無限ルーパーズ   作:奈落への流星群

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見知らぬ男

冬の乾いた寒さが肌を撫でるこの季節。

質素な住宅街にポツンとある広場で、小学五年生達は野球をしている。

私は相も変わらず冬だというのに短パンでバットを精一杯振り回していた。

冬なのに短パンだというその姿はまさに懐かしいやんちゃな少年時代を思い出させる。

 

必死にボールを追いかけ、ボールを投げる。

皆は野球に夢中だった。

そんな中、突然黒雲が立ち込めた。

太陽に向かって黒雲はぐんぐんと登り続ける。

気が付くと雲はどんどん広がっていき、あっというまに陽は地を照らさなくなった。

 

 

カキン!

 

バットがボールを捉えた、清々しいヒットの音が公園に響き渡る。

 

オーライオーライ イケー ハシレー

 

活気にあふれた声が至る所で聞こえる。

守備だった私は空高く打ちあがったボールにグローブに入れた手を伸ばし、身構えていた。

その時。私は宙のボールではなく、黒雲に目線をやった。

空を見上げる私の姿は豆鉄砲をくらった鳩のように、ただ立ち尽くしていた。

 

私には、雲を駆ける船の姿が見えたからである。

宙船は激しい光の点滅を繰り返しながら、徐々に高度を落としていった。

まるで誰かからの攻撃から逃れているように私は感じた。

そんなSFちっくな光景な私はただ茫然としていた。

遠く離れていたせいで、ほんの小さな姿だったが、

それでも野球よりかは興味がそそられた。

幻かなにかだと思ったが、確かに宙船はある。

飛行機でもヘリコプターでもない。

UFOなのか?タイムマシンかなにかなのか?

ただ一瞬見ただけでこんなにも脳が考えを巡らす。

ただただ面白かった。

私はこの光景を永遠に見ていたかった。

 

「いてっ」

 

奇妙な宙船を見て呆気に取られていると、ボールが私の頭に降ってきた。

 

中島「なにやってんだよ磯野。急に上なんか見ちゃってさ。

上になんかあるのかい?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

私はこんな面白い光景を誰かに教えたくはなかったし、

何しろ信じてはもらえないということは小学五年生にとっても明白だったからだ。

この経験は自分の胸に留めておくのが一番よい。

新鮮なこの印象を誰かに幻想だとバカにされたくなかったからだ。

だがイクラには話してやろう。きっと驚くだろうと。

そう私は考えていた。

 

中島「うわっ。すごい空。黒いペンキが空にぶち撒かれたみたいだな。」

 

 

ポツリ、ポツリ

 

ウワァアメダ チュウジダチュウシ ハヤクカエロー

 

「うへぇ。雨だ、中島。帰ろうぜ」

 

中島「ちぇー。磯野がボールさえ取ってくれれば勝ち逃げだったのになぁ」

 

「しょうがないだろう」

 

あんな面白い光景を見たら、誰だって動きを止めるだろう。

宙船なんて。

 

 

中島「もうみんな帰りかけている。僕たちも帰ろう」

 

「そうだな」

 

 

私は荷物を持って、足早に公園を出た。

 

中島「なんか更に雨が強くなった気がするなぁ」

 

「もうちょっと早く走ろう」

 

中島「分かってるよ」

 

ザアァァァァァ

チュ、チュチュドーン

 

「ゲッ、雷も落ちた!」

 

中島「いやいよ強くなってきやがった」

 

「あっ!!」

 

中島「なんだよ磯野」

 

「バット忘れた」

 

中島「僕は先帰るから、がんばってくれ磯野」

 

「ひどいよ中島」

 

中島「雷に打たれることなんてないようにしろよ磯野」

 

「心配するなら来てくれよ…」

 

中島「じゃ、頑張れよー」

 

そういうと彼はさっさとどこかへ走っていってしまった。

 

「ひどいや」

 

私は急いでバットのある公園に向かった。

水を含んだ衣服が重かったがなんとか公園までたどり着いた。

たどり着いたころには更に雨量がまし、空は野球をしていた時には比べもならないほど黒く澱んでいた。

バットが置かれていた場所はベンチだと思い出した。

辺りを見回して、ベンチに駆け寄る。

公園のベンチに雑に置かれたバットを掴み早く帰ろうとした。

 

