組のレベルバランスが崩れかねないと度々他勢力から抗議を受けていた。
「私達だって命をかけて戦っているの、貴方達の勝手な都合で攻略組の和を乱す気!?」
今日、円卓のギルドホームにやって来たのは閃光のアスナさん。血盟騎士団の副団長なんだが……正論過ぎて何も言い返せない。
私だって足並み揃えることは重要だと思う。でもモードレッドとか、いつの間にかフロアボス撃破して「へへっどうだ父上、凄ぇだろ?」あんな満面の笑みを浮かべられて強く言えないんだよ。下手に文句言った「
スゲエだろ?こっちのモードレッドも女の子で顔つきは私……というより獅子王にそっくりでめっちゃ背高いんだぜ(だが貧乳だ!)
「騎士王!貴方は何を考えていると言うの!」
―――えっ?
アグ君と話てると思ったら急に話を振られたんだが、どうすれば?
アグ君と違って口下手だから、あんまり話したくないんだが、答えないと失礼だよな?
「――――全プレイヤーの解放と自由」
「ッゥ!?だから円卓だけで突っ走ってもいつか壁にぶつかる時がくる!私達皆で――!」
「二十五層の時のようにまた死ぬか?」
「貴方!?」「アグラヴェイン、口を慎め」
「ハッ申し訳ございません。しかし、レベルと半端なプレイスキルだけで攻略組を名乗る連中が増えれば犠牲が増えるのは当然の理」
「その点……始まりの騎士は問題ないってわけね」
「あぁ、お前らが率いていた
「……アグラヴェイン」
「失礼するわ」
アスナは感情の消えた顔をして円卓を後にした。
追い掛けたい気持ちもあるが、私はアスナさんの『レベルを上げ足並み揃えて攻略組の数を増やす』考えよりもアグラヴェインの『真の強者のみで攻略する』その考えに賛成なんだ。
リアルの体がどれだけ持つか分からない。クリアを目指すなら犠牲は少ないのは勿論、時間をかけ過ぎるのは不味い。
アルトリアとしての直感なのかは分からないけど『百層を目指すなら彼女のやり方だと確実に間に合わない』と何かが警鐘を鳴らすんだ。
「あっこんな所に落とし穴が!」
すいません。直感Aとか嘘です。ケイと経験値狩りしてたら普通に落ちたアルトリアです。あまり深くなかったのでHPが0,5割ほど減少するだけに済みましたが、下手したら死んでましたね……ハハッ。
だが、落ちた先はトラップ部屋だったのか激しいアラーム音と共に大量のモンスターが自然発生する。
「――何だよこれ!」
「私以外にもプレイヤーが!?」
低階層ではあり得ない数、そこそこレベルの高いモンスター達。間違いなく即死トラップに数えられるだろう其処にはアルトリア以外に数人のプレイヤー、そしてレッドに差し掛かり今にも消滅しそうな少年が絶叫している。
―――このッ光景!
槍使いのモンスターのタゲが少年に向いているのを見て、全身に電流が走り抜ける。アルトリアは――どうしても、どうしても
「問おう。あなたが私のマスターか」
カリバーンによって斬り捨てられたモンスター達の破壊効果音にダブってFateお馴染みのセリフを放つアルトリア…いやセイバー。
数秒して誰にも聞こえていなかった事に気付き、恥ずかしさのあまり聖杯の泥に自ら飛び込んだのであった。
アルトリアvsヒースクリフ
「(不味い!)」反応速度強化
超速度で振るわれる神聖剣
「……(何か嫌な予感する)」サッ
「(避けただと!?)」
全てはここから始まった。
モードレッドの父上呼びはちゃんと理由があります。