 

「おい、君。少しいいかな」

 

急に声をかけられ、振り返ると公園の真ん中に立っている男がいた。

その男は黒いコートに暗めのジーパン。身長は180㎝前後ぐらい。

そして髪が白髪まじりの黒髪。

声は大きく、焦っているような感じだった。

 

 

何故かは分からないが、私は直感的に危険を察知した。

宙船はただ遠くにあるだけだったが、

この男は実際に目の前にいる、現実にいる。

私は部外者ではいられないのだと感じた。

 

「ごめんなさい急いでいるので帰ります」

 

??「いや、すぐに終わる話なんだ。聞いてくれないかな」

 

「いや、でも…」

 

??「一つ質問をする」

 

「はい?」

 

??「それに答えるだけだ。なにも難しいことはない」

 

この男は強引に質問をしようとしてきた。

暗くて見えなかったが男の右目には傷があった。

宙船といいこの怪しげな男といい、奇妙なことが連続して起きている。

心臓がバクバクしている。今までの人生で奇妙なことが起こったのは初めてかもしれない。

そう強く感じた。思えば今までの人生が平坦過ぎたのかもしれない。

 

 

??「磯野カツオという男を知らないか?」

 

「!?」

 

??「その顔。知っているようだな。」

 

不意な質問に表情が崩れた。

 

??「教えてもらおうか。磯野カツオの居場所を」

 

「すみません知らないです!!」

 

私は必死に走った。

公園と男がどんどん小さくなる。

ただただ走った。走って走り続けた。

 

??「なぜ逃げる?」

 

「!?」

 

男は私の前にいたのだ。

あんなに離れたはずの男は、なぜか私の前にいた。

 

「助けてくださいお願いします!!」

 

??「おいおい待てよ。別に取って食おうって訳じゃない。教えてくれればそれでいいんだ」

 

私は唾をのんだ。私はこの男に磯野は自分だと言っていいのかと。

戸惑ったが、私は決心した。この男に真実を告げようと。

 

「僕の名前は…」

 

 

 

警察官1「君たち!何をしている!!」

 

警察官2「怪しいぞ!!」

 

警察官3「手を挙げろ!!!!」

 

 

どこからか警察官が3人現れた。なぜかは分からないが。

 

 

「この町に警察官のパトロールいったけ?」ブツブツ

 

 

 

「警察さん。確かにこの男性は怪しいですけど、なにもしてないですよ」

 

警察官123「………」

 

 

私は男のことよりこの警察官のことの方が気になった。

うんともすんとも言わないこの警察官たちは男をぐるりと取り囲んでいる。

 

??「はぁ。なんだよ急に。まだ何もしてないぞ。」

 

警察官1「急に怪しいことを言うな!!」

 

警察官3「…」ガチャ

 

 

警察官たちは男に怒号を浴びせる。

しかも拳銃を取り出した警察官もいる。

 

「ちょちょちょ待ってくださいよ!!彼はまだにもしていません!!!」

 

警察官2「離れなさい!!危険だ!!!」

 

「いたっ!!」

 

 

そういうと私を手で突き飛ばした。

突き飛ばされた拍子に地面で手のひらを切った。

 

??「君は家に帰るんだ。ここからは俺らの問題だ。済まなかったな、こんな雨の中」

 

警察官1「うるさいっ!!!」

 

 

パァァンッ!!

 

 

「うわぁっ!!」

 

 

拳銃から発砲音が聞こえた。

火薬のにおいがする。本当に撃ったのか?

私は怖くてたまらなかった。

警察官は無表情だ。

 

??「逃げろぉっ!!!ボウズゥ!!!」

 

 

「はぁい!!!」

 

ただただ私は夢中で走った。とにかく走り続けた。

走っている途中、何回か発砲音がした。

男は無事だろうか。男の質問に磯野と早く答えればよかった、宙船とはなにか関係があるのかなどの

様々な思いを抱えて、思いが落っこちてしまうのではと思うほど、走った。

 

 

~~~~~~~~~~

エピソード1 終了

 

全ての戦いはここから始まった。

宙船、謎の男、怪しい警察官。

私は磯野カツオ。

この記録を全てのルーパーズに送る。

 

 

